夏暑い日差しの中、今日も今日とて平和な散歩。空を飛べるようになったとは言え、散歩は歩いてこそ散歩。いつもどおり大蝦蟇の池で祠を掃除した俺は妖怪の山を適当に歩き回っていた。最初は目的があったんだがたった二人じゃつまらないので誰か出てこないか探し回っているのである。その時だ、空から白狼天狗、茜と他二人やってきた。「お~、茜じゃないか。どうした?」「はい、ちょうどアスカ様を御見かけしたのでこの二人を紹介しようと思いまして。今回は私の直接の部下になった才と塁です」「は、始めましてアスカ様。私は茜先輩の部下『才』です。お見知りおきを」「始めましてアスカ様。才と同じく茜先輩の部下『塁』と申します。今後ともよろしくお願いします」茜の後ろから出てきた白狼天狗、才と塁はそれぞれ頭を下げて挨拶してきた。それなりに高い位にいた茜にもとうとう直属の部下が出来たのか。少し前までのもふもふ時代が懐かしいな。そんな感慨深いことを考えつつ頭を上げた二人へ返事を返した。「おう、よろしく。そうだお前ら、いま暇か?」「えぇ、今日は非番ですから用は特にありませんが・・・それがどうかしましたか?」「ちょっと花見に行こうと思ってな」「花見ですか?夏のこの時期に花見なんて・・・・・・」「絶景が見られるし、酒もあるぞ?俺のおごりで」「「先輩、是非行きましょう!」」「あなた達・・・・・・分かりました、ご一緒させてもらいます」「よし、まずは花見ようの酒を買うために人里に行くぞ」「「お~♪」」才と塁の二人は酒が飲めるからか、それとも花が見れるからか喜び勇んで人里へと進み始めた。まぁ、前者に決まっているんだろうが。その後ろを茜が諦めたような顔をして歩きながら追っていく。そんな光景を眺めつつ、俺も遅れないように歩き出すのだった。・・・青年移動中・・・・・・・・・人里の平和な昼下がり。あかねたちには里の外で待ってもらい、俺は霧雨道具店へと足を運んだ。霧雨道具店の前では娘、もといリグルが掃き掃除をしている。リグルは人の気配に気付いたのか挨拶をしながら顔を上げてきた。「あ、いらっしゃ・・・っひ~~~~!!」人の顔を見るなり悲鳴とは失礼な奴だ。リグルは手に持った箒に体重を預けながらぶるぶると震えている。まぁ、そんなことはどうでも良いんだがな。そう考えながら俺はリグルへと声をかけた。「リグルか。真面目に働いてるな?」「働いてます。働いてますからお許しを~」「黒陽達はいるか?」「こ、黒陽さん達ですか?皆さんでしたら中に・・・・・・」「わかった、ならあがらせて貰おう」そういって俺が中に入ろうとすると店の扉が勢いよく開き、中から影月が飛び出した。影月は俺のことすら目に入らないのかリグルに駆け寄るとそのままの勢いでまくし立てた。「大丈夫かリグル?怪我はないか?どうしたんだ?安心しろ俺がいるからもう大丈夫だ!結婚しようリグル!」「え?え?え?とりあえず最後のだけは嫌です」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「影月・・・お前バカすぎるだろ」何をとち狂ったのか、影月は助けに出てきた勢いのまま告白まで言いやがった。リグルはほとんど聞き取れていないようで結婚の部分だけ綺麗に拒絶、それを聞いた影月はそのまま倒れてしまった。なんなんだこいつら。すると後を追うように黒陽が出てきた。黒陽は俺に気付くと納得顔で口を開いた。「なるほど、旦那が来てたんですね?」「そういうことだ。ところで・・・・・・これはどうするんだ?」「一日に一回はその状態になりますから放っておいていいですよ」「そうか」毎日、告白して玉砕か・・・・・・脈が無い訳じゃないとは思うんだが、それすらも分からなくなってきたな。「んで旦那。今日はどのようなご用件で?」「あ、あぁ。花見用に酒を買おうと思ってな」「花見?この時期にですか??」「この時期にしか出来ない花見もあるんだよ。それで、何かいい酒はないか?」「はぁ・・・そういう事でしたらこれなんかどうですか?銘酒『田子作の極み』、お勧めですよ?」「ほう、ならそれを貰おう」「毎度。それじゃあ中に入ってください。いまおやっさんはちょっと出てるんで俺らが店番なんです」「今回はサボってないんだな」「勘弁して下さいよ旦那。いつの話ですか」そう黒陽と笑い話をしながら俺は店の中へ入っていった。店の前に残されたのは倒れ付したままの影月と、それを放置したまま掃除を続けるリグルだけだった。ぁ、影月まで一緒に掃かれた。「それじゃ旦那、次はおやっさんがいる時にきてくださいよ?」「暇だったらな」「旦那はいつでも暇じゃないですか」「ははは・・・・・・そんなことないぞ~」目的の品を手に入れた俺は黒陽に見送られる形で店を出た。店の前には相変わらず影月が転がっている。リグルは此方を見ないようにしながら掃き掃除を続けていた。アレは声をかけないほうがいいだろう。それよりもだ・・・・・・・・・「ほんとにこいつはこのままで良いのか?」「まだ寝てるし・・・・・・しょうがない。リグル、ちょっと頼む」「・・・分かりました」リグルは怯えながらこちらを振り向くと黒陽へ返事を返した。どうやら影月を再起動させるのはリグルらしい。さて如何するのやらとリグルを見ていると、影月の耳元で一言呟いた。「影月さん、嫌いになるよ?」「嫌だ~~~~~~~~~~!!」あっという間に目覚めたな、おい。これが恋は盲目と言うものなんだろうか?何か違う気もするが、まぁいいだろう。「影月、旦那が帰るぞ」「へ?あれ?旦那??いつの間に????」「もう良いや影月。黒陽、リグル、またな」「はい、旦那もまた来てくださいね」「え、えっと・・・・・・あ、ありがとうございました・・・」目覚めたバカの影月は放っておき、黒陽とリグルに別れを告げた。黒陽はいつもどおりに、リグルは怯えながら返してくる返事を背に受けて、俺はその場から立ち去った。そして、人里の外に戻ってみると才と塁が木の枝でチャンバラを行っていた。「茜、あれ何してるんだ?」「あ、お帰りなさいアスカ様。あれですか?戦いの訓練ですよ」「チャンバラが?」「他の子や私はしないんですけどあの二人はいつもああやって暇な時間を潰すのに訓練してましたから・・・・・・そのお陰であんなチャンバラでも十分な訓練になるんだと思います」「ほぉ・・・なるほどな」そうやって話していると二人が此方に気づいたのか木の枝を手放して駆け寄ってきた。二人ともそこそこに動いていたようで頬が紅く上気している。「お帰りなさいアスカ様。その手の中のが」「お酒ですか!!」二人の尻尾は振り切れんばかりに振り回されている。そんなに飲みたいんだろうか?まぁ、あの絶景を見れば少しは変わるだろう。そう考えた俺は先に進むべく口を開いた。「あぁそうだ。ただ、まだここじゃ飲まないぞ」「なら何処で飲むんですか?」「アスカ様」「最初に花見だって言ったろうが・・・・・・」「しかし、この時期に花見ですか?」「いいところがあるんだよ。まぁ付いて来い」「「「はぁ・・・・・・」」」そうして歩き出した俺達。夏の日差しは暑いものの、吹き抜ける風は涼しく気持ちの良い日だ。後ろの二人もどこかそわそわと楽しみにしている雰囲気が伝わってくる。問題は茜だ。茜だけは歩くごとに、正確には目的地に近づくにつれ顔が青くなっている。「大丈夫か?茜」「え、えぇ・・・大丈夫ですよアスカ様・・・・・・(この方向は・・・大丈夫よね、きっと)」「そうか、なら良いんだが・・・・・・・・・」どこか様子がおかしいながらも、大丈夫と言い続ける茜を心配しつつ俺達は目的地へと向かった。そうしてどのくらい歩いただろうか。目的地・・・・・・・・・太陽の畑へ到着すると才と塁はその目を丸くして向日葵に見入っている。そう言うおれもこの畑の向日葵には声も出なくなってしまっているのだが。相変わらずの絶景ぶりだ。何よりこの時期なら彼女もここにいることだろう。俺はそう考えながら茜に声をかけようと振り返ると・・・・・・「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」茜の顔は青や白を通り越して土の色、死相が浮かんでいた。一体如何したことか、俺は慌てて声をかけた。「お、おい!茜?!大丈夫か?一体如何したんだ??」「え?先輩!」「ちょ?!如何したんですか先輩!!」「あ、アスカ様・・・・・・ここがどこか知ってるんですか?」「太陽の畑だろ?」「も、もしかして知らないんですか・・・・・・こ、この地には「あら、いらっしゃい」?!?!?!」茜が最後まで言い終わらないうちに彼女が現れたようだ。なぜか彼女の声を聴いた瞬間に茜は硬直してしまったが。向日葵畑の中から現れた彼女に俺も挨拶を返した。「よっ、久しぶりだな幽香」「えぇ、久しぶりねアスカ」「今年はここの向日葵で酒を飲ませてもらおうと思ってな」「当然私の分も」「勿論」「ならよろしい」そう言うと幽香は日傘をたたみ花見の準備を始めた。茜の介抱は才と塁に任せて俺も手伝うとしよう。向日葵畑の友人との宴会だ。<おまけ>?????うん?この予感はなんだ・・・・・・なにやら世界が乱れる予感がする。これは・・・・・・あの地か。ならば納得もいく。かの地は此処数百年で大きく変わったゆえに。しかしなんだこの胸騒ぎは。かの地はまだ変化しようと言うのか?世界の中にありながら理から外れようと言うのか?そんなことは不可能である。しかし、かのただ一種のみの存在なら・・・もしかするなら・・・・・・・・・ふむ、かの地にはいまだ我に祈りを捧ぐ者もいるゆえにことを荒立てたくは無いのだが。もし、かの一種たる存在が動くのならば・・・・・・我も動かねばならぬかあまりにも強大すぎる存在の嘆き----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。祝・もふもふABもとい才と塁。名前の由来は元ネタの最後の一文字を抜いただけです。そして、おまけ話にストーリー上、欠かすことの出来ない伏線を張っておく。では、次回予告です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------影月だ・・・作者のバカに名前を全力で間違えられたが次回予告はしっかりやるぜ太陽の畑での宴会何も知らぬは才と塁最強を知る茜は戦々恐々そんな中で旦那の行動は?!次 回 「幻想郷の中心でリグルへの愛を叫ぶぜ!!!」 うん、思いっきり嘘だけど今回は赦す by.kami