吸血鬼異変。後にそう呼ばれる異変も終わり幻想郷が今までと同じような日々を取り戻したそんなある日。俺はあれから一度も見舞いに行ってなかった影月の見舞いへと向かった。レミリアはルーミアに対して頭を下げてくれた・・・それなら、影月にも同様の対応を取るだろう。だから、紅魔館へ足を運ぶように言うつもりで人里までやってきたのだが・・・・・・「・・・・・・なんだ、この桃色空間は?」「あ、旦那・・・ちわっす」黒陽が何か言ってるようだがまったく耳に入らない。俺の目の前では影月とリグルが同じテーブルに着き、そこに用意されている食事をリグルが影月の口へと運ぶところだった。あまりの光景に目を疑った俺は一度視線をはずし深呼吸をし、心を落ち着けた後に二人の方へ目を向けると、「はい、影月さん。あ~ん」「あ~ん」更に濃い桃色だった。人が来たことにも気づかず、二人は自分達の世界に浸っている。俺はそのままその場を立ち去ると、家の外に出て眉間を押さえながらどうするべきか考え始めた。すると、そんな俺の肩が背後から叩かれる。振り向くと、そこには黒陽がいる。黒陽は何も言わず、あきらめた様に首を振ると少し先の茶屋を指差した。「(そうか、おまえもか・・・)」それだけで何となく理解できた俺は首を縦に振って答えると、黒陽と共に茶屋へと向かい、黒陽と共に同じ物を頼んだ。「「店主、出来るだけ渋い茶を頼む」」まずはあの甘い空気でムカムカする胸を何とかしよう。・・・青年飲茶中・・・・・・それから茶屋で3杯4杯とお茶を飲みやっと落ち着いた俺は、早速先ほどの光景に関して尋ねようと黒陽へと声をかけた。「それで、あれはなんだ? 店主、もう1杯頼む」俺は黒陽に尋ねながらも新しいお茶を注文する。まだ、あの甘い空気のダメージが残っている・・・今にも胸焼けを起こしそうだ。そして、黒陽もまた、顔を顰めている。「俺にも1杯お願いします。んで、旦那。影月のことですよね?」「現状それ以外何かあるのか?」「まぁ、そうですよね」そう呟いた黒陽は困ったように苦笑いを浮かべると、自分が見ていた影月からリグルへの最後の告白を語った。語られた内容を簡単にまとめると、目覚めてある程度元気になった影月はとうとうあきらめる決心が付いたのかこれが最後と前置きをして告白したそうだ。影月は半ば諦めていた様だが、返ってきた返事は了承。「そして二人ははれて恋人同士・・・と言うことか」「そうなんですよ」「まぁ、改めて聞いてみると当然と言えば当然だな」「?? それはどういう事です? 旦那」俺の言葉を聞いた黒陽は首をかしげながら尋ねてきた。それに対して俺は、自分の考えを語る。「元々、リグルも満更ではなかったんだよ」「そうなんですか?」「あぁ、しかし最初の出会いがあれだったせいで簡単には素直になれなかったんだ」「そう言えば俺らって間接的に言うとあの子に殺されたんでしたね」「まぁ、結果的には人間やめて生きてるけどな。とりあえずそれは置いておくとして、素直になれなかったリグルも今回の件で身を挺して自分を守ってくれた事を切欠に、影月を惚れ直して素直になったんだろうよ」「なるほど、納得です・・・・・・ただ・・・」「あぁ・・・・・・」俺の説明に納得した黒陽は一度頷き返事をするとその手に新しくおかれたお茶を握った。対する俺も同じ様に握る。そして、「「あの桃色の空気だけは勘弁してくれ」」同じ言葉を同時に言い捨て、お互いにお茶を一気に呷る。「「んく、んく?! げほっ! げほっ!!」」予想以上に渋いお茶に、黒陽と同時に咽かえる。しかしながら、その渋みのおかげでやっと落ち着いてきた。「ふぅ、黒陽・・・この後どうする」「どうするって・・・・・・俺は家に戻るつもりですけど?」「あそこにか?」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」俺の言葉に黒陽は顔を俯かせ、影を背負うほどに落ち込んでしまった。どうやら、あの二人がいることを忘れていたらしい。この短時間で忘れられるとは・・・・・・流石黒陽だ。もしかしたら、あえて忘れていたのかもしれないが・・・・・・まぁ思い出したようだから関係ないだろう。そう考えた俺は落ち込んだままの黒陽に向かって声をかけた。「それで、結局どうするんだ?」「そういう旦那こそどうするんですか?」「俺か? 俺はこの後も特に予定は無かったからな、とりあえずは知り合いの所に遊びに行こうかと思ってるんだが・・・・・・付いてくるか?」「お供します」尋ね返された俺は適当に考えた予定を黒陽に教えると、どうせだからと思い、そのまま誘ってみることにした。その誘いに目の前の黒陽は二つ返事で了解の意を返してくる。そうと決まれば早速行くことにするか。そう考えた俺はお茶の代金を払うと、黒陽と共に人里を離れ一路、竹林を目指した。てくてくてくてく・・・・・・男二人で竹林までの道のりを進んでいく。その間に黒陽から驚くべき事実が伝えられた。「っは? 魔理沙ちゃんが家出した?!」「うっす。お嬢、何を思ったのか突然魔法使いになるって言い出して・・・・・・当然、親父さんが許すはずも無くそのまま大喧嘩。挙句の果てに霧雨の親父さんがお嬢を勘当しちまって・・・・・・」「なんとまぁ・・・って、だとしたら早く探さないと!」「あ、それでしたらどこに居るかは分かってるんで安心してください」「そうなのか?」「うっす」黒陽は俺からの問いかけに力強く頷くと言葉を続けた。「お嬢は今、魔法の森に住んでます」「魔法の森って・・・一応尋ねるが、大丈夫なんだろうな?」「勿論。以前俺達が住んでいた仮住まいを改装してそこに住んでますよ」「あぁ~、あれか」黒陽の言っている仮住まいとはリグルを撃退した晩に行ったあの小屋の事だ。確かに、あそこは魔法の森ではキノコの影響が殆ど無いから住むには問題ないだろう。俺はそう考え納得すると、ふと疑問に思ったことを黒陽に尋ねた。「そういや、魔理沙ちゃんはなんでまた魔法を?」「さぁ? 俺にもわかりません」「そっか」ふむ、少々気になりはするが・・・「まぁ、魔理沙ちゃんが自分で決めたんならいいか」「そうですね」そう結論付けた俺は黒陽と共に頷き笑いあっていると、竹林の入り口が見えてきた。「ん、見えてきたな」「見えてきたって・・・竹林ですか?」「おう」黒陽からの問い掛けに言葉短く答えた俺は更に話を進める。「あそこに知り合いが住んでてな、そこに顔を出そうと思ってるんだよ」「竹林に人が? へぇ~、あの辺りに人が住んでるなんて初めて知りましたよ」「ちなみに妹紅の家も竹林の近くだぞ」「ほほぉ~・・・と言うことは妹紅さんのとこじゃないんですね?」「まぁな・・・・・・よく考えてみると、お前にとっても懐かしい相手かもしれないな」「っへ? 旦那、何か言いましたか」「いや、なんでもない。さて、さっさと行くとしようか」「うっす」よくよく考えてみれば黒陽は元輝夜の屋敷の警備兵だ。こいつにとっても懐かしい再開かと思い、つい口から漏れてしまったが幸いなことに聞こえはしなかった様子。こういった事は突然教えてその様を観察した方が面白いものだ。その時の様子を頭に思い浮かべるだけで顔がニヤつくのが止まらない。すると、黒陽がそれに気づいたのか怪訝な表情で声をかけてきた。「旦那? どうしたんですか? 変な顔をして」「ん? あぁ、なんでもないぞ」「はぁ?」黒陽は納得していなかったようだが・・・まぁ、気づかれてはいない様だし問題ないだろう。とは言え、気付けたとしたらそれはそれですごい事だがな。俺は黒陽からの疑問に対し、特に答える事無く、そのまま強引に竹林の中へと歩みを進めた。その様子に黒陽も慌てて後からついてくる。それから10分ほど歩いただろうか。永遠亭までの道のりは半分ほど過ぎたところだろう。今回は何となく、今まで使ったこと無い道を進んでみたが・・・一応は迷う事無く進めているようだ。・・・・・・・・・だと思う・・・・・・だといいな・・・迷ってないよな?そんな風に考えていると、黒陽から声を掛けられた。「そういや旦那、結局これから行くとこってどんなところなんですか?」「ん~・・・まぁ、それは行ってみてのお楽しみだな」「はぁ・・・」俺からの返答に黒陽は生返事で答えた。ふむ、これなら少しは教えた方がいいだろうか?そう考えた俺は、一歩踏み出した状態で振り返り黒陽に話しかけようとして、「それじゃあ、わぁ~?!」「旦那!!」なぜか逆さ吊りにされてしまった。どうやら先ほどの一歩が見事に罠を踏んでしまったようで片足にはロープが結ばれその先は天高く竹の先端に伸びている。そこに慌てて黒陽が近寄ってきた。「旦那! 待っててください、今降ろしますkぶぎゃ!!」「黒陽?!」逆さまになった視界の上、つまりは地面に黒陽が消えた。よくよく見てみると落とし穴にかかったようで、黒陽はその中で目を回している。誰だ、こんな所にはた迷惑な物を作ったのは。そう考えながらロープをはずそうと身を捩っていると草むらから人影、兎妖怪がその姿を現した。「よっしゃ! 馬鹿な人間、捕ったど~~~~~~~!!」うん、なんか知らんがあいつは泣かす。絶対に泣かしてやる。一方その頃・・・・・・「イナバ~、いないの~? イナバ~~~!!」永遠亭の姫君、蓬莱山輝夜はあまりの暇だったので、イナバで遊ぼうと永遠亭内を歩き回っていた。しかし、先ほどから呼んでいるものの肝心のイナバが現れないため不満が一方。そこへ、ようやく哀れなイナバ、鈴仙がやってきた。「は~い、如何したんですか姫様?」「やっときたわね・・・私が呼んだら呼ばれる前から居るぐらいじゃないとダメじゃない!」「んな、無茶な・・・」「何か言ったかしら?」「いえいえ! 何も言ってませんよ!!」「・・・・・・まぁいいわ」「っほ」口答えをしたものの輝夜に逆らえるはずもない鈴仙は何とか誤魔化す事が出来てホッと一息。その様子を輝夜は横目で見ながらも未だ解決していない疑問を鈴仙へとぶつけた。「それよりも、他のイナバは如何したのよ?この私が呼んでいるのに誰も出てこないなんて・・・ありえないわよ」「兎達ですか? それでしたらてゐが竹林偵察に連れて行ったり畑を耕しに行ったりと、永遠亭にはほとんど残ってませんよ」「そうなの? いつもなら掃除係とかがいる筈だけど?」「さぁ? 今日は全部てゐが連れて行ってしまいましたからね」「さぁ? って・・・使えないイナバね」「姫様、それはあんまりです」輝夜の我侭は今に始まったことではないのだが、使えない宣言までされた鈴仙は滝のような涙を流しながら落ち込んでしまった。しかしながら、輝夜がそんなことを気にするはずも無く次の疑問を鈴仙へ投げかける。「それなら永琳、永琳は如何したのよ? 泣いてないでさっさと答える!」「うぅ・・・師匠ですか? 師匠でしたら八意ルームで何か作ってましたよ」「八意ルームで?」「はい、八意ルームです」輝夜の言葉に鈴仙は重く静かに答えた。そして二人はそろって目を廊下の先、八意ルームへと向ける。八意ルームからはなんと言うか・・・黒っぽい瘴気のようなものが溢れていた。「「・・・・・・ごくり」」つい生唾を飲んでしまう輝夜と鈴仙。そのとき二人の心は一つになった。「「(しばらく永琳(師匠)には近づかないでおこう・・・)」」そうして輝夜は鈴仙をからかいながらも、永琳に気づかれないように静かに遊び始めるのだった。<おまけ>魔法の森、霧雨魔理沙の家「ふぅ、疲れた・・・」「ふふふ、その割には楽しそうな顔じゃないかい」「それは勿論。あれほど恋焦がれ、憧れた魔法に手が届くんですよ・・・楽しいに決まってるじゃないですか」「そうかいそうかい。しかし、気を付けるんだよ。あんたは所詮人間、他の人間よりも魔力が少し多い程度の人間だ。あたしが教えてやるのは魔法の基本だけ、あんたの魔力だけじゃ簡単な儀式一つで動けなくなっちまう」「分かってますよ。だからこうして森のキノコを集めて、煮詰めて、実験して、煮詰めて、抽出して・・・・・・まぁ、色々やって魔力を集めてるのですわ」「ふふふ・・・分かってるならいいんだよ。もうじきだ・・・もうじきあたしが動くときが来るよ。そのときは魔理沙、あんたも・・・・・・」「うふふ、分かってますわ。この力、必ずや『魅魔』様の役に」霧雨魔理沙の黒歴史開幕----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書き+次回予告どうも、お手玉の中身です。ネタ帳を無くした・・・・・・やべぇ。ただでさえ最近忙しいと言うのに、がんばって考えたネタを無くすとかorzまぁいい・・・ネタ帳が無くなったのなら新しく作ればいいのだから。っと、言うわけで、これからもがんばるぜ。では、次回予告です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------あら、この部屋に来るなんて・・・何か用かしら? なるほど、次回予告ね。愚かな兎は名乗ることすら許されずにその口を封じられ姫様は相変わらず暇を持て余しては因幡で遊ぶそこにやって来たのは、遠く古くからの遊び相手と見知らぬ懐かしい者次 回 「さて、この薬の被検体を探しましょうか」 あの台本からこんな予告になるなんて・・・流石は永琳様 by.名も無き兎