「ようこそいらっしゃい♪私の新しい晩御飯♪」最悪だ・・・目の前には口の周りを紅く汚した妖怪の少女。その周囲には元人間だったらしい肉塊の数々。どうやら俺は、どこぞの妖怪の晩御飯にお邪魔してしまったらしい。しかも俺のことまで食べる気満々といったところだろうか。だがしかし、既に一人食べた後なら腹も膨れているはず、其処に話し合いの余地も出てくるだろう。そう考えた俺はなるべく穏便に終わらせるべく話し合いを始めた。「え~っとだな・・・、俺は晩御飯じゃないんだが」「何を言ってるの?あなたは人間、私は妖怪。ほら、あなたは私の晩御飯♪」妖怪の常識で一蹴されてしまった。まだだ、まだ俺のターンは終わってない!「えっと・・・、既に一人食べたんだろ?ならもういいじゃないか」「何人食べてもおいしい物はおいしい♪」「・・・ちなみにお腹は?」「腹六分ってところかしら」これもダメらしい・・・。まだだ、まだ諦めるには早すぎる!!「俺はかなり強いから戦うととっても痛いぞ?」「何の道具も持っていない人間にやられるほど私は弱くない♪」「いや、お前でも知らないような強い人間もいるかもしれないぞ?」「そんな人間どこにいるの」「目の前に」「目の前にいるのはおいしそうな晩御飯♪」・・・さっさと適当に気絶させたほうが早い気がしてきた。俺は話がまったく通じないニコニコと笑っている少女を前にしてそう考え始めた。すると、少女はこれ以上話をする気が無いのか、その爪を振りかざしながら飛び掛ってきた。「もう話はいいわよね?それじゃあ・・・、いったっだっきm「っあ」へぶぅ?!」しまった、少女が急に飛び掛ってくるものだから拳骨で叩き落してしまった。叩き落された少女は顔面から地面にへばりついていたが手加減していたせいだろうか、すぐさま起き上がると後ろへ飛びずさることで俺との距離をとった。先ほどまでの立ち位置に着地した少女はその目に一杯の涙をため、拳骨が当たった箇所を両手で押さえて蹲ってしまった。「うぅ~、いたいよ~~」「えっと・・・、とりあえず、すまん・・・」「すまん、じゃ無いわよ!晩御飯なら晩御飯らしくおとなしく食べられなさい」「いや、だからな「うるさい!」・・・」「今度は叩いたりしたらダメなんだからね!では改めて・・・いったっだっきm「てい!」へぶぅ?!」叩いたらダメといわれたので踏んづけてみたが・・・ダメだったろうか。再度飛び掛ってきた少女をそんな風に考えながら頭の上から足で踏んづけている俺がいた。やはり手加減したせいか足の下では少女がジタバタともがいている。なにやら必死そうだったので足をどけてみると、少女はすぐさま起き上がり先ほどと同じように後ろに飛びずさった。少女は口に砂が入ったのだろうか苦虫をかんだような顔をしながら唾を吐いていた。「うぇ・・・、っぺっぺ、何するのよ!砂を食べたじゃない」「いやな、叩くなと言われたから踏んだんだが・・・ダメだったか?」「ダメに決まってるでしょ!!今度は叩くのも踏むのもダメだからね!」「だからな、「うるさい!」・・・」「それじゃあ今度こそ・・・、いったっだっきm「そ~い!!」へぶぅぅぅ?!」3度目の正直といわんばかりに飛んでくる少女を今度はその勢いのまま後ろへ投げ飛ばしてみた。少女は飛び込んできた勢いのまま投げられたせいで見事な顔面スライディングを見せてくれている。その勢いが止まった時、少女はその場で起き上がると此方を涙目で睨みつけてきた。怒っているようだがその容姿と砂だらけの格好、更には涙目でまったく持って迫力が無く、むしろ可愛らしいぐらいだった。なんだかな~・・・そうやって俺が考えていると、少女は涙目のまま再び口を開いた。「なんでよ!あんた私の晩御飯でしょ?!おとなしく食べられなさい!!」「だから晩御飯じゃないといってるだろうに・・・」「知らないわよ!そんな事!!」「あのなぁ・・・」俺がそうやって呆れていると、少女は何かに気付いたのか服の裾を払いながら勢いよく立ち上がると、此方を指差しながら宣言してきた。どうでもいい事だが、人を指差してはいけない。「いいわ、其処まで抵抗するなら私の能力『歌で人を惑わす程度の能力』でその目を鳥目に変えて食ってやる」「それは耳を塞げばいいだけの話じゃ?」「ふふん、そう思うならそうすればいいわ。そんなことじゃ私の歌からは逃げられない!さぁ、鳥目になりなさい!!~~♪~~~~♪~~~♪~~~~~~~♪」なるほど、惑わされてしまうのも分かるようないい歌だ。しかしだ・・・目に見えない歌の影響から俺は既に『逃げている』状態だ。普通に歌を聞かせてもらってる状態だな。そう俺が考えていると少女は歌い終え、改めて此方を指差しながら宣誓してきた。「どうかしら私の歌は!もうあなたは私の声以外何も聞こえない、鳥目の状態のはず」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「恐怖で声も出ないのね、安心しなさい。痛いのは一瞬だけだと思うから」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「それじゃあ今度こそ・・・、いったっだっきm「不意打ち御免!」へぶぅ?!」最初に戻るではないが、俺が鳥目になったと勘違いした少女が突撃してきたので拳骨でそのまま撃墜した。俺の下で潰れている少女の頭からは煙が出ている様が幻視できる。少女は再び起き上がると先ほどと同じように後ろへ飛びずさろうとした。流石にこのまま逃がしてはさっきと同じになると思った俺は、飛び逃げようとする少女の足をとっさに捕まえてしまった。「へぶっ?!」飛んで逃げようとした相手の足を掴めばそりゃ顔面から落ちるよな・・・反省。その場で少しの反省をした俺は少女と話し合いをするため足から手を離し少女をその場に立たせた。少女は悔しさからか涙目ながらも此方をにらみつけてくる。さてどう切り出すべきか・・・と、俺が考えていると都合の良いことに少女が先に口を開いた。「なんでよ!何で鳥目になってないの?!というかご飯なんだからおとなしく食べられなさいよ」「だからな・・・、何度も言ってるが俺はご飯じゃないといってるだろう」「だってあなたは人間じゃない。それなら私のご飯に決まってるわ」「ふぅ・・・、お前、その羽を見る限りだと鳥の妖怪だろ」「そうよそれg「ならちょうど良い」?!?!」「鳥は小骨が多いらしいが・・・なに、食ってしまえば全部同じだろう」「っぴ?!」少女の言葉を遮り、殺気を滲ませながら喋る俺の言葉に目の前の少女は顔を青くしている。腰が抜けたのだろうか、少女は地面へペタンと座り込むと、身体をがたがたと震わせ始めた。俺はそんな少女を威圧するように更に殺気を浴びせ掛けた。「それで?何処から食ってやろうか?」「い、いや・・・、いやぁ~・・・」「知ったことか。俺は人間でお前は鳥、鳥は人間の食料だろ?」「い、いやぁ・・・。た、たべないでぇ」「きこえんなぁ~」「や、やぁ~・・・」俺が一声かける度に少女はその身を竦ませ、声を小さくしていった。最早少女の顔は血が通ってないかのように白くなり、その瞳からはぼろぼろと涙を流し、恐怖に失禁したのか辺りには異臭が立ち込め始めていた。これくらいでいいだろう。そう考えた俺は助けを懇願している少女へ殺気を抑えて改めて声を掛けた。「ひ、ひっく、お、お願いです。ひっく、た、たすけてください~」「じゃあもう一度聞くが俺はなんだ?」「ぐすっ、ご、ご飯じゃない人間です」「お前は?」「ひっく、あ、あなたを食べない妖怪です。ぐすっ、だから助けてください~」「ふむ・・・」「・・・・・・・・・・・・・ひっく」「ふぅ・・・、いいだろう今回だけは見逃してやる」「そ、それじゃあ」「ただし!また俺をご飯扱いするようなら・・・」「わ、分かりました!二度としません!!」「よろしい」少女は助かった安心感からだろうか、完全に力が抜けた様子で呆然としている。なるほどな・・・、妖怪相手には最初から力で脅しつけたほうが襲われなくてすみそうだな。そう考えた俺は、今後増えてくる妖怪達への対処法が見つかり自然と笑みが浮かんでしまった。すると此方を見ていた少女が笑みに気付いたのか質問してきた。「あ、あの・・・、突然笑い出してどうしたんですか?」「ん?あぁ、これからの方針が決まったんで、それでな」「そうなんですか。あなたは本当に人間ですか?あなたが喋ってる間とっても怖かったんですが・・・」「失礼なやつだな。俺は食べられない人間だよ」「はぁ・・・」少女は何処となく納得出来ないような顔つきで曖昧な返事を返してきた。毎度の事ながら俺は人間だというのに・・・失礼なやつらだ。何か仕返しは・・・そう考えた俺の中に素晴らしすぎる考えが舞い降りた。その考えを実行するために俺は早速、少女へと話しかけた。「そういえば・・・お前、名は?」「っへ?名前ですか・・・。えっと、何ででしょう?」「何ででもいいから、名は?」「え、えっと・・・『ミスティア・ローレライ』です」「ふむ・・・それなら今日からお前の呼び名は『ぷっくる』だ」「っへ?な、何なんでしょうか、その呼び名は」「何って、俺がこれからお前を呼ぶときの名前に決まってるだろう。ぷっくる♪」「い、いや~=~¥?☆~!!そんな名前いやすぎます。ゆるしてください~」「ダメだぞぷっくる。我がままばかり言ったら♪ダメだぞぷっくる。言うこと聞かないと食べちゃうぞ♪ダメだぞぷっくる。ぷっくるはぷっくるだろ♪」「確かに食べられたくないけど、それもいや~!誰でもいいから助けて~~~~!!」その晩、夜雀の歌声の代わりにこの世の終わりと言わんばかりの悲鳴が幻想郷中を駆け巡った。その悲鳴を聞いていたA・Sさんは涙ながらにこう語ったそうな。「分かります・・・その気持ちよく分かりますよ」運の無かった哀れな夜雀に黙祷・・・<おまけ>何処かの平原「なぁ、おやっさんの店・・・今日も平和だったな」「当然だろ、俺達が守ってるんだぜ」「そうだな・・・でも、寂しいな」「たしかにな。しかし、これが俺達の決めた道。そしてその為に得た力だろ」「そうだな、たしかにそうだ!」「応、だから今はおやっさんの店を狙う邪悪な妖怪を追い払うことだけを考えるんだ!それまで寂しいなんていってられないぜ」「そうだな・・・しっかし、奴らも大概しつこいよな~」「たしかにな~、こんな時、旦那がいてくれたらな」「旦那・・・元気かな~」「あの旦那なら元気に決まってるだろ」「そうだな・・・よし、それじゃあ今日も張り切って修行をしますか」「よし、やるぜ!!」何処かの森に住みついた誰かの会話----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。今回は新たな名前の犠牲者を生むことになってしまいました。でもそんな事一切気にしないのがお手玉の中身です。今回の話を作りながら既に次の登場キャラが決定した不思議・・・そして流れからその次まで決まりました。次回予告から予想できる人もいるかな?そんなわけで、早速次回予告です。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------元白狼Aこと茜です。出番が少なくなってきてるのでここに出してもらいました。夜雀から学んだことの大きさに感謝するアスカ様その日々は平和に彩られていましたそんなときに来訪するのは欲張りなもふもふ彼女と共に散歩する先は?次 回 「『道に迷うは、妖精の所為なの』だ、そうです」 せ、先輩!次の行き先言っちゃってますよ!! by.椛