この世界で最も重要なものは、他の何をおいてもまずLVである。
純粋なLV差は個人の技量や経験、そして時には優れた加護スキルすらも圧倒する。
例えば最強の加護スキル【夢想封印】を持つ恋。
もし彼女が現時点で大神官と戦えば、かなり分の悪い勝負となるだろう。
凶悪無比なレベルドレインといえども、レジストされてしまえば何の役にも立たないからだ。
そのことを鑑みると、一足飛びでのクリアを狙うのは些か無謀なように思える。
今回の攻略メンバーの中で最もLVの高い一刀ですら、未だLV28に過ぎないのだ。
一度の探索でBF30まで到達するためには、相当な無茶を積み重ねる必要がある。
しかし仮に状況が切羽詰まっていなくとも、一刀が地道なレベル上げを選択することはなかっただろう。
その正攻法こそが危ういと、一刀は考えていたからである。
今後のLV上げでは、ブシドーを始めとしたBF26以降の難敵と戦わねばならない。
一度の事故が命取りになり得る性質の悪い特殊攻撃の前では、如何な強者であろうといずれ必ず凶運の訪れる時が来る。
事故死しかねない敵との連戦など、愚策中の愚策と言えよう。
古典的迷宮RPG『クレリックリー』を全シリーズやり込んだ一刀は、そのことを良く理解していた。
では、一体どうすればよいのか。
一刀の出した答えは、以前冥琳が倒れた時に雪蓮達と挑戦した策の焼き直し、つまりBF30までの強引な突破作戦であった。
もちろん前回失敗した作戦なのだから、そのまま流用するのは心許ない。
だが今回は、当時と大きく異なる要素が一点だけあった。
「T字路の右手からブシドー、コカトリス、サイクロプス、ゴーレム、ケルベロス。左手からはサイクロプスとバグベアが2体ずつ、こっちに向かって来てる」
「仕方ない、迂回路を探そう。おっと、その前に……」
≪-赤壁-≫
冥琳が張った炎の障壁に気づき、こちらに駆け寄って来る敵の群れ。
しかし道は既に塞がれている。
悔しげに唸り声を上げるモンスター達を尻目に、悠々とその場を後にする雪蓮達。
そう、今回は冥琳の加護スキルによって、戦闘の大半を回避出来るのだ。
下の階で戦うほど、経験値は多く貰える。
それは即ち、LVアップまでに必要な戦闘回数が少なくて済むということである。
しかも道中とは違い、BF30海岸を拠点とすれば相手を選ぶことが出来る。
海岸の敵なら単体であるし、それでも危険度が高いようであれば迷宮内で戦ってもいい。
仮に敵の群れが襲い掛かって来ても、海岸へ逃げ込んでしまえば追撃を受けないことは既に実証済みだ。
もちろん肝心の冥琳が麻痺などの状態異常に陥れば【赤壁】も自動解除され、この戦術は一気に破綻するだろう。
しかしそれは事前の作戦会議で、一番の問題点として十分に打ち合わせ済みだった。
解決策は単純である。
大神官に頼み込んで、状態異常を無効化する装備『深紅の髪飾り』を一時的に借り受けたのだ。
対価こそ支払っているものの元々は無理を言って買い取った品であるし、今は重病患者もいないからと大神官も快く応じてくれた。
三十六計逃げるに如かず。
その格言を実感する一刀なのであった。
今回の作戦上、参加人数は少数精鋭である方が望ましい。
とはいえ、パーティ人数が増えるほど強くなる雪蓮と蓮華がいるのだから、上限である7人までは選出すべきだ。
しかしパーティを最大人数で作ろうとした所、ボーナスがどうにも微妙なものばかりになってしまった。
逆に半端な人数の組み合わせだと、赤い点滅で表示されるような神性能のパーティ効果が2つも発見出来た。
思春、明命、亞莎、小蓮と組んだ時の『偽乳特戦隊』ボーナスも捨てがたいが、冥琳が入れないのであれば意味はない。
結局一刀はもうひとつの組み合わせである、雪蓮、蓮華、祭、冥琳、穏の5人をメンバーに選んだ。
その決定に思春と小蓮は猛然と反発し、亞莎も負けじと鋭い視線を一刀へと送った。
中でも意外なことに、明命が最も強硬に参戦を主張した。
全裸で訓練までさせられたあげくの置いてけぼりでは、いくら素直な明命でも納得出来なかったのであろう。
だが1人でも参加を認めてしまっては、結局我も我もと続いて人数が増えていってしまう。
冷酷なようだが、決して妥協は出来なかった。
参加を諦めさせるべく、年少組を相手に真摯な説得を続けた一刀。
頑なだった明命達も、一刀の誠実な行動に段々と態度が和らぎ、出立の日には快く彼等を見送ってくれた。
最後にものを言うのは真心であるという、典型的な好例と言えよう。
「まったく、一刀はあの子達をどれだけ甘やかすのよ。服や靴、猫のヌイグルミ、モノクル、果ては最高級の絹を使ったふんどしまで、手当たり次第に買い与えるだなんて」
「仕方がなかったんだよ。というか、最初から雪蓮が言い聞かせてくれたら良かったのに……」
「こら、甘えないの。そういうことは、しっかり自分でやらなきゃね」
出来の悪い弟に向けるような雪蓮の眼差しに、なんだか照れてしまう一刀。
迷宮内であるにも関わらず緊張感が持続しないのは、良くも悪くも雪蓮クランの特徴である。
しかし常に張りつめた状態だと疲弊が激しくなり、いざという時に実力が発揮出来ないこともまた事実なのだ。
どんな時も余裕を失わない雪蓮達の様子は、一刀にとって心強いものであった。
「今頃はあやつ等も、そろそろ街を出た頃かの。はてさて、しっかりと殿の役目を果たせるものやら」
「なに、心配は無用ですよ。亞莎にはこれまで、私がみっちりと軍学を学ばせてきましたから」
「そうは言うても、嘴の黄色いひよっこ共ばかりじゃ。この肝心な時に限って、華雄もおらぬしのぉ」
ちなみに華雄は、月の官位が剥奪された時点で既に洛陽を離れ、長安の宮廷へと戻っていた。
月を見捨てたとか性格が冷たいとか、そういった批判はお門違いである。
華雄は月個人の部下ではないのだから、これは漢帝国の将軍として当然の行動なのだ。
むしろ華雄と同じ身の振り方をしない恋や霞が、官として自由人過ぎるだけであろう。
「祭、彼女達なら大丈夫よ。ずっと一緒にパーティを組んできた私が保証するわ」
「そうですよぉ。彼女達は呉の次世代を担う、とっても優秀な人材ですぅ」
和やかなムードの中でも、当然だが周囲への警戒を怠るような雪蓮達ではない。
特に優れた第六感を有する雪蓮は、敵NAMEが視認出来る一刀と並ぶほどの索敵巧者であった。
「しっ! おしゃべりはそこまでにしなさい。先になにかいるわよ」
「あれはマンティコアだな。珍しく単体だから、倒した方がいいかも」
「逃げてばかりで退屈してた所だし、丁度いいわ。冥琳、戦場を造って頂戴」
強敵と戦う場合、何よりも怖いのが新たな敵の参戦である。
だが雪蓮クランには、その心配をする必要性が全くない。
冥琳の【赤壁】により戦闘フィールドを設定すれば、それ以上の警戒をしなくて済むからだ。
蓮華達が加護を得るまで、BF15以降をたった4人で探索していた雪蓮達の実績は伊達ではなかった。
真っ先に飛び出した雪蓮が、マンティコアの顔面に三連続の突きを放つ。
その攻撃を辛うじて避けたマンティコアの隙をついて、蓮華が盾を叩きつけた。
前に一刀と武器スキルの話をした時、盾の可能性を色々と聞き込んだ蓮華。
真面目な蓮華はそれ以来、雨の日も風の日も愚直に訓練を続けていた。
未だ必殺技を得ることは出来ていなかったが、その特訓が攻撃のバリエーションを増やす結果に繋がったのだ。
ノックバックで体勢を崩されたマンティコア、その無防備な胴体に雪蓮が刃を突き立てる。
しかしマンティコアの蠍を模した尾だけはシールドバッシュの影響を受けず、連激を繰り出す雪蓮の首筋に迫った。
その瞬間、祭の撃ち放った矢が尾の先端にある毒針を折り飛ばした。
神業というべき祭の妙技に感謝の目配せをして雪蓮、そして姉に遅れじと蓮華がマンティコアへと立ち向かう。
猛然とマンティコアを攻め立てる雪蓮。
敵からの反撃を確実に潰していく蓮華。
息の合った姉妹の連携に、たちまち体中を切り刻まれたマンティコア。
受けた傷を癒そうと、不気味な老人の口が呪文を紡いだ。
そこを見計らって、戦闘開始から後方で待機し続けていた一刀が魔術を解き放つ。
≪-覆水難収-≫
ずっと精神を集中させていたのが良かったのだろう、一刀の低いINTでもレジストされた気配はない。
そして『受傷転写』さえ防いでしまえば、後は消化試合である。
ホッと息を吐いた一刀の目に、炎の壁を通り抜けようとする敵の姿が映った。
恐れていた新手、精霊ジンの参戦である。
ジンは実体を持たないため、あらゆる物理攻撃が通用しない。
それは即ち、物理障壁である【赤壁】の効果も無効化されるということだ。
ギルドで行った作戦会議では、このことが完全な盲点となっていた。
このパーティに魔術師は2人いるが、冥琳は【赤壁】の維持があるため戦闘に手出しが出来ない。
つまりジンにダメージを与えられるのは、穏だけなのである。
物理攻撃の無効なジンは、このパーティにおける最大の難敵だと当初は思われた。
「そらっ、こっちだ!」
ジンに向かって『眉目飛刀』を投げ放つ一刀。
その攻撃はもちろんノーダメージであり、逆にジンの注意を引いてしまう結果となった。
ジンの唱える高威力の魔術が一刀に襲い掛かる。
だがジンに物理攻撃が効かないのと同様、一刀も魔法攻撃に対する完全防御のマントがある。
互いに有効打のないまま、千日手の様相を見せ始めること5分。
唐突にジンが苦しみで身悶えながら、あっと言う間に消滅した。
そう、『七箭書』による呪殺効果である。
ダメ元で試した所、物理攻撃の効かない敵に対しての投擲でも書物に登録されたのだ。
近接攻撃をしてこないジンは、『七箭書』と『杏黄のマント』を持つ一刀にとってお客さんも同然だった。
こうして一刀達は、一歩ずつ確実に迷宮内を進んで行った。
BF30に到達するための障害は、難敵の存在だけではない。
トラップ類もまた、致死に至るような種類のものがこれまでよりも増えていた。
「おっと、落とし穴だ。まったく、見え見えだっての」
「……待って、一刀。その罠、何か変だわ」
「いつもの勘ってやつか?」
「それもあるけど、どこか違和感があるのよ」
天性の才能を持つ雪蓮は、それ故にフィーリングで判断する場合が多々ある。
そのため雪蓮の思考を正確に推し量ることは難しい。
しかし雪蓮のことを、彼女自身よりも知り尽くしている冥琳だけは例外であった。
雪蓮の感覚的な言葉を手掛かりに、呉の頭脳はやがてひとつの答えを導き出した。
「これまでと違って、罠があからさま過ぎるんだ。……確かに妙だな」
「一刀、もう少し周辺を探りなさい」
雪蓮の指示に従って、慎重に周囲を調べる一刀。
結果は、驚くべきものであった。
その落とし穴は、巧妙に隠された他の罠と連動していたのである。
落とし穴を回避すれば安堵で気持ちが緩むのは、人としての必然だろう。
その心の隙をついて、起点となるトラップに引っ掛かれば最後。
右往左往しているうちに、遂には落とし穴へと追い込まれてしまう仕組みなのだ。
なんという孔明の罠。
「はわわ! ご主人様、死ねば良いのに!」という朱里の声すらも聞こえてきそうだ。
だがトラップの起点さえわかってしまえば、対策などいくらでも立てられる。
「さいしょはROCK……、こいつが転がって来るとヤバいんだな」
「こんな岩なんて、私が『南海覇王』で粉々にしてやるわよ」
「いやいや、それは無茶だろ」
「私で不安なら、蓮華に盾で受け止めさせる?」
「うーん、それならいけるかも……」
「一刀、少し聞きたいのだけれども。なぜ姉様には無理で、私なら大丈夫なのかしら?」
いい笑顔で一刀へと迫る蓮華。
もちろん一刀に悪気があったわけではない。
ただ、抜群の攻撃力と脆い防御力を併せ持つ雪蓮を豹に例えるならば、あらゆる攻撃を受け止める蓮華はさながらSGGKのようだと思っただけである。
しかし蓮華にとっては、乙女のプライドに関わる問題だったらしい。
「い、いや、別に蓮華の方が頑丈だとか骨太だとかふとましいとかって意味じゃないぞ?」
「……頑丈で骨太でふとましいって、一刀は私のことをそういう風に思ってたのね」
「だから、そうじゃないんだって!」
「へぇ、じゃあ一体どう違うのかしら?」
「おい一刀、いつまで遊んでいるんだ。単に【赤壁】でルートを塞げば済む話だろう」
「そうですよぉ。それに蓮華様もぉ、あんまりいちゃいちゃされると目に毒ですぅ」
「なっ、いつ私がそんなことをしたって言うのよ!」
「お主ら、いい加減にせい! ほれ、さっさと先へ進むぞ」
命懸けの道中でも決して殺伐とせず、賑やかに探索を進める雪蓮達。
互いに身内意識の強い雪蓮クランだからこそ、平時と変わらぬ雰囲気を保てるのだろう。
危険極まりない迷宮内にも関わらず、まるで家族と過ごしているような安心感に包まれる一刀なのであった。
BF25を出立して以来、夜営を張らずに探索を続けること丸2日。
初日に一昼夜を掛けて、祭壇からBF25まで一気に突破した疲れも残っていたのだろう。
いくら小休止を挟んでいたとはいえ、雪蓮達は疲れ切っていた。
特にその休憩中すらも【赤壁】を展開せねばならなかった冥琳は、もはや限界に近い。
セオリー通りに考えるなら、今すぐにでも数時間単位の睡眠を取るべきであった。
しかし無論のこと、冥琳が寝ている間は他のメンバーでキャンプ地に寄り付く敵を排除せねばならない。
そして現在地はBF29、既に雪蓮達の実力を超えるフロアなのだ。
冥琳抜きで敵に挑むこと、それは複数を同時に相手取るという意味である。
仮に2体以上のブシドーを含むモンスター達が襲い掛かってきたことを想定した場合、全員無事に敵の群れを撃退出来る確率は、恐らく半分を下回るであろう。
「冥琳、しっかり捕まっててくれよ」
「うわっ、ちょっと待て、一刀!」
ここが正念場だと、一刀は冥琳を背負った。
長身ながらもスラッと引き締まった肉体は、綿毛のように軽い。
RIKISHI並の筋力を持つに至った一刀にとっては、負担など無いも同然である。
むしろ背中に感じる柔らかな2つの温もりが、一刀の眠気を吹き飛ばしてくれた。
一方の冥琳も、驚きと照れが疲労を忘れさせたのだろう。
ゆらゆらと不安定になっていた【赤壁】が、その勢いを取り戻した。
しかし、その効果は一時的なものに過ぎない。
一刻も早くBF30まで辿り着き、海岸で休息を取る必要があることには変わりないのだ。
そもそも不完全な迷宮の地図を頼りに、僅か2日でBF29まで到達出来たことが奇跡に近い。
このまま都合良くBF30への階段が見つかるとは、とても思えない。
(それでも、このまま終わるわけにはいかないんだ―――!)
知らず知らずのうちに手を強く握り、背負っている冥琳の尻に指を喰い込ませる一刀。
そんな一刀の強い想いが、幸運を招き寄せたのか。
一刀達の目の前に階段が姿を現したのは、冥琳が尻の痛みに苦情を訴えた直後のことであった。
ところが、奇跡の大盤振る舞いもそこで種切れとなった。
「海岸が……、ない……」
「なんだと?!」
「魚がサーチに引っ掛からないんだ!」
BF30にある最後の扉を開けるだけでクリアになる可能性は、漢帝国軍によって数年前に否定されている。
『試練の部屋』のように、ラスボス的な存在がいるのは間違いない。
しかし海岸がなければ、そこを拠点にLV上げを行う作戦が根底から覆されてしまう。
『帰還香』による撤退か、このまま玉砕覚悟でボス戦へ突入か。
残された道は、2つに1つである。
「退却だ、一刀」
「そんなっ! 折角BF30まで辿り着いたんだぞ?!」
「お前も本当は、既に分かっているのだろう? 唯でさえ最後の戦いには実力が不足しているんだ。休憩もなしに挑んだ所で、勝率など無いに等しい」
「……そうだな、冥琳の言う通りだ。雪蓮、洛陽に戻ろう」
「ふふっ。2人共、気が早すぎるわよ。私が3つ目の選択肢を用意してあげるわ」
望外の幸運こそ終了したものの、まだ雪蓮には残されていたものがあった。
それは、今は亡き母親の愛情である。
地図には記載されていない貴重な情報が、遺言と共に伝えられていたのだ。
「最後の扉がある部屋にモンスターは出現しない。つまりBF20の小部屋と同じような場所ってことね」
「しかし、そこまでは随分と距離がある。残念だが、やはり今の状態で辿り着くことは難しいぞ」
「……この際だ、一気に駆け抜けよう」
地図上の距離では、最短ルートを普通に歩いたとして2時間。
戦闘を行いながらだと少なく見積もって倍、【赤壁】で戦闘を避けようとすれば、そこから更に倍の時間が掛かる。
今の一刀達に、そんな余力はない。
だが、まともに探索を行わないのであれば話は別だ。
大陸でも有数の実力を持つ超人の集まりである雪蓮クラン。
全力で走ると迷宮の床を靴跡状にへこませてしまう彼女達ならば、10分でゴール出来るはずである。
「敵は?」
「無視して突っ切る!」
「罠は?」
「強引に突破する!」
これまでと違ってBF30の地図が充実していたことだけが、この策を辛うじて現実的なものとする唯一の救いであった。
安全地帯という重要拠点があるため、漢帝国軍は大勢の死傷者を出しながらも周辺の偵察をしっかりと行ったのだろう。
逆に言えば、それ以外の面では無謀以外の何物でもない、極めて杜撰な作戦である。
だが威勢の良い一刀の答えは、疲労の極限状態であった皆の瞳に輝きを取り戻させた。
気力が充実し始めた彼女達に越えられぬ壁など、この世には存在しない。
穏の唱えた【其迅如風】を合図に、一刀達の生死を賭けたレースが始まった。
先頭は雪蓮、その後に蓮華と祭が並び、更に穏が続く。
冥琳を背から降ろした一刀は、彼女と共に殿の役割だ。
この配置は、主にバグベアの全体麻痺を始めとする状態異常対策である。
『深紅の髪飾り』を装備している冥琳と、麻痺などに特殊な耐性のある一刀が、『銀の短剣飾り』を手に後方へ控えることで皆をフォローしようと考えたのだ。
前からは新手が、後ろからは振り切れない敵が、一刀達に襲い掛かる。
「ちっ、マンティコアの毒針を避け損なうとは。儂も歳かのぉ」
「それだけ軽口が叩ければ十分です! 毒は治ったのですから、さっさと走って下さい!」
猛毒を受けて倒れ伏す祭に、冥琳が『銀の短剣飾り』を突き刺し。
「危ないですぅ!」
「穏?!」
「蓮華、振り返らない! 前方の敵に集中しなさい!」
壁から突然噴き出してきたガスに気づかぬ蓮華を庇って石化した穏は、一刀が担ぎ上げ。
「後ちょっとだ! 冥琳、頑張れ!」
「わかった、わかったから尻を押すな!」
疲労でスピードの落ちて来た冥琳をサポートし。
「こっちよ、一刀! 早く!」
「後ろにブシドーが迫ってるわ! 一刀、飛びなさい!」
ブシドーの居合に髪を数本斬られながらも、地を這うような猛烈ダッシュしゃがみジャンプで、虹色に輝く入り口を通り抜けた一刀。
異質な空気の漂う大部屋、中央には絶え間なく沸き出る泉、そして正面には荘厳な作りの巨大な扉が悠然とそびえ立っていた。
**********
NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:28
HP:527/450(+77)
MP:30/0(+30)
WG:20/100
EXP:1081/9500
称号:天の御使い
パーティメンバー:一刀、雪蓮、蓮華、冥琳、祭、穏
_ ∩
( ゚∀゚)彡
パーティ名称: ( ⊂彡
| |
し⌒J
パーティ効果:近接攻撃力+100、遠隔攻撃力+100、魔法攻撃力+100
STR:44(+15)
DEX:60(+26)
VIT:27
AGI:47(+15)
INT:28
MND:21
CHR:54(+17)
武器:新・打神鞭、眉目飛刀
防具:蛮盾、勾玉の額当て、昴星道衣、ハイパワーグラブ、極星下衣、六花布靴・改
アクセサリー:仁徳のペンダント、浄化の腰帯、杏黄のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、奇石のピアス、崑崙のピアス
近接攻撃力:309(+42)
近接命中率:139(+22)
遠隔攻撃力:171(+15)
遠隔命中率:128(+29)
物理防御力:245
物理回避力:145(+35)
【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。
カラミティバインド:敵全体を、一定時間だけ行動不能にする。
ホーミングスロー:遠隔攻撃が必中となる。
【魔術スキル】
覆水難収:相手の回復を一定時間だけ阻害する。<消費MP10>
【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。
所持金:312貫