攻撃力+20の効果は、どのくらい凄いことなのだろうか。
ダメージ計算式の存在を無視、あるいは簡略化して、おおざっぱに計算してみよう。
一刀の攻撃力が80から100に上がったとする。
そして敵の防御力を考えなければ、HP400の相手に普段なら5回殴らないと死なない敵が4回殴るだけで死ぬことになる。
更に敵の防御力が70だったとした場合、同じ相手に普段なら40回のところが14回で済む。
もちろん実際には、複雑な計算式が存在しているのだろう。
攻撃力がそのままダメージになるかどうかなど、相手のHPがわからなければ確認のしようがない。
そして、少なくとも防御力が攻撃力からそのまま引いている上記の計算だけは絶対に違うと言い切れる。
なぜなら、攻撃を当てる場所によって手応えが違うからである。
一刀だって殴られる場所によって受けるダメージが違うのだから、当然の話だ。
リザードマンを例に出そう。
一刀は獲物が短剣であり、また敵に接近していることもあって、鱗の隙間を狙って攻撃することが出来た。
星や白蓮などは、攻撃が鱗に弾かれることも度々あった。
季衣や流琉の武器では、鱗の隙間を狙うことなど不可能である。
このように攻撃方法や攻撃箇所によって、敵の防御力は流動的になっているはずなのだ。
もしくは敵には防御力が存在しない、つまり攻撃部位や攻撃方法で変化する係数を自身の攻撃力に掛けるシステムであるのかもしれない。
この場合、ポイズンダガーでの防御力低下はつまり、攻撃部位の係数を増やす効果だったと考えられる。
具体的な数値で例を挙げると、次の通りである。
鱗の部位係数0.2×星の攻撃力200=与ダメ40(序盤)
鱗の部位係数0.3×星の攻撃力200=与ダメ60(ポイズンダガー効果)
仮にこのようなダメージ算出方法だったとした場合、武器の違いやLVの違いでのダメージ効率が大幅に変わっても、その差が手数で補える可能性が高い。
それは極端な話をすれば、LV1でブロンズダガーを使用していたとしても、時間を掛ければ魔法生物以外の敵ならば倒せるということだ。
もちろんLVアップによる身体能力の強化分なしでこちらの攻撃を当て続け、敵の攻撃は全て避けるという話になるため、机上の空論ではあるが。
逆に防御力が一定値で存在するのなら、攻撃力の差が絶対的な差になってしまい、手数を増やしても無駄であろう。
だが前述したように、恐らくそれはないと考えられる。
そのことは、『テレポーター設置クエスト』で格上相手にこちらの攻撃が通用したことや、対魔法生物戦闘時にオーガやヘルハウンドを苦戦しつつも倒せたことからもわかる。
結論を言おう。
現在LVが1上がるごとに攻撃力+3されているステータスで考えると、では攻撃力+20になったらLV7上の相手と対等なのかと言えば、そうではないという話なのである。
つまり攻撃力の増加だけでは、戦闘で圧倒的に優位な状態にはならないだろうということだ。
「あっははは、弱い、弱いわ!」
(攻撃力の増加、だけでは、……あっれー?)
「一刀、なにをぼさっとしている。武器くらい構えろ」
「まぁ一刀の気持ちはわからんでもないがのぉ。ああまで雪蓮殿に無双されると、儂もいまいちやる気が……」
「いつも倒すのに数分以上かかるオーガがぁ、あっという間に雪蓮さんに倒されてますぅ」
そう、雪蓮の加護スキルは、まさにチートと呼ぶのに相応しい性能であったのだ。
この様子からみて、攻撃力の増加率は倍ではきかないであろう。
(俺、『祭壇到達クエスト』が終わったら、探索者を卒業するんだ……)
今まで地道に上げてきたLVは、一体なんだったのか。
そう一刀がそう思ってしまうのも当然であろう。
「やはり孫策様の加護は凄いな」
「うむ、華琳や桃香にまったく引けを取っておらん。まぁ、あやつらも規格外じゃがな」
「そういえば、桃香の加護スキルはみたことあるけど、華琳のは『吸魔』とかくらいだな。そんなに凄いの?」
「華琳さんの真価はぁ、戦闘時のスキルなんですよぉ。他は余技のようなものなんですぅ」
「彼女は常に相討ちを狙って攻撃するのだ。自分が傷つこうが一切お構いなしでな。なぜだかわかるか?」
「冥琳の話は回りくどいのぉ。要するにあやつは、敵に負わせた手傷の分だけ自分を回復させることが出来るのじゃ」
「うわっ、ずるっ!」
「でもぉ、自分が斬られる痛みを無視して敵を攻撃する精神力なんてぇ、さすが曹操様の加護を受けるだけのことはあると思いますよぉ」
そうこう話してるうちに、雪蓮が最後の1匹を斬り倒し終えた。
「ほら、時間がないんだから、さっさと行くわよ!」
「どこに行くんだよ?」
「着いてからのお楽しみよ。さ、早くっ!」
こうして一行は、BF16を突き進んで行くのであった。
「それにしても、ガーゴイルやスライムって全然アイテムを落とさないな」
オーガのドロップアイテムである『ミスリルインゴッド』や、ヘルハウンドのドロップアイテムである『滑らかな皮』を拾いながら呟いく一刀。
その疑問の答えは、すぐに解決した。
「よし、やっと出たわ。一刀、はいこれ」
雪蓮が一刀に渡したもの。
それは、ガーゴイルのドロップ品『魔法の鍵』であった。
「この鍵はね、BF16以降にある宝箱を開く鍵なのよ。なかなかドロップしない貴重品なんだから」
「宝箱なんてあるんだ?」
「ええ。トラップが仕掛けられてて、熟練の技能を持っている者でも開けるのは難しいの。だけど、この鍵を使えば誰にでも開けられるのよ」
「開けた人物によって中身が変わるという噂だからな。それで、わざわざお前に来てもらったんだ」
「さてと、それじゃ今度は宝箱を探しに行くわよ。BF16とBF17の沸き場所は全て把握してるから、そこの確認だけならそんなに時間はかからないわ」
「沸き場所? 宝箱って、ポップする仕組みなのか?」
「うむ。さすが古の神々が作りし迷宮なだけあって、不思議なものじゃ」
「私は底意地の悪い迷宮だと思うけどね。それよりも一刀、もしBF16やBF17に宝箱がなかったら、今回は諦めてね。さすがにBF18以降を探す時間はないわ」
「ああ、わかった」
一刀の期待からは大きく外れたお礼の内容だったが、宝箱という響きにドキドキしたものを感じる一刀だった。
魔法生物のドロップ率は、非常に悪いのだという。
ガーゴイルのドロップ品は『魔法の鍵』であった。
ではスライムのドロップ品は、一体何であろうか。
「おぉ、これはまた珍しいのぉ。一刀、これが『スライムオイル』じゃ」
「なにそれ?」
「武器や防具に塗れば、耐久力が回復する魔法の油だ。それもお前が持って帰るといい」
「使ってもいいですしぃ、売っても結構な金額になりますよぉ」
「いや、貴重なものなんだったら、そっちで使ってくれよ。雪蓮の『南海覇王』とかには必須アイテムなんだろ?」
「その気遣いは無用じゃ。儂らクラスの武器になると、耐久度なんてめったに落ちぬからの」
「……あれ? じゃあ祭さんは、なんで毎週俺と一緒に弓のメンテナンスをしてるんだ?」
「そ、それは、お主の……あれじゃ、うー、手入れは儂の趣味なんじゃ! 男が細かいことをうだうだ言うでないわ!」
成熟した大人の女である祭の見せた可愛らしい一面に、クラクラする一刀。
そもそもここまでの道中でも、4人の魅せた攻撃力は凄まじかった。
剣を振るう度にブルンブルンする雪蓮の乳。
呪文詠唱を行う時の、やたらと色っぽい冥琳の表情。
自らの九節棍を胸に当ててしまう度に上げられる穏の嬌声。
そして何かにつけて一刀にしなだれかかってくる祭の感触。
彼女達の遠隔攻撃や近接攻撃は、抜群の破壊力で一刀の脳味噌に刺激を与えていた。
そんな中で祭のこの仕草は、まさに止めの一撃であった。
「さ、祭さん、俺もうしんぼ……」
「一刀、やったわ! 宝箱があった!」
「……わ、わーい」
ワキワキしていた両手を、静かに下ろす一刀なのであった。
宝箱の中身は、今一刀が最も欲していた武器、それも魔力を持つ武器であった。
『アサシンダガー』という名前には若干抵抗を覚えた一刀だったが、それでもその性能はミスリルダガーを遥かに超えるものである。
現状のアイアンダガーからミスリルダガーに変更すると、攻撃力が+10になるのは、先日の武器屋で確認していた。
それがアサシンダガーを装備すると、攻撃力+23、DEX+2、AGI+2になるのだ。
振り具合などを確かめている一刀の手に持たれたダガーを、4人が酷評した。
「……なんか、如何にも血を吸ってますって感じだわね」
「ああ。毒々しい赤茶けた色合いがまた、呪われてそうだな」
「手に持っただけでぇ、人を殺したくなっちゃったりしてぇ」
「うむ。しかもそれが一刀ならば、尚のこと危ういぞ。なにせあやつは、相手が泣いて許しを請うても、情け容赦のない男じゃからな。のぉ、冥琳」
「な、なにを馬鹿なことを!」
「ほほぉ。もうらめぇ、許してぇ、などと泣き叫んでいたのは……」
「なになに、なんの話? もしかして冥琳……」
「雪蓮、時間がないんだ! さっさと戻るぞ!」
「私もぉ、話の続きが気になりますぅ」
「ちょっと冥琳、待ちなさいよ」
「まったく、単独行動は危険じゃというに……」
「祭さんが原因じゃないですかぁ、あぁん、待って下さいよぉ」
(もっとこう、キャー、一刀素敵! みたく4人に揉みくちゃにされてもいい場面なのに……)
手に持った禍々しいダガーをじっと見つめて考え込む一刀だったが、そのまま4人に置いて行かれそうになり、慌てて皆の後を追いかける一刀。
その時、彼の視界の隅を白い影が横切った。
「ヘルハウンド! ……じゃないな、なんだ?」
「みんな、待って! 一刀、どうしたの?」
「ああ、なんか変な影が。ちょっと待ってくれ……」
その影には、NAME表示もない。
気になった一刀が傍に寄ってみると、それはなんと猫であった。
(なんでこんな所に猫が?!)
とりあえず連れて帰ろうと、猫の後を追いかける一刀。
猫の移動スピードは異常に早く、たちまち一刀との間に距離が開いてしまう。
そして、猫の進行方向にガーゴイルの姿が見えた。
(しまった! 間に合わない!)
猫がぐしゃりと潰される姿を想像して思わず目を瞑る一刀。
だがガーゴイルは猫にまったく反応せず、猫も何事もなかったかのように走り去って、
彼の視界から消えてしまった。
「……なんだったんだ?」
「どうしたのよ、一体」
「ああ、猫がいたんだ。どうやってこんな所まで来たんだ?」
「……ねぇ、一刀。そのダガー、本当に呪われてるんじゃない?」
「いやいや、確かにいたんだって!」
「幻覚を見たものは、皆そう言うのじゃ」
「本当なんだって!」
「わかったわかった。確かに猫はいたんだよな。うん、間違いない。よしそれじゃ皆、BF15に戻るぞ!」
「全然信じてないじゃんかっ!」
猫はいたんだ、確かにいたんだ。
そう呟く一刀から距離を置いて、雪蓮達はBF15へと戻っていったのであった。
一刀が蓮華達と合流したのは、別れてから6時間後であった。
時刻は丁度真夜中、蓮華達がいよいよ『試練の部屋』に挑む時が来たのだ。
「あんた! 私を殺す気なの? 殺す気なのね?!」
「いや、猫耳なら大丈夫かもしれないって思って……」
「馬鹿! 一遍死んで来なさいよ! いいえ、来なくていいから死んで!」
桂花を単身で敵に向かわせようとする一刀を、皆で止めるというハプニングがあったものの、その騒ぎもすぐに収まった。
「一刀殿、我等はどうします? 蓮華殿のパーティが挑むのであれば、我等だって可能なはずですが」
「もし風達も挑むのでしたら、少し休憩させて欲しいのですよー。ずっと見張りをしていたので、風は眠いのでぐぅ……」
(え、今MPが1ポイント回復した?! これってもしかして、マジ寝なのか?)
下手にツッコミを入れて、風のMP回復を妨げることも出来ない。
一刀は動きそうになる右腕を必死に抑えながら星に答えた。
「今日を入れてまだ2週間あるんだし、1週間も続けて狩りをした直後なんだから、集中力だって切れてる。新しく覚えた魔術もまだ把握しきれてないし、一度戻って休養を取って、また1週間程度の狩りで最終調整をして、戻って休養を取って、またここに来て1日キャンプして『試練の部屋』に挑むのがいいと思うんだけど、どうだろう?」
「ふむ。まぁ我々は今日中に加護を受けねばならない理由などありませんからな。安全策が取れる状況で危険に挑むのは愚行というもの。ここは一刀殿の指示に従いましょう」
この場では『試練の部屋』に挑まず、一度戻ることに決めた一刀達。
姉との抱擁を交わし終えた蓮華が、そんな一刀の目の前に立った。
「一刀、1週間お世話になったわね。お礼を言うわ」
「こっちこそ、連携のいい勉強になったよ。それに、この1週間での蓮華達の実力の伸びは凄かった。蓮華達なら、絶対に加護を受けられるって信じてる」
「ふふ、ありがとう。貴方達に加護が授けられるのを、一足先に待っているわ」
差し出された右手を、強めに握る一刀。
そんな一刀の首が、一気に120度ほど回された。
「ちゅ、ちゅる、ちろっ、ちゅぷっ」
「む、むぐ、うむぅ……ぷはっ!」
「えへへ、一刀にキスして貰っちゃった! 好きな人のキスが貰えたんだもん、シャオ達なら加護だって絶対に貰えるよ!」
「あ、ああ、シャオ達なら大丈夫だ。頑張れよ」
(……それは奪ったって言うんだぞ、小蓮)
などと、心で思っても口には出さない一刀。
そんな気遣いの出来る一刀に、神様がご褒美をくれたのであろうか。
「蓮華、貴方も一刀にキスを貰っておいたら? ご利益があるかもよ?」
「ね、姉様! そ、そういうのは、もっと雰囲気が……」
「ふふ、やっぱり蓮華も……。私や小蓮と同じ血が流れているのだから、当然よね。それじゃ蓮華の唇は、2人が加護を無事に受けた時のお祝いに取っておきましょう」
「そ、そんな……」
「へへーん、シャオなんか加護のご褒美はベッドの上であげちゃうんだから! 約束したもんね、一刀」
「あら、それじゃ蓮華も負けてられないわね」
「も、もう、姉様っ! いい加減にして下さい!」
おっぱい四暗刻も良かったが、3姉妹大三元のテンパイの気配に、思わず背中が煤けてしまう一刀。
『還らずの扉』に向かう蓮華を見つめながら、必ずツモってやると心にき……。
「あっ! 猫っ!」
一刀は、つい叫び声を上げてしまった。
5人が入り、閉まりかけた扉に飛び込む猫の姿が一刀には見えたのだ。
「え、お猫様?! どこですか!」
「馬鹿! ダメよ、明命!」
一刀の言葉に反応して、閉まりかけの扉から体を出す明命。
一瞬明命だけが取り残されたかと思い、ひやっとする一刀だったが、雪蓮に叱責された明命は間一髪で戻ることが出来た。
「ご、ごめん。なんか猫が……」
「……本当にびっくりしたわ。まぁ、5人が無事に入れたからいいけどね」
幻覚にしては随分リアルだった気がして、首を傾げる一刀。
本当にアサシンダガーに変な呪いでも掛かっているのだろうかと、ちょっと怖くなってきた。
「それよりも一刀。貴方達は今からBF11に向かうのよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「それじゃ、ここでお別れね。……後2週間、何があっても動揺してはダメよ」
「雪蓮?」
「とにかく貴方がさっき話していた計画通りに、この2週間を過ごしなさい。いいわね?」
「……ああ、わかった」
「それじゃ、またね。貴方に加護が授かることを祈っているわ」
「またね」と言いながらも、何やら長い別れを告げているような雪蓮の言葉に、一刀は違和感を覚えた。
そしてその違和感の正体は、半日後に一刀達が迷宮から出た直後、判明したのである。
「一刀さん、皆さん。大人しくして下さい。貴方達には雪蓮さんとそのクラン員達の洛陽逃亡補助の容疑が掛かっています」
「なんだって?! ……七乃、詳しく説明してくれ」
「こんなことになって、本当に残念です。一刀さんは、我がギルドの役に立ってくれる人材だと思っていたのですが。雪蓮さん達なんかと関わるから、こんなことになるんですよ。皆さん、一刀さん達を確保して下さい!」
七乃の言葉に従って、一刀達を拘束しようと動き出す警備兵。
その中には加護持ちも混ざっており、抵抗しても勝ち目は薄かった。
この世界に来た当初の一刀であれば、無駄に逆らうことはしなかったであろう。
だが、このままでは不当に裁かれてしまうのは目に見えている。
そして、それに巻き込まれるのは一刀だけではないのだ。
仲間を横目で伺う一刀。
星達もやる気マンマンであり、アイコンタクトを交わす。
(ひとまずこの場を脱出しよう)
(どこで落ち合いますかな?)
(華琳の所しかないな。桂花もいることだし、なんとかなるだろ)
(承知! それでは、3、2……)
まさに以心伝心、この1ヶ月半で培ってきた仲間意識は、遂に言葉を超えたのだ。
しかし、星のカウントがゼロを唱えることはなかった。
噂をすれば影、一刀達が向かうまでもなく、華琳が姿を現したのだ。
「待ちなさい! その逮捕は不当よ!」
「……華琳さん、何の権利があって止めるつもりなんですか?」
「貴方こそ、何の権利があって一刀達を拘束するつもりなの? その警備兵達はギルドの手勢じゃない」
「もちろん雪蓮さんの逃亡補助の罪に決まっています。捕まえるのが洛陽の警備兵じゃなくても、相手に明確な罪があれば関係ないですよね」
「馬鹿ね。雪蓮達が逃げた時、一刀達は迷宮内にいたのよ。それがどうやって雪蓮達の逃亡を助けられるのよ。これほど確かなアリバイはないわ」
「彼等が囮となって彼女達を逃がしたんじゃないですか!」
「囮? 一刀達がいつ七乃に自分達を見張ってくれなんて頼んだの? 勝手に一刀達を警戒して雪蓮達を取り逃がしたのは、貴方の責任じゃない。一刀達にそれを押しつけるのは、筋が違うわ。これ以上この場で言い争っても無駄よ。彼等は私の家に招くわ。一刀達は剣奴ではなく探索者なんだから、ギルドに拘束する権利なんてないのよ。それでも逮捕したいのであれば、麗羽の許可を貰って来なさい。もちろん私も彼等の無罪を証明するために動くけどね」
「……麗羽様は美羽様の姉。こっちが有利に決まってるじゃないですか。まぁ、そこまで言うなら正式な手続きを取ってから伺いますよ。一刀さん、せいぜい首を洗って待っていて下さいね」
こんなベストタイミングで華琳が現れたのは、もちろん偶然ではない。
雪蓮が手を回していたのである。
(蓮華が加護を受けるのは注目を集めるためだって言ってたけど、実は違ったのか……)
一刀達のLV上げは七乃も注意して見ていたようだから、注目を集めるというのは全くの嘘ではないにしろ、別の目的があったのは確かであろう。
その目的が単なる洛陽脱出なのか、あるいは別の目的なのか。
(なんにしろ、3姉妹大三元は流局か……)
雪蓮達の事情も解っていたが、彼女達との突然の別れに落ち込む一刀。
利用された、裏切られた、という思いは、もちろん一刀の中にはない。
彼女はちゃんと華琳にフォローを頼んでいたし、別れ際の意味深な言葉はこのことを示していたのだと解ったからだ。
「今後2週間、貴方の計画どおりに」と言い残していることから考えて、雪蓮は決して一刀を嵌めたわけではないことが想像出来る。
なぜならその言葉には、どういう作戦なのかは分からないが、一刀達が順調に加護を受けた頃には、全てが解決しているというニュアンスが含まれているからだ。
(まだオーラスが残ってる! おっぱい四暗刻・3姉妹大三元のダブル役マンでキメちゃる!)
「またね」という言葉に、彼女達との再会への希望を感じる一刀なのであった。
**********
NAME:一刀
LV:16
HP:220/220
MP:0/0
WG:15/100
EXP:3034/4250
称号:連続通り魔痴漢犯罪者
STR:16
DEX:26(+6)
VIT:17(+1)
AGI:24(+6)
INT:19(+1)
MND:14(+1)
CHR:19(+1)
武器:アサシンダガー、バトルボウガン+1、アイアンボルト(52)
防具:避弾の額当て、ハードレザーベスト、レザーズボン、ダッシュシューズ、レザーグローブ、万能ベルト、蝙蝠のマント、回避の腕輪
近接攻撃力:97
近接命中率:64
遠隔攻撃力:92
遠隔命中率:62(+3)
物理防御力:65
物理回避力:81(+18)
【武器スキル】
デスシザー:格下の獣人系モンスターを1撃で倒せる。
インフィニティペイン:2~4回攻撃で敵にダメージを与える。
ホーミングブラスト:遠隔攻撃が必中になる。
所持金:14貫300銭