「「「「かんぱ~い」」」」「か、かかかかかかかんぱい・・・・・・」あたり一面に咲き乱れる向日葵。その見事な光景はまさに千金にあたいする。そんな絶景を肴に俺達は宴会、花見を開始した。開始したのだが・・・・・・死相は取れたものの、茜の顔は未だに真っ白なままだ。俺は心配になり、茜へ声をかけた。「茜、ほんとに大丈夫か?滋養強壮薬でよければあるぞ?」「いえ、そういうことではなくて・・・・・・失礼ですがそちらの方は風見幽香さんでしょうか?」「あら?あなたは私のことを知ってるのね」「なんだ茜、幽香のことを知ってたのか?」「何でアスカ様はそんなに親しげなんですか・・・・・・風見幽香と言えば妖怪の中でも最強と名高い上に残酷妖怪として有名ですよ?」「だそうだが幽香?感想は?」「全て事実ね。事実ばっかりで面白みが無いわ」「まぁこんな奴だから安心していいぞ茜」「いまの言葉の何処に安心できる要素があったのか誰か教えてください・・・・・・・・・・」なぜだろう、茜の顔色は一応戻ったが今度はさめざめと泣き始めてしまった。泣き上戸だったのだろうか?少し考えれば幽香が残酷妖怪でない事ぐらいはわかりそうなものだろうに・・・・・・いや、あながち間違っては無いがな。すると、笑いながら酒を飲んでいた才が突然立ち上がった。その顔は既に赤く完全に出来上がっている。って、酔うの早いな!!「先輩を苛めちゃらめれす」「いや、苛めちゃないが・・・・・・お前酔ってるだろ?」「ひょってません!」「・・・・・・・・・塁、才はいつもこんななのか?」「まぁこんな感じですね。いつもは笑い上戸で終わるんですけど・・・・・・」塁に才のことを聞いてみると、どうやらいつもの事らしい。塁は諦め気味に頭を振りながら返事をした。その途中、塁は頭を振るのを止めて何か不思議なことを聞いたような顔をして尋ねてきた。「そういえばアスカ様?太陽の畑の残酷妖怪ってどういうことですか?」「残酷妖怪さん、答えてあげたらいかがかな?」「いやよ、めんどくさい」「つれないね~。何の事はない、ここにいる幽香が昔やんちゃしてたってだけの話だよ」「はぁ・・・・・・」「強弱関係無しにギリギリまで叩きのめして回ったのをやんちゃって・・・・・・・・・」「なんだ幽香、そんな事してたのか?」「向こうから攻撃してきたんだから、叩きのめされて本望でしょう?」「なるほど・・・・・・」「「其処、納得するところですか?」」幽香はつまらない話だといわんばかりに酒を飲み、俺もその話に同意して酒を飲む。茜と塁の二人は全然納得ができないと言った顔で頭を抱え始めてしまった。そんな中、立ちっぱなしだった才がまだ持っていたのか木の枝を幽香に向けて堂々と宣言した。「ようし。この才様が残酷妖怪を倒して最強になってやる!!」「へぇ・・・・・・・・・」「ちょ?!才!!」「んな?!アスカ様、止めてください!幽香さんなんかやる気みたいですよ!!」「みたいだな・・・・・・幽香」「なぁにアスカ。止めるなんて野暮なことしないでよ。折角の楽しい遊びなんですから」「分かってる。せいぜい3割にしといてくれ」「「アスカ様?!?!」」「あら、いいの?」「久しぶりに俺も挑戦したいからな・・・・・・才相手にばてられたんじゃ面白くない」「「何言ってるんですかあなたは?!?!」」「へぇ・・・本気?」「おう!本気だぞっと」「ならさっさと子犬の相手は終わらせるとしましょう」「むっか~、私はこいぬひゃ無い。誇り高いひゃくろう天狗だ!てりゃ~!!」才はそう叫ぶと小枝片手に幽香に突っ込んでいった。当然そんな酔っぱらいの攻撃に幽香が当たるはずも無く右へ左へと華麗に避けている。相変わらずの先読み能力だ。そうやって酒を片手に感心していると隣の茜から声がかかった。「あ、アスカ様、止めてください。才が殺されちゃいますよ」「っえ!才殺されちゃうんですか?!アスカ様助けて下さい~!!」「お前ら幽香を殺人(妖)狂と勘違いしてないか?幽香は昔はどうだったか知らないが話せばちゃんと通じる奴だぞ」「で、ですが!」「それにだ、一応力を抑えてくれるって事だし・・・・・・少したんこぶが出来る程度で済むだろう」「そ、そうなんですか?良かった~」「アスカ様がそういうなら信じますけど・・・・・・ほんとに大丈夫なんですか?」「おとなしく信じとけ」「はぁ・・・・・・」そんな雑談をしながらも才と幽香のお遊戯は続く。やっていることは相変わらず、才が小枝を振り回しては幽香がそれを避けると言ったところだ。これで幽香が本気になってたら小枝を振ること事態が無理だろうし。しかしなんだ、妙に才の動きがいいように見える。俺は自分の考えを確かめるために横で才と幽香に魅入ってる塁に尋ねることにした。「ところで塁」「ほぁ~、っへ?!あ、アスカ様!な、なんでしょうか?」「才の動きがかなりいいように見えるんだが・・・・・・特別な修行でも?」「確かに才は修行を積んでましたけどそのほかにも能力を手に入れてるんですよ」「能力?」「はい。『あらゆる武器を扱う程度の能力』と言って、才が武器だと思ってるものは手足のように使えるんだそうです」「へ~、随分と戦闘向きな能力だな」「でも、塁。その能力、こないだ欠点が見つからなかったかしら?」「そうなんですよ先輩。武器が扱えるようになっただけで身体能力は全然変わりませんから結局修行を欠かすことが出来ないんですよ」「なんと言う能力の罠」感心したのがバカみたいな欠点だった。確かに能力としてはかなり便利な能力である。しかしだ、自分の身体能力が足りないとどれだけ武器が使えてもすぐに体力が切れるなどしてやられてしまう。体力作りがかなり必要な能力と言えよう。現に目の前の勝負はもう決着が付きそうだ。「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・いつまでも避けてにゃいで、かかってこ~い」「そうね、そろそろ準備運動もいいでしょうし・・・終わらせときましょうか」才の挑発になってない挑発に幽香が反応しその距離を一足で縮めてしまった。才は突然目の前に現れた幽香に目を点にしている。幽香はそんな才の顔を見て軽く笑うと手に持っていた日傘で才の頭を綺麗に横なぎにした。一応手加減はしてくれたみたいで、才はその場に崩れ落ちるだけですんでいる。「「才!!」」茜と塁はその光景を見るや、すぐさま才の元へと飛んで行ってしまった。心配せずとも気絶しているだけだろうに。才の介抱は二人に任せ、俺は幽香へと声をかけた。「酔っぱらいを殴り飛ばすなんて酷い女だな?」「あら、軽く撫でただけよ」「へ~・・・・・・それじゃあ少し場所を変えようか。準備運動はもういいだろ?」「勿論よ」俺と幽香はそう言うと二人で大洋の畑に被害が出ない程度の場所まで移動した。その後ろを茜と塁、そして気絶からすぐに目を覚まして酔いの抜けた才が追いかけてくる。10分ほど移動した空き地で俺と幽香は共に身構えた。身構えたといっても俺はいつものようにすぐに突撃できる体勢に、幽香は日傘を杖のように地面立てた状態で微笑んでいるだけなのだが。俺は幽香から顔を離すことなく茜へと声をかけた。「おい、茜」「なんですかアスカ様?」「もう少し離れてろ、其処じゃ巻き込まれるぞ?」「わ、分かりました~」俺が忠告すると3人はそのまま離れて行った。その間は当然幽香も動かない。吹き抜けるような心地のよい風が流れる。初めて幽香に出会ったときとは違う、薄ら寒い風ではなく心が高揚するような風が。自然と自分の顔に笑みが浮かんでしまうのが止められない。幽香は俺の顔を見て驚いたような表情を作ったが、すぐにいつもの・・・・・・いや、いつもより楽しそうな微笑を浮かべた。そうして・・・・・・・・・茜達が立ち止まる気配が合図となった。「っふ!」短く呼吸を切ると俺は身構えた状態から一気に幽香へと駆け出した。幽香はまだ体勢を変えない。後十歩の距離・・・・・・五歩の距離・・・・・三歩の距離・・・手が届く距離!ここで始めて幽香もその日傘を振りかぶる!「はぁ!!」「甘い!!」拳と日傘。俺が振るった拳は幽香の振るった日傘でその動きを止められた。しかし、ここで下がる必要は無い!両の拳を振るう。右の拳、払われる、左の拳、更に日傘で払われる。払われた左の拳を無理やり戻して幽香の腹を狙う、日傘が盾となって防がれる。それと同時に右の拳で顔面を狙う・・・・・・捉えた!!!「うらぁ!!」「っつ?!」頬を殴られ幽香は倒れることは無くとも2、3歩分、後ろへとずり下がった。少し開いた距離で俺は荒い息をつきながら幽香を見る。幽香は自分が殴られたことに驚いているのか少し呆然としていたが、すぐに笑い始めた。「くくっ・・・、あははははははは・・・・・・・・・・」「はぁ、はぁ、ふぅ、随分と楽しそうだな?」「はははは・・・・・・はぁ、ごめんなさいね。あまりにも嬉しかったからつい」「殴られて喜ぶとは変わった趣味だな?」「ふふっ、その軽口も・・・やっぱりあなたのことを気に入って正解だったわ」「それは感謝」「それじゃあ今度は・・・・・・」笑い終えた幽香はその笑みを崩さぬまま宣言し、「こっちから行くわよ」まっすぐ突っ込んできた。先ほどとは攻守が逆転する。幽香が攻め俺が守る。幽香は昔と変わらず・・・・・・昔よりも鋭くその日傘を縦横無尽に振り回してくる。左手に持って左へ振りぬけばそのまま背後へもって行き右手に持ちかえ刺し貫こうとする。右の手で上から下へ袈裟切りのように振るうとその勢いで肩から体当たりを行い開いた左手で腹を抉ろうとする。日傘を含めたその四肢からは昔と変わらぬ必殺の一撃が今も繰り出されてくる。だからといって容易く当たるはずも無く振りぬき貫く日傘は身体を傾けることで回避。ショルダータックルは自分から後ろに飛んでダメージの軽減と次手の封印。そんなことをお互いにやっていると段々と乱戦気味になってきた。顔面を狙って殴りかかると幽香は技と受けながら腹を抉ってくる。痛む腹に顔をしかめながら追加に蹴りを出すと、幽香は顔をそらして避けながらローキックで軸足を払ってくる。足を払われ倒れた俺に幽香は容赦なく日傘を叩きつけて来るのを転がりかわして跳ね起きる。殴り殴られ、蹴り蹴られ。攻撃の応酬が続く。やはり幽香は強い、攻撃を受けるにしても有効打はけして受けずに軽い攻撃のみわざと受けその後の攻撃を払い手強い反撃を放ってくる。対して俺はどうだ。幽香の攻撃を全て警戒しているものだからまともに反撃の準備もすることができない。そう考えていた時だ、力を込めたストレートが幽香を捉えその身体を後ろへとずり下げた。幽香はそれなりのダメージを受けたのか膝を突いている。攻めるなら今しかない!!俺は幽香に向かって飛び掛っていた、自分が勝利する未来を夢見て。だからだろう・・・・・・・・・「残念でした♪」「しまっt・・・・・・」見事に誘われてしまったのは。俺がその日の最後に覚えているのは幽香から差し向けられた日傘の先端と、其処から迸る光の奔流であり最後に考えたことは・・・・・・「(あぁ・・・悔しいなぁ・・・・・・・・・)」<おまけ>「ふう、あぶなかった」「あ、アスカ様~!!大丈夫ですか~」「アスカなら大丈夫よ。あなた、茜って言ったかしら?」「は、はい、そうですけど・・・なにか?」「そんなに警戒しなくても取って食べたりしないわよ」「は、はぁ・・・・・・」「まぁいいわ、アスカが起きたら『また、お花見をしましょう』って伝えてくれるかしら?」「それはいいですけど・・・・・・」「っそ、お願いね」「っえ?!ちょ、どこに!!」「疲れたから帰って寝るのよ。今日はいい夢が見れそうだわ」ご機嫌な幽香さんでした。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。もうじき・・・もうじき50話超えますwww書き出した頃はそこそこ長くなるだろうとか思いながらまだ異変一つも起こってないのに50話超えそうです。どうせならこの機会にチラ裏から飛び出そうかなどとも考えてみるテスト。まぁそれでも、読者さんからの感想を楽しみにしながら物語を綴っていくのを決意するお手玉の中身なのでした。では、今回の次回予告は久しぶりのこの人----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ふん、次回予告か・・・・・・まぁ暇つぶしになるな時が流れていつの日か少しは思い返すことも必要と友達へと思いを馳せるそんな時、すっかり忘れていた噂話を思い出す最早誰も近寄らなくなった迷いの竹林を次 回 「迷いの竹林に住まう者」 おっさん、向こうにけが人が出たから治療してくれよ by.勇儀