紅魔館レミリアの部屋。そこには先ほどのメンバーに少女を加えた計5人がテーブルに着いていた。ちなみに小悪魔はパチュリー達の看病のため、寝室に残ってもらっている。「それじゃあまずは・・・」そうやって話し始めたのは紫だ。「そこの子に自己紹介をしてもらいましょうか。一応、私から名乗らせてもらうとして・・・私の名前は八雲紫よ」「あっしは田吾作でやす」「んで、俺がアスカな」「私は「「「お前はいいよ(でやすよ)!!」」」ひどいっ!」「いや、レミリアはさっき名乗りあっただろうが・・・今はそっちの嬢ちゃんに聞いてるんだから」「それで、お嬢ちゃんのお名前は何でやすか」紫に続き、アスカ、田吾作が自己紹介を行いレミリアを黙らせると田吾作が少女に向かって話しかける。少女ははじめこそ驚いたように目を丸くしていたが段々とその目を輝かせると頬を紅く上気させながら勢いよく口を開いた。「私は『フランドール・スカーレット』! ねぇ、あなたたち館の外から来たの? ねぇねぇ!」そうして口を開いた少女、フランドールは一気にまくし立てる様に話し始めた。正直、最初の名前ぐらいしかまともに聞き取れなかったアスカ達は一様に目を丸くしている。そんな中、横からレミリアがストップを掛けた。「フラン、そこまでよ」「でもお姉様「そ・こ・ま・で・よ!」・・・ぶ~」フランドールはレミリアの言葉に反発しようとしたが結局無理やり止められてしまい不満げに頬を膨らませるとテーブルに突っ伏してしまった。その後、レミリアは困ったような表情を作るとアスカ達へ顔を向け話を進めた。「ごめんなさいね、妹が驚かせてしまって・・・それよりもアスカ」「ん?」「貴方に感謝の言葉を。貴方のおかげで大切な親友を助けることができたわ・・・・・・本当にありがとう」「あ、わたしからも・・・パチュリーを助けてくれてありがとう」レミリアはさらに頭を深く下げながら、そしてフランドールが慌てたように顔を上げ満面の笑顔でそう告げた。それに対するアスカは照れ臭そうに頬を掻きながら「どういたしまして」とだけ短く返すと、そのままそっぽを向いてしまった。次に、その様子を笑いながら眺めていた紫が口を開く。「それで、レミリア。結局その子は何者なの? どうもあなたの妹のようだけど?」「ふぅ、この子はフランドール・スカーレット・・・察しの通り私の妹よ。そう言えばフラン、何でここにいるの? すぐに部屋に戻りなさい!!」「嫌よ! 何でいつまでもあんな地下室に閉じ込められないといけないの?! もう嫌だよ・・・もう一人は嫌だよ!!」レミリアの言葉にフランドールは首を激しく振りながら拒絶の返事を返した。そして、その内容を聞いたアスカと田吾作、紫は一様に眉をひそめるとレミリアを見つめる。それに気づかないレミリアは口調を厳しいものにしながらフランドールへ命令した。「フラン、部屋に戻りなさい!」「お姉様・・・・・・」レミリアに命令されたフランドールは一瞬だけビクリと体を震わせ、顔を悲しげに俯かせた瞬間、田吾作がレミリアへと話しかけた。「その言い方はあんまりじゃないでやすか、レミリアさん? しかも妹なのに地下室に閉じ込めるなんて・・・酷過ぎるでやす!」「確かにな・・・たかが部屋から出たぐらいの罰で地下室送りはないと思うぞ?」「アスカ、勘違いしてるようだから言っておくけど・・・・・・罰だから地下室じゃなくて、フランの部屋が地下室なのよ」「「?!?!」」「あまり・・・穏やかじゃないわね」レミリアからの返答で驚きに固まってしまったアスカと田吾作に代わり今度は紫が話を進め始めた。「どういう事か、説明してもらえないかしら?」「冗談じゃないわ! これは私とフラン、スカーレット姉妹の問題よ!!」そうやってレミリアと紫が論争を進める中、フランドールはその顔を悲しそうにゆがめていく。それを見た田吾作は何かを決心したように頷くと、紫とレミリアの論争にその口を挟んだ。「二人ともやめるでやす! 説明だとか姉妹の問題なんてどうでもいいでやす!レミリアさんも姉というならフランドールちゃんをしっかり見るでやす! 今にも泣きそうじゃないでやすか!!」その田吾作の言葉にレミリアはハッと気づいたように振り返った。そして、今にも泣き出しそうでそれを必死に堪えているフランドールを見つめると、その顔を後悔に歪ませていく。田吾作はそんなレミリアへさらに話しかけた。「レミリアさん、話してはくれないでやすか? もしかしたらあっしらでも協力できるかもしれないでやす。でやすよね、アスカ様」「まあな」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」田吾作とアスカの言葉にレミリアはしばらく黙ったまま顔を俯かせると、意を決したように顔を上げ口を開いた。「分かったわ・・・話を聞けば少しは納得もできるでしょ。フランはね・・・・・・フランは能力に引きずられすぎるのよ」レミリアが話を進める中、フランドールはさらに顔を俯かせるがそれをレミリアが振り返ることはなかった。「フランの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』、その能力の強力さに誰もが祝福したわ。でも、長続きはしなかった。制御の未熟な能力は文字通り、ありとあらゆるものを破壊したわ。だから当時幼くしてスカーレット家の当主となっていた私はフランを、妹を地下に幽閉したのよ。分かったでしょ? 全てを破壊してしまうフランは外に出てはいけないのよ!」そのレミリアの言葉を聞いた瞬間、先ほどまで俯いていたフランドールが突然顔を上げたかと思うと親の仇を見るような目でレミリアを睨みつけ、何かをしようと手を上げた瞬間、レミリアがすばやく振り返りその勢いのままフランドールを殴り飛ばした。フランドールは後ろへ二度、三度ほどバウンドするとピクリとも動かない。「ごめんなさいね、フラン・・・・・・」レミリアはポツリと一言だけ呟くとそのまま何事もなかったかのように席に戻った。その様子に、田吾作はすぐさま噛み付いていく。「っちょ?! 何をやってるんでやすか! いきなり殴り飛ばすなんて・・・あんまりでやすよ!!」「さっきの続きなのだけど・・・」「あっしの話を「いいから聞きなさい!」っ?!」「私が好きでフランを、あの子を殴ったと思ってるの! ふざけないで!」田吾作の言葉にレミリアは牙を剥き、睨みつけながら答えた。さすがの田吾作もこれには黙らざるえない。そして、アスカがいまだ怒気に体を震わせているレミリアに話の続きを促した。「んで、話の続きというのは?」「・・・・・・ふぅ、そうね。悪かったわね、田吾作・・・・・・完全に八つ当たりだったわ」「いえ、ただ説明をお願いしたいでやす」「えぇ。さっきも話したとおり、私はフランを地下室に幽閉したわ。ここからは私の罪なのだけど・・・・・・その時から私はフランを恐れてしまったの」話の続きを促されレミリアは一度、田吾作へ謝罪すると天井を仰いで語り始めた。「私は自分の未熟さを棚に上げてあの子の力を恐れて遠ざけたわ。そして、やっとあの子と向かい合えるほどの自信を付けた時にはもう・・・・・・あの子は狂ってしまっていた」「狂った・・・でやすか?」「えぇ。長い時の中、地下室で孤独な生活。それはあの子の心を壊し狂気で満たすには十分すぎる時間だったのよ。だから、私にはあの子を止める方法は力尽くしか思い浮かばない・・・これがあの子を殴った訳よ」そこまで言い切ったレミリアは悔しそうに唇をかみ締めながら顔を俯かせた。そして、それと同時に場の空気も重くなっていく。すると、その空気を振り払うかのように田吾作が立ち上がり口を開いた。「だったら・・・だったらあっしが教えるでやす! あっしが能力の制御を教えるでやすよ!!」その言葉にレミリアはあきれたような返事を返した。「貴方、私の話を聞いてたの? そんなこと貴方がしたらフランの狂気に殺されるわよ!」「大丈夫でやすよ」「何でそんな事が言えるのよ!」レミリアは自分の言葉に胸を張って答える田吾作に怒りを感じ、衝動に任せるまま叫んでいた。「なんせアスカ様が一緒でやすから。でやすよね、アスカ様?」「っま、しょうが無いわな。ついでにレミリアに恩を売っておけば何かと都合が良さそうだしな」「素直でないでやすな」「っさいぞ、田吾作」「貴方たち・・・・・・」アスカと田吾作のやり取りを聞いたレミリアは唖然と口を開いた状態で固まり、その様子を紫が面白そうに眺めている。そして、紫はアスカに向かって口を開いた。「でもアスカ、あなたはそれで良かったの? レミリアはあのメイドの主人よ」「うっさいぞ、紫。その件に関してはレミリアに直接頭下げさせるからもういいんだよ。それに、あの子の能力・・・聞いたとおりの能力だとすれば狂気のままだと流石にまずいだろうからな」「そうね・・・ならこの件はあなたに「任せとけ」・・・えぇ、お願いするわ。レミリアもそれでかまわないわね?」「ちょっと、八雲紫? 貴方本当にそれで良いの? フランにかかったらそこの二人は3秒で挽肉になるわよ」「だそうだけど?」「アスカ様がいるでやす」「むしろ3秒で挽肉にする」「それは駄目でやすよ!!」「駄目か?」「駄目でやす!」「・・・だそうよ?」「分からないわ・・・・・・貴方たちが何を考えているのかさっぱりよ」3人のやり取りを聞いたレミリアは頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。そうやってレミリアが突っ伏している間に田吾作とアスカはフランドールの傍まで行き揺り起こし始める。幸いと言うべきかレミリアに殴られたフランドールに大きな外傷は無く、ただ気絶しているだけのようだ。「フランドールちゃん、起きて欲しいでやすよ」「ん・・・うん・・・・・・」「ほれ起きろ、嬢ちゃん」「う、うん・・・・・・誰!!!」「おぉ、起きたでやす」「え? え? ここは?? 確かわたしは・・・そっか、お姉さまに叩かれて・・・・・・」目覚めたフランドールは最初こそ混乱したものの、すぐに気絶していた原因を思い出すと、また落ち込んでしまった。そこへ田吾作が話しかけ始める。「そんな落ち込んでるフランドールちゃんに朗報でやす。レミリアさんが能力の制御ができれば外に出てもいいと許可をくれたでやすよ」「っへ? え? ほ、ほんと・・・ねぇ、お姉様、ほんとにいいの?!」田吾作の言葉にフランドールはすぐさま姉のレミリアに確認を取り始めた。フランドールの後ろでは田吾作とアスカが許可するように身振り手振りで指示している。「え、えぇ・・・かまわないわ」そして、そのとおりにレミリアが許可をするとフランドールの顔には満面の笑顔が広がった。「や、やったーーー!!」「おっと、能力を制御するのが先でやすよ?」「分かってるわよ・・・・・・でも、どうやったらいいのかな」「大丈夫でやす。あっしとここにいるアスカ様の二人で明日から教えてあげるでやすよ」「よろしくな、嬢ちゃん」「わぁ~~~! うん!!」一度は不安げになった顔も田吾作とアスカの言葉を聞くと再び笑顔に変わり、その光景にアスカ、田吾作、紫の3人は顔を綻ばせた。そして、レミリアもまた自身の顔に笑みが浮かぶことを自覚するのだった。<おまけ>一方そのころ「あ、あれ・・・ここは?」目が覚めた私が布団から身体を起こして辺りを見渡すと、段々と眠る前のことを思い出してきた。「そっかー、わたし変なのに襲われてがんばって家まで逃げてきたんだった」となると身体が・・・痛くない?ん~痛くないのはアスカが治してくれたのかな?そこまで考えると急にお腹の虫が鳴き始めた。「っう、お腹すいた~、アスカ~お腹すいた~」わたしは布団からはいずり出ると居間まで移動した。居間には誰も居らずテーブルの上においしそうな晩御飯がある。お腹もすいてるし・・・・・・「いただきま~す」わたしはすぐに食べ始めた。どれもこれもおいしいな~。わたしはすぐにアスカに教えようと思って口を開いた。「ねぇアスカ、これおいし、い・・・よ?」あれ? アスカは??いつもならわたしと一緒に食べてるのに・・・いないのかな?そう考えたわたしは残りのご飯を食べだした。でも、今度は・・・「おいしいのにおいしくないよ・・・アスカ~」おいしかったご飯がぜんぜんおいしくなくなっちゃった。アスカ・・・どこ行ったのかな?一人家に残ったルーミア----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。吸血鬼異変はこれにて終了ですが、紅魔館の話はもう少し続いたりします。どうでもいいことなんですがおまけ話のルーミアが今回一番難しかった。では、次回予告です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------っは?! パチュリー様の汗を拭かないと・・・っへ? 次回予告ですか?一夜が明けて朝日に照らされる紅魔館朝の喧騒を眺めながらも思い出すのは昨晩のことそこにはとある事実から絶望した一人の主人公が次 回 「計画立案:フランドール育成計画」 最後のタイトルは完全に適当です by.kami