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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第三十六話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/20 22:42
なんだかんだ言って順調に進んでいた迷宮探索。
着実に上がっていく自身の戦闘能力。
剣奴としての辛酸もそんなに舐めていないし、己の身柄もたった3ヶ月で買い戻すことが出来た。

今回の失策は、そんな一刀の慢心こそが最大の原因であったのだろう。
一刀は諸葛亮でも荀彧でもないし、『ぼくのかんがえたさいきょうのしゅじんこう』でもない。
その身体能力の特殊性はともかく、内実はただの高校生でゲーオタなのだ。
そんな一刀が能動的に策を考えて実行に移した所で、ボロが出ないはずがない。
軍師達が幾日も掛けて全知全能を振り絞って実行するのが策であり、一刀が冷静になって1,2日考えただけの行動は、彼女達に言わせれば行き当たりばったりと同じ意味になる。

波風を立てないように、平穏無事を目標に17年間生きてきた一刀。
その『石橋を叩いて渡らない』ようなライフスタイルが、この世界に来て変わった。
積極性が出てきたことも、対人スキルが上がってきたことも、基本的には良い変化と言えよう。
だが多少人間的に成長した程度で、華琳や雪蓮と肩を並べることが出来るのだろうか。

七乃から、華琳から、雪蓮から分不相応な期待をされ、だんだん自身でもその気になり始めていた一刀。
華琳との交渉時のポカは今の所は結果的に何も問題が出ていなかったが、今回の件はそれとはわけが違う。
前者のように冷静さを失っていたわけではないし、一刀なりに考えた末の決断だった。
そして、自身の能力を過信する者が陥る罠に、一刀も例外なく引っかかったのだ。
一刀の考えは、如何にもご都合主義で甘かったのである。

本人は客観的にメリットデメリットを判断しているつもりでも、やはりメリットの方に引き摺られてデメリットの考慮を疎かにしてしまった感が否めないし、結果が及ぼす影響だけを考えていて、過程が引き起こす事態まできちんと想定出来ていなかった点などは問題外である。
着眼点は皆に一目置かれていたが、思考能力ということでは現時点では華琳や雪蓮はおろか、七乃にもまだまだ及ばないということを自覚した一刀。
一刀にとっては、今回の件はいい薬になったであろう。

だが、雪蓮達のクランにとっては『いい薬』どころの話では済まない。
顔を青ざめさせた一刀を部屋に迎え入れた雪蓮は、話を聞くと深く溜息をついて目を伏せた。

「……そう、わかったわ。連絡ありがとう」
「その、俺になにか出来ることは……」
「ないわ。貴方も七乃との賭けがあるのでしょう、そちらに注力なさい」
「でも、今回のことは俺の責……」
「一刀、はっきり言うわ。貴方に出来ることは、なにもないの。正直に言えば、このことを報告しに来るのも控えて欲しかった。今まで通り、普段通りを心がけてくれれば、それ以上望むことはないわ。……色々な無理を言って、それを快く了承してくれた貴方にこんなことを言ってしまって、悪いと思ってる。何かしないでは貴方の気が済まないということもね。でも、それを我慢して沈黙を保ってくれるのが、なによりもありがたいことなのよ」
「……解った。本当に済まなかった」

頭を下げて立ち去ろうとする一刀に、雪蓮が声を掛ける。

「ああ、一刀。言い忘れていたわ。身分解放、おめでとう! 必ずやるとは思ってたけど、こんなに早くだなんて予想も出来なかったわ。きっと貴方なら加護だって受けられる。その時は、派手にお祝いをやりましょう。私達のと一緒にね」

『私達のと一緒に』という言葉と、雪蓮の自信ありげな頬笑み。
含みのあるセリフから考えて、恐らく『祭壇到達クエスト』の前後が、作戦決行の頃合いなのであろう。
お互い頑張りましょう、という雪蓮の視線のみの言葉に大きく頷き、一刀は部屋を出た。

今の自分のすべきことは唯一つ、全力で『祭壇到達クエスト』をクリアすることだという思いを胸に秘めて。



とは言え、とりあえずやることは変わらない。
BF12で2組に分かれ、ひたすらモンスターを狩る一刀達。

「くっ!」

星の繰り出す槍が、リザードマンの頑強な鱗に弾かれた。
LV13の星でも楽勝とはいかない、それがBF12のモンスターである。
いつも通りに一刀が死角から地味なダメージを与えていき、リザードマンに隙を作ろうとした。
だが、何発か鱗を突き抜けて肉まで喰い込むようなダメージを与えたはずなのに、リザードマンの注意は星に向けられたままであった。

つまりは、ダガーと槍の攻撃力の差なのであろう。
リザードマンは一刀よりも星が驚異だと判断していたのである。

それでも星の繰り出した槍が、遂に鱗を突きぬけて肉に突き刺さった。
こうなれば、後はこちらのペースである。
敵が星に集中している分、一刀はいつもより敵に肉薄してダガーを振るい、星も俊速の槍を繰り出してリザードマンの手足を穿つ。

NAMEが赤くなったのを確認し、一刀が季衣達のパーティに次の獲物を運ぶために戦線を離脱した時には、リザードマンの姿は全身が血で赤く染め上げられていたのであった。



「ふむ、前から思っていたのですが、一刀殿。そのポイズンダガー+1の持つ効果は、敵の防御力低下ではないでしょうか? 先程の対リザードマン戦の時、最初は私の槍は鱗に弾かれていましたが、一刀殿が数回攻撃を当てて以降は、手応えがわずかに変わったようなのです」
「本当か?」
「おそらく、としか言えませぬ。が、少なくとも最初は鱗を貫けなかったのが、終盤には簡単に貫けるようになっていたことを考えると……」
「うーむ、そうかぁ。初めからそういう効果だったのかも。それで桂花に+1を付けて貰ったから、その効果が目に見えて表れるようになったってことかな?」
「ふんっ、感謝の気持ちは態度で表わしなさいよねっ!」
「ああ、ありがとうな桂花」

ネコ耳フードを被った桂花の頭を撫でようとする一刀。
そして、その手をバシッと叩き落とす桂花。

「そういう意味じゃないわよっ! 一日も早く加護を受けられるように、今以上に頑張れってことに決まってるでしょ! 脳味噌が腐ってるんじゃないかしら、まったく」
「……」

(俺、この子とは一生仲良くなれないかもしれない)

一刀は赤く腫れた手を見つめながら、胸中で呟くのであった。



迷宮探索を終えて部屋に戻った一刀達。
鎧を脱いで寛ぐ一刀に、流琉が話し掛けた。

「あの、兄様。私達、ギルドから解放されたんですよね? 依頼の続行の話は聞きましたけど、なんかあんまり境遇が変わってないような気がします……」
「部屋はこっちから頼んで使わせて貰えるようにしたんだよ。今の俺達に、引っ越しをする時間なんてないからな。……それより、何度も言うようだけど、本当にごめんな。俺が目を付けられてるせいで、賭けの件に巻き込んじゃって」
「それはもういいって、兄ちゃん。賭けに負けたって、剣奴に戻れって言われてるわけじゃないんだしさー。部屋だって別に不満ないし」
「私も不満はないんですけど、もっと劇的な変化があるって思ってたせいか、どうも違和感が……」
「まぁ、剣奴がギルドの依頼を受けている状態から、探索者がギルドの依頼を受けている状態に変わっただけだからなぁ」

それじゃ依頼が終わったら、新しい部屋を探さないとね。
私は大きいキッチンのある宿がいいな。
贅沢しちゃダメだよ、ボク達はお金を貯めてお店を開くんだから。

キャイキャイと盛り上がる2人を一刀は静かに眺めた。

別に話題に入れなかった訳ではない。
確かに宿をどうするかとか将来はどんな店を開くか、という話よりも、装備をどうするかとか将来はどんな魔術が登場してくるのか、という話題の方が一刀の好みに合致しているのだが、一刀が黙っていたのはそういう問題ではなかった。
これまではこんな話題が上ることもめったなかったが、今では将来の話で盛り上がるようになっていることに、一刀は解放された実感が湧いてきて、感慨深いものが腹の底から込み上げて来ていたのだ。

だが将来の話をするのであれば、このことはもう一度きちんと確認しなければならないと、一刀は話に割り込んだ。

「なぁ、しつこいようだけど、村に帰りたいとは思わないのか? 途方もない大金だけど、だからって諦めることはないんだぞ? それに、また売られちゃうって言ってたけど今の季衣達の実力なら大丈夫だろ」
「んー、ボク達さ、無理やり売られちゃったわけじゃないんだよね」
「重税のせいで、不作だと餓死者が出るような所なんですよ、私達の村」
「特にボクは、御飯も一杯食べちゃうからさ。厄介ものだったんだ」
「それに、実力で追い払うって言っても、実の両親に手を上げる訳にもいきませんし……」
「……ごめんな、嫌なことを聞いて」
「ううん、兄ちゃんには知っておいて欲しかったし、いいよ。それに今は幸せだしさ」
「そうですよ。それよりも、1つだけ確認しておかなきゃいけないことがありました。依頼を達成しても、兄様は迷宮に潜り続けるんですよね?」

迷宮探索でお金を儲けてお店を開く。
その話に一刀が乗ってこなかったことで、一刀が探索者を辞めたいんじゃないかと流琉は曲解してしまったのだ。
だが、それはあながち間違っている訳でもなかった。
一刀が黙っていたのは前述したように別の理由だったが、かといって迷宮探索を続けるという話にはならない。
まだ一刀には、クエストをクリアした後のビジョンが見えていなかったのである。

また現時点で迷宮探索を続けるぞ、と決意したとしても、それは容易く翻される類の話である。
なぜなら、加護神の問題があるからだ。
一刀は男であり、有力な加護神がつく可能性は低い。
仮に加護神が劉禅だったとしたら、その後に迷宮探索を行う気力を維持出来る者はそういないであろうし、そんなしょっぱい加護神では当然危険度も跳ね上がる。

逆に有力武将の加護がついたとしよう。
一刀の加護神が荀彧だったとする。
その時は、必ず華琳のクランに入らなければならないのだろうか。
ゲーム的にはそうなのかもしれないが、一方でリアルでもあるこの世界では、例え加護神が誰であっても一刀自身に選択権があるはずだ。

かといって、一方的にその流れを無視することは、ゲーム世界の破綻を意味することになるかもしれない。
チートプレイでバグが出るように、仕様にない行動を取ってしまって世界が矛盾を起こしてフリーズしてしまいました、では洒落にならない。
もちろんそんな可能性はないのかもしれないが、絶対にないとは言い切れない以上、一刀は慎重に行動する必要があると考えていたのだ。
最近慣れない交渉事でミス続きの一刀だったが、ゲーム関連のことであれば本当によく頭が回る。
そんな一刀の慧眼には、侮れないものがある。

一刀がそんなことを考えている間に、2人の話はどんどん進んでいったようで、いつの間にか星達を誘ってクランを作り、一刀がリーダーをすることにまで膨れ上がっていた。
慌ててそれを否定する一刀。
数ある選択肢の中で、今の一刀がそれを選ぶことだけはありえない。

「なんでさー。兄ちゃんは今でもリーダーじゃんか。絶対に向いてるよ」
「そうですよ、兄様。足りない所はみんなで補い合えばいいんです、大丈夫ですよ」
「いや、今回の件で俺はわかったよ。もし俺がクランを率いたとしても、誰かしらに食い物にされるのがオチだって。例え軍師がついてくれたって、肝心の大将が俺じゃ致命的な判断ミスをしかねないし」

君子危うきに近寄らず、どうしても寄るなら大樹の陰。
中途半端な真似は、ダメ、絶対。
と、ひとり頷く一刀に文句を言う季衣達。

そんな3人の言い争いは、ノックの音で中断された。

「ふふ、相変わらず仲がよろしいですな。無粋な真似をして申し訳ないが、3人とも少しだけ私に付き合って頂きたい」
「俺は大丈夫だ。季衣達は?」
「ボクも平気だよ」
「私もです」
「ではご同行を願いましょう。先日の万漢全席の店に勝るとも劣らない、最上級の店です。あ、お代は相手の奢りだそうですから、安心召されよ」

如何にも怪しげな言い方であったが、星が危険な人物を紹介するとも思えない。
相手は誰だろうと考えながら一刀は星の後をついていった。

「お久しぶりです、一刀さん。先日は無礼な真似をしたまま別れてしまって、大変申し訳ありませんでした」
「あ、一刀さんって、やっぱりあの時の一刀さんだったんだ。璃々ちゃんを保護してくれて、ありがとうね」

その店に待っていたのは、璃々の母親の紫苑と、その紫苑が所属しているクランのリーダー・桃香であった。

「紫苑殿と私は、先日知り合って意気投合した飲み仲間でして。何でも恩人の一刀殿に誤解から酷い真似をしてしまったと聞きましてな」
「一刀さんとの面会がギルドから許可されなくて、お詫びが遅くなってしまって。璃々の恩返しにと、一刀さん達をギルドから解放するためのお金を貯めていたところだったのですが、それも早々に自力で身柄を買い戻したと星さんからお聞きして、せめてその祝いをとこの席を設けさせて頂いたのです。ご迷惑だったでしょうか?」
「いや、誤解が解けたなら良かった。こっちこそ、わざわざ祝ってくれてありがとうな」

ほんわかとした空気が嬉しくなったのか、桃香が混ぜ返す。

「へぇ、一刀さんって璃々ちゃんだけじゃなく、ちゃんと紫苑さんにも優しいんだねー」
「幼女系の噂は全部嘘だから! それに見ず知らずの俺を助けてくれた桃香ほどじゃないよ。あの時は本当にありがとう。それに俺、桃香に嘘をついてたんだ。本当は剣奴なのに探索者だって。恩を仇で返すような真似をして、ごめんな」
「全然いいよー。でも、どおりで一刀さんとあれから会わないと思ったよ。もしかして避けられてるんじゃないかって、ちょっと心配しちゃった」

相変わらずポワポワとした桃香の雰囲気に、出会った時のことを思い返していた一刀。
そう言えば実家が靴屋だと言っていたことを思い出した一刀は、こっそりと桃香に耳打ちした。

「なぁ、あのピンクの髪をお団子にした方の子なんだけど、『狼の毛皮』1枚で靴が作れないかなぁ?」
「うーん、あの子なら毛皮自体は1枚で足りるけど、他にも材料費がかかるよ? 普通ので2貫、いい物で5貫かなぁ。大体評価額の半分くらいで作れると思うよ」
「それじゃ、5貫の方で頼む。毛皮は後で星から紫苑さんに届けて貰うよ」
「えー、直接私に渡しに来てよ。商店街で桃香の靴屋さんはどこって聞けば、すぐにわかるから」

初対面の時も感じたが、やたらとフレンドリーな子だなぁと思う一刀。
彼女のフランクな態度に、普段だったら躊躇してしまうような靴作成もあっさりと頼むことが出来た。

だが、そんな一刀と桃香の様子は、他者に誤解を与えてしまった。

「……うむ、まさに巨乳ホイホイですな」
「……本当に吸いついて離れないね、流琉」
「私達も風さんと一緒にがんばろ!」
「あら、私もそれなりに自信があったのですけど」

外野の言葉に、素早く一刀と距離を取る桃香。

「勝手なことを言うな!」
「なにをおっしゃる。迷宮探索で私は最高のメンマを、貴方は最高のおっぱいをと夕日に誓いあったではないですか」
「最初から最後まで、一欠片も合ってないから!」
「そうだよ、星ちゃんは間違ってるよ!」
「いいぞ桃香、もっと言ってやってくれ」
「どんなに最高のメンマでも、一人で食べたんじゃ美味しくない! 本当に最高のメンマは、みんなで食べるメンマだよ!」
「……なんという含蓄深いお言葉。蒙が啓けるとは、まさにこのこと。ささ、どうぞ一献」
「えへへ、ありがとう星ちゃん」

もはや意味がわからない。
一刀を置いてけぼりにしたまま、盛り上がる一同。

(みんなで揉むおっぱいが、最高のおっぱいなのか……)

桃香の言葉で蒙を啓き、複数プレイの境地へと足を踏み入れた一刀なのであった。



**********

NAME:一刀
LV:13
HP:178/178
MP:0/0
WG:15/100
EXP:2912/3500
称号:巨乳ホイホイ

STR:14
DEX:21(+3)
VIT:14
AGI:19(+3)
INT:15
MND:11
CHR:15

武器:ポイズンダガー+1、スナイパーボウガン+1、アイアンボルト(100)
防具:避弾の額当て、レザーベスト、レザーズボン、ダッシュシューズ、レザーグローブ、レザーベルト、蝙蝠のマント、回避の腕輪

近接攻撃力:68
近接命中率:52
遠隔攻撃力:77
遠隔命中率:50(+3)
物理防御力:51
物理回避力:69(+18)

【武器スキル】
デスシザー:格下の獣人系モンスターを1撃で倒せる。
ホーミングブラスト:遠隔攻撃が必中になる。

所持金:8貫600銭


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