今日も今日とて平和な散歩ミスティア・・・、もといぷっくるとの邂逅から早くも数週間。たまに遠出すると妖怪や妖獣に襲われるものの、あの日の教訓を元に脅しかかってやると全部逃げていった。素晴らしい・・・、たった一つの行動だけでこれほどまでに平和な日々が送れるようになるなんて・・・。ぷっくるとの出会いを竜神様達に感謝しなければ。そんな考えが頭によぎる今日この頃。いつも通りに大蝦蟇の池で祠掃除を終わらせると今日は何処まで行こうかと考えた。少し前に太陽の畑へ行ってみたが時期が悪かったのか幽香は何処にも姿を見せなかった。人里では霧雨道具店に卸すようにした薬がよく売れていると源次郎からうれしい悲鳴が届いた。魔法の森は相変わらずその静けさを保っている。とすると、まだ行ってないのは・・・・・・・・・。そう考えながら妖怪の山付近を適当に歩いていると遠くに見覚えのあるもふもふが近づいてくるのが見えた。アレは確か・・・そう、紫の所にいた藍だ。俺はこの散歩の道連れを増やすため、早速声を掛けた。「お~い、もふもふ狐や~い♪」呼びかけると藍、もといもふもふ狐は此方に気づき、一気に走りよってきた。その顔は何が恥ずかしいのか赤く染まり目はやや涙目である。もふもふ狐はそんな状態のまま慌てて言い返してきた。「人の事を変な名前で呼ばないで下さい!恥ずかしいじゃないですか!!」「だってもふもふしてるし~・・・、名前知らないし~」「もふもふしてるって触ったんですか?!名前だったら紫様から聞いてるはずでしょう!」「見た目から?本人(本狐?)から名前を聞いたことないし~」「っく、ああ言えばこう言う!分かりました。分かりましたからもふもふ狐はやめて下さい」もふもふ狐は諦めたように一息吐くと、落ち着いたのか、冷静な表情になり自己紹介を始めた。「お久しぶりですアスカ様。私は紫様の式をしている『藍』と申します。先日は大変失礼いたしました」「構わないよ、アレがあの時の紫からの命令だったんだろう?あの時の怪我もほとんど治ったし今更気にはしないさ」「その割には人の事をもふもふ呼ばわり」「アレは単純に俺の趣味だ。名前関係はなるべく本人から聞くまでは呼ばないようにしてるんでな」「はぁ・・・そうなんですか。ところでこんな所で何を?これほど妖怪の山の近くまで寄っていたら妖怪に襲われますよ?」「心配してくれてるのか?安心しろ、この辺りの妖怪ならよっぽどの上位じゃない限り負けないよ」「はぁ・・・、失礼ですが本当に人間ですか?」「・・・ほんとに失礼だな、人間だよ。これでもな」「そうなんですか」「そうなんだよ、この辺には散歩できただけでな、ちょうど良いから付き合わないか?もちろん何も用が無ければだが」「それなら大丈夫です。アスカ様に先日の非礼を詫びるのが今日の用事だったのでもう目的は果たしました」「そっか、それなら」「はい、ご随伴させて貰いますね」そう返事を返してきた藍を伴い、再びあても無い散歩を再会した。ちなみに、先ほどの人外発言は後でしっかりと仕返しすることを俺は心に刻んだ。その後、藍から提案があり、今回は珍しいことにあての無い散歩ではなく、目的地ありの散歩に変わった。藍から提示された目的地、それは霧の湖だ。今までは近場だったため行ってみようとは思わなかったが藍からの提案で行ってみることにした。藍は自分の提案したからなのか俺の前を数歩先に歩くようにして先導してくれている。その心配りは主である紫に見習わせたいものだった。そう考えている俺も、なんだかんだで今まで行かなかった湖を見に行くのは楽しみであり、心が弾むようだった。かくして移動すること20分・・・辺りには段々と霧が立ち込め始めると目の前に大きな湖がその姿を現した。俺が湖の大きさに驚いていると藍がこちらを振り返り如何したのかとたずねてきた。「如何したんですか?まるで私に化かされたような顔をして」「・・・お前自分で言ってて恥ずかしくないか?」「・・・少し」「ふぅ・・・。なに、話に聞いていたよりずっと大きな湖だったからな、それに驚いたんだよ」「ははぁ、やっぱり化かされてますね」「・・・お前の幻術にか?」「違いますよ、この湖にです」「湖に?」「えぇ、この湖は昼に来ると今みたいに霧が立ち込めて実際よりも大きく見えてしまうんですよ」「という事は・・・」「はい、実際の大きさは歩いて半刻もしないうちに一周出来る程度の大きさなんです」「なるほどな・・・。確かにそれは化かされてるな」「ですね」なるほど、言われてみて気づいたが、確かにあまり大きな湖ではないかもしれない。霧のせいであまり視界はよくないが、よく見てみると霧の中うっすらと向こう岸が見えるような気がした。そうやって俺が霧の向こうを覗こうと目を凝らしていると、霧の中に小さな人型が浮かび上がってきた。霧の中、湖の上に人型?そう考えた俺はこの不思議現象に関して聞いてみようと藍へ振り返った。「なぁ藍」「なんですかアスカ様?」「霧の中に人影が見えるんだが、これは妖霧かその類なのか?」「っは?そんなはずありませんが・・・、どれどれ・・・」「ほら、あの辺りだ」俺が指し示した方向には先ほど見た人影がなぜか6体にまでその姿を増やしていた。藍は藍で何度か眼を擦りながら不思議そうな顔つきで此方に振り返ってきた。「確かに・・・人影ですね」「だろ?どうなってるんだ?」「はて・・・以前夜に来た時には特に何も無かったんですが・・・」「そのときに霧は?」「出てませんでした」「意味無いじゃん」「・・・・・・そうですね」そうやって思ったままに返事をすると藍も気付いたのかしまったと言うような表情を作った。その間にも霧の奥に見える人影はどんどん増えてくる。そして、人影が20に届こうとした時、此方に近づいてくる人影が二つ。「あんた達にね!あたいの紐張りの中に入ってきた乱入者は?!」「やめようよ、チルノちゃ~ん」霧の奥、人影から声が聞こえたかと思うと霧の中から二人の少女が現れた。少女らの背には羽が付いておりそれで宙に浮いているようだ。薄い透明な羽が付いている少女は明るい緑色の髪をしており、その顔は時折此方を見てはビクビクと怯えてはもう一人の少女を必死に止めようとしている。制止を振り切ってなお此方に近づいてくる勝気な少女の背にも羽?の様なものが付いており、水色の髪に青いリボンを付けていた。なんだこの少女達はと俺が考えているとその答えは隣の藍から聞くことが出来た。「なるほど、妖精でしたか」「妖精?あれが?」「えぇ、そうです。自由奔放にして悪戯好きの妖精たちですよ」「へぇ~、アレが妖精か・・・初めて見たな」「ちょっとあんた達!なに無視してるのよ!!」「チルノちゃ~ん」俺と藍だけが会話しているのが気に入らないのかある程度近寄ってきた青少女が話しに割り込んできた。緑少女は相変わらず青少女の袖を引っ張ってそれを止めようとしている。なんとなくだが、苦労してるように見えてしまう。俺がそんなことを考えていると隣にいた藍が先に会話を始めた。「ふむ、私達は先ほどここに着たばかりなので何かに乱入した覚えは無いのだが?」「誤魔化したって無駄よ、この湖はあたいの紐張り。そこに入ってきたあんた達は乱入者よ!」「チルノちゃん、紐張りじゃなくて縄張り。それと乱入者じゃなくて侵入者。ついでに湖はみんなのものだからチルノちゃんだけのじゃないよ~」「そうとも言うわね」「そうとしか言わないだろう・・・」そう会話を締めくくった藍はこめかみを押さえ、緑少女も何かを諦めるように首を左右に振っていた。その中で唯一、青少女だけが偉そうに腕を組んで胸を張っている。なるほど・・・要するに、「バカなんだな」「っむ、人間の癖に生意気ねって、あたいはバカじゃない!ねぇ、大ちゃん」「えぇ~!え、えっと・・・、チルノちゃんはバカなんじゃなくてちょっと足りないだけなんですよ」「ほら、大ちゃんもこう言ってる」「・・・今の会話の何処に自慢するようなことがあったよ?そっちの緑髪の少女もはっきり言ってあげないとダメだよ」「ふん、負け惜しみを言っても無駄よ。ほら、大ちゃんからも言ってあげなよ、バカって言う奴がバカなんだぞ~って」「えっと、えっと~・・・」緑少女は青少女に促がされているが顔をキョロキョロと左右に振りながらどうするべきか困っているようだった。というよりもあの慌てっぷりだと本当に困っているな。そう考えながら、藍に気になったことをたずねてみた。「なぁ藍、妖精ってあんなのでいいのか?なんとなく想像と違うんだが?」「その想像がどんなものだったかは知りませんが大体あんなものですよ。まぁ、あそこまで偉そうにしている妖精ははじめてみましたが」「となると一般的な妖精はあっちの緑色や霧の奥にいるのがそうだと」「そうですね、あの青い妖精みたいにいきなり姿を現すほうが稀ですね」なるほど、レア物だったらしい。俺がそう考えていると何時の間にやら話し合いが終わったのか青少女が此方を指差して偉そうに宣言した。「あんた達、よくも大ちゃんを困らせたわね!仕返ししてやる!!」「「っは?」」「食らいなさい、あたいの最強攻撃を!!」あんまりな発言に俺と藍は声を合わせて呆けてしまった。その間にも、青少女の手の中にはなにやら怪しげな光が集まっていく。まったくもって嫌な予感しかしない、そんな状況だった。ちなみに、緑少女は視界の端で頭を抱え込み左右に振っていた。<おまけ>「あら、田吾作さん何をやってるの?」「ん、茜さんでやすか、こんにちはでやす」「こんにちは。それで、何を?」「アスカ様から人里の地蔵を頼まれやしてね、それを作ってたでやすよ」「・・・材料が紙に見えるんだけど?」「でやすよ」「お地蔵様って普通石じゃないかしら」「常識に囚われてはいけないでやす」「そうなの?」「そうでやすよ。しかもこれはただの紙じゃないでやす。あっしが今回のために特別に作って用意した段坊流でやす」「段坊流?」「そうでやす。随分昔にアスカ様から頂いた段坊流箱をあっしら河童が研究、分解、構築を繰り返して手に入れた神秘の素材でやす」「神秘の・・・素材・・・?」「作る工程が難しい上に原材料も手に入れにくいでやすから貴重品なんでやすよ」「なんか・・・凄い紙なのね」「でやす。この段坊流で作れば最早盗まれる心配も無く、雨にも風にも雪にも雷雨にも・・・鬼にも負けないでやす」「鬼にまで!!」「凄いでやしょう。更にこのお地蔵様にお供え物をすると先着一名に一刻の間、姿を消せるといったご利益が付くんでやす」「・・・凄い地蔵ね」「その通りでやす」田吾作の工房(アトリエ) ○月×日 発売----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------リクエスト+次回予告どうも、お手玉の中身です。今回は後書の代わりにリクエストを久しぶりに取りたいと思います。リクエストの募集 リクエストといっても簡単な投票になるので感想がめんどくさかったり別にいらねーよというのでしたら無視して下さって大丈夫です。 さて、問題のリクエスト内容ですが・・・健康マニアの焼き鳥屋に関してです。 今回の一連の流れが終わった後、彼女をINさせるかどうか投票にて決を採ってみたいと思います。 ただし、彼女がこの段階で出ると、出なかった場合の可能性は当然潰れてしまうので慎重に投票をお願いします。 投票期間は、次の投稿までに3票以上集まった場合にINします。 投票方法は感想の中に・・・これといって思い浮かばないのでそれぞれの熱いパトスをぶつけて下さい。以上、久方ぶりのリクエストでした。(追伸・他の奴が見たいぜといったリクエストもありです)では、次回予告お願いします。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------登場の可能性があると聞いてやってきたぞ・・・寺子屋はまだ無いのに霧の湖で妖精の襲われた薬屋!妖精の力はたかが知れているが、かの妖精は格が違う!一体どんな方法でこの難局を乗り切るのか?!というか薬屋じゃ無くて狐が対応するべきなんじゃないのか?(※先生はアスカのことを知らず薬屋として認識してます)次 回 「彼女を出すと私の出番が・・・・・・」 っく、なんて卑劣な・・・私か○○○しか出れないなんて!! by.焼き鳥屋