<勇儀視点>決まった。今、目の前ではあたしの名乗りを聞いて呆然としている侵入者が一人。噂に聞いていた鬼退治屋にしては多少若い気もするが所詮は天狗の噂、そこまで当てにしてはいけないのだろう。あたしはこれまでのことを思い返しながら侵入者からの返答を待ち構えた。あたしはまだまともな勝負をしたことが無かった。なんせ周りの鬼とは歳が離れすぎて勝負にならないうえに、天狗や河童では怯えてしまい勝負どころか唯の弱いものいじめになってしまう。そうやって燻っていた時にあたしが聞いたのが鬼退治屋の噂だ。あたしは胸が躍った。心が弾んだ。天狗よりも河童よりも力で劣る人間が勝負を挑みに来る。しかも鬼だけを狙ってだ。そんな存在がどんな勝負を挑むのか、どれほどの力を見せてくれるのか、こんなに楽しみなのは生まれて初めてだった。絶対に譲らない、あたしが勝負をするんだと決め、その時を心待ちにした。噂を聞いて1日が経った。まぁそんなに早くくるはず無いよな。噂を聞いて1週間が経った。うん、まだこないな。噂を聞いて1月が経った。まだ、こないのか?噂を聞いて1年が経った。こないな~時は流れた。今日も来ない。あたしはそんな存在はいないのかと半ば諦めてしまった時、侵入者が現れたと聞いた。ついに来た?!あたしは駆けた。一日千秋の思いで待ち続けたこの思いを唯一度の勝負にぶつけんが為に。あたしは跳んだ。ただ自らの持てる力の全てをぶつけんが為に。そして・・・・・・見つけた?!だからあたしは高らかに宣言した。「あんたかい侵入者ってのは?あたしは『星熊勇儀』あんた、あたしと勝負しな!!」<アスカ視点>目の前の女性、勇儀の高らかな宣言を聞いた俺は当然の疑問を口から出した。「あ~、なんで勝負?」「何を言ってるんだい?あんたは侵入者、鬼退治屋なんだろ?なら勝負するのが当たり前じゃないか」勇儀は全身から闘気を漲らせ、拳を打ち鳴らせながら答えた。どうやら根本的に間違えてたらしい。「え~と、残念なことに侵入者はあってるかもしれないが鬼退治屋ではないぞ?」「っへ?うそ・・・・・・」「ほんと」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」勇儀はそれこそ目に見えて落ち込んだ。まさにorzだ。だからだろうか。俺はつい、とんでもないことを口走ってしまった「あ~、鬼退治屋ではないけど・・・勝負ならできるぞ」「ホントか?!」「あ、あぁ・・・」凄まじい食い付きだ。倒れこんでいたかと思えば俺の言葉を聴いた瞬間に一気にこちらえ詰め寄ってきた。いかん、はやまったか・・・。とは言うものの、最早前言が撤回できるわけも無くなし崩し的に勝負することになってしまった。勝負方法は腕相撲。なぜかと言うと今まで培ってきた力を試してみたいと言うのが一つと、二つ目にこんな微妙な空気の上、鬼とはいえ女性を殴るのは気が引けたと言うのが理由だ。殴り合わずとも力での真正面勝負なら鬼も納得である。そんな訳で俺たちはお互いの右手を握り寝そべった状態で待機している。開始の合図は近くにいる蛙が池に飛び込むのと同時だそうだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ始まりを待つだけの時が刻まれる。 ぽ ち ゃ ん飛び込んだ!!「っは!っらぁあああぁああ~~~!!」「ぐっ?!ーーーーーぬぅっ~~!!」力を込めるのは勇儀が一瞬早かったもののそれで勝負が決まるほど俺の力が弱いわけも無く、お互いに力を込めながらにらみ合う状態となった。「がぁあああぁぁっ~~!!」「うあぁああぁあっ~~!!」そうやって数分ほど力を込め合っていたもののそろそろ限界が近くなってきた。勇儀の顔にも玉のような汗がいくつも浮かんでいる。そして俺が最後の攻勢に出ることで決着が付く。「だっしゃ~~~~~!!」「があ~~~~~~~!!」ありったけの力を振り絞る事でようやく勇儀の腕を大地に叩きつけることができた。決着が付き、俺は初めて正々堂々たる勝負に勝つことが出来た余韻に浸りながら赤くなった右腕をさすっていた。流石は鬼の力、記憶に残る師匠の力より弱いもののそれは確かに鬼の実力であり、人の体で耐え続けられるものではなかった。今更ながらじわじわと右腕が痛んでくる・・・・・・正面を見てみると勇儀も痛かったのだろうか涙目になりながら右腕をさすっているが、その顔はどこか満足しているようだった。ふと、再び俺たちを覆う影が現れた。またこの展開かと思った俺はもはや上を確認することなくすばやく転がり逃げた。しかし勇儀は首を傾げながら何をしてるんだと言わんばかりにこちらを眺めるだけだった。俺が慌てて勇儀にも避けるように伝えようとした瞬間、ズド~~ンと衝撃音を響かせてさっきまで俺のいた場所、つまりは勇儀のいた位置から砂煙が上がっていた。「ゆ、勇儀~「おまえ、アスカじゃないか」師匠?!」砂煙が晴れてみるとそこには懐かしき師匠の姿が。そして視界の隅には目を回している勇儀の姿も。「おいおい、侵入者っておまえのことかよ?」「あ~、そうみたいっすね。俺としては師匠に会いに来ただけのつもりだったんですが」「ほほぅ」「あの~、師匠。そこで伸びてる勇儀さんは大丈夫でしょうか?」「ん?お、おぉ~。星熊の勇儀じゃないか、何でこんなぼろぼろに?!」「(ツッコミたい、あんたが原因だとツッコミたい)」「しかもおまえも見てみれば怪我をしておるようだし・・・、家へ来い!久方ぶりに治療してやろう」「うっす」こうして俺は久しぶりに師匠と再会した。それはまさに百余年ぶりの再会だった。<おまけ>白狼A「え~ん?!逃げられたぁ~」白狼B「仕方ないよ、白狼A。 あいつ人間とは思えない速さで走ってたし。 ほら、泣き止んで」白狼A「ひくっ、ひっく・・・」白狼B「ほらほら、鼻もかんで・・・」白狼A「うん・・・、びぃ~~~ん?! ありがとう、すっきりしたよ」白狼B「いえいえ、どういたしまして。 それにしてもさっきは凄い地響きがしたけどなんだったんだろうね~」白狼A「ん~、また鬼さん達が騒いでるんじゃないかな? こないだも昼から宴会に入って相撲大会開いてたし」白狼B「あ~、あれは凄かったよね~。 途中から天魔様も混ざって大騒ぎだったし」白狼A「そうそう。 あれ?クンクン・・・」白狼B「どうしたの白狼A」白狼A「うん、何かの匂いが・・・・・・・・・。 !!これは!侵入者の匂いだ!」白狼B「えっ?!くんくん・・・!! ホントだ?!」白狼A「よし、今度こそ捕まえてやるぞ?! 白狼B、続け~~~~!!」白狼B「ちょっ!待ってよ~・・・ 何かほかの匂いもするんだけど・・・・・・・・・ いやな予感がするな~」白いもふもふ達が固まる数分前の会話記録より----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------後書+次回予告どうもお手玉の中身です。勝負方法はガチバトルにすると作者の表現力の限界を超えるので腕相撲となりました。それでもなんとなく微妙臭が・・・・・・ともあれここで一旦以前出したパワーグラフを今回の時点のものと差し替えるので参考までに見てやってください。上位鬼>羅豪≧天狗のトップ>>>アスカ=勇儀>下級鬼≧その他の天狗>鬼退治屋>上級妖怪>>その他のモブ妖怪>(人外の壁)>妖怪退治屋>(越えてはいけない壁)||一般人鬼退治屋に関しては百年の内に結構進化しました。流石は鬼退治専門職、あらわれた当初よりは進化と強化が激しい職業です。主人公君がいなければ現在の人類最強の存在では・・・でわ次回予告はいります。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------え~っと・・・私が先生の代わりに次回予告をすればいいのか?勇儀との決着が付きそこに現れたのは懐かしき鬼久方ぶりに訪れる鬼の家に変わりは無かったそこに、訪れる先生の新たなる転機?!次回の話はちょっといい話し?!?!次 回 「警備兵の魂を受け継いだ白きもふもふ」 妹紅・・・、子供達にも真似させたいほど立派だぞ。次回も是非読んでくれ