季節は春そろそろ色々と湧いてくる時期である。虫とか頭とか馬鹿とか・・・・・・あの宴の翌日、俺は自分の力を見せるため勇儀、萃香と早速、戦うことになった。結果としては惜敗。美鈴から授かった武術を磨き続けていたお陰で勇儀の怪力や萃香の能力に早々にやられる事は無かったが、体力や耐久力、力の全てが記憶に残るものよりも遥かに強くなっていた。これが師匠の言っていた鬼の成長期・・・・・・・・・。とてもじゃないが現状のままでは引き分けに持っていくのが精一杯だ。しかし、戦った直後にそんなことを考えるのは無粋なもの。今の評価は後日評価で戦った後にはお互いが強くなっていたことを讃えあい酒を飲んで眠ってしまっていた。次に黒いのはまだ諦めきれないのか俺を見つけると飛んで来て、「名前で呼んで下さい」と訴えて来るが、当然無視だ。名前で呼ぶにはまだ時期尚早、今はまだおとなしくからかわれていて貰おう。続いてチームもふもふこと茜と椛だ。茜は昔に比べると随分成長したようで、今では立派な白いもふもふになっていた。最早無意味に鬼に怯えることも無く時に意見する姿は堂々たるものだった。っが、たまにドジをするのは運命のようなものだろう。椛に関しては黒いののことが気掛かりなのか何とか俺に名前を呼ばせようとするもののなかなか上手くいかずに落ち込んでいる。とりあえず名前が呼べるようになったら彼女の策に引っかかってあげる事にしよう。最後はエンジニアチーム、河童のにとりと何処から現れたか田吾作だ。にとりは随分と俺に懐いたようではじめに怯えていたのが嘘のように意見を求めてくるようになった。田吾作は自分の発明した物を俺に説明しながら渡してくれた。是非とも今度、何かお返しがしたいものだ。ちなみに貰った物の中に段坊流箱の姿もあった。取扱説明書には、段坊流箱・魔亜苦通の文字が・・・・・・今回からの段坊流箱は隠すどころか見えなくするまで出来る優れものらしい。いよいよ河童が温厚でよかったと思う今日この頃である。それはさておき、俺は麗らかな春の日差しを感じながら大蝦蟇の池にある祠を掃除していた。掃除を終えた後に飲む池の水はまた格別なものである。そんなことを考えながらふと上を見ると・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだあれ?天狗とは違う鳥?のような羽に白の服を着て白の円錐状の帽子をかぶった子供?の様な物がふらふらと飛んでいた。そして反対方向に目を向けると更に奇怪なことに、グルグルと回転しながら黒い瘴気っぽい物を纏って飛んでいる何かが・・・・・・。どうやら俺は疲れているらしい、掃除も終わったので早速池の水を飲むとそれは大変おいしい水だった。これでもう大丈夫と思いもう一度空を見上げると白いのが瘴気の中に突っ込んでいくのが見えた・・・・・・・・・。・・・・・・っあ!白いのが落ちた・・・そんな光景を呆然と見ていると回転する瘴気がこちらへ向かって降りてきた・・・・・・。いよいよ俺ももうだめなようだ・・・・・・そんな風に考えていると瘴気の中から声が聞こえてきた。「ずいぶんと厄いですね~」「っは?」「厄いと言ったんですよ」そういいながら回転が止まっていき段々と姿が分かるようになってきた。明るい緑色の長い髪で頭には腰ほどの長さまでの臙脂色のリボン、洋服も全体的に濃い臙脂色に染まった女性だった。その周囲には相変わらず瘴気っぽいものが漂っていた。「(なんなんだこの人は?)」唖然としながらそう俺が考えていると頬を紅潮させた女性が再度口を開いた。「厄い、厄いですわ~、あなた厄いわよ~」恍惚とした表情で女性はそのように告げてきた。まずい・・・・・・春だからってホントに湧いてくるとは・・・・・・とりあえず逃げないと、と考えた俺はさっさと会話を打ち切ることにした。「えぇ~っと、さようなら」「ちょっと待って~、あなたの厄を回収させて」「厄?」「えぇ、あなたは随分と厄を溜め込んでいるはこのままじゃ災難に見舞われるわよ?」「えっと、その厄ってのは何ですか?」「厄とは災いのこと、人が日々積み重ね少しずつ己の内に溜め込む災いのことよ」・・・・・・・・・なるほど!確かに俺は厄いな!!それだけの説明で俺は完全に自分の状態に関して信じてしまった。旅に出れば道に迷う、目的地に着けば恐怖体験をする、家に帰れば喧嘩を売られて一騒動。そうか、俺は厄が溜まっていたのか・・・・・・・・・しみじみとそう考えている俺に女性は更に言葉を重ねた。「だからあなたの厄を私に頂戴」「欲しいなら差し上げますが・・・なぜ自らに災いを招くようなことを?」俺の疑問はもっともだろう。厄が災いの元だと言うならそれを受け取れば何かしらの災難に見舞われる。そんなものをどうして欲しがるのだろうか?「それなら大丈夫、私の役目は厄を集めて神に渡すこと。その私自身が厄に見舞われることは無いわ」「そーなのかー」なるほど世の中うまく出来ているものだ。そこで俺は、早速近づきながら厄を渡そうとした。「それじゃあどうすればいいのかな?近づけばいいのか?」「へ?だめ、ちょっとまっ・・・てって・・・あれ?」2・3歩進んだところで女性に制止の声をかけられたので止まってしまったが女性は不思議そうな声を上げた。それから女性はこちらに近づきながら困ったような困惑した表情を作った。「え?!あれ?!ええと、えい?!なんで?とりゃ?!」女性は必死に宙をつかむ様な動作を続けているが・・・・・・・・・何かの儀式なのだろうか?疑問に思ったらとりあえず聞いてみる、早速たずねてみることにした。「・・・・・・・・・えっと、何かの儀式ですか?」「っへ?!あぁ、あわわ、お恥ずかしい所を・・・・・・」女性はさっきとは別の意味で赤面してしまった。「え~と、それがですね・・・」「はい」「あなたの厄が捕まえられない、もとい集まらないんです」「・・・・・・はい?」「不思議なことに私の周囲にある厄もあなたを避けてますし・・・・・・こんなことは初めてですよ」女性はそうやって困惑しながら返事を返してきた。厄が避ける?捕まえられない?なんだそれは。「厄を集めるのに何か必要な手順があるのでは?」「いえ、それは無いですね。私の能力は『厄をためこむ程度の能力』。今まで意識せずとも近づいただけで厄は集まりましたし、私の中に入らなくても周辺に必ず漂う様になってますから」「それじゃあ一体何が・・・・・・」俺がそうやって悩んでいると女性が突然驚きの声を上げた。「っあ!!」その声を最後に俺の意識は暗闇に閉ざされた。・・・青年気絶中・・・・・・・・・・・ここは何処だろう・・・。周囲は霧が立ち込めているかの様に白く靄が掛かっており自分が何処に立っているかも分からない。ふと気づいたら目の前には長い階段・・・その先には館が立っていた。見覚えの無い館を奇妙に思っていた俺は少し考え込んでいたが急に視界がぶれだした。足が勝手に階段を上り始めたのだ。俺がどれほど自ら歩みをやめようとしても足は止まることなく上り続けた。それから数分、いや数時間?それとも数日か?時の流れすらあやふやとなった俺の前には館の扉が鎮座していた。俺の体は相変わらず言うことを聞かずに扉を開け中に入ると、視界の中に緑色の長い髪をした女性が入ってきた。女性は口を開いて告げた「ようこそ、夢幻館へ。夢でありながら幻となっている現の人」女性は嗤いながらそう語った。夢幻館・・・・・・聞いたことの無い名前だ。女性は更に続けた。「されどここはあなたが招かれる場所ではない。人なら人たる場所へ帰りなさい。そして、私があなたを・・・・・・・・・・・・・・・」女性の言葉を最後まで聞くことなく俺の周囲は光に塗りつぶされていった。「だ・・・・・・、大じょ・・・・・・!」誰かが俺を揺すっている感触に、俺は痛む頭を押さえながら目を開いた。「っつ?!ったたた・・・、一体何が・・・・・・」「よかった?!目を覚ましたんですね」揺すっていたのは厄を回収していた女性、少しはなれた場所には白狼天狗の持っている大きな盾が見えた。俺はいったい如何したんだ?腰元から薬を取り出しながら俺は目の前の女性に尋ねてみた。「すみません・・・、ちょっと記憶があやふやなんですが一体何が・・・」「はい、実は厄に見舞われたみたいなんです」「厄に・・・ですか?」「えぇ、今まであなたを避けていた厄が一つあなたに付いたと思ったら空からあれが・・・・・・」そういいながら女性は大きな盾へと視線を向けた。どうやらあの盾が俺の頭に当たったらしい。その後、この女性が気絶していた俺を介抱してくれたのか・・・・・・「となると俺はどれほどここで?」「ほんの2・3分ほどでしょうか、その間にあなたの厄も回収できましたし。なぜかまた厄があなたを避けてるんでちょっとだけお世話させてもらいました。」「そうでしたか、この御礼はいつかしないといけませんね」「そんな?!元はと言えば私の厄が原因なのに・・・・・・」「気にしないで下さい。その原因は既に回収してもらえてるんならその後のことは俺への貸しです。」「そ、そんな?!貸しだなんて」「そうやって俺が思ってるだけなんですから貸しといてくださいよ?となるといつまでも恩人の名前を知らないのもあれだし・・・・・・。俺の名前はアスカです。この山に住んでいて鬼の羅豪の弟子をさせて貰ってます。薬師でもあるので何かあったらいつでも呼んで下さい。」「ふぅ、分かりました。私は『雛』。厄と共に流される神秘の流し雛『鍵山 雛』です。この山にも最近住みだしたからまた厄が溜まったら来て頂戴ね」そうやって自己紹介を終えた後、雛は再び回転しながら空に上がっていった。しまった・・・・・・、なぜ回るのか聞けばよかった・・・。今更呼び止めて聞くことも出来ずに後悔したものの、次にであった時に聞けばいいかと思い、俺はその場を後にした。後に残ったのは地面に転がっている大きな盾と存在感を微塵にも感じさせなかった大きな蝦蟇蛙だけだった。「・・・・・・・・・ゲコッ」鍵山雛と別れた後、俺は日課となっている散歩に移った。既に今日の目的である大蝦蟇の池の祠掃除は終わったためだ。今日は何処まで行こうかと考えながら俺は山を降り、遠くの景色を見渡していた。すると雛を見つけた時に見掛けた白いのが飛んでいるのを発見した。無事だったのか・・・・・・白いの・・・。忘れていたものの、落ちたはずの白いのが無事飛んでいることに安堵を覚え、どうせなら見に行ってみようと俺は白いのを目指して歩き出した。・・・青年移動中・・・・・・・・・そこは草原だった。あたり一面に青々とした芝生が茂り、太陽の光を浴びていた。これほどの草原になぜ気づかなかったのかと考えているとその理由はすぐに分かった。草原そのものが南向きに窪んでおり、俗に言うすり鉢上の地形となっていたため遠めでは見つけることが出来なかったのだ。俺がそんなことを考えながら草原の中は足を踏み入れると先客がいたのか日笠を差している人を見つけた。日傘に隠れて表情や性別は分からないものの、何処と無く穏やかな気配の人だ。「こんにちわ~」そうやって声をかけながら近づいた俺の背に冷たい風が通り過ぎた後のような薄ら寒い感覚が生まれた。声に気づいた人はこちらを振り返る。振り返った人の体型から女性と判別できたが相変わらず傘に隠れて表情が見えない。いや、うれしそうに嗤っている口だけが見える。その場で固まってしまった俺は目を離すことが出来ない・・・・・・日傘からその顔を覗かせながら嗤い終えた口は言葉を紡いだ。「あら、また会ったわね・・・・・・」拝啓、鍵山雛様。どうやら俺の厄はまだ残っていたようです。<おまけ>もふもふA「ねぇ、もふもふB」もふもふB「どうしたの?もふもふA」もふもふA「私達の盾って、武器にならないかな?」もふもふB「武器にって・・・結構侵入者を殴ったりとかしてると思うんだけど」もふもふA「そんなことしてたの?!」もふもふB「そんなことって、先輩達に教えてもらってからみんな結構使ってるよ?」もふもふA「そ、そうなんだ・・・、で、でも、私が言いたいのはそういう事じゃなくて!」もふもふB「じゃなくて?」もふもふA「ずばり投げつけたらどうだろうかって思ったのよ」もふもふB「投げるの?」もふもふA「そう、前に田吾作さんから武梅乱を見せてもらった時からずっと考えてたんだよ」もふもふB「あ~・・・、あの投げても手に帰ってくる道具ね」もふもふA「そうそう、そういうわけで早速・・・」もふもふB「っえ?ちょ、ちょっと?!」もふもふA「飛べ~~~~~~~!!」もふもふB「あ、あぁ~~~~!投げちゃったよこの子・・・」もふもふA「大丈夫だよ、また戻ってくるから」もふもふB「(大丈夫なのかな~)」白狼天狗が大蝦蟇の池で目を回す数十分前の会話記録----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+リクエスト+次回予告どうも、お手玉の中身です。今回の話はいかがでしたでしょうか?厄神様の能力をどう処理するか考えたのですが主人公君にも適当な能力を授けることにしました。能力ははっきり自覚してないので後々に田吾作辺りから説明があるかも。それと、再びリクエストをとることにしました。オリキャラ姉妹(原作キャラです)はその不遇の扱いからいじりやすいため結構ネタにしやすい。そこでそれ以降の登場キャラをそろそろ決めておこうと言ったとこです。前回と同じように明らかに年代的に無理なキャラもしくは、生まれてない様なキャラ以外はなるべく出して行きたいと思います。リクエスト方法も前回と一緒、感想掲示板のほうに書き込み形式で。決定したらまた順番を発表します。では、次回予告どうぞ。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------私が次回予告?分かったよ、盟友の頼みなら仕方が無い足りなかったのは雛の力かアスカ様の幸運か!春の太陽の畑で冷たい時が流れる!空気は変わり世界はどよめく!アスカ様の運命や?!?!次 回 「厄は全て取って欲しかった」 ど、どうなるんだ!次回も絶対読まないとな----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------