「はふっ・・・うまっ・・・もぐっ・・・うまっ・・・」「ルーミア、もっと落ち着いて食え。こんなに汚して・・・ほら、顔出して」「ん、うん・・・ありがと。もぐっ・・・うまっ・・・はふっ・・・うまっ・・・」「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」朝日に照らされる紅魔館。その一室では朝から豪華な朝食会が開かれていた。参加者は長いテーブルの上座からレミリア、フランドール、咲夜、向かいに座る形でアスカ、ルーミア、茜、才、塁、田吾作である。ちなみにパチュリーと小悪魔は図書館に引き篭もってしまったようだ。ただ、レミリアが音頭を取って始まったはいいが、ご馳走の数々を次々と頬張っていくルーミアに圧倒されたレミリアたちは未だ食事に手をつけずに呆然としている。そんな状態のレミリアたちを尻目にアスカは茜へ話しかけた。「それにしても茜、昨日、倒れてるのを見たときはほんとに焦ったぞ」「ん? んく・・・あははっ、心配をお掛けしたみたいで・・・ありがとうございます」「なに、平気ならいいさ。才と塁も・・・その様子を見る限りだとぜんぜん平気みたいだな」苦笑交じりにそう告げるアスカの視線を辿ってみるとそこにはルーミアに劣らぬ勢いで食べ続ける才と塁の姿があった。と言うよりも食べているのは才だけで塁はそれを世話しているようだったが。そこまで確認したアスカはそれなり食べてくれているレミリアとフランドールを眺める。「どうだ、レミリア? 口に合うか?」「まぁ、食べられないほどじゃないわね・・・・・・ワインには合わないでしょうけど」「・・・(不味いと言われるよりはいいか)・・・・・・フランドールはどうだ?」「っふぇ? なに?」「聞いてなかったのか・・・ご飯は美味しいかってね」「うん、おいしいよ」アスカの言葉にレミリアはやや顔を顰めながら、フランドールは笑顔を作りながら答えた。もっとも、フランドールの場合はよほどひどい物でもない限りは何でも美味しいと答えそうであるが。そしてアスカは、最後にあまり箸の進まない、と言うより一口も食べていない咲夜を眺め口を開いた。「ふん、食が進んでないようだが和食は口に合わないか? 犬」「っふ、あなたの作った食事のまずさに辟易してるだけですわ・・・人外」お互いに言い合った瞬間、場の空気は凍りついてしまった。後に茜と田吾作はこう言う。「「あの時は何かがひび割れる様な・・・そんな音を聞いた気がしました(したでやす)」」そんな凍てついた雰囲気の中、二人は更に言い続ける。「ほぅ・・・どうやら普通の食事は犬には高尚過ぎたようだな」「人外の作った下衆な食事が高尚とは・・・笑えるわね」「その下衆な料理もお前の隣の嬢ちゃんはおいしそうに食べているが?」「妹様はお優しいですから、人外の作った料理でもその慈悲で食べて差し上げてるだけよ・・・何を勘違いしてるの?」「ほぅ」「ふん」場の空気は更に冷たくなり、一速触発の気配を作り出していく。そんな中、今まで上座で黙っていたレミリアが口を開いた。「二人ともやめなさい。朝から何をやってるの」「しかし、お嬢「一度しか言わないわよ、咲夜」っ! わかりました」「アスカも」「・・・っち、はいはい」レミリアの一声で場の空気は取り払われ茜と田吾作はホッと一安心である。しかしながら、その後も咲夜とアスカがお互いを睨みあうのは止まらない。まぁ、それもしかたのない事だろう。咲夜はアスカに半ば殺されかけた上に、レミリアの命令とは言え本来なら自分の仕事である朝食の準備を奪われた事から。アスカにしてもそう簡単に恨みや嫌悪感が消えるはずも無いためにお互いが憎みあう関係、見事な犬猿の仲が完成してしまったのだ。蛇足ではあるが、実際の料理スキルでは1段2段どころではないほどに咲夜の方が上であることをここに明記しておく。そうこうしているうちに食事も終わりさっそく田吾作による授業が始まろうとしていた。授業の参加者は当初の予定通りにフランドール、そして特別参加のルーミア、才、塁の4人。見学者は美鈴を除いた残りのメンバーである。ちなみに美鈴だが目覚めるやレミリアの命令ですぐに門番の仕事に戻されてしまった。なんとも哀れなことである。それはさておき授業が始まり田吾作が口を開いた。「今日から能力の制御を教えるために特別講師となった田吾作でやす。分からない事があったらどんどん聞いて欲しいでやすよ」「「「「は~い」」」」「良い返事でやす。さて、能力の制御とは言いやしたが人から教えられて一朝一夕でできれば誰も苦労しないでやす・・・ここまでは良いでやすか?」「うん」「そーなのかー」「「はい」」「となるとまずは基本中の基本から覚えることが大事でやす」「田吾作さん、基本中の基本って何ですか?」「塁ちゃん、良い質問でやすよ。能力制御の基本は自分の能力を自覚することでやすが、の前に自分の能力に飲み込まれないようにする必要があるでやす。それこそが一番初めの能力の制御につながるでやすよ」「能力に飲み込まれる? 田吾作さん、どういうこと?」「そうでやすな・・・例えば、武器を自由に操れるから調子に乗って猪突猛進になったり「っう!」、自分の出した能力なのに自分が不利になったり「うぎゅ!」、調子に乗ってなんでも壊してみたくなったり「っあ!」、こんな所でやすかな」田吾作のなんとなく思い当たるような言葉に才、ルーミア、フランドールはそれぞれ図星をつかれたような呻き声を上げた。そんな3人にあえて気づかないふりをしながら田吾作は話を続ける。「ならばどうすれば能力に飲まれないか・・・・・・それは、落ち着くことでやす。落ち着いて、冷静になれば猪突猛進になることも、調子に乗ることも無くなり能力に振り回されなくてすむでやす」「そーなのかー」「「「へ~」」」「さて、肝心の落ち着く方法でやすが興奮してるところにいきなり落ち着けと言われても早々落ち着けるものではないでやす。そこで、普段から精神的な鍛錬を積んで落ち着けやすい心を作るでやす!」「「「「そ、そーなのかー」」」」握り拳を作り、それを震わせながら力説する田吾作に生徒4人は声を揃えて答えた。その後も何だかんだで続く授業を尻目に見学者達はと言うと・・・・・・「なるほど・・・なかなか面白い話ね」「分かるんですか? パチュリー様」「何をするにも落ち着き、冷静さと言うものは必要なものよ。しかも妹様の感情をコントロールする手法にもなる・・・考えられた内容だわ」「へぇ~、パチェがそう言うんなら大したものなんでしょうね」「えぇ・・・と言うより、レミィも一緒に学んできたらどうかしら?」「っふ・・・・・・いまさら私が何を学ぶことがあるというの? そうよね、咲夜」「お嬢様・・・まったく持って、その通りです」「ふふふ・・・だそうよ、パチェ」「はぁ、まぁいいけど」田吾作の授業に冷静な考察を入れるパチュリーとそれに感心する小悪魔。そして、なぜか偉そうなレミリアとそれに従う咲夜。どうでもいいことだが、感情のコントロールと言う面ではレミリアも学ぶべきだとパチュリーは考えている。続いて、もう一組の見学者達は・・・・・・「へ~、これはためになりますね、アスカ様」「確かにな」「せっかくですからアスカ様も学んできてはどうですか?」「いいよ、何となくいまさらだし・・・何よりめんどくさい」「そうですか」田吾作の授業に感心している茜とアスカ。感情のコントロールが必要だと言う点ではレミリアもアスカも同レベルである。さて、肝心の授業内容は精神鍛錬、精神統一を実際にやってみる事となっていた。「では、これより実際に精神統一をやってみるでやす。あっしはこれでも、この手の訓練は何度もやってきたでやすから監督もしっかりできるでやすからね」「「「「はーい!」」」」「では、全員目を閉じて集中するでやす。時間は30分、一番長くできた子にはご褒美においしいキュウリを進呈でやす」「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」田吾作はそういいながら緑色のおいしそうな輝きを放つキュウリを掲げて見せた。とは言え、それで喜ぶの河童ぐらい。ルーミアでさえ呆れて言葉をなくしている。そして、見学者達もまた一様に呆れている中、田吾作は更に言葉を続けた。「そして・・・もしも、もしもでやすよ? 5分以上、集中できない子がいやしたら」「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」「この、灰色のキュウリを食べてもらうでやす!」「「ちょっと待て(待った)~~~!!」」「何でやすか? アスカ様に茜さん」田吾作が灰色のキュウリを掲げた瞬間、アスカと茜は同時に叫んでいた。その叫びに田吾作は眉を顰めているが二人にとってはそんなことを気にしている場合ではない。「いや、何でそこでキュウリなんだよ?」「おいしいでやすよ?」「ば、罰みたいなのでおいしかったらダメだと思うんですが」「そんな?! あっしにはまずいキュウリなんてだせやせんよ!」「「そういうことじゃなくて!!」」アスカと茜が言いたいことがうまく伝わらず地団駄を踏んでいる。ちなみに、ほかの見学者達、レミリア達は少し変わったキュウリ程度の認識しかなく、フランドールとルーミアにとってもその程度の認識しかなかった。ただし、才と塁だけはアスカと茜の様子からそのキュウリに対して警戒心を抱いている。そして、結局とめることはできずにそのまま授業は続行されたのだが・・・・・・フランドールがそんなに長い時間おとなしくしている筈がなかった。「つまんない・・・・・・」「フランドールちゃん?」「こんなので能力うまく使えるようになるわけないじゃない!!」「まずい・・・フラン!!」開始3分としないうちにフランドールの癇癪が爆発し右の手のひらを眼前に広げた。レミリアが止めようと動き始めているが間に合いそうにも無い。「壊れちゃ「っめ!」いた~?!」しかしながら、レミリアが間に合わずとも既にアスカが動いていた。おでこを抑えた状態でうずくまるフランドールと驚きに目を見張っている見学者達を尻目に、アスカはデコピンを放った体勢のまま田吾作へと話しかけた。「田吾作、油断しすぎ」「っう、すまないでやす・・・あんまりにも良い子だったからつい・・・」「まぁその気持ちは分からんでもないがな」そうやってアスカが田吾作と話しているとフランドールが再起動を果たした。「っつぅ~~~、何するのよ! 痛いじゃない!!」「それは俺が言いたいよ。お前田吾作に何するつもりだったんだ?」「何って・・・ぎゅっとしてドカーン」そう言ったフランドールはアスカの目の前で手を握ったり開いたりしている。しかしながら、アスカにしてみれば何のことか分からずに困惑するしかない。まぁそれでも・・・・・・「まぁ田吾作に何かしようとしてるのは分かった・・・お仕置きだ」「だめでやすよ! あっしはなんとも無かったでやすから」「俺が間に入ったからだろ? こういう時はきちんと叱らないとダメなんだよ」そう言ったアスカが田吾作に向けていた目をフランドールへ戻すと、フランドールは田吾作にしたようにその手のひらをアスカに向かって広げている状態だった。「ふん、お仕置きなんてされないもんね~。壊れちゃえ!」「フラン!!!」そこでやっと我に返ったレミリアはフランドールを止めようと飛び出すがまたしても間に合わない。フランドールの手は今度は誰に邪魔されることも無く握り締められる。しかし・・・・・・そこには何の変化も無かった。「っへ? あ、あれ? っぎゅ! あれ?? っぎゅ! ドカーン!! あれ???」フランドールは何の変化も無いアスカに混乱し何度も手のひらを開いては閉じてと繰り返している。対するアスカはフランドールが何をやりたいのかがサッパリ分からなかったがとりあえずはお仕置きを執行することにした。「はい、口開いて~」「はが?!」アスカは田吾作から灰色のキュウリを受け取るとフランドールの頬を親指と人差し指で挟むようにして口を開かせ、「はい、よく噛んで~」「あぎゅ、もぎゅ」その口にキュウリを入れると無理やり口を閉じさせた。そして・・・・・・「っっっ☆□●♪σ×?!?!?!?!」紅魔館にフランドールの声にならない絶叫が響き渡った。一方、目覚めていきなり仕事に送られた美鈴さんは仕事である門番(居眠り)に勤しんでいた。結局侵入者がどうなったかは聞いていないものの、同じ様に寝かされていた茜達の状態と偉大なるスカーレット計画中止の知らせから特に問題は無いだろうと予測した美鈴は、心安らかに仕事(昼寝)に従事している。そう、唐突に紅魔館から悲鳴が聞こえてくるまでは・・・「っっっ☆□●♪σ×?!?!?!?!」「っふにゅ?! な、何ですか?! また侵入者!」突然の悲鳴に安らかな眠り(仕事)を邪魔された美鈴はすぐさま館へと駆け出した。そして館の扉を開け放つと、「大丈夫ですか!!」そこには、「こ、これは・・・」泡を吹いて気絶するフランドールの姿が。そのフランドールを泣きながら介抱するレミリアと咲夜と小悪魔。フランドールほどの吸血鬼を気絶させるキュウリへの興味で目を輝かせるパチュリー。フランドールがこぼしたキュウリから距離をとって抱き合い、体を震わせている茜と才と塁とルーミア。灰色のキュウリを食べながら何やらぶつぶつ言っている田吾作。頭を掻きながらばつの悪そうな顔をしているアスカ。美鈴にしてみればなぜこうなったと言わんばかりの混沌とした状況が作られている。そんな中、扉を開けた状態で呆然としている美鈴の存在にアスカが気づいた。「ん? おぉ、美鈴」「っへ? あれ、アスカさん? 何でここに??」「まぁ昨日からちょっとな・・・・・・そういや今までどこに? 茜達と一緒にいなかったから心配したぞ」「私の仕事は門番ですから起きた途端にお嬢様からって、昨日ってことはアスカさんが侵入者だったんですか!」「まぁな。それよりも門番? メイドは休みだってのに・・・大変だな」「いやいや、そうでもないですよ」アスカの言葉に美鈴は照れた様に頭を掻きながら笑って答えた。久方ぶりの再開だと言うのになんとも味気の無いやり取りではあるが・・・・・・まぁ、この二人ならこんなものだろう。その後、結局フランドールが目を覚まさなかったため、今回の授業はここまでとなってしまった。大人しかったフランドールの突然の暴走。それに対し田吾作が落ち込むかとアスカ達は心配したが、それは杞憂に終わった。田吾作曰く、「全部が全部、はじめからうまくいくとは思ってないでやすよ。むしろ、何も無い方が怖いでやす。まだまだ時間はあるでやすから、これからゆっくりと教えていくでやすよ」との事だ。ちなみに、気絶していたフランドールだが目覚めていらい灰色の細長い物体・・・・・・つまりは灰色のキュウリなんだが、これを見るたびに悲鳴を上げて逃げるようになってしまった。よほど、ひどい味だったのかしっかりとトラウマになっているようだ。そのおかげか、田吾作のその後の授業は軒並み成功を収めていくようになる。しかし、その成果がはっきりと分かるようになるまではまだまだ時間がかかりそうではあるのだが・・・。ちなみに、余談ではあるのだが狂気の少女から狂気が無くなる頃には幾つのトラウマができるのか、このときはまだ誰も知る由は無かった。<おまけ>紅魔館からの帰り道「そう言えば田吾作」「なんでやすか? アスカ様」「ついノリと勢いで協力しちまったが・・・・・・なんでフランドールに肩入れを?正直な話、お前があそこまですることは無いと思うんだが」「そのことでやすか・・・・・・そうでやすね。一言で言ってしまえば『同情』、でやすかね」「同情って・・・今日の様子見ただろ? 同情だけならもうやめたほうがいいんじゃないのか?」「そうなんでやしょうけど・・・」「けど?」「あの子を見ていると、昔のあっしを思い出しちまって・・・・・・」「昔?」「そうでやす、能力や状態はあの子のほうがひどいかも知れやせんが・・・それでも、一人ぼっちだったと言うことはあっしと同じでやすから」「ん~、昔やら能力に関しては聞き流すとして・・・一人ぼっち『だった』?」「そうでやすよ。あっしにはアスカ様、フランちゃんにはこれからあっしが付いているでやす。だから、一人ぼっちだった・・・でやすよ」「そうか・・・・・・そうだ、ちょうどいい機会だから言っておくんだが」「なんでやすか?」「そろそろ様付けで呼ぶのやめないか? どうにも違和感が残ってな」「あっしにとっては普通だったでやすし、いまさら変えるとそっちの方が変でやすよ」「そうか?」「そうでやすよ」「そっか・・・まぁ、お前がそれでいいならいいさ」「でやす。・・・・・・これからもよろしくでやすよ、アスカ様」「こっちこそよろしくな、田吾作」<おまけ2注意:このおまけは笑いの為だけにあり、おぜう様や瀟洒(笑)を貶すものではありません。>少し未来の紅魔館「咲夜・・・分かっているわね」「はい、お嬢様。あの男による妹様への悪しき所業がこんなにも・・・・・・」「ならば始めなさい!!」「はい! どこからとも無く手に入れたこのカメラで・・・・・・」「いや~~~?! キュウリ怖いぃ~~!」「あぁ、フラン・・・あなたは何でそんなに可愛いの」「瀟洒(笑)フラッシュ! はぁはぁ・・・・・・涙目の妹様・・・はぁはぁ、瀟洒(笑)フラッシュ!」そうして今日もまた紅魔館の床は紅く染まり、少女の悲鳴とシャッター音が鳴り響くのだった。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書き+次回予告どうも、お久しぶりなお手玉の中身です。SW中の夜行バスはかなりつらいものがありますね。渋滞とか渋滞とか渋滞とか・・・・・・・・・っと、そんなどうでもいい事は置いておくとしまして・・・前回のリクエストの結果、Neet・花畑・旧作が選び出されました・・・何気にNeetの人気が凄まじかった。では、次回予告・・・誰こいつ?----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------?「やった・・・やったよ! ついに新キャラに僕は成れたんだ!」!「やったね、ぴょ○吉君」?「誰だよそれ! ○ょん吉って誰だよ!!」!「まぁ、そんな事より次回予告だよギザ○坊や」?「さっきと名前違うし!!」!「何だかんだで終わった吸血鬼異変」?「そうなると気になってくるのが被害者達」!「とりあえず様子を見に人里へ」?「そこで目にするものは?!」次 回 「ケロちゃんの移動は可愛いけどプレイヤー泣かせすぎる」 固めまでもっていけないorz by.kami