ルーミアと分かれてから数日後。俺は名も知らない町で休憩していた。その間はまさに、日常にしたくない日常が続いた。山で、川で、森で、幻想郷なら襲ってくるようなことの無い名も無き妖怪や妖獣、毛玉が俺に襲い掛かってきたのだ。こうやって思い返すと随分な数に襲われたと思うが、いかんせん勇儀や萃香の鬼の面々や幽香との戦闘を経験した俺にとっては取るに足らない存在だった。攻撃は鈍く、体は脆い。その上、根性も無いから仲間がやられるとすぐ逃げる。気分的にはLvMAXの状態で雑魚と常にエンカウントする気分だった。つまりは・・・非常にめんどくさかった。そんな、ささくれた気持ちを癒すため町の団子屋で休憩をしていた。そうしていると目の前で一人・・・いや、二人の男が立ち止まった。一人は黒い短髪に黒く日焼けした何処にでもいそうな男だったがもう一人は銀髪という日本人離れした髪の色をしていた。俺が二人を観察していると日焼けしたほうが話しかけてきた。「もしかして・・・アスカ殿ですか?」「へ?!確かに俺はアスカだが・・・どこかであった事が?」まったく見覚えの無い二人に俺が聞き返すと、二人は返事をせずにお互いを向き合い驚く内容を言い合っていた。「何でアスカ殿がこの時代に??」「まさか『蓬莱の薬』を?!」何でこいつらがその薬のことを知ってるんだ?!見知らぬ二人は俺がいることに驚いているようだが俺にしてみれば薬の存在を知っていることのほうが驚きだった。なんせ蓬莱の薬・・・竹取物語は数百年も昔に幕を下ろしているからだ。「おい、何でおまえらが薬のことを知ってるんだ?」俺がそうやって、威圧をかけながら詰問をすると、見知らぬ二人は知り合いかの如く返事を返してきた。「あ、アスカ殿?」「我らがわかりませんか??」「まったく分からん。見覚えすらない」「「あっ!」」二人は何か勘違いに気付いたように顔を見合わせるとお互いに頷き、納得気な顔でこちらにへ振り向いてきた。「確かにこの姿では分かりませんよね」「うっかりしてました」「だからなんなんだよ?」「「俺達は警備兵です」」「??だからどうした?」「「輝夜姫様のお屋敷で働いてた」」「・・・・・・・・・・・は?!」「今世での俺は『黒陽』」「そして俺が『影月』」「「現職業は警備兵にして商人見習い!!」」「はぁ~~~~~~~~~~!?!」その言葉で俺は一気に混乱した。まさか、あの時の警備兵に再会するとはまったくの予想外だったからだ。というよりも本来なら死んでる人間だ。死人が迷い出たにしては血色が良すぎる上に、以前見た顔とは似ても似つかない。どういうことか詳しく聞くために俺は更に質問を続けた。「ちょ?!待てよおまえら、警備兵?しかも輝夜のいた所の??何で生きてんだよ?!」「それは俺達のほうが聞きたいですよ」「そうですよアスカ殿」「俺は特殊な事情があって不老になった。以上!ほら、次おまえら!」「軽っ!そんなノリで言っていいんですか?!ってか特殊な事情って??」「俺が良いんだからいいんだよ。特殊な事情は特殊な事情だ!納得しとけ!!ほら、さっさとおまえらの事情も話せ!!」「いえ、流石にそれだけで聞こうとするのは「さっさと吐け」分かりました~!!」俺の返答に不満があるかのように言い返そうとする二人の言葉に脅し文句を重ねることで反論を封じ、そのまま答えるように促がした。二人はまだ納得はしていないようだがしぶしぶと事情に関して語り始めた。「え~と、俺達は人間ですから当然のように天寿を全うして死んだんですよ」「というか、よく考えると死んだ日と時間まで一緒だったんだからある意味凄いよな、俺達」「そうだよな~」「どうでもいいからそんな事。死んだんなら何でここに居るんだよ?!さっさと続きを喋れ!!」「わ、わかりましたよ」「俺達死んだ後に閻魔様のところに連れて行かれるんですが、」「その時にですね、記憶を持ったまま転生させて貰えるって話を当時の雇い主さんから聞いてたんですよ」「輝夜からか?」「その後の雇い主です」「あれなんて言ったけ?」「確か・・・なんだっけな?」「何でもいいからな、・・・つ・づ・き!」「ひぃ?!怒ってらっしゃる」「え、え~とですね。その転生方法が閻魔様に予め了解を取って、死んだ後に閻魔様のところで仕事を百年以上手伝うってのが条件だったんです」「・・・・・・いくらなんでも、閻魔様に予め了解を取るのは無理だろう?」「それがですね、俺達の雇い主がそれをやるって言ったんで」「それは面白そうだと、俺達も付いて行ったんです」・・・さすが警備兵、普通じゃ考えもしない行動をとる。まさか面白そうだけで、閻魔のところにいくとは・・・。「そしたら閻魔様のところでの仕事が溜まりに溜まって」「いざ死んだ後に百年どころか三百年近くも書類仕事漬けでしたよ」「・・・大変だったんだな~」「「大変だったんですよ~」」いかにも苦労しましたと言うような顔でのほほんと語る二人だが・・・、ホントにいろんな意味で無駄に凄いやつらだ。「それで、無事転生を果たしたおまえらが何でこんな所に?」「俺ら転生してみたはいいものの、特に目的とか合った訳じゃないんで・・・」「ここにいるのも完全に偶然だよな~」「今は、大きな道具屋で商売の勉強しながら警備兵やってるんですよ」「前世、警備兵だった俺達にとっては朝飯前の仕事。それと同時に商売の勉強もして一旗あげようと考えてるんです」「なるほどな~」転生の理由はかなりどうでもよかったが、今はまともな目的を持って生きているらしい。となると、気になる事も出てくる。「それだと今は、その道具屋で警備をやってるのか?」「「そうです」」「ふむ・・・警備を雇うほど大きな道具屋か・・・。ちなみに看板は?」「それは・・・、何だっけな銀月?」「忘れるなよ・・・自分の職場を・・・。店の名前は『霧雨道具店』です。近くにきたら是非よってくださいよ」「それなら早速今から行かせてもらおう。ちょうど薬を作るためのすり鉢とかがダメになってきてるんだ」「そうなんですか」「なら案内させてもらいます」こうして懐かしい、正確に言えば初対面の二人に案内され霧雨道具店へ向かった。・・・青年移動中・・・・・・「だ、誰かそいつを捕まえてくれ~~~~~~~!!」二人の案内で霧雨道具店へ向かっている最中、突然誰かの叫びが聞こえたと思ったら目の前から凄い勢いで男が走ってくるのが見えた。「ど、泥棒だ~~~!捕まえてくれ~~~~~!!」叫び声に追われるようにこちらへ走ってきているのが泥棒なのかと考えていると、俺を案内していた二人が顔を見合わせて頷きあい、そのまま泥棒らしき男の前に立ちはだかった。「まてぃ、この泥棒が!俺の拳に打ちのめされろ!」「まてぃ、この泥棒が!俺の脚に蹴り飛ばされろ!」そう二人は言い終えるとそのまま泥棒らしき男へ突っ込んでいった。「くらえ!黒陽の拳!!」うわぁ・・・技を言い放つと同時に黒陽のパンチが男の顔面に抉り込むように打ち込まれ、男はそのまま後ろに吹き飛ばされてしまった。そこへ、跳び上がっていた影月が下降しながら追撃を放つ。「くらえ!影月脚!!」ひでぇ・・・仰向けに吹き飛ばされた男の腹に上空から降ってきた影月の足、もとい蹴りがめり込んだ。・・・泥棒らしき男は生きているだろうか・・・?「「正義は勝つ!!」」この二人はノリノリである・・・男は完全に意識を失っているのかピクリとも動かない。そこへ追いかけていたであろう身なりの良い男が走ってきた。「はぁはぁはぁ、やっと、はぁ、おい、はぁ、ついた、はぁ」男はそのまま荒い息を整えると、やっと落ち着いたのかこちらに向き直り、驚きの表情を浮かべながら口を開いた。「おまえらっ?!黒陽と影月じゃなか!!」「「おやっさん?」」「知り合いか??」どうやら追いかけていた男は二人の知り合いらしい。なぜか二人の顔が多少青く見えるのは気のせいだろうか。身なりのいい男はそのまま目をつぶると体を細かく震えさせながら口を開いた。「二人がこそ泥を捕まえてくれたことには礼を言おう・・・」「「は、ははは・・・」」「しかしだ・・・、店番せずに何処でサボってんだこのろくでなし共が~~~!!」「「す、すいませ~~~ん!!」」見事な土下座だ・・・と言うよりもこの二人、生まれ変わってまでサボるなよ。閻魔の手伝いもサボってたから転生遅れたんじゃないのか??男の説教はまだ続いている。「まったく、おまえ等ときたら何時まで経っても・・・ぐちぐち・・・くどくど・・・」とは言え、何時までもこんな道の真ん中で説教を聞いてるのもアレだしな、そろそろこちらに気付いてもらいますか。「あ~、ちょっといいか?」「ん?なんだあんた?俺はこいつらに今日という今日こそは商売がなんたるかを教え込もうと思ってるんだが・・・」「それはいくらやってくれても構わんが、後にしてくれないか?」「なんだと?!」「そいつらに店を紹介してもらうことになっていてな。道案内が無いんじゃたどり着けそうにも無いんだよ」「っむ?店の紹介じゃと」俺と男との会話を聞いていたのか黒陽と影月がこれ幸いとすかさず話しに入り込んできた。調子のいい奴等だ。「そ、そうなんすよおやっさん」「こちらの方は俺らが昔世話になったことがあって、商売道具を新調したいって言うんで店まで連れて行こうとしてたとこなんすよ」「ふむ、そういうことか・・・。いや、失礼したお客人。見苦しいものを見せてしまったな。」「構わんよ。その二人がサボっていたのは事実だ「「ひどっ!!」」・・・うるさいぞ」「そういっていただけると助かります。私の店はこちらになりますのでどうぞ付いてきて下さい。黒陽、影月。そこの盗人を役人の所まで連れて行っとけ」「「わかったぜ、おやっさん」」「んで、戻ってきたら説教だ」「「そりゃ無いぜ、おやっさん」」「それじゃあ行きましょうか・・・、そういえば自己紹介がまだでしたね。俺は『霧雨藤兵衛』、店の連中からはおやっさんと呼ばれてる」「俺はアスカ、あいつらとは昔、職場が近くてね」「ほぉ~」その後、俺は藤兵衛さんの案内で霧雨道具店を目指した。・・・青年移動中・・・「よし、着いたぜ。ここが俺の店、霧雨道具店だ。ほら、中に入ってくれ」そうして到着した道具屋はなかなかに立派な店だった。見かけだけで評価するなら中の上、繁盛している道具屋だと分かる。中に入ってみると品揃えも十分満足のいくものだった。後は詳しく見て、質を確認してみるだけだ。そう考えながら棚にある品々を見ていると、後ろから声を掛けられた。「どうですか?アスカさん。うちの品は?」「品揃えは満足のいくものですよ藤兵衛さん。後はそれぞれ欲しいものを幾つか見せて貰いたいんですが、手にとっても大丈夫ですか?」「もちろんですよ。我が霧雨道具店の品はここいらでは一番のものです。当然、手にとって確認してもらって結構ですよ。まぁ、そのせいでさっきみたいなのも出るんですがね」「いい道具屋の宿命ですね。それじゃあ・・・、これと・・・それと・・・それ、ちょっと見せてもらいますよ?」「どうぞどうぞ、あ、そちらの品は奥にもっと良い物がありますからそれを持ってきましょうか?」「良いんですか?」「なに、あの二人の知り合いなら問題ないでしょう。普段の行いが不真面目な二人ですがアレで勉強熱心なやつらでして・・・。あの二人の昔からの知り合いなら良い道具を譲りたくなってくるもんですよ」「そうですか。ありがとうございます」「道具屋として当然のことですよ」「「おやっさん。ただ今戻りました~」」「よし、おまえらも来い。アスカさんに蔵の道具を見せて差し上げるんだ」「「うっす!!」」こうして俺はあまりにも懐かしく予想だにしていなかった再会を果たしたのだった。人の縁が何処から何処へ繋がっているのかまったく持って分からないものである。<おまけ>町人の声町人A「あ、あれは!『黒陽の拳』!!」町人B「知っているのか、町人A!!」町人A「あぁ、あの技は昔栄えた悪の組織『五流五夢』を倒すために編み出された黒き王の必殺技らしい」町人B「すげぇな・・・」町人A「まったくだ・・・。んな?!あれは!『影月脚』!!」町人B「再び知っているのか、町人A!!」町人A「あぁ、あの技も五流五夢を倒すために編み出された必殺技とのことだ」町人B「すげぇな・・・あんな警備兵雇ってる店には近寄れないぜ」町人A「まったくだな・・・他で買うとしよう」霧雨道具店移転前の町人の噂----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうも、お手玉の中身です。今回の話を作り終わって気付いたことが一つ。・・・少女が一人も出ていない!!東方二次のはずなのにorzそんなことを考えながら次の話をどうするか頭を悩ませるお手玉の中身でした。では、次回予告です----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------今回の次回予告は姫様の代わりに私がやりますね誰にも期待されてなかった再会アスカさんどころか読者もがっかり過ぎた再会次の話は舞台を移して漁村の話時を飛ばすために新たな一工夫次 回 「思いつきで作った、後悔はしていない」 えーりんそんな予告でホントに良いの~----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------