竹林に佇む屋敷の一室に4人の人物が机を囲むようにして座っている。一人はてゐ。その顔からは何で自分此処にいるんだろうと今更疑問に思っているようだ。一人は永琳。訪れた男がはるか昔に生きた男だと知りそれを警戒するように見ている。一人はアスカ。色々と思うことはあるものの、いつもどおりその場その場で対応しようと考えているようだ。そして最後は輝夜。いい加減誰も話し出さないことにイラついてきたのか口を開いた「さて、説明してもらいましょうか。アスカ」それは静かながらも有無を言わせない宣告だった。しかしながらそんなことはアスカだって言いたい言葉であった。アスカは茶を啜りながら輝夜へ目を向けると思ったままに言い返した。「それはこちらの言葉だ輝夜。そっちこそなんで幻想郷にいるのか説明してもらおう」「そ、それは・・・・・・あ、あれよ、月にいるのは飽きたから「はいはい、妄想お疲れ~」・・・・・・何よその反応」「お前なぁ・・・・・・まだ月の姫とか意味の分からないこと言ってたのか?」「な、私はれっきとした月の姫よ!妄想なんかじゃないわ!!」「夢見てる人はみんなそういうんだよ輝夜」「何その生暖かい目は!やめて、そんな目で見ないでよ!やめなさ~~~~~い!!!」・・・・・・そういえばアスカは月の都をまったく信じてなかったのだった。さて、そろそろアスカの視点に戻るとしよう。はてさて、如何したものか。俺の目の前では駄々っ子のようにわめく輝夜がいる。だからといって月の都なんぞ幾らなんでも信じられるものでもない。そう考えていると横から永琳が声をかけてきた。「えっと、アスカさん。月の都は本当にあるんですよ?姫様が其処の姫だったと言うのも事実ですし・・・・・・」「だそうだが、えっと・・・・・・てゐで良かったよな?如何思うよ?」「ん~・・・・・・姫様やお師匠さまの考えにはいつも驚かされるけど月の都はね~」「「イナバ(てゐ)!裏切る気!!」」「へ?!そんな気は無いですよ!!ただ証拠が見たいな~って・・・ね~」「だよな~」どうやらてゐとは良い酒が飲めそうだ。人の考えていることを察してすぐに乗ってくれた。どうやら見た目相応の歳という訳ではない様だ。そんなことを考えているとなにやらぐずる声が。見てみれば輝夜が涙目になりながらこちらを睨みつけている。まずっ・・・・・・・・・やりすぎた。そう思っても時既に遅く、輝夜が泣き出してしまった。「何で信じてくれないのよ~~~。あずがのばが~~!!」「あぁ、姫様泣かないで。アスカさん早く謝って、姫様に謝ってください」「こりゃアスカが悪いね。早く謝りなよ」「て、てゐ?!この裏切りものめ!!」「ん~?聴こえんな~~」「っく・・・・・・あ~、輝夜。俺が悪かった、月の都はあるんだよな?立派なんだよな?」「ぐすっ、ぐすっ、ちゃんと信じる?」「あぁ、信じるとも。だから泣かないでくれよ」「それなら良し」輝夜は永琳に宥められながら俺の謝罪でやっと泣き止んだ。そうして落ち着いた頃を見計らい俺は再び輝夜へと問いかけた。「まぁ、月の都はどうでもいいとして・・・・・・実際なんでお前がここにいるんだ?」「どうでも良いって・・・アスカさん。それは酷くないですか」「何言ってるのよ永琳。実際どうでも良い話じゃない」「姫様まで・・・」「何でここにいるかって言うのはね、月の使者から逃げ隠れしてるからよ」「月の使者から?何でまたそんなことを??」「まぁその辺は色々有ってね・・・・・・聴かれても言う気は無いわよ?」「聞く気も無いよ」「それはよかったわ」俺の返事を聞き輝夜は満足そうな顔で大きく頷いている。永琳も落ち着きを取り戻してきたようだ。その様を見ていると輝夜が改めて口を開いてきた。「今度はこっちから聞かせてもらうけど、何でアスカがここにいるの?」「俺は幻想郷に住んでるからな。誰かみたいに隠れてるわけでもないし」「・・・・・・随分含みのある言い方だけどこの際いいわ。聴き方が悪かったわね。正確には・・・・・・・・・なんで生きてるの?」輝夜の発言で場の空気が変わった。永琳とてゐが少し腰を浮かせて身構えている。俺はそれを見てみぬ振りをしてなんでもないように答えた。「随分な言い草だな。まるで生きてるのが悪いみたいじゃないか」「・・・・・・えぇ、その通りよ。あの時から流れた年月を考えるなら当然のことね」「これまた、随分と言い切ってくれたもんだ」「誤魔化さないで!・・・・・・蓬莱の薬を使ったわね?」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」俺が黙っていると更に場の緊張感が高まっていく。輝夜もある意味、確信を持っての発言のようだ。しかしまぁ・・・・・・「んな訳ないだろ?」勘違いなのだが。「そう使ったのねって・・・違うの?!」「おう、全然違うぞ」「そんな筈は「そんな筈は無いでしょう!!」・・・・・・永琳?」「地上の技術で不老不死を体現するなんて不可能です!よしんば可能としてもなぜあなたがそれを体現できているのですか!!」「あ~それはだな「更には!!」・・・・・・聞けよ・・・」「姫様と同じ土地に住み着いているなんてそんな偶然あるはずありません!!あなたは月からの追っ手ですね!」「っは?!」「アスカ?!月の追っ手だったのあなた!!」「ちょ?!輝夜??」「なるほど~月の民なんて姫様達以外で始めてみたよ」「お前はどうでも良いや・・・・・・ってかそんな訳ないだろうが」永琳、頭よさそうに見えたけど実はダメな人だろ?輝夜は輝夜で昔から付き合いがあるくせに変なこと言い出してるし。しかもあの顔は本気だ。てゐは・・・・・・やっぱどうでもいいか。とりあえず全員身構えだしてるし、ちゃんと反論をしなくてはな。「はぁ・・・人の話は聞きましょうよ。俺は不老不死じゃなくて不老・・・・・・寿命が無いだけでそれ以外ではあっさり死にますし、ここに住んでるのはかなり昔からですから輝夜は一切関係ありません」「ですから「それとです」・・・」「俺が不老になっているのは人間の薬じゃなくて鬼の薬と修行のお陰ですから其処のところよろしく頼みますよ」「よろしくって、あなたね~・・・そんなふざけた話信じられるとでも?」「事実ですからしょうがありません」そう俺は言い切ると残っていたお茶を飲み干した。永琳はその手をあごに当てなにやら考えているご様子。輝夜もまだ納得しきっていない様子だ。そんな中、なぜかてゐが口を開いた。「ねぇねぇ・・・・・・もしかして住んでるところって妖怪の山?」「ん?あぁ、そうだがそれがどうかしたか?」「じゃあ、昔から噂になってる妖怪の山で人間と言い続ける人外って・・・・・・」「・・・・・・不本意ながら俺のことだな」「やっぱり」俺の返事を聞いたてゐはにっこり笑うと嬉しそうに手を合わせた。そして輝夜と永琳へ振り向くと二人へ声をかけた。「姫様、お師匠さま、この人嘘はついてませんよ」「イナバ?」「てゐ、それはホントなの?」「はい。姫様たちも聞いたことがあるでしょ、妖怪の山に住む人間の噂。アスカさんがその本人ですよ」「「あぁ~、納得」」「・・・・・・随分簡単に納得するんだな」「わ、私は最初から信じてたわよ」「こっち見てから言えよ、この駄目姫が」「まぁ姫様が信用してたから確証さえ得られれば良かったんですよ。話の流れから分かっているでしょうが私達は不老不死。何があろうと基本的に負けというものがありませんから」「さらっと言うな・・・・・・」なんというか・・・・・・此処まで警戒しているとなると実際に追っ手、月の都と言うのもあるのかもしれないな。そう感心していると永琳がこちらを微笑みながら再び口を開いた。「ふぅ、それじゃあ疑惑を晴れたことですし、改めて自己紹介をするわね。私は『八意永琳』。姫様の従者兼教育係です」「次はあたしだね。あたしは『てゐ』。この竹林に住む兎妖怪をまとめてる兎妖怪よ」「ふふん、最後は私「お前はいいや」なんでよ?!」「いや、お前の自己紹介なんて聞いても今更だろ?」「うっ・・・確かにそうかもしれないけど・・・・・・」「なら却下だ。噂では聞いたことあるかも知れないが、俺が妖怪の山に住む人間のアスカだ。一応山で薬師の真似事をしている」なぜか胸を張った輝夜を黙らせ俺の自己紹介を終わらせる。しかし、輝夜の教育係となると・・・・・・「輝夜の教育係、大変だったんでしょうね~」「ちょっと?!どういう意味よ、アスカ!!」「そうね、姫様は昔からあまりやる気を出してくれなかったからその気にさせるのが大変だったわ」「ちょっと?!永琳まで何言ってるよ!!」「そう言えばあなた、妖怪の山の薬師なの?」「ねぇ、無視しないでよ!」「さっき言ったとおりですが、それが何か?」「永琳もアスカもこっちを見なさい!!」「私も色々薬を作っててね。後で意見を聞きたいから研究室に来ない?」「私もいるわよ~・・・・・・」「いいですね。というよりすぐに行きましょうか?」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「それもそうね。案内するわ、付いてきて」「案内頼みます。それと輝夜」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「何で落ち込んでるんだ?」「姫様?」「(この二人、本気なのかな?本気で気付いてなかったのか??)」永琳の研究所に案内してもらう前に輝夜に挨拶でもするかと思い声をかけると、影を背負うほど落ち込んでいた。当然俺も永琳も心当たりは無く、てゐのほうに目を向けてみるとなぜか頭を抱えていた。一体何がどうなったのやら。そう思ったもののすぐにどうでも良いかと考え直し、輝夜へと声をかけた。「おい、輝夜」「・・・・・・・・・・・・・なによ」「また会えたのも何かの縁だ。これからもよろしくな」「っう・・・・・・い、いいわよ。よろしくしてあげる」「おう、よろしく」そう輝夜と言い合い、お互いの手を握った。何はともあれ、古い・・・・・・それこそ妹紅と同じくらい古い知り合いとの再会だった。<おまけ>少し未来の竹林「輝夜・・・今日のあたしは調子がいいんだ。消し炭にしてやるよ!!!」「奇遇ね、私も古い知り合いにあえて機嫌がいいのよ。今なら不死ですら殺せそうなくらいに!」「言ってろ!燃えつきやがれ『火の鳥 -鳳翼天翔-』!!」「っは!その程度で!お返しよ『蓬莱の弾の枝 -虹色の弾幕-』!!」「まだだ!調子の良いあたしはこの程度じゃないぞ輝夜~~~!!」「言ってなさい!妹紅~~~!!」「姫様張り切ってるね~」「そうね・・・妹紅もどういう訳か張り切ってるし攻撃の余波が此処まで届いてきてるわよ」「お師匠様はあっちが元気な原因。思い当たります?」「さぁ?こんな時ぐらいしか見ることもないのに思い当たる訳ないでしょ」「それもそうですね」不老不死に決着は付かない----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。輝夜再会編はこれで終了。更には次で50話に・・・・・・此処はその他板へ引っ越すべきなのだろうか?ちょっと悩みどころですな。では、次回予告です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ぷっくるです。次回予告します人里の守護者が怒り、食べれない人間が怒り、焼き鳥屋がおろおろする何がどうしてそうなったのか?そして・・・ぷっくるへの超・・・??伝授次 回 「カンペなんて読めるわけがない!!」 所詮は鳥頭だったかorz by.kami