時が巡る。春には花見。夏にも花見。秋は収穫祭に出て、冬は鍋を囲む。何と平和な日々、リリーのトラウマも乗り越えた今、春は待ち望むもの、夏は楽しむもの、秋は食らい、冬に笑う。とても幸せすぎて怖いくらいの毎日だ。この辺りで少し、知り合いのことを思い出してみるのもいいかもしれない。俺はそう考えて更に思考の奥へと潜り込んでいった。射命丸文、いつも幻想今日中を飛び回り新聞のネタを捜している。たまに俺のところにも取材に来るが写真を撮らないことや実名を出さないといった条件で取材に応じている。茜、椛、才に塁、今日も元気に妖怪の山を哨戒している。茜は更に自信をつけたのかよりリーダーらしく、才と塁はそんな茜の後ろを付いて周りよく働いている。椛に関してはなぜか文の部下扱いになっているが・・・・・・なぜそうなった?天魔、機会があれば共に酒を飲んで騒ぐ、そんな関係。天狗のトップともなると忙しいようだが、それなりに楽しんでやっているようだ。田吾作とにとり、毎日発明に次ぐ発明の日々に忙しそうだ。田吾作のとんでも発明には最早なれたものだがにとりが最近になってその真似を始めてしまった。光学迷彩・・・・・・と聞こえたのは聞き間違いだと思いたい。萃香、少し前に勇儀たちと同様に地獄へ行くといって去っていった。何でそ少し期間を空けてからのほうが良いだろうとのことだ。それと勇儀や師匠にも俺のことを伝えてくれるらしい。一日も早く地上へ帰ってくるのを待つばかりだ。勇儀に師匠、地獄に降りて以来、会っていないがあの二人なら向かうところ敵無しだろう。むしろ地獄が鬼の町になってないかやや心配である。黒陽と影月、霧雨道具店で歴代店主の手伝いをしながら警備兵をやっている。なんだかんだで、結局警備兵と言う職から離れることが出来ずにそのまま続けているようだ。最近では慧音と協力して人里の守護も担当しているとの話なのでその人気もかなりのものだ。ちなみに、影月の思いはいまだリグルに砕かれ続けているらしい。その熱意は凄いがいい加減諦めるべきではないかと思う今日この頃だ。リグル、無事刑期を終えて野生の妖怪に戻ったが、人里での日々を忘れることは出来ずに人里の人間を襲うことは無くなったとのことだ。食べ物に関しては木の実や作物に果物、ごくたまに現れる外来人でお腹を満たしているとの事。影月の事を聞いてみると好きではないが嫌いでもないといった微妙な反応を返してくれた。ぷっくる、たまに何処からともなく彼女の歌声が聞こえてくることはあるもののまた食事に乱入しては悪いのでそのまま放置している。ルーミア、外の世界で出会ったきりだが・・・・・・元気にしているといいな。チルノと大ちゃん、霧の湖に行くとよく会うがほとんどの場合が初対面のような対応をされてしまった。どれだけバカなんだ。最近になってやっと顔を覚えてもらったが・・・・・・藍のことなど毛の先ほども憶えてそうにない。リリー、一時期はトラウマ物の相手だったが今はそんな事はない。秋姉妹、収穫祭に招かれては無駄に偉そうで冬場は社で泣きまくっている。正直、どうしようもない姉妹だ。雛さん、能力のお陰で厄からそこそこに逃げられる俺は雛さんの話し相手になったりなどすることがよくある。なんだかんだで雛さんも人恋しいとの事なので喜んでもらえてるようだ。ただ、飛ぶときになぜ回るのかは結局聞けなかった。紫と藍、論外である。最後に藍を弄って以来、まったくその姿を見せていない。そのうち来ると言っておきながら・・・・・・何処で何をやっているのやら。幽香、夏の花見で必ずと言っていいほど模擬戦をやる。負けっぱなしではあるがそのうち勝ちたい相手だ。美鈴、ルーミアと同じで外であったきりの相手なんだが・・・・・・彼女の場合は元気だろう。妹紅と慧音、妹紅には昔と同じようにたまに家庭教師の真似事をしている。不老不死で随分と長生きしたはずなのにサバイバル知識ばかりで数学だとかの学問系が思いっきり抜け落ちていた。今は妖精並みのバカになることを回避するために猛勉強をしている。その中にはなぜか慧音も混ざっている。俺のことはやはり気に入らないのかいつも睨みつけてくるが、学問を学ぼうとする姿勢は正しく妹紅よりも後に生徒になったのに、妹紅よりも賢くなってしまった。ちなみに慧音は俺のことを先生とは呼ばずに呼び捨てなどにしてあまり敬ってくれない。まぁ別に構わないんだが。知り合いはこれくらいか?いやもう一人いたな・・・・・・・・・輝夜が。そういえば月に帰ったなんて聞くが実際に月に行ける訳もなしに一体何処に雲隠れしたのやら。そうやって昔の知り合いを思い出しているとまったく関係の無い思いでも一緒に思い出してしまった。そういや・・・・・・竹林の兎を見てないな。そう考えた俺は早速荷物を準備した。いつもの如く、思い立ったら吉日の精神で早速、竹林へと飛んでいった。・・・青年飛行中・・・・・・ここは迷いの竹林。無駄に大量の竹の生える林だ。かなり昔は道があり、人が入って筍を取るなどすることができたものの、いまでは入ったものは二度と出られないとまで言われる恐怖の竹林へと変貌してしまった。とは言え出てこられた者もいるのでその話を聞いてみると大抵の者は「兎の妖怪を見つけて助けてもらった」と、言う。おそらくは兎が竹林を作り変え迷いの竹林にしたのだろうが確かめる術もなし。更には兎の妖怪のほかにも野生の動物が変化した妖獣までいるので入るものはまさに自殺者としか言いようが無いだろう。そんな迷いの竹林へ空からやってくるものが一人。飛んでくるものは男で、その背には荷物入れの鞄、腰元には薬箱が吊るされている。さて、では物語はこの男の視点で語るとしよう。「これが迷いの竹林か・・・・・・無駄に広いな」一人空で嘆くも答えるものなし。軽い気持ちで竹林の兎探しに来たが、これはなかなか骨が折れそうだ。俺の眼下に広がる竹林は風に揺られて動いているのだがそのスキマからは地面がまったく見えない。つまりは竹が高すぎて歩いてはいれば空も見えないほどになるということだ。とは言え兎は竹林の中。もとより歩いてはいる以外に道があるわけもなく、俺は適当なところで竹林へと降りて行った。竹林の中に最初に思ったことは、「やっぱ見えないよな~」アレだけ青かった空がまったく見えないのだ。よく考えれば竹の生えていない広場のような場所があったしそこに降りればよかったものをと今更ながらに後悔するのだった。しかし、竹林に入るといった点では変わりは無く特に問題があるわけでもないかと心気を一転させ兎狩り、もとい兎探しを始めた。・・・青年兎狩り中・・・・・・全然いない。その上さっきもここを通ったような気がする。さすが迷いの竹林、目的の兎を見つけることも出来ないままあっという間に迷子になった。しかしながら、今回は空を飛ぶことが出来るからいつでも竹林からは抜け出せるので安心だ。そう考えるとやはり気持ちに余裕が出来ついつい歌なんかを口ずさんでしまう。「う~さ~ぎお~いし♪か~の~な~べ~♪・・・・・・今晩は兎鍋にするかな?」歌の本来の内容と違う気がしないでもないが其処は気にしない。兎の肉は幻想郷では高級品なのだ。そんな果てしなくどうでもいい事を考え歌いつつ竹林の中をふらふらと彷徨い続けた。実際彷徨っていると言っても常に迷子になり続けたこの身において高々この程度、迷ったうちにも入らない。(過去最高記録はローマ到達にかかった数百年)そうして兎狩りを続けてどれほどの時が流れただろうか、竹の隙間から人の家・・・いや、屋敷の様なものが見えてきた。迷いの竹林に人の屋敷?なぜこんな所に屋敷がと考えはするものの、そんなことは考えたところで分かるはずもない。とりあえずは近づいてみようと歩き始めた。近くに来てみたがやはり屋敷だ。それも立派な。これが噂に聞く竹林に住む妖怪兎の屋敷なのかもしれないな。そう考えた俺は屋敷に入ってみることにした。幸いなことに、こんなこともあろうかとアレを荷物の中に入れていた。これを装備して早速潜入だ。<おまけ>「そういえば塁。塁は何か能力を手に入れようとは思わないの?」「ん~、私はいいかな~。千里を見渡してるだけで仕事は十分できるし、何か修行をしようとも思わないから」「そっか~」「そんなあなたへ能力談義でやす」「「田吾作さん(いつものことながら、一体何処から)?!」」「能力とは必ずしも修行で手に入るものだけではないでやんすよ」「そうなんですか?」「では今回はその話をするでやす」「「お願いします」」「能力は以前まで話したように先天性能力と後天性能力に分けられるでやす」「ふむふむ・・・・・・」「そして才の能力が後天性能力なんですよね」「そうでやすな。実はそれ以外にももう一種類あるんでやす」「?!」「そうなんですか?!」「でやす。それが今回の話、付与型能力でやす」「付与型」「ですか?」「之は才能も要らず努力も必要の無い超お手軽能力でやすな」「なにそれ!!」「そんな便利な能力が!!」「この能力は特定の道具や、他者から能力を授けられることでやす」「道具?」「授けられる??」「でやす。道具で言うならあっしの作った地蔵やアスカ様の持っている段坊流箱がそれに当たるでやすな」「「あぁ~、なるほど」」「授けるといったのは具体例は無いでやすが、神様に熱心に祈りをささげるなどしていると神様から能力を貰えたりする事でやす」「神様・・・ですか・・・」「塁?どうしたの??」「なんでもないよ、才」「???」「とまぁ、付与型能力は自分ではなく完全に人任せで手に入れる能力でやすから応用も効きやせんし、あまりお勧めはしないでやすよ」「は~い」「そうですね」田吾作能力談義『待宵編』より抜粋----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書どうも、お手玉の中身です。とうとう来ました迷いの竹林。彼女達の登場を期待した人はもう少し待たないといけませんね。流石はお手玉の中身、平気で読者の期待を裏切ってみせる。では、次回予告です----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------・・・・・・え?あたしが次回予告?いいけど、御代は貰うよ迷いの竹林に佇む大きな屋敷出てくるのは蛇か鬼か?こんな潜入任務に頼れる相棒そう、みんなの伝説の道具!!次 回 「兎鍋は勘弁して下さい」 イナバ?そんなとこで何してるの?? by.輝夜