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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第五十九話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/03 05:56
一刀が語った美以に関する説明の中で、彼女の加護スキル以外にも詠が興味を持った箇所があった。
それは、一刀と美以の出会いの部分である。

「確かにアンタ以外の人には、美以の姿は見えていなかったのね?」
「ああ。単に気付いていなかっただけなのかもしれないけど、それでも4人ともってのはおかしいだろ?」
「……ネネ、前に恋が人の気配がするって言ってた場所、覚えてる?」
「当然なのですぞ! ネネは恋殿の言葉は絶対に忘れぬのです!」

音々音が地図を広げ、場所を指し示す。
そこは現在一刀達がいるフロアの、BF21へ降りる階段に程近い小部屋であった。

「そうね……。ネネ、明日はそこを経由してBF21へ向かって頂戴」
「ちょっと待ってくれ。美以の時はたまたまかもしれないんだし、俺が何か発見出来るとは限らないぞ?」
「わかってるわよ、そんなこと。でも、物は試しって言うでしょ。どうせ通り道なんだし、寄るだけならタダだわ」
「そっか。でも、過度の期待は持たないでくれよ?」
「わかってるって言ってるでしょ。まぁなんにせよ、明日の話よ。今日はもう休みましょ」

詠が話を打ち切って眠る体勢に入ってしまい、手持無沙汰になった一刀。
折角海岸にいるのだから、寝る前にエチケット袋の中身を処分しようと波打ち際に向かった。

加護を受けて内臓の消化機構も強化されたのか、排泄物を出す量が今までより大分減っていた一刀だったが、それでもまったく出さない訳ではない。
たった1日分とはいえ、汚物を捨てられる機会は逃さない方がよい。
出来ればエチケット袋の中身だけではなく、体内のプリプリ博士ともお別れをしておくとベストであろう。

そう考えた者は、一刀以外にも存在した。

「へぅぅ。一刀さん、来ないで下さい……」
「あ、すまん!」

剥き出しになった月の尻が、薄暗い中で白く浮かび上がっている。
その名の通り、まるで夜空に浮かぶ満月のような尻である。
まろやかな女性らしい曲線を描く月の尻、チャームポイントの蒙古斑がその愛らしさを際立たせている。

「それ、全然フォローになってないです……」
「あれ? おかしいな」

おかしいのはアンタの頭だ。
多分詠ならばそうツッコミを入れたであろうが、月は何も言えずに必死になって赤く染まった顔を薄紫色の髪で隠すのみであった。

なぜこんな小動物っぽい娘の加護神が董卓なのであろうか。
なぜ月は頭を隠して尻を隠さないのであろうか。

後者はともかく、前者は一刀にとって重要なことである。
もし月に董卓的な要素があるのならば、出来るだけお近づきになりたくないからだ。
そのためにも月のことをもっとよく知りたいと思った一刀は、月が落ち着いたのを見計らって誘いをかけた。

「時間が大丈夫なら、少し話さないか?」
「一刀さん、目も逸らしてくれずに、ずっと見てました」
「いや、やましい気持ちじゃなくてだな、月が落ち着くのを見計らってて……」
「私の、私の、お尻を……へぅぅぅ」

残念ならが、まだ月は落ちつけていなかったようである。
それでも一刀の振った話にポソポソと返事をしてくれる心優しい月。
どれだけ雑談を重ねても、彼女に暴王的な要素は欠片も見当たらなかった。

「それじゃ、追放も同然に洛陽に追いやられたってわけか。大変なんだな、宮廷の権力争いってのも」
「はい。あ、でも半分は詠ちゃんの裏工作の結果ですけど。そうしていなければ、きっと私も詠ちゃんもとっくに暗殺されてましたから……」
「じゃあ月は、ここで手柄を立てることで権力を手に入れ、宮廷に戻るのが目標なのか」
「いえ。その功績を以て退官させて頂き、出来るだけ長安から離れた土地で穏やかに暮らしたいです。……本当は西涼に戻りたいんですけど、それも危ないから」

狂王どころか話を聞く限りでは、家柄の良いお嬢様が伏魔殿に住まう魑魅魍魎のような宦官達にいいように利用されたようである。
しかも性質の悪いことに、月は自ら望んで宮仕えをしたわけですらないらしい。
彼女の故郷である西涼の領民達が、彼女にとっては人質の様なものだったそうだ。

「ねぇ、一刀さん。この海って、一体どこまで続いているんですかね。……今とはまったく違う、新しい世界があるのかな」
「うーん、どうだろうな。というか、この海岸が大陸のどっかなのかどうかもわからないからなぁ」

むしろ違う可能性の方が高いだろう、なにせ迷宮内にある海岸なのだから。
下手をすれば地表までモンスターだらけの土地だった、なんてこともありうる。

にもかかわらず、どこか憧れるように海を見つめ続ける月。
いっそ全てを投げ出してしまいたい。
月の態度や言葉の端々からも、そういった感情が見え隠れする。

それはそうであろう。
暗殺される可能性は少なくなっても、迷宮探索で命を失う危険は大きいのだ。
常に自分と仲間の命が危険に晒されている状況で、逃げ出したいと思うのは当たり前である。

それでも故郷の領民達を思い、ひたすらに耐える月。
そんな彼女には、やはり暴君的な要素はないと安堵する一刀なのであった。



夜が明け、2日目の迷宮探索が始まった。
BF16より先を行くのは、一刀はこれが4回目である。

1回目は無謀なLV上げの時で、これはBF16まで。
2回目は雪蓮達との宝箱探しで、これも同じくBF16まで。
3回目は天和達との体験ツアーで、これも華琳のクラン員の半数以上が新規加入者であったためにBF18まで。

だから今回は既に未知のエリアなのであるが、それでも過去3回と共通して言えることがあった。
単体で行動する敵が、BF15までよりも格段に少ないことである。

今もまたガーゴイル3体とオーガー2体の計5体を相手に、一刀達は交戦中だった。

「くっ、恋! すまんけど、こっちは華雄と2人でオーガ達の相手が精一杯や。キツいやろが、ガーゴイルを頼んだで!」
「2体までならだいじょぶ」
「恋殿のフォローは、このネネの役目ですぞ! 1体だけなら、ネネが月達を守りきってみせるのです!」
「任せる」

音々音が月と詠を守る位置でファイティングポーズを取る。
LVは低くても後衛を攻撃に晒すよりはマシであろうと、一刀も音々音の隣でダガーを構えた。

ガーゴイルは一刀と音々音の頭を越え、月達を頭上から襲う。
徒手空拳の音々音はもちろん、一刀もダガー装備なのでリーチが短い。

一刀はとっさにボウガンを構え、ガーゴイルに向けて放とうとした。
ダメージは与えられないが衝撃自体は伝わるため、月達を守る足しになるだろうとの判断からである。

ところが、トリガーを引いても矢が発射されない。
昨日のヘルハウンドとの交戦時、左腕で身を守った際の衝撃により発射機構が不具合を起こしたようである。

石の爪を振り下ろし、詠を頭から引き裂こうとするガーゴイル。
その軌跡に自らの左腕を投げだす一刀。

装着しているボウガンで攻撃を受けてしまったのは、幸運というべきか不幸というべきか。
一刀の左腕の身代わりとなって砕け散ったボウガンの破損具合からすると、やはり「運良く」と評するのが適切であろう。
愛用の武器を破壊されて茫然とする一刀の脇から、音々音がガーゴイルにアタックを仕掛けた。

「ちんきゅーキック!」

加護により陳宮の力を身につけた音々音の、氣を込めた一撃がガーゴイルの右足を砕く。
恐るべき破壊力を見せたちんきゅーキックに続き、音々音は更なる攻撃を繰り出した。

「ちんきゅーアイ!」

子供の時分、誰しもが行ったであろう動作。
両手の親指と人差し指で輪を作り、手を逆さにして目に当てるという一見コミカルな姿も、音々音がやれば話が違う。
このポーズをとった時の彼女の瞳は、ガーゴイルの体中を透視してコアとなる部分を見抜くのだ。

「ちんきゅーチョップ!」

そして止めの一撃が、ガーゴイルの急所を直撃した。
パンチングマシーンなら軽く200kgは超えたであろう一撃は、ガーゴイルに先の一刀のボウガンと同じ運命を辿らせたのであった。

ちなみに『ちんきゅーアイ』の透視力と『ちんきゅーイヤー』の地獄耳が、音々音の優れたシーカーたり得る所以であることは言うまでもない。



「ネネ、怪我は?」
「恋殿! ネネはこの男が囮になったので、傷ひとつないですぞ!」
「良かった」

「せやな。ネネはリーチが短いから敵の攻撃も受けやすいし、防御力がないからなぁ」
「そう思うなら、ネネが戦闘しなくて済むように霞がもっと働けばよいのです! 『神速将軍』を名乗るのであれば、分身くらいして然るべきなのですぞ!」
「無茶言うなや!」

戦闘が終わり、仲間達が無事を確認し合っているのも、今の一刀の耳には入ってこない。
いつでも作戦は『命を大事に』な一刀が、戦闘中に茫然としてしまう。
ボウガンが破壊されたことは、そのくらいの衝撃を一刀に与えていたのだ。

壊れたなら買い換えればいいじゃないか、という問題ではない。

剣奴時代から愛用していたボウガン。
振り返れば初めての『贈物』もボウガンであり、代替わりこそしたもののずっと身につけてきた、一刀にとっては己の半身のようなものなのである。
そんな一刀の戦友が、実にあっけなく破壊されてしまった。
粉々になったボウガンの姿は、一刀に近い未来の自分の姿を想像させたのだ。

加護を受けて以来、従来の臆病さがなくなりつつあった一刀。
昔の一刀であれば、例え荷物持ちだとしても自分のLVを超えるフロアに足を踏み入れることはなかったであろう。
それは勇敢になったのではない。
加護を受けたことによる身体能力アップで己の力を過信し、心のどこかで自分は死なないと思い込んでいたのである。

「あの、一刀さん。詠ちゃんを守ってくれてありがとう」
「お陰で助かったわ。釣り場の件もあるし、そのボウガン分もボーナスに上乗せしておくから」
「……ああ。詠が無事で良かったよ。ボウガンだって本望だったろ」

常に一刀の命を守ってくれたボウガン。
祭とネンゴロになる切っ掛けすらも作ってくれたボウガン。
詠や一刀の身代わりとなって砕け散ってしまったボウガン。

ボウガンは最後に己の身を以て、一刀に初心を思い出させてくれたのかもしれない。



「やっぱり人の気配がする」
「むむむ。しかし恋殿、ネネの『ちんきゅーアイ』でも何も見当たりませんぞ」

目的地の小部屋には、3人の女の子がいた。
その頭上にNAME表示はない。
恋と音々音の会話から、彼女達には美以の時と同様その姿が見えていないらしい。

「あー、こんにちは。俺は一刀って言うんだ」
「ひゃー! 凪ちゃん! この人、沙和達のことが見えてるの!」
「ああ、そのようだな。自分は凪と言います。ノームです」
「沙和は沙和なの! エルフなの!」
「うちは真桜、ドワーフや。んで兄ちゃん、『天使印』は持っとるんか?」
「金なら1枚、銀なら5枚なのー!」
「もちろんタダで譲り受けたいとは言いません。相応の対価は払います」

「アンタ、誰と話をしているの?!」
「へぅ、もしかしてさっきの戦闘で頭を打ったんじゃ……」
「一刀には見えてる」
「恋殿! ネネに見えないものが、コイツなんかに見えるはずないのですぞ!」
「音々音、ちょっと騒ぎ過ぎや。モンスターが寄って来てまうで」
「ふっ、更なる戦闘こそ我が望み。ちょうど良いではないか」

残念ながら一刀に聖徳太子的な加護スキルはない。
とりあえず皆を落ち着かせた一刀は、まず凪達から話を聞いたのであった。

彼女達はいつの頃からか、ずっと迷宮に囚われていたという。
解き放たれるためには、『天使印』と彼女達が呼ぶカードが必要であるらしい。
金の『天使印』なら1枚、銀の『天使印』ならば5枚で1人が解放される、つまり3人ならその3倍必要になる。
また彼女達は、『天使印』と引き換えに強力な武器や防具を作ってくれるそうだ。

「それだけではありません。自分は串を様々なアイテムに変化させられます」
「凪ちゃんの作ったアイテムは、すっごく便利なのー!」
「串ってなんだ?」
「ん? 兄ちゃん持っとるやん。それや」

手早く使えるようにベルトに挟んでいたHP回復用の短剣飾りを指し示す真桜。
試しに何か作ってもらおうと短剣飾りを差し出したが、青銅のそれだけでは足りないようである。

「自分のオススメは『帰還香』です。50串ですので、それを50個なのですが……」
「青銅のは1串なのか。んじゃ、黄銅のは?」
「あ、それだと5串ですので10個必要です」

他にも『増力香』や『増速香』などのブースト系アイテムや、『増ドロップ香』や『増EXP香』などのチート系アイテムも作れるそうだが、やはり特筆すべきは凪自身が言うように『帰還香』であろう。
お香を全身に浴びねばならないので戦闘中は使用出来ないし使い捨てではあるものの、小部屋で使用すればそこにいる全員を迷宮外へテレポートさせることが可能であるという。

月達にその話をした所、やはり『帰還香』が欲しいと言う。
初日の探索で得た黄銅の短剣飾り8個に加え、詠と月がそれぞれ持っていたMP回復用の短剣飾りを1つずつ。
計10個の短剣飾りは凪の手の平で融けるようにして消え去り、あっという間に『帰還香』が出来あがった。

「実際に効力を試してみる必要があるわね」
「えー、勿体ないやん」
「仕方ないでしょ。ボクはぶっつけ本番で使用する程、怖いもの知らずじゃないわ。それに一刀の話に出て来た『天使印』って、こないだBF21で倒した妙に強い敵が落としたやつじゃない?」
「あー、そういやアレも銀のカードやったな」
「それに黄銅も町に帰ればまだストックがあるし、BF21でドロップした銀の短剣飾りだってあるじゃない。それを持って来てブースト系のアイテムと交換したいわ。BF21は敵が格段に強くなるんだし、安全策が取れるならそうするべきよ」

「あ、銀のは10串ですよ」
「凪ちゃん、全然聞こえてないの」
「うーん、なんでこの兄ちゃんだけにしかうちらが見えんのやろ?」

それは一刀の方こそ聞きたい。
と言いたい所だが、実は一刀は既にある仮説を立てていた。

彼女達の存在は、RPGゲームでいうイベントキャラなのではないか。
ある一定の条件を満たすと出現するキャラクターというのは、つまり条件を満たしていない状態では絶対に出現しないのである。
そのシステム的な要素とリアルな世界との矛盾が、存在すれども認識出来ず、美以と同様イベントクリアまでは食事や排泄をする必要がないという現状になったのだろう。
その考えが正しければ、恐らく『天使印』を所持した状態であれば、月達にも彼女達の姿が確認出来るはずである。

美以の場合を考えるとイベント内容こそ明確ではないものの、結果的に彼女は『猫の首輪』を一刀に与えているし食事等も行っていることから、既にイベントクリア状態になっているのであろう。
ヘルハウンドの急所攻撃から首を守るために『猫の首輪』を装備した一刀だったが、その結果わかった首輪の性能は『近接命中+10、遠隔命中+10』という、まさにイベント報酬に相応しい破格のものであった。
しかも仲間となった美以の加護スキルも、如何にもお助け用のNPCっぽい。

なぜ彼女達が一刀だけには見えるのか。
それは一刀だけにステータス画面やNAME表示が見えるのと同じ理由であろう。

この世界では、一刀は異物な存在なのだから。



「それじゃ、『帰還香』を使ってみるわよ」
「あ、ちょっと待ちぃや、兄ちゃん」
「待ってくれ、詠。どうしたんだ、真桜?」
「なんかその竿、おかしいで。本来の姿やない。どうせすぐ戻ってくるんやろ? それまでちょっとうちに預けとかん?」

本来であれば、真桜や沙和は『天使印』がないと武器・防具の制作や強化は出来ないらしい。
それは凪がアイテムを作成するのと同様、『天使印』に内包されているモノを使用して行うからだそうだ。
だが一刀の持つ『太公望の竿』は強化ではなく開放という分類になるので、『天使印』が無くてもいじれるのだと言う。

折角の申し出なので、遠慮なく真桜の言葉に甘えた一刀。
洛陽での休息を含め2,3日後の再来になることを伝えて、一刀達は『帰還香』により一瞬で迷宮前へと戻ったのであった。



**********

NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:18
HP:198/288
MP:0/0
WG:100/100
EXP:407/4750
称号:小五ロリの導き手
パーティメンバー:一刀、月、詠、恋、音々音、華雄、霞
パーティ名称:チートバッカーズ
パーティ効果:近接攻撃力+40

STR:20
DEX:30(+6)
VIT:20(+2)
AGI:28(+6)
INT:21(+1)
MND:16(+1)
CHR:26(+1)

武器:アサシンダガー
防具:避弾の額当て、ハードレザーベスト、レザーグローブ、マーシャルズボン、ダッシュシューズ
アクセサリー:猫の首輪、万能ベルト、蝙蝠のマント、回避の腕輪

近接攻撃力:110(+5)
近接命中率:82(+10)
物理防御力:77
物理回避力:89(+18)

【武器スキル】
デスシザー:格下の獣人系モンスターを1撃で倒せる。
インフィニティペイン:2~4回攻撃で敵にダメージを与える。

【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。

所持金:16貫


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