北条家と締盟して後、ほとんど時を置かず、俺たちは紙くず一つ落ちていない清潔な小田原の街並みを通り抜けて、甲斐へと馬を急がせた。
甲斐から戦況の変化が報じられたわけではなく、いまだ戦線は膠着しているものと思われたが、それでも自然、馬足は速くなってしまう。
俺でさえそうなのだ。武田の家臣である虎綱は、もっと気が気でないだろう――そんな風に俺は思っていた。
一日。北条家が用意してくれた宿で、小田原名物のかまぼこを肴に酒を虎綱と酒を飲んでいた俺は、はっと我に返った。
「なんでこんなにくつろいでいるんだ、俺は?」
「? 休める時に休んでおかないと、強行軍はきついですよ?」
急に何を言い出すんだろう、とでも言うように虎綱が不思議そうに首を傾げる。
「いや、確かにそれはその通りなんですが、甲斐で戦が始まっているというのに、酒はさすがに……」
「昼間の強行軍の疲れを癒すためのものです。深酒は論外ですが、月を見ながらのささやかな酒肴で私たちを咎める者もいないでしょう」
微笑みながら酒盃を口にする虎綱は、どこか満ち足りた様子でほぅっと息を吐いた。
供されたかまぼこと相模の銘酒の組み合わせは、同道している松田憲秀殿いわく「酒好きにはたまらぬ」とのことだったが、確かに塩味の聞いたかまぼこと、この酒の相性は抜群で、あまり酒を嗜まない俺でも、ついつい酒盃を口にする回数が増えてしまいそうだった。
俺はふと耳をそばだてる。遠くの方から何やら賑やかな騒ぎが伝わってきた。
「弥太郎、張り切っているみたいだな」
小さく、俺は笑った。
綱成に招かれた弥太郎が北条武士相手に妙技を披露しているのだろう。
弥太郎は先の上野合戦で鬼小島の異名を轟かせたわけだが、先刻のこと、明日、国境近くで別れることになっている綱成が、ぜひとも自分の目で鬼と呼ばれる武将の技量を見たいといってきたのである。
一見、手の内をさらけ出すように思えるが、逆に言えば弥太郎も綱成の武芸を見ることができるわけで、俺は特に弥太郎を止めることはしなかった。俺としても二人の武技の競い合いには興味があったので、ついていくつもりだったのだが、段蔵曰く「颯馬様が来ると、相手が警戒してしまう」とのことで宿に残ることになってしまったのである。
いつのまにやら、その場にいるだけで他家に警戒されるようになっている自分を喜ぶべきか否か、難しいところであった。
そんなわけで宿には俺と虎綱、秀綱と虚無僧様が残ることになった。秀綱と虚無僧様は修練の刻限ということで、この場にはいない。
上杉勢で一人残った俺は、さて寝入るまでの時間をどう使おうか、と頭をひねっていたのだが、そこに虎綱からのお誘いがあったのである。
両手で酒盃を持ち、それに口付けた虎綱がほぅっと息を吐く。
かすかに頬を火照らせたその顔には女性の色艶が感じられ、俺はしばし目を奪われた。
そんな俺の様子に気付いたのだろう。虎綱が不思議そうな顔で、口を開く。
「どうなさいました、天城殿?」
「あ、いや、その……」
まさか見とれてましたとは言えない。俺はやや慌てて、言葉を紡ぎださなければならなかった。
「随分と落ち着いておられると思いまして、少し気になりました」
虎綱とて甲斐の戦況が気にならないわけではないだろう。そして、これまでの虎綱であれば、言葉にしないまでも、表情に不安をあらわしていたと思うのだが、今の虎綱からは焦慮が感じられない。
不利な戦況に動じず、有利な状況に浮かれないのは将としての大切な資質だが、虎綱は短い間にこれを体得したのだろうか。
俺のそんな疑問を受け、虎綱は少し困ったようにおとがいに手をあてた。
「御館様のように、内心を巧みに統御する術を得たいとは思っていますが、これは一朝一夕にはいかないことです。今とて不安でないと言えば嘘になってしまいますが……」
かすかに首を傾けつつ、虎綱は続ける。
「もし、私が平然としているように見えるのでしたら、それは多分天城殿のお陰ですね」
「……は、私の、ですか?」
唐突な言葉に、俺は思わず目を点にする。
そして、そんな俺の顔を見て、虎綱は楽しそうに微笑むのだった。
その後は、何となく互いに無言で杯を重ねるだけの時が過ぎた。
弥太郎たちは未だ帰らず、虚無僧様たちの姿も見かけない。
時おり遠くから響く笑い声を聞くに、弥太郎たちの方はそのまま酒宴に移行したのかもしれない。
気まずいわけではないが、何を話すべきかもよくわからない。俺は聞くとはなしに彼方の騒ぎ声に耳を傾けていたのだが、不意に虎綱の声が耳に滑り込んできた。
「私など、四天王はおろか、二十人衆ほどの実力もない……御館様に引き立てていただいた御恩に感謝し、懸命に奉公しながらも、心のどこかでそう思っていました」
予期しない物言いに驚いた俺は虎綱の横顔に視線を投じる。そこには、夜空に視線を向け、物悲しげな表情を浮かべる虎綱の姿があった。
「智勇胆略、そのいずれも御館様はもちろん他の僚将の足元にも及ばない。春日の家を継いだのは姉上なので、自身の身代もろくになく、御館様と武田の御家にどのように報いていけば良いのかさえ判然とせず……せめて御館様の面目に泥を塗ることだけはしないように。そう思い、務めてきたのです、これまでは」
心中をぽつぽつと語る虎綱の表情は、はじめて出会った頃――上洛行を共にしていた時の虎綱を想起させた。
いつも伏目がちで、どこか陰を感じさせたあの頃の虎綱は、こんな寂寞とした思いを内に秘めていたのだろうか。
虎綱が、躑躅ヶ崎の乱以前から晴信に付き従ってきたことを考えれば、晴信の直臣であった期間は誰よりも長い計算になる。
人を見る目に長けた晴信が虎綱の力を見出すのは当然すぎるほど当然であったが、当の虎綱はその期待と信頼が、逆に重荷になってしまっていたのかもしれない。
俺などから見れば、今はもちろん、あの当時の虎綱だとて十分に四天王の名に耐えうると思う。上洛行の際、武田、上杉両軍の間に緊張はあっても揉め事はなかった。それは三千の武田軍を虎綱が過不足なく統御しきった証明でもある。
上杉軍が、越中、加賀、越前を通って京へ抜ける道程を無血で乗り切ることが出来たのも、虎綱率いる武田軍あってこそ。京に着く前も、着いた後も、武田軍との折衝は、上洛前に危惧していたことが嘘のように速やかかつ穏やかに進んだ。
それすべて虎綱の為人と能力によるもの。
つい先日までの敵国との間に諍いを起こさないように将兵を統べるだけでも至難の業なのである。それに加えて京の治安を維持し、朝廷との折衝をこなし、さらには近畿の情報を集めて有事に備える。
上杉軍が輝虎様、兼続、定満、俺等で行っていたものを、虎綱はほとんど一人でこなしていたのだ。無論、虎綱の麾下に人がいないわけではないにせよ、虎綱の能力を否定することは誰にも出来ないだろう。
だが、自信とは文字通り自らを信じること。他者がどれだけ信じようと、虎綱自身が自分のことを認めていないのであれば、実績は自信に繋がらない。
しかし、今の虎綱からは静かな面持ちの中にも、かつては感じることの出来なかった己への信があるように思う。武田家が誇る風林火陰山雷の一字を託されてなお自分を認められなかった女将軍は、何をもって自信を得たのか。
その答えは――
再び、虎綱の眼差しが俺の面上に注がれる。その意味するところは明らかで、俺は首を傾げざるをえなかった。
「……俺、あ、いや、私、何かしましたっけ?」
思わず『俺』などと言ってしまい、慌てて訂正する。そんな俺を見て、虎綱は紅く染まった頬をそのままに、小さく微笑んだ。
「印象的な出来事や、心に残る一言があったというわけではありません。ただ天城殿や輝虎様と見え、言葉をかわすうちに、ふと思ったんです。私は御館様や他の諸将と我が身を比べていましたが、そんな必要はないのかもしれない、と。いえ、自身を琢磨するという意味で不要ではありませんが、それがかなわないからといって、御館様の期待に応えられないということではないのだ、と。雲は竜を導くとも、竜にはなれず。風は虎に従うとも、虎にはなれず。それでも――いえ、だからこそ、飛躍の時、竜は雲を、虎は風を、必要とするのかもしれない。そう思ったのです」
酒の勢いもあってか、虎綱は熱を込め、こちらに身を寄せつつの熱弁であった。間近に迫った虎綱の顔を見ていると、正直、照れくさくて仕方ない。
「聞いていただいていますか、天城殿?」
俺の意識があらぬところに逸れたことを察したか、虎綱はすねたような顔をする。
上洛行を含め、結構虎綱とは長い付き合いになるが、今宵は思いもかけず色々な虎綱を見ることが出来る日のようだった。
俺が慌てて頷きを返すと、虎綱はさらに言葉を続けた。
「御館様は、私が武田の雄飛に必要な者だとの期待をかけてくださり、『林』の一字さえ授けてくださいました。私は、甲斐の虎を援ける風になるべきであったのです」
それなのに、と虎綱は表情に陰を滲ませる。
「私は自身を虎と重ね、そう在れない自分を責めるだけで、御館様の期待を裏切り続けてきました。御館様はそんな私を見捨てることなく、事あるごとに諭してくださったのに……いえ、御館様だけではありません。山本様も、山県様も、他の僚将の方々も幾度もずっと気にかけてくれていたのです。晴貞様の境遇を思えば、私のそれは極楽で太平楽を決め込んでいたようなものなのに。おろかな私は周囲の方々の期待さえ重荷に感じてしまっていました――御館様に上洛の命を受けたのは、そんな時だったのです」
そこから先のことは、俺も知っている。だが正直、俺は虎綱の内心の懊悩に気付いてはいなかったし、ましてやその闇を拓くような言動が出来た筈もない。
いまだ戸惑いが去らない俺を見て、両の掌を握り締めていた虎綱は、そこでようやっと自分が熱くなっていることに気付いたのか、照れたように頬を赤らめ、腕を下ろした。
昂ぶった心を宥めるかのように深呼吸した後、虎綱はぽつりと呟く。
「『天道を奉じずして、天道に復らんとする』――」
それは小田原城で北条幻庵が口にした言葉。
あの場にいた虎綱は、当然それを知っている。今この時、そのことを持ち出す虎綱の意図に気付いた俺は、小さく肩をすくめて答えを返す。
「……褒められた仕え方ではないと思うのですけどね」
「そうでしょうか? 天下に正道を敷かんとする輝虎様の天道を誰よりも理解し、そして御自身の限界を見極めた人でなければ、長老殿はあのような文言を使うことはなかったでしょう。戦の要諦は『敵を知り、己を知る』ことと孫子は書で著していますが、天城殿は例えるならば『主を知り、己を知る』人です。そんな天城殿だからこそ、越後の竜を導く雲になれるのだと、私はそう思うのです」
俺の頬が熱くなっているのは、酒のせいではなかった。
一言で言って、気恥ずかしいことこの上ない。虎綱は世辞を言っているわけではないだろうが、ここまで持ち上げられたことははじめてで、俺はなんと返してよいかわからず、頭をかいて視線を空に向けることしか出来なかった。
過大評価も良いところだが、虎綱ほどの人物にそう言ってもらえることが嬉しくもある。
そんなことを考えていた俺の耳に、虎綱は囁くように、しかし凛とした気概を込めてこう言った。
「決めたのです。天城殿が雲となるように、私は風となる。私を見出し、引き立ててくれた御館様の御恩に報いるために、その往く道を祓い清めてみせます。いつか……」
あなたと戦う日が来ようとも。
それは、俺の耳ではなく心が聞き取った虎綱の声なき声であった。
俺は自然と口元がほころぶのを感じた。
それくらいに、今の虎綱の言葉と表情は、清清しいまでの自信と誇りに満ちていたのだ。
「互いに譲れぬ想いがある以上、いつかぶつからざるを得ない。それが道理だと、わかってはいるつもりですが――」
俺はおどけたように肩をすくめた。
「このような時は、道理に引っ込んでいてもらいたいと、そう思ってしまいますね」
俺が茶化すようにそう言ったのは、虎綱と矛を交える未来を想像したくないための遁辞であった。
だが、思いがけず――あるいは、その逆か。虎綱は笑みで応じたのである。
「ふふ、奇遇ですね。実は私もそう思っていたところです」
そう言って、ころころと笑う虎綱。
その声に耳をくすぐられながら、俺は持っていた酒盃を傾け、視線を空に浮かぶ月へと向けるのだった。
◆◆◆
秋、今川家臣岡部元信と朝比奈泰朝に率いられた今川軍一万五千は甲駿国境を突破、富士川に沿って北に進路を取り、甲斐国内への進撃を開始する。
収穫の盛りであるこの時期、万を越える軍勢を催す不利益は述べるまでもないが、今川家当主氏真は、いささかもためらわず、麾下の両将に甲斐の蹂躙を命じたのである。
苛烈な軍制の下、軍容を一新させた今川軍の侵攻速度は迅速を極め、甲斐南部の国人衆は必死に防戦を試みるも、死を恐れずに突き進んでくる今川軍をとどめることは出来ず、数度の撤退を余儀なくされる。
武田軍、恐れるに足らず。勢いに乗った今川軍はさらに侵攻を続け、その矛先を甲斐南部の要衝である下山城へ向ける。
身延山の麓に位置する下山城は、駿河から甲府へといたる最初の関門である。これを突破されてしまえば、他に拠るべき城砦もなく、今川軍は甲府盆地へ侵入してしまうであろう。
信濃と甲斐に内紛を抱えている現在、躑躅ヶ崎館には真田家の兵と、晴信直属の軍勢しかいない。それゆえ、武田家はなんとしても、下山城で今川家の大軍を防ぐ必要があったのである。
当然、今川軍もそのことは知悉している。今川軍にもたらされた情報によれば、下山城に拠った武田軍はおおよそ三千。篭城の利があるといえど、五倍近い兵力差があれば、これを陥落させることは難しくないであろう。
そう考え、さらに進軍を続けた今川軍は、しかし下山城へ到る前に、その足を止めなければならなかった。
彼らの前に整然と陣を据えるは、躑躅ヶ崎より発した甲州騎馬軍団の精鋭七千。
その陣頭に翻る『丸に花菱』の家紋は、率いる将が山県昌景であることを今川軍に告げていた。
今川軍一万五千。武田軍七千。数だけを見れば今川軍が圧倒的に有利である。
だが、兵の質においては、東国のみならず、近畿にまでその名を響かせる甲州騎馬軍団が優るであろうと思われた――これまでは。
だが、現在の今川軍は、かつての今川軍と性質を異にしている。
誰よりも早くそれに気付いたのは、敵の猛攻を正面から受ける形となった山県昌景であった。
「死兵、か。志を以って将兵に死を忘れさせるは名将なれど、さて今川殿は名将なりや?」
敵の先兵を迎え撃った武田軍は、目を血走らせて猛り狂う今川の将兵の勢いに抗しきれず、たちまち第二陣まで押し込まれる。だが、今川軍の猛攻に押されながら、昌景は冷静さを保っていた。兵を指揮し、敵の勢いに逆らわずに中軍を下げつつ、左右両翼から弓矢を浴びせ、敵の勢いを削ごうとする。
しかし、今川軍先鋒を率いる朝比奈泰朝は多少の損害に構わず、ひたすら中央を突き進み、武田軍を左右に分断しようとはかった。兵力に優る今川軍だからこそ可能な力業である。
「数に劣る敵を更に分断し、それを囲めば勝利はより容易くなる。さすがに今川軍の柱石たる者たちよな。兵力に優ることの利を、ようわかっておる。だが――」
敵将の意図を悟った昌景は、しかし、不敵な笑みを浮かべ、采配を揮い続ける。
「この山県昌景、御館様より『山』の一字を預かる将。そうやすやすと我が陣を破ることはできぬと心得よ」
強硬に突破をはかる今川軍に対し、武田軍は山県昌景直属の本隊も参戦し、真っ向から今川軍と競り合いを続けていた。勢いに乗って進軍を続けてきた今川軍であったが、昌景は巧みに弓射と槍撃を反復させ、本陣の突破を許さない。
その朝比奈勢の苦戦を見て、後陣に控えていた岡部元信は手勢を率い、戦場を迂回するように動き出した。
後背を扼そうとすれば、精強を誇る武田軍といえど動揺を禁じ得ないだろうと考えたのである。
だが、元信が軍を動かした主な目的はそちらではなかった。
「ここまで出てきたは弓兵に槍兵――この戦に、武田が誇る騎兵がいないということはあるまい。いずれかに伏せてあるは必定。今のうちにその姿をあらわしてもらおうか」
今川軍が大きく動けば、武田軍も秘していた兵を出さざるをえまい。元信はそうも考えたのである。
山県昌景率いる武田軍はおおよそ五千。事前の情報を鑑みれば、伏せている騎兵は多くて二千というところであろう。一方の元信は四千の人数を動かせる。いかに武田の騎馬軍団が精強であろうと、この数の差は如何ともしがたいだろう。
くわえて、今川軍の最小行動単位である伍の長たちには、武田騎馬軍団と当たる際はまず馬を狙い、その機動力を奪った上で押し包んで討ち取れと命じてあり、その訓練も積んでいる。ここに到るまでの戦で騎馬隊と対峙したこともあり、実戦での経験も重ねていた。
主力である騎馬軍団を潰せば、武田の将兵も動揺せざるをえない。また、仮に騎兵が不利を悟って動かないならば、それも良し。朝比奈泰朝の部隊と歩調をあわせ、昌景率いる部隊を包囲殲滅した後、身延山に陣取れば、下山城を陥とすことは容易いことである。
岡部元信の読みは正鵠を射ていた。武田軍は確かに二千弱の騎兵を切り札として伏せており、また主力である騎兵部隊が壊滅すれば、武田軍の士気は大きく下がってしまったことだろう。
山裾から姿を現した敵騎兵集団を目にした元信は、ただちに麾下の兵に迎撃態勢をとらせ、これを殲滅すべく采配を揮う。否、揮おうとしたのだが。
――二千の騎馬が、八千の脚をもって大地を蹴りつけて殺到する。その様を遠望した兵たちの間から動揺が立ち上る。これまで相手としてきた十や二十の騎馬隊とは、文字通り桁違いの迫力だ。兵たちの動揺を見た今川の指揮官は、声を嗄らして落ち着くように叫ぶ。
「落ち着け、伍列を崩すな! 槍先をそろえよ! 敵はこちらの半数にも満たぬ寡兵ぞ、訓練どおり馬を突き、地に落ちた兵を討ち取れば良いのだ! 逃げれば妻子眷族にまで咎が及ぶことを忘れるな!」
指揮官たちの叱咤を受け、今川の兵士たちは慌てて槍を構え、敵騎兵を迎え撃つ態勢を整える。逃亡は自身のみならず、国許の父母妻子の身まで危険に晒す。今川軍の用いる、恐怖による督戦は確かな効き目をあらわし、腰の引けていた将兵に戦意を注入することに成功していた。あるいは、ここに到るまでの連勝が、今川軍将兵の心底に、甲州武田軍団恐れるに足らずとの自信を植えつけていたのかもしれない。
後は、多勢で押し包み、敵騎兵を殲滅すれば、この戦の勝利は目前――岡部元信のみならず、今川軍のほとんどの将兵がそう考えた。
繰り返すが、それは正鵠を射た考えであった。ここで騎馬部隊が破れれば、たとえ山の将が指揮する武田軍であっても、今川軍の猛攻を凌ぎきることは難しかったに違いない。そして、この地で一敗地に塗れれば、下山城は陥落し、甲府へと到る門を、今川軍に献上することになっていたであろう。
――だが、それは。
――ここで騎馬部隊が破れればの話である。
二千を越える騎馬部隊、その先頭を疾駆するは、こと攻勢においては武田騎馬軍団最強を誇る炎の将。
その身を鎧う緋色の甲冑は、あたかも自身が背負う一文字を具現するかの如く。
その瞳に爛々たる戦意を湛え、配下の兵を従えて、馬場信春は今川軍へと躍りかかる。
「原虎胤殿より譲り受けたるは『美濃守』。『夜叉美濃』の衣鉢を継ぐは我にあり! 武田が『火』の将、馬場美濃守信春、ここに見参!」
雨あられと放たれる今川の矢石をものともせず、名乗りを終えたその時には、信春の身体は愛馬と共に今川軍の堅陣の只中にあった。
「おおおおッ!」
雄たけびと共に、馬上、信春が槍を突き出す都度、その穂先には必ず鮮血が糸を引いた。群がる今川軍の歩卒は信春ではなく、その騎馬に槍を向けて突進を防ごうとするも、それらはすべて小枝のように振り回される信春の槍に叩き伏せられ、あるいは弾き飛ばされていく。
火の将が進むところ、草も木も皆、朱に伏し、その猛威に恐れをなした敵兵は、なだれをうって後退していったのである。
馬場信春の勇武は、武田全軍はおろか東国全土を見回しても屈指の域にある。だが、個の武勇のみをもって火の将を拝命できるほどに武田軍の人材の質は低くない。武田晴信が、火の一文字を与えた人物は、衆に優れた個人的武勇をさえ霞ませるほどに、軍将としての資質に恵まれた人物であり、わずか二千とはいえ、その率いる騎馬隊は強かった。
信春の後に続く部隊は、主将が切り開いた今川軍の堅陣の隙をたちまちのうちに押し広げ、馬首を揃えて猛然と突進する。
これに対し、今川軍岡部元信は直属の精鋭をもって馬場隊の突進を食い止め、その間に、自軍を扇形に展開して、中央に突っ込んできた敵を包囲しようとはかった。
だが、信春の鋭鋒は元信の予測を越える鋭さで今川軍を切り裂き、元信の指揮をもってしても陣内の混乱と動揺は抑えきれない。それどころか――
「そこにいるは、今川軍岡部元信殿と見受けたり!」
槍を構えた信春は、すでに元信を指呼の間に捉えていたのである。
「敵将に一番槍をつけることこそ武士の誉れ。その首級、頂戴いたす!」
信春の鋭気を真っ向から受け止めながら、元信は余裕をもって莞爾と笑ってみせた。
「これはめずらしや、馬に馬が乗っておるわ。見ろや、者ども。あれが『不死身の鬼美濃』ぞ。まるで童の遊びではないか!」
「この兜こそ、武田騎馬軍団の魂を示すもの。幕僚は知らずとも我は知る。火の名を預かりし馬場美濃守信春、いざ参る!」
「合戦は童の遊びではないこと、その兜をたたっ斬って証明してみせよう。参られよ!」
愛馬をあおって突進する信春が突き出した槍は、閃光の如く元信の咽喉元に伸び、その首筋を貫くかと思われた。
だが、穂先が身体に達する寸前、元信の槍が小さく、しかし鋭く信春の槍の柄を弾き、わずかに穂先が逸れる。
信春の槍は、元信の首筋に赤い筋をつくったが、ただそれだけであった。最小限の動きで敵の槍を防いだ元信は即座に反撃に転じようとする。
だが、信春はそうはさせじとすぐさま槍を引き戻し、再び正確に咽喉元を貫こうと槍を繰り出す。この速撃に、反撃に転じようとしていた元信は対応が後れてしまい、のけぞるように身をそらして、かろうじて信春の槍を避けてのけた。
しかし、それでも信春の攻撃は終わらない。再び引き戻された槍は、先の二撃に優る速さと鋭さをもって敵将に迫り、その穂先はとうとう元信の右の肩口を捉えたのである。
揺れる馬上、周囲の敵兵を相手にしながらとは到底信じられない、信春、神速の三連突きであった。
元信の口から、かすかな呻き声が漏れる。咄嗟に身体をひねった為、肩口の傷は致命傷には程遠いが、しかし決して浅くもなかった。槍を持つ右の腕に、痛みと痺れが交互に走る。当分の間、右腕は使い物にならないであろうと思われた。
一方の信春の口からは、かすかな賛嘆がもれる。傷を負わせることが出来たとはいえ、自慢の連撃で仕留められないとは思わなかったのだ。
それでも、敵は手負い。今度こそは、と信春が四度、元信に向けて槍を突き出そうとした時、元信の馬廻り衆が両将の間に割って入ってきた。彼らは信春の前に槍衾をつくりあげ、主将を後方へ退かせようとする。
「元信様、お早く!」
「くッ、すまぬ」
「なんの。元信様なくば、今川の復権はなりませぬ。ここは我らが防ぎましょう」
「任せたぞ。だが、死んではならん。命令ぞ、忘れるな」
「御意――しかし、果たせざる時はご容赦をいただきたく」
そう言うや、元信の側近は矛先を揃えて敵将に向かって挑みかかっていく。その背に負った覚悟を目に焼き付けながら、元信は左手で手綱を操り、馬首を返す。たとえ部下を犠牲にしたと後ろ指さされようと、ここで命を捨てることは、元信には出来なかったのである。
元信の後退により、武田軍は更に勢いづいて攻勢を押し進める。しかし、今川軍は退きつつも粘り強い戦いを続け、武田軍の突破を許さない。
乱戦になってしまえば、今川軍の兵力が物を言う。そう判断した信春は手勢をまとめ、部隊ごとに交互に後方へ退く繰り引きの法を以って、ほぼ無傷で戦場から離脱してのける。
この信春の突進により、今川軍は三百近い死傷者を出したが、武田の伏兵を暴くという元信の狙いは達せられた。さらに、武田軍最強を誇る火の将の突進を防ぎきったという自信をも得た形となり、今川軍は敗勢の中にも少なからぬ成果を掴んだのである。
これを受け、競り合いを続けていた朝比奈泰朝と山県昌景も、日没を前に、頃合を見計らって兵を退かせる。
この一連の戦によって、今川軍の進撃は遮られた形となったが、それでも武田軍が今川軍を圧倒するまでには至らず――身延山一帯を主戦場とした両軍の戦は、今しばらく続くものと思われたのであった。
◆◆
甲斐南部で激戦が繰り広げられていたその頃。
俺たちは北条の使者松田憲秀と共に躑躅ヶ崎館に戻って来ていた。使者の目的は、武田家に対して正式に盟約を白紙に戻すことを通達するもので、俺たちははからずも三国同盟が崩壊するその瞬間を目の当たりにすることになったのである。
その数日後、北条綱成率いる六千の軍勢が甲相国境を突破、甲斐国内に侵入を開始する。
武田家ではこれに対抗するため、四千を越える兵力を東南の上野原城へ篭める。この兵力を率いるのは春日虎綱。虎綱は躑躅ヶ崎館に戻らず、甲相国境の要である上野原城にとどまっていたのだ。
虎綱を総大将とした四千の軍勢は、上野原城を拠点として迫り来る北条勢に対し防戦を行うことになるであろう。
山県、馬場は下山城へ。
内藤は信濃へ。
山本は黒川金山へ。
武田の六将はそれぞれ手勢を率いて向かっている。それらに加えて北条家を押さえるために、晴信の直属部隊を含む四千の軍を東南へ派遣したため、さすがの武田軍も兵力が底を尽き、今の躑躅ヶ崎館の兵力は幸村が率いる真田軍一千のみという状況であった。
自家の軍で晴信を守ることとなった幸村は、ただちに躑躅ヶ崎館の防備を固めると共に、間道という間道に物見を放ち、遠からず現れるであろう敵の別働隊への備えも怠らない。
まさに水も漏らさぬ布陣――と言いたいところであったが、現在、躑躅ヶ崎館は幸村が予期していなかった混乱に見まわれており、怨敵の出現を今や遅しと待ち構える幸村は苛立ちを禁じえずにいたのである。
その幸村の苛立ちの原因は、甲府の町外れにいる百や千ではきかない人数であった。将兵ではない。甲府の住民でもない。着の身着のまま、といった格好で地に座り込んでいる彼らは、今川軍の北上に伴い、甲斐南部から逃れてきた領民たちであった。
伝え聞く今川軍の狂猛さを恐れたゆえの行動なのだが、実のところ、これは危難を避けたつもりで、より危険な場所に踏み込んでしまったも同然であった。
無論彼らはそのことを知らない。そして、教え諭してやることもまた出来ない。今回の作戦の全容を知るのは武田軍の中でも一握りのみ。何も知らない家臣や領民に、これから躑躅ヶ崎館が戦場になると話してしまえば、今川方に情報が漏れてしまう可能性があるからだった。
だからといって、戦乱に怯えた民を見捨てるような真似は、無論出来ぬ。それをすれば武田家の名誉は地に落ち、今川軍に敗れるよりなお悪い事態となることは明らかであった。
迫りくる今川軍と、姿の見えない信虎に加え、本来は守るべき者たちである民までが、今は武田の動きを阻む要因と化してしまっているのである。
◆◆
「――と、現状はこうなっているのである」
「――誰に何を説明しているのですか、そなたは?」
不思議そうな顔で晴信に問われ、俺は言葉を濁して頭をかく。
北条家の断交の使者と共に躑躅ヶ崎館に戻ってきた俺は、大言を吐いた挙句の不首尾を武田の家臣から嘲られることになる――無論、これは敵を欺くには……というやつであるが、元々、晴信の戦略は極秘事項であり、一部の重臣しか知らない。くわえて、報告に際してあらかじめ打ち合わせをしてあったわけでもないから、事情を知る者の中にも、本当に不首尾に終わったのかと考えた者もいるであろう。まして、何も知らなければ尚更である。
晴信は厳しい顔で俺の報告を聞き終わると、それでも使者の労をねぎらい、館の一室で疲れを癒すようにと口にする。
それを受け、恐縮して下がる俺の背に、周囲から失望の視線が突き刺さるのがはっきりと感じられた。
「――とはいえ、さすがに晴信様は気付いているだろう、と考えていたら、こうして部屋に足をお運びになった次第。さすがは甲斐の虎と渾名される名将である」
「――だから、誰に何を説明しているのです、そなた?」
などというやりとりを、のんびりと茶などすすりつつ行っている俺と晴信であった。
外で目を皿のようにして館の防備を点検している幸村に見つかったら、槍で貫かれそうである。というか、すでに室内の空気からして、平穏とは遠いものになっていたりする。皆、気付かぬふりをしているが、竜虎相打つ状況を目の当たりにすれば、平静ではいられない。
弥太郎はおろおろと首を左右交互に向けているし、段蔵は我関せずを貫いているように見えて、額に冷や汗うかべているし、秀綱は背筋を伸ばし、瞑想しているかのように先刻から微動だにしない……まさか現実逃避をしているわけではない、ですよね?
おもわず不安になる俺であった。
秀綱の真意はさておき、不穏な空気を発しているのはこの三人ではない。では誰なのか。
答えは簡単である。簡単であるがゆえに、それを口にしてしまえば、最早後戻りはできな――
「ところで」
俺の思案を遮るように晴信が口を開いた。そして、何でもないことのように、最後の一人――虚無僧様に向けてあっさりと言う。
「良い加減、そのむさくるしい深編笠を取ったらどうです、上杉輝虎?」
ぴきり、と空気が割れる音を、俺ははじめて耳にしたように思う。
「……人違いでござる、拙者、上杉輝虎などという名ではござらん」
虚無僧様は低く低く押さえた声で反論する。それを聞いた晴信は舌鋒鋭く追及を行うかと思いきや、あっさりとその言葉に頷いて見せた。
「そうでしたか、それは失礼しました。越後から来た一行があからさまに怪しい者を従えているのは、それを指摘できないほどの身分の者だからだ、と思ったのですが、違うのですね」
「……御意にござる」
「ふむ。確かに現在の越後守護は天道を掲げ、正義を奉じる者。虚無僧の姿格好で間者の真似事をするなど笑止千万にして子供だましなやり方を選ぶわけもない。埒もないことを言いました」
げふげふ、と咳き込む俺。見えない筈なのに、編笠の奥の虚無僧様の顔がひきつるのが見えた気がした。
晴信はそんな俺に気遣わしげな視線を向ける。
「おや、天城、風邪ですか? 短い間に越後から相模までの道程を走破するのは、重任を受けた身にはさぞ辛かったことでしょう。ここに輝虎がいればその苦労をねぎらってやるのでしょうが、残念ながらここにそなたの主君はおらず――ふむ、是非もない」
そういうや、晴信はすっと俺に一歩近寄ると、その手を俺の額に押し当てた。
しなやかで、ひんやりとした晴信の指の感触と、間近に迫った顔の近さに驚き、俺は思わず身をのけぞらせてしまう。
思わぬ晴信の行動を目の当たりにし、無音の驚愕が室内に満ちた。
その空気に気付かぬ筈もあるまいに、晴信は手を離すと、こともなげに口を開く。
「ふむ、熱はないようですね。後ほど典医の徳本に命じて、疲労に効く薬を処方させましょう」
「そ、それはありがたいことでございますが、あの、晴信様?」
「どうしました、さように慌てて。虎綱の言によれば、天城颯馬という男、どのような事態にあっても動揺することなく、たちまちのうちに解決への糸口を見つけてのける胆力と思慮深さを併せ持つ傑物である、とのことでしたが――」
褒めすぎです、虎綱殿。
俺は思わず、遠く上野原城にいる虎綱に心中で語りかけてしまった。
「今のそなたは、いささかその評にそぐいませんね」
くすくすと笑う晴信の声がやたらと近い。香でも焚きこんでいるのか、晴信の身体から、そこはかとなく立ち上る薫香にめまいを覚える俺であった。
弥太郎があうあうと慌て、段蔵の視線がこころなしか鋭くなり、秀綱が頬に手をあて、そして虚無僧様が膝立ちの姿勢になった瞬間、晴信は何事もなかったかのように俺から離れ、あっさりと話題を変えてしまう――なんかもう、明らかにこちらをからかっている。うあ、虚無僧様、なんか震えてませんか?
戦々恐々とする俺だったが、当の晴信は澄ましたものである。
「ともあれ、北条への使い、ご苦労でした。やはりそなたに行ってもらったのは正解だったようですね」
それを聞き、ようやく俺の口は言葉を紡いでくれた。
「恐縮です。そういって頂ければ、越後より参った甲斐もあったというものです」
晴信はこくりと頷く。
「昌景と信春には力を矯めよと申し付けてあります。あの二人ならば、不自然でない程度に膠着状態をつくることが出来るでしょう。昌秀は信濃に、勘助は黒川に赴き、そして虎綱は上野原で北条軍と対峙する……武田の主力は真田を残してすべて出払いました。後は彼の者が動くのを待つばかりです」
そう言った後の晴信の行動を見て、俺は思わず息をのむ。
あの武田晴信が、頭を下げたのだ。
無論、頭を下げたといっても、平伏したわけではない。わずかに、かすかに、ほんの少し、頭を垂れただけだ。見る者によっては頷いたくらいにしか見えなかったであろう。
だが、俺は呼吸が止まるかと思うほどに驚いた。まさか、あの誇り高い晴信が、上杉の家臣である俺たちの前で、たとえわずかであっても頭を下げるなど、誰が思い至るというのか。
俺以外の者たちも、それぞれの性格に応じて驚きをあらわにしていたが、晴信はそんな俺たちの反応に構わず、口を開く。
「ここより先は、我らの任。我が父の業、必ずこの館で断ち切ってみせましょう。そなたらは越後でその報を待ちなさい。そして輝虎に伝えてもらえますか――此度の借りは、近いうちに必ず返す、と」
驚きさめやらぬ俺であったが、その晴信の言葉には首を横に振った。
「上杉は上杉の思惑で動いただけのこと、輝虎様も武田に貸しをつくったなどとは考えていないでしょう。もし、それでは晴信様の気がすまないというのであれば、一つだけ願いの儀がございます」
「申してみよ」
晴信は一つ頷くと、俺に先を促す。それをうけ、俺は率直に願いを口にした。
「今しばらく、我らが躑躅ヶ崎館に逗留することをお許しいただきたく」
その言葉を受け、晴信はかすかに目を細めた。
「――わざわざ危地にいることを望むとは、物好きなことですね。あるいは武田だけでは心もとないと、そういう心算ですか?」
「いえ、此度の戦、武田に敗北はございますまい。そこに疑念を挟むつもりはございません――ただ」
俺は晴信の顔に視線を注ぐ。小柄な、だがそれでいて巍々とした城壁のように毅然としている少女。甲斐源氏の棟梁にして、甲信の地を制した覇道の主。その視線が向く先は、はたして戦の勝利なのだろうか。
実のところ、俺はそこに確信を持てずにいる。虎綱とも話したが、晴信は勝利以外の何かを見据えているような気がしてならないのである。
そして、次に晴信が紡いだ言葉は、そんな俺の考えを肯定するものであった。
「まあ良いでしょう。此度の戦の指揮、明日より幸村に委ねるつもりですから、幸村にもそなたらが館に留まること、伝えておきましょう。言うまでもありませんが、要らぬ騒動を起こさぬように」
そういって、唖然とする俺たちを尻目に部屋を立ち去る寸前、晴信は虚無僧様を見て、思い出したように――その実、実際はタイミングを計っていたに違いないが――こう問いかけたのである。
「ところで――そなた、輝虎ではないならば、名は何ともうすのですか?」