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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第六話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/20 07:16
「うふん、これが太祖神から貴方への『贈物』よん。わたしが着けて、ア・ゲ・ル」
「ぬぅ、こやつもなかなか……いや、儂には大神官様が……」

必要以上に手を触ってくるハゲマッチョと、なにやらブツブツと呟いている白髪マッチョ。
2人の上には、やはり文字が浮かび上がっていた。

NAME:貂蝉
NAME:卑弥呼

NAME以外が浮かび上がらないのは、神託をした際に漢女達の体に太祖神が宿ったことにより、人間から外れた存在となったからである。
だが、一刀がそんなことを知るはずもない。

(NAMEだけしか表示されない……こいつら、見た目の通りモンスターの一種なのか)

一刀は警戒心を強め、いつでも逃げられるように心の準備をした。
だが、当然マッチョモンスター達が襲い掛かってくることはなく、一刀は無事に神殿から脱出することが出来たのであった。



神殿から出ていく一刀の耳に、雄叫びのような声が聞こえてきた。
どうやら併設されている救護院でなにやら騒ぎが起きている様子であり、そこには既に人だかりも出来ていた。

「うおおおぉぉぉ! 俺のゴッドウェイドーは、まだまだこんなもんじゃない! 受けてみろ、ゴッドウェイドーのバリエーション! これが俺の全力全開! 病魔退散、元気になぁれっ!」

そこには、オーバーアクションでなにやら騒いでいる若い男と、それを取り囲む娘達の姿があった。
娘達同士の話から察すると、この若い男こそが大神官であるそうだ。
人々の信仰で成り立っている商売である以上、人気取りが必要であり、神殿では毎日この時間帯に魔術を使って薬を作る大神官の姿を一般公開しているらしい。

先程の叫びが呪文かと思ったが、どうやらただの前振りであったようで、男が集中した途端に光の粒子が奔流となって空へと駆け上がった。
そして男は、呪文を唱えた。

≪-薬瑠斗-≫

すると先程の粒子が、流星の様に地へと降り注ぎ、それはやがて見覚えのある物へと姿を変えていった。
一刀が頻繁に使用している回復薬である。

100個前後生成されたその回復薬を、まだ漢女まで成熟しきっていない、おっさんとホモの中間のような巫女見習い達が机に並べ、販売していた。
直売店だけあって、ギルドよりも安価な25Gギルだったため、一刀はそれを買いつつ大神官が他の薬を作るのを待った。

≪-御炉菜印-≫と呪文を唱えれば傷薬が150個、≪-怒苦堕美茶-≫と呪文を唱えれば毒消しが50個と、ポンポン生成される薬達。
一刀にとっては、もの凄く羨ましいスキルであった。

NAME:黒男【加護神:華佗】
LV:32
HP:450/450
MP:98/283

羨望混じりで大神官のパラメータを見て、一刀は驚いた。
なんと彼は、現時点で華琳よりも雪蓮よりも断トツに高LVであったのだ。

「こいつが迷宮に潜れば、無敵なんじゃないか……」

思わずそう呟いてしまった一刀の独り言を聞いた娘達が、親切心からか惚気心からか、大神官についてとても丁寧に教えてくれた。

曰く、昔からずっと病魔と闘っていた彼はもの凄く強かったため、ソロで迷宮内に潜り、探索者達を助けていた。
曰く、あの華琳ですら彼に助けられたことが何度もあった。
曰く、祭壇が発見された後、彼がそこで祈り、加護を受けた神は医聖・華佗であった。
曰く、彼は薬を作成するスキルを得た代わりに、モンスターと戦えない制約を与えられた。

娘達の、あっちに飛びこっちに飛びの話を要訳すると、こんなところだ。
余りにも長い彼女達の話に飽きてきていた一刀。
しかも外出に一日という制限のある彼には、あまり時間がなかった。

仕方なく、途中でおっさんホモ巫女見習いを引っ張ってきて自分の身代りとし、その場を去ったのであった。

ちなみに、ただ華佗の話を人に聞かせたいだけの娘達にとっては話す相手が変わろうと関係がなく、おっさんホモ巫女見習いはそれから3時間ほど経ってからようやく解放されたのであった。



武器・防具の相場を見たい一刀であったが、中心地にある立派な店には気遅れがして入れなかった。
そもそも、一刀が身につけるようなレベルの武器・防具がこんな立派な店に置いてあるとも思えないため、相場を調べる目的からしてもその店は相応しくなかったであろう。

対人スキルの高くない一刀は安い武器・防具屋を人に尋ねることも出来ず、あっちへフラフラこっちへフラフラと縦横無尽に右往左往した。

季衣や流琉のような、相手が子供であれば。
雪蓮の時のように、話すきっかけがあれば。
華琳の時のように、頭に血が上っていれば。

そういう条件がない時の一刀にとって、見知らぬ人に声を掛けるというのは難易度が高かったのである。
勘を頼りに歩きまわっていた一刀は、やがて町に店を出す資金のない商人達が集まる露店へと辿り着いた。
そこは隣り合う露天同士でも同じ物の値段が異なるようなバザー形式であり、物の相場を調べるには不適当な場所だと言えた。
だが一刀は「こういう所にこそ掘り出し物があるに違いない」とラノベ知識丸出しで、並べられた商品を見て回ったのであった。



「おう、兄ちゃん。ウチの商品を見てってくんな」

そう一刀に声を掛けた男の店は、アクセサリー屋であった。
アクセサリーなどまったく興味がなく、無駄金なんぞ1銭も使えない一刀にとって、そんな店は用無しである。
一瞥して立ち去ろうとした一刀に、商人が更に声を掛ける。

「まぁ待ちなって。ウチの商品は、魔力のあるアクセサリーを扱ってるんだ。ちょっと手に持ってみなよ。不思議な力を感じるだろ?」

そんな言葉に興味を持った一刀は、目の前の指輪を嵌めてみた。
商人の言う通り、確かになにか不思議な感じがする。
一刀は自分のステータスを確認して驚いた。

HP:57/52(+5)

これは下手な武器・防具よりも自身の力になるかもしれない。
一刀はアクセサリーを装備してはステータスを確認し、の作業に没頭した。

「お、目の付けどころがいいね。その首飾りなんか、ご利益があると思うぜ。迷宮探索のお供に是非ってやつさ。今なら大負けに負けて、10貫でどうだ?」
「じゅ、10貫?!」

AGI+2の首飾りを手にした一刀は、その商人の言葉に目を剥いた。
そこで売られているアクセサリー類には、全て値札が表示されていなかったのである。
一刀は他店では500銭の短剣や1貫の槍が並べられていたため、このアクセサリー類もその程度の値段だと思い込んでいた。

店主の言い方からすると、アクセサリー類の正確な効果は知らないのだろう。
もしかしたら、凄い性能の物が安価で買えるかもしれない。

そんな取らぬ狸の皮算用をしていた一刀の受けたショックは大きかったのであった。



「なんだ、兄ちゃん文無しかい。いくらあんのか、正直に言ってみな。その値段で何か見繕ってやるよ」

救護院で薬を買った一刀の手持ちの金は、3貫になっていた。
ただ、これは今後も薬を買ったり矢弾を買ったりするためにも必要である。
それに一刀は町で武器・防具を買いたかったわけではなく、相場を調べたかっただけであった。
だがステータスアップの効果があるアイテムは、どんなRPGにおいても高価で貴重な存在であることを一刀は知っていた。

ここは無理をしてでも、なにか買っておくべきではないか。
いざとなれば、このボウガンとベルトを売れば済むんだし。

そう考えた一刀は、全財産である3貫全てを提示したのであった。
だが商人は、それではまったく足りないと言うのである。

「そうだな、そのボウガンとベルトを2貫で引き取って、兄ちゃんの手持ちと合わせて5貫。それでギリギリコイツだな」

商人が差し出した物は、短剣を模した小さな飾りであった。
恐らく青銅製だと思われるそれは、そこそこに華美で精巧な作りである。
だがそれを手にした一刀が確認したところ、肝心のステータスアップ効果は発揮されていなかった。
それでも、やはり不思議な感じがするのは変わらない。

(もしかしたら隠しパラメータでもあるのかな)

そんなことまで考え出す一刀。
冷静な時の一刀であればそんな可能性に賭けたりせず、堅実に金を残す方を選択したであろう。
だが、ステータスアップのアクセサリーが安く手に入ると喜び、それが買えないと解って落ち込み、それら反動で買い物の軸となる己自身の基準がブレてしまっていたのである。
つまるところ、衝動買いをする時と同じ心理に陥っていたのであった。

買えないからこそ欲しくなる罠。
その罠に、一刀はまんまと引っ掛かりつつあったのだった。



「じゃあそれでお願いし……」
「ちょっと待って! 君、その人に騙されてるよ。そのアクセサリーは頻繁にドロップするアイテムで、売値で500銭、買値でも高くて1貫なんだよ。それに、君のボウガンやベルトだって、ちゃんとした店で売れば倍以上の値段になるんだから!」

金貨と『贈物』をアクセサリー屋に渡そうとしたその時、女の子が横から口を挟んできた。
絶世の美女とは決して言えない、だがどこか人を安心させる柔らかい雰囲気を持った同年代の女の子。
その柔らかそうな頬を膨らませて、女の子は商人に文句を言い始めた。

「何度注意したらわかるんですか! 人を騙そうとするのはやめて下さい!」
「お前こそ、何度商売の邪魔をしたら気が済むんだ! いい加減にしやがれ!」
「邪魔されるのが嫌なら、人を騙さずにきちんと商売して下さい!」
「騙される方が悪いんだよ! それが商いのルールなんだ!」

言い争う2人の言葉を、一刀はまったく聞いていなかった。
一刀は、女の子の上に浮かび上がっている文字を凝視していたのだ。

NAME:桃香【加護神:劉備】
LV:18
HP:279/279
MP:39/39

ゲームの発売前情報で紹介されていた3人の主要人物のうち、最後の1人であった。
雑誌には『正義感が強くて困っている人を放っておけない』と書かれていたが、その言葉の通り、たとえ見ず知らずの他人であっても、騙されている人を放っておけなかったのであろう。
その正義感は割と独善的であり、商人には商人なりの正義があるのだが、そんなことはお構いなしに自分の考えを押し付けがちな桃香であった。
だが、全財産を失いかけた一刀にとってみれば、大恩人と言っても過言ではなかった。

商人との言い争いが平行線を辿り、頬を膨らませたままその場を立ち去る桃香。
そんな彼女に追いつき、一刀は礼を言った。

「ありがとう、助かったよ。俺、アイテムのこと、なにも知らなくて」
「いいんだよ。私は当たり前のことをしただけなんだから。君、アクセサリーが欲しいの?」
「いや、もの知らずを克服するために、武器や防具の相場が見ようと思ってたんだけど、あのアクセサリー類につい惹かれちゃって……」
「そうなんだ。それじゃ、ついでにいいお店を紹介してあげるよ。私は桃香、探索者なんだ。よろしくね」
「俺は一刀。こちらこそ、よろしく」
「武器や防具の相場を調べたいってことは、一刀さんも探索者なの?」
「……そう、桃香と同じ、探索者だ」

人物設定からいっても、話した感じからしても、こちらが奴隷だとわかっても態度を変えることはないであろう。
だが、一刀は桃香に憐憫や同情の眼差しで見られることが嫌だったのである。
一刀の嘘に気づくこともなく、桃香は一刀に色々と語りながら道案内をしたのであった。



「桃香ちゃん、がんばってるかい? ウチの大根、持って帰っておくれ!」
「ウチの肉屋にも寄ってってくれ、サービスするぜ。一杯食べて、力をつけろよ!」
「ほら、蒸かしたての饅頭だよ。お代はいいから、鈴々ちゃんのお土産にしなさいな」

商店街から絶大な支持を受けている桃香。
それもそのはず、桃香の家はこの商店街で靴屋を営んでいるのだ。
母親の手伝いをして育った桃香であったが、迷宮が出現して一念発起した。

太祖神の啓示があったこともある。
奴隷達が売られてくるようになったこともある。

だが一番の理由は、都市長が麗羽に変わり、洛陽が城壁に囲まれるようになって、洛陽を出るためには5000貫もの税金を払わなければならなくなったからであった。
洛陽という限りある土地で、もともと店を持っていた人達ならば、高値で売れる店を手放せばなんとか金の都合はつく。
だが、それでは身ひとつで出ていくのと同じことであり、その後の生活は厳しいものになるであろう。
それに、土地など財産を持っていない人達にとっては、ここは牢獄と同じなのである。

桃香は『迷宮を踏破して、神様に自由と平和をお願いする』と、靴屋の手伝いから探索者へとジョブチェンジしたのであった。

「まぁ、神様が自由と平和を叶えてくれるかはわからないけど、迷宮がなくなれば町を壁で囲う必要も、剣奴を集める必要もなくなるから、もしかしたら皆解放されるかもしれないな」
「ぶー、わからなくないもん。私の加護神は仁神・劉備様だもん。きっと私のお願いを叶えてくれるよ。あ、ここだよ。ここが私のおすすめのお店でーす」

桃香に紹介された店は、小じんまりとしてはいるものの、武器も防具も安い物からそこそこの物までが置いてある、初心者・中級者向けの店といえた。
店主の見立てでは、ボウガンは最初の『贈物』によくあるワンオフ物であり売値で4貫、ベルトは売値で1貫であり、それに入っているブロンズボルトを合わせても2貫だとのことであった。
もちろん未使用の場合の売値であり、使用してボロくなったり古くなったりすれば、当然値段は下がる。
買値は一般的に売値の倍であり、一刀のボウガンと同等の物は6貫程度で販売されていた。
つまり、ボウガンは8貫の価値があり、ベルトはボルトを含めて4貫の価値があるということである。

「ワンオフ物と言っても、別に性能が高いわけじゃないから、汎用の物よりも多少高い程度だけどな。ただ『贈物』は受け取る探索者の体にフィットするし、汎用のものと比べて耐久性に優れているから、なるべく売らずに自分で使った方がいいんだ。矢弾は汎用のものが問題なく使えるぞ」

一刀は、アクセサリーと交換しなくて本当に良かった、と深く溜め息を吐いたのであった。



折角だから武器を試してみろと勧められ、ショートソードやブロンスアクス、果てはブロンズスピアまで触らせてもらった。

その結果、わかったことがあった。
それは、一刀にも認識出来ない隠しパラメータが存在する、ということである。

どの武器も攻撃力こそ高いものの、現在使用しているダガーに比べるとかなり扱い難いのだ。
他の物よりも小さいダガーだから扱いやすいのかと思ったのだが、桃香にも試してもらった結果、彼女はショートソードが一番扱いやすいとのことであった。

「私は普段からショートソードを使ってるし。やっぱり使い慣れた武器じゃないと、扱い難いよ」

リアルであれば、その話もわかる。
だが、ここはゲームの世界なのである。
である以上、全ての物事はパラメータによって左右されるはずであった。
おそらく桃香は片手剣スキルが、一刀は短剣スキルが上がっているため、他の武器が扱い難いのであろう。

ものによっては、STR値によっては両手剣や全身鎧が装備出来ない、なんて縛りのあるRPGだってあるのだ。
そしてその縛りは、おそらくこのリアルなゲーム世界にも適用されるであろう。
装備するとDEX値やAGI値が極端に下がったり、耐重量を超えるとHPが徐々に減っていく、という形をとって。

それは、武器の使用に関する事柄だけではない。
流琉は料理が得意であると言っていた。
各個人によって料理の出来が変わるということ、それはつまり料理スキルが存在しているということなのである。

これは別に知っていても知らなくても問題のない知識のように思える。
しかしここで重要なのは、無制限にスキルを上げることが可能なゲームシステムであるのかどうか、という所であるのだ。
特にMMORPGにありがちなのが、スキルポイントのトータルが決まっているパターンであり、プレイヤー達はそこからスキルの取捨選択をして必要なスキルのみを上げていくのである。

まだ序盤であり、今ならば武器の変更をしてもさほど影響は出ないであろう。
ボウガンの使用を前提に考えるのであれば、それにポイントが消費されることを考慮して、使用する近接武器は1つに絞るべきである。
一刀は自分のステータスを見てしばらく考え、そして決断した。

「これとこれを下さい」
「ああ、合わせて300銭だが、他でもない桃香ちゃんの紹介だ。おまけして200銭でいいぞ」
「ありがとうございます」

一刀が購入した物。
それは己の装備品ではなく、髪の長い季衣のための髪留め用ヘアバンドと、贔屓にならないように買った流琉のためのリボンであった。

結局一刀は、現状の装備そのままとすることにしたのである。
DEXがSTRの1.5倍という自分のパラメータを活かすために、出来るだけ身を軽くした方がよいとの判断であった。

だが、良くしてくれた店主や、せっかく紹介してくれた桃香の顔を潰さないため、目に止まったそれらを購入したのである。
普段ならそこまで気を遣わない一刀であったが、剣奴である自分は外出が出来ず、今後この店に訪れることはないであろう。
だから、世話になったお礼に、気持ち分だけでも金を使っておきたかった一刀なのであった。



桃香と別れ、探索者ギルドに戻った一刀。
そこで彼が目にしたものは、空っぽになった自分のベッドであった。
着替え用の下着どころか、あのボロボロの服までが盗まれていたのである。
そのことに、怒りはさほど感じなかった。

あのボロボロの服すらも盗んでいくような貧窮。
盗み盗まれが当たり前になっているような境遇。
自分が生き残るためには他人を犠牲にしなければならない状況。

左腕に装備したボウガンを見ながら、やっぱり彼等に命は預けられないな、と思う一刀なのであった。



**********

NAME:一刀
LV:3
HP:52/52
MP:0/0
EXP:135/1000
称号:なし

STR:6
DEX:9
VIT:6
AGI:7
INT:7
MND:5
CHR:5

武器:ブロンズダガー、ライトボウガン、ブロンズボルト(100)
防具:布の服、布のズボン、布の靴、布の手袋、レザーベルト

近接攻撃力:26
近接命中率:16
遠隔攻撃力:26
遠隔命中率:13
物理防御力:21
物理回避力:15

所持金:2貫800銭


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