あれから伸びている勇儀を師匠が担いで移動し、師匠の家へと到着した。しかし師匠・・・、女性を俵担ぎにするのはどうかと思いますよ?師匠の家は以前のものと同じように洞窟の中にあった。と言うか師匠・・・どれだけ洞窟が好きなんですか?ついでにここまでの道中で追っ手の集団、白いもふもふ達が現れたが、師匠の姿を見た瞬間、毛を逆立てて固まってしまった。師匠が何のようだと尋ねると今にも泣きそうな状態になってしまったので、たぶん俺のことを追いかけてきた旨を師匠に説明し、もふもふ達には俺が師匠の弟子である事を説明した。もふもふ達は俺が師匠の弟子だと知ると白い毛並みが青くなるじゃないかと言うほど顔を青くして、ぺこぺこと謝りながら去っていった。どうやらこの山での師匠の評判はかなり恐れられているようだ。まぁ、鬼だから当然といえば当然なんだが。「どっこらせっと、それで?今日は一体どんな用で来たんだ?」師匠は勇儀を適当に放り投げると、座り込みながら尋ねてきた。勇儀は相変わらず目を回している。「いえ、ちょうど近くを通りかかったもので久しぶりに師匠の顔でも見ようかと・・・・・・それよりも勇儀は大丈夫なんですか?」「ふん、鬼たるものがこの程度でどうにかなるものか。それよりも見ておったぞ~アスカ~。しばらく見んうちに、随分と力が付いたようじゃないか?」「はい、あれから大陸に渡ったりして色々と経験してきましたから」「ふん、出会った頃はこんなちっこい餓鬼だったのに・・・。人間の成長は早いもんよな~」「いえ師匠?たしかに小さかったでしょうけどそんな指の先程度の大きさでは・・・」「ふん、俺様にとっては似たようなものよ」「そうですか・・・・・・」「ほれ、腕を出してみろ。治療してやる」そう言った師匠は俺の腕を取ると用意していた薬を塗り始めた。薬を塗っている最中も俺と師匠の会話は途切れることは無かった。そうこうしている内に薬が塗り終わったのか師匠は薬箱を片付け楽しそうな顔をして確認をしてきた。「アスカよ、今日はこれから何か予定でもあるのか?」「?いえ、特には決めてませんでしたが・・・、それが何か?」「ふむ、ならばちょうどいい。今晩、宴が開かれる予定なんじゃが、出ろ」「出ろって強制ですか?!いや、宴会なら喜んで行きますけど・・・」「そうかそうか、今日は久しぶりにうまいつまみが食えそうだ」「それが目的ですか・・・師匠・・・・・・」いままで聞かれた事が無かったので話の種に挙がらなかったが俺には料理スキルがある。とはいってもフルコースが作れたりするといったそんな高レベルなスキルではなく、前世で培った酒のつまみが作れる程度の能力だ。師匠との修行中にも何度か作ったことがあったがまだ覚えていたとは・・・・・・青年調理中・・・・・・・・・・・・・・・上手に焼けました~♪そして時は流れて、黄色い月が昇る頃山は飲めや歌えの大騒ぎになっていた。当然俺もその中に混じって飲んでいた。「あっはっはっは~、いいねいいねぇ。満足な勝負は出来たし、新しい友はできてうまい酒が飲める。っっっか~~~!!今日は鬼生最良の日だよ」隣では勇儀が上機嫌に杯を傾けている。あの後目覚めた勇儀は俺の名を聞くと師匠から軽く治療してもらいそのまま帰っていった。そして再びこの宴会場で出会った際に、「おいアスカ、あたしとの友誼の杯を交わしてくれ」と杯を出しながら言ってきた。断る理由も無い俺はそのまま黙って杯を呷ると、杯に酒を満たして勇儀に返した。そうして勇儀が杯を呷り、お互いに笑い合うことで俺と勇儀は友になった。今更ながら何とも照れ臭いものではあるが、男気に溢れた友情の結び方が何とも勇儀らしいと思った。なにより・・・・・・・・・光線で討ち貫いて友達になる魔王よりはよっぽどいいだろう。(勝負して友情を結ぶのも変わらないか?)「お~い、アスカ~つまみが足りんぞ~」「はいはい師匠、今行きますからちょっと待ってくださいね~ちょっと行ってくるぞ?勇儀」「おう、いってこ~い」勇儀が上機嫌で返事を返してくるのを背中に聞きながら師匠の下へ行ってみると随分と立派な身なりの天狗が話しかけてきた。「ん、お主が羅豪殿の言っておった人間の弟子か?」「俺以外に弟子がいなければその筈ですが、あなたは?」「おぉ、失礼したな。儂はここに住まう天狗を纏めておる、『天魔』と言うものだ」「あなたが?!噂は人里で聞いてはいましたけど・・・・・・」「ほう、儂の噂とな?それはど「んなのどうでもいいだろうよ」・・・羅豪殿よ、お願いですから空気を呼んでくだされ」「んなこと言ってもよ、別に噂話なんぞ、やれ人が浚われただの、やれ退治屋がやられただのと、その程度であろう?」「それは鬼の事ですよ、とはいえ確かにこの宴の席でするには少々無粋な話でしたな。いや、許してくだされ、アスカ殿よ」「いえいえ、俺は全然構いませんよ。それよりも折角の宴会ですからしっかりと飲んで騒がせてもらいますよ?」「ははははは、その心意気や良し。儂はアスカ殿が気に入りましたぞ」「アスカ~、いつまでも天魔と喋ってないでつまみ寄越せ~」「はは、ありがとうございます。師匠が騒がしいんでもう行きますね」「うむ」その返事を聞き、俺は師匠へのつまみを用意するため席を離れたのだった。・・・青年再び調理中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウルトラ上手に焼けました~~~♪なぜだろう、つまみを持って師匠の下へ戻ってみれば師匠をはじめ、勇儀や他の妖怪達まで俺を肴に笑いあってるじゃないか。鬼の会談曰く、俺は師匠の弟子であるとの事(今更である)曰く、俺は齢五つにして師匠の膝に土をつけたとの事(・・・・・・今更ながら罪悪感がむくむくと)曰く、勇儀との力比べに勝利したとの事(師匠がばらして勇儀が笑いながら認めた)曰く、それなら俺を鬼の仲間として認めようとの事(賛成で全員一致のようだ)って?!「ちょ?!いいんですか、俺みたいな人間を仲間にして?」慌てて話の輪に入ると師匠たちは笑いながら返してくれた。「がはは、百年以上いきとるくせに何を言っておる。それにおまえは俺様の弟子だ。俺様にとってはとうの昔に仲間のようなものよ」「あたしも問題無いねぇ、あたしが全身全霊をかけて勝負をしたんだ。そんな相手が悪い奴なもんか!大体、友達であるあたしがあんたと仲間じゃないなんて・・・・・・そんな事は言わせないよ?!」「うむ、儂等天狗もお主を仲間と認めることに意義はない。何より儂が気に入ったんじゃ、文句を言う者がおったら儂の翼で吹き飛ばしてくれる」そのほかの宴会に参加していた妖怪達も口々に、「勇儀との力比べに勝ったのなら認めないわけにはいくまい」「羅豪殿の弟子だし勇儀も認めておるからな~」「天魔様がお認めになられたんなら間違いはありません」と、俺のことを仲間にする旨を告げてきた。「あ、ありがとう・・・。俺、俺っ?!」あれ?おかしいな・・・・・・。きちんと礼が言いたいのに喉が詰まってうまく出ない。なんか視界も歪んできたし・・・。こんな時は酒を飲んでその勢いに助けてもらえば!!そう思って俺は手近にある杯を掲げ、一気に呷った。周りの鬼達・・・、いや、仲間達は「おぉ~!!」と騒いでいる。この日に飲んだ酒は少ししょっぱく、とても熱くなれる酒だった。<シリアスで締めようと思ったけどおまけ>白狼A「はぁ~」白狼B「どうしたの?白狼A。そんなため息をついて」白狼A「あ、白狼B。んとね、宴の最中にこうやって哨戒任務やってるとどうしてもね・・・。はぁ~」白狼B「あ~分かる分かる。でも、今日の宴は鬼さんと上級の天狗、それに天魔様しかいないから逆に出なかったほうが良かったんじゃ」白狼A「それもそっか。そう言えば今日の侵入者には驚いたよね~」白狼B「あ~、あれね~。見た目は人間にしか見えないのにね~」白狼A「そうそう。羅豪さんのお弟子さんて言うからきっと凄い妖怪なんだろうけど・・・。何の妖怪なのかな~」白狼B「そうだね~、ほかの白狼天狗たちにも聞いてみようか?みんなで追いかけたから結構見た子も多いし」白狼A「それいいね。早速相談に行ってみよう。 さぁ、続くんだ白狼B!!進め~~~~~~~~~~~~!」白狼B「っちょ?!待ってよ~~~~~!!」哨戒任務をサボった白狼天狗の言い訳より----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------どうも、お手玉の中身です。いかがでしたでしょうか?今回は主人公君に新しい絆を持たせるいい話に仕上げてみました。友達・・・仲間・・・いいものですよねぇ。一生の内に是非ともそういった存在が欲しいものです。さて、話は変わりまして再び確認です。今回の確認はおぜう様です。年代的に出すことはかなり無理なんですがそれでもフラグを立てる方法をお手玉の中身は考えています。ゆゆ様のときと同じように次の投稿までに3票以上出演依頼がきたらフラグを作成します。では、ちょっと乗っ取られた次回予告をどうぞ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------次回予告おっす、あっしは次に出てくる河童の田吾作でさぁ田吾作が使われるなんて神様にも想像がつかなかった。絶対次回も読んでくれよ!んじゃ、次回は妖怪の山に居を構えることとなったアスカアスカは己の家の出来に感動し宝を河童に渡す!河童は人間の盟友人間のために竜神の石造を作るぜ?!次 回 「田吾作伝138話 アスカ、襲来」 嘘な上に危ない予告をするな by.kami