此処は何処だ?目が覚めてみると其処は小屋の中だった。起き上がって周囲を見渡してみても見覚えの無い小屋の中。何の変哲も無い小屋は端に積まれている肥料ぐらいしか目立つ物は無い。俺は確か、幽香と全力での撃ちあいで・・・・・・其処から記憶が途切れてるな。多分、気絶したのを幽香が回収してくれたようだろう・・・きっと。となると此処は・・・・・・ある程度の推察を自分の中で纏めた俺はすぐ近くの扉から外へ出た。扉の外は予想通り、太陽の畑。どうやらこの小屋は幽香の仮住まいのようだ。立派な館があるのだからこんな所に住まなくてもいいだろうに。そう考えていると向日葵畑から聞きなれた声が聞こえてきた。「あら、目が覚めたの」そうして向日葵の中から姿を現したのは案の定、幽香だ。幽香はいつもどおり日傘を差しながらその顔に笑みを浮かべて口を開いてきた。「身体のほうは大丈夫かしら?あなたの事だからあまり心配はしてないのだけど」「普通に心配してくれよ。まぁ、傷らしい傷も残ってないが・・・何かしたのか?」「私の薬を少しね」「流石は最強、痒い所にまで手が届くな」「ふふっ・・・当然」幽香は当たり前だというように自慢気に笑っている。そうして軽く雑談を交えた後に、俺は別れを告げ妖怪の山、自分の家へと向かった。流石に昨日の疲れは取れきっていなかったので家でゆっくり休むことにした。歩くこと数十分・・・・・・凄く見覚えのあるものが道のど真ん中に鎮座していた。真昼間だというのに其処だけ光が入り込まない様になっている真っ黒い塊は・・・・・・ルーミアか?そう考えていると塊の中からお決まりの言葉が聞こえてきた。「あなたは食べられる人類ね?」少し内容は変わっているが・・・・・・相変わらず足りない子だった。そもそもこんな道の真ん中で誰が引っ掛かるのやら・・・・・・ルーミアは尚も同じことを言い続けるのでとりあえず声を掛けることにした。「あなたは食べられる人類「食べれないぞ~」へ?」「だから食べられないぞ~っと、久しぶりだなルーミア。何でここに居るんだ?」「その声は・・・・・・食べられない人間のアスカ!」「・・・いやな覚え方だな、おい。まぁいい、もしかしてまた倒れてるのか?」「そーなのだー・・・・・・もうだめだー」「っへ?ちょ、おい?!ルーミア?」ルーミアが話し終わると黒い塊はどんどん収縮して行き、ルーミア自身を残して消えてしまった。残っているルーミアは目を回して倒れている。どれだけ食ってないんだよ・・・・・・俺は仕方ないとため息を一つ吐き、ルーミアを担ぎ上げ家へ連れ帰った。・・・青年誘拐中・・・・・・・・・本作2度目「はふっ・・・うまっ・・・かふっ・・・うまっ・・・かゆっ・・・うまっ・・・」「最後のなんか違うぞ、ルーミア」「はふっ・・・うまっ・・・かふっ・・・うまっ・・・かゆっ・・・うまっ・・・」「聞いちゃいねぇ・・・」あの後、とりあえずルーミアを家まで連れ帰り適当に寝かせて飯を作るとルーミアが涎を垂らしながら席についていた。とりあえずできた物を与えてみると凄まじい勢いで食べること食べること・・・・・・見てるだけで腹が膨れそうな光景だった。倒れるほど食べてないというのは分かっていたがこれほどまでとは・・・既にルーミアの左右には高く積み上げられた皿の数々と食べ終わった骨の残骸などしか残っていない。そうして最後の一皿を食べつくすとやっと落ち着いたのかお腹を押さえながら一息吐いた。「けふぅ~、ごちそうさま~」「よくもまぁ・・・そんなに腹が減ってたのか?」「うん。一月ぐらい水しか飲んでなかった」「おいおい・・・」凄まじい食生活だ。と言うよりもあの能力を何とかするべきだと思うのは俺だけなんだろうか?そうやって呆れているとルーミアの様子がなにやら変わってきた。「ん?どうした、ルーミア」「う・・・ん・・・・・・ふぁ~~。おやすみ・・・」「っちょ?!ルーミア!!」「ぐ~・・・すか~・・・」食べてすぐ寝やがった!!いすに座った体勢のまま背もたれに完全に体重を預けルーミアはそのまま眠ってしまった。その幸せそうな顔がとても憎たらしい。とは言え、流石に叩き起こすのも可哀想なのでそのまま布団に運び寝かせておくことにした。なんと言うべきか・・・・・・ルーミアは昔と変わらず天真爛漫のままである。そうしてルーミアを寝かすと誰もいなかったはずの隣から声を掛けられた。「あら、あなたまた女の子を誘拐したの?」「またってなんだ、またって・・・というか紫、何処から人の家に入ってるんだよ」「私のスキマからよ。それにあなたは昔、私の事を誘拐したじゃない?」「ふ・ざ・け・る・な!それが助けた恩人に言うことか?」「さぁて、どうかしら」スキマから上半身だけ出してそう告げた紫は可笑しそうに笑い出した。こいつ人のことを何だと思ってるのやら。笑い終えた紫は更にルーミアのことをたずねてきた。「それで、実際この子はどうしたの?」「ちょっとした縁があってな。行き倒れてるのを見つけたから拾って帰ってきた」「ふ~ん、縁ねぇ・・・・・・」そういった紫は意味深な瞳でルーミアを眺めている。その時、俺は紫に用事があったことを思い出した。「そういや紫」「ん?何かしら」「ちょっと相談ごとがあるんだが・・・今、時間良いか?」「暇じゃなかったらここにいないわよ」「それはそれで酷いんだが。まぁいい、ここじゃ何だから居間まで来てくれ」紫の発言に少し傷つきながらも相談をするため居間へ俺と紫は移動した。居間は先ほどのルーミアの食事後のままだったので一応それだけはその場で片付け。紫へお茶を出してから話し合いを始めた。「なんと言うか・・・お疲れ様?」「あんがと。さてと、相談事って言うのは人里で聞いた話が元になってるんだが」「人里の話?」「あぁ。話っていうのは妖怪が人里を襲わなくなったて言うことだ」「その件ね。何か問題があるのかしら?妖怪達には少し不満かもしれないけど幻想郷のバランスを守るためには必要なことよ」「それは分かるんだが・・・・・・ちょっと嫌な予感がしてな」「・・・気のせいじゃないの?」「だといいんだが」そう告げた俺は自分で用意したお茶を一気に飲み干した。紫は俺の話を聞いてから、何かを真剣に考えているようだ。人里での件、人里の人間をむやみに襲わないようにするのは確かに必要な措置だと俺も思う。思うんだが・・・・・・このままだと何か大変なことが起きる、そんな気がしてならなかった。俺は更に話を進めようと紫に声を掛けた。「実際、今のところ何か問題は起こってないのか?」「無いわ。それどころかそれなりに教養がある妖怪なら人里で買い物なんかもできるようになったから、かなりうまく行ってるわよ」「そうだよな・・・俺も何が引っ掛かってるのやら」「まぁいいわ。そういうことなら私のほうでも少し調べてみるから」「頼む」結局、嫌な予感に関しては結論が出ないまま紫に調査してもらうことになった。場の空気は重く沈んでいる。このままでは注ぎ直した茶も不味くなりそうなので話題を変えることにした。「なぁ、話は変わるんだが」「へ?何かしら?」「式神が式神を作るって、ありなのか?」「藍と橙のこと?実際に作ってるし、ありなんじゃないの?」「そんなものなのか?」「ん~、式神を作る力とその式を組めるだけの知能があれば無理じゃないし・・・力、知能、両方とも九尾の狐である藍は式神を作るには十分あるから」「なるほどな~」そうやって改めて話を聞かされると藍の事を見直さないといけないな。ふと紫のほうを見てみればなぜか胸を張って自慢げにしている。「何やってんだ紫」「あなた、いま藍の事見直してたでしょう」「まぁ、その通りだが」「私はそんな九尾の狐を式神にしたのよ」「・・・・・・・・・ないな」「ちょ?!何よその反応は!!」「いや、なんか紫のイメージって基本だらけてるか怠けてるかしかないからさ・・・藍みたいな式神を作ったって言うのはちょっと・・・・・・」「んな?!いいわ、ちょっと待ってなさい!いま藍を連れてくるから。藍~!ちょっと出てらっしゃい。ら~ん!!」そう告げた紫はスキマ空間を広げその中に頭を突っ込んで藍を呼び始めた。待つこと数分、別のスキマから藍となぜか橙が落ちて来た。藍と橙はなぜ自分達がここにいるのか分からないといった表情で混乱しているようだ。とりあえずこれだけは言っておかないといけないだろう。「なぁ紫。普通に呼んだんなら自力で来てもらえばいいんじゃないのか?いきなりスキマで強制的に呼び出すとかちょっと酷いだろ」「いいのよ。一応声は掛けたし、藍は私の式で橙は私の式の式だからいいのよ。それよりも、藍!」「は、はい?!なんですか紫様」「あなたの主人は誰?」「っは?誰も何も紫様ですが??」「じゃあ、あなたの式を作ったのは誰?」「紫様ですが・・・・・・アスカ様、紫様は何がしたいんですか?」「ちょっとな・・・俺が藍の式を作ったのは本当に紫なのかって聞いたもんだから」「なるほど・・・」俺が藍に返事を返したところで紫は満足したのか再び自慢気な様子で口を開いてきた。「どうよアスカ。藍の式を組んだのは私だって分かったでしょう」「そうだな~。すごいな~。ゆかりんちょうすご~い」「何でそんな棒読みなのよ!!!」「そんなことないよゆかり~ん」「き~~~~~!!」俺からの返答にさっきまで自信に溢れていた紫が一転して地団駄を踏み出した。藍はその光景に呆れ、橙は唖然としている。からかっといてなんだが・・・・・・やはり藍の式を組んだのが紫とは思えない一幕だった。<おまけ 文々。新聞>※噂のあの人の評価☆月×日本日は私、清く正しい射命丸文が胡散臭いと名高い妖怪の賢者より噂のあの人、Aさんの実力のほどを取材してまいりました。妖怪の賢者は私の取材に対し以下のようなご返答を下さいました。あの人の実力は? Aに関して? そうねぇ、弱くは無いわね。 私の命令を忠実にこなしていた藍、あぁ式神のことね・・・藍を倒すぐらいなんだから単純な正面衝突なら私ともいい勝負になるわよ。それでは負ける可能性も? ありえないわね。 そりゃ油断でもしてれば負ける可能性も有るでしょうけど、本気でやりあったら間違いなく私が勝つわよその根拠は? 能力の相性ね。 Aの能力は自分が見えない攻撃に対しては絶対的に有利だけど言い換えれば見える攻撃は全部自分で対処しないといけないの。 その点、私の能力ならAの手が届かない距離からやりたい放題。 これで負けたら逆に恥ずかしいわよ。なるほど、では率直にAさんの実力は? 勝負事に関しては相性によるとしかいえないわね。 相性次第では多分神様にも勝てるでしょうけど・・・場合によってはあきらかに各下の相手にも負けるんじゃないかしら? まぁ、身体能力が随分と高いからそんな事はめったに無いでしょうし・・・あえて評価するなら上の下辺りじゃないかしら?ほほぉ・・・ちなみにですが私の実力はどう思いますか? あなたの事? ・・・・・・強いと思うわよ、天狗ですし。 幻想郷においても十分上位の強さですわ。そうですか、ご協力ありがとうございました。以上、清く正しい射命丸文が噂のあの人の評価を胡散臭い妖怪の賢者に確認した結果です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。選挙に行ったら道に迷った・・・台風は近づいてくるしorz前回の後書に入れた咲夜さんの設定ですが、これは紅魔勢を出す際に一緒に出したかったので普通の人間よりも長寿設定が使いたかったんです。ここまで言うと次の話がばれそうで怖いぜ・・・では、次回予告です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------わは~、かゆ・・・うま・・・なのか~寝床を手に入れたのだ~メガネが店を建てたのだ~幼女が現れたのだ~兎が泣いたのか~次 回 「アスカのご飯は美味しいのだ~」 ・・・・・・こいつに次回予告をさせたのが間違いだった by.kami