【ジョージ】
「ハハハ……やっぱり、ボクたち双子だな」
同着一位。最後まで肩を並べたままトビラにタッチしたボクとジョージは、トビラにもたれて呼吸を整えていた。
「それでも、ジョージはオレじゃない」
「それに、フレッドはボクじゃない」
ボクたちはクスクス笑った。
「オレはオレなんだって思うと、すごく安心できた。でも、オレとジョージはやっぱり似てるんだって認めると、なんだか嬉しくなった」
ボクも同じ気持ちだよ。フレッド。
「ボクたちは、同じだけど同じじゃない。違うけど、違わない。それが、ボクたちの宝物なんじゃないかな?」
「あぁ。ロンや兄貴たちにもわからない、オレたちだけの宝物だ」
ボクたちは手を取って立ち上がった。
「このトビラは、二人で開けよう」
ボクとフレッドは、同時にトビラを力いっぱい押し開けた。
片方だけにしかもらえない宝物なんて、欲しくない。
ボクたちは、二人だけの宝物を手に入れたから。
【フレッド】
「サプラーイズッ!!」
な、なんだ!?
トビラを開けた途端、温かな光と歓声に包まれた。魔法のクラッカーがはじけ、まぶしくてまわりがよく見えない。
「フレッド。ジョージ。お誕生日おめでとう!!」
オレはきょとんとして、その言葉を繰り返す。
「誕生……日?」
「あぁ、今日はエイプリルフール。そして、フレッドとジョージの誕生日だ!」
聞き慣れた声とともに、フードの男がローブを脱いだ。
「「パパッ!?」」
オレとジョージは、同時にすっとんきょうな声を出した。
「まさか、自分たちの誕生日を忘れていたのか?」
クックッという笑い声に振り返ると―――
「ビル! チャーリー!!」
「なんでここに!?」
二人は、オレたちの頭をクシャクシャと撫でながら答えた。
「今日からイースター休暇だ」
「聞いてなかったか?」
そう言えば、ママがそんなことを言っていた気がする。
「たまには騙されるのも、悪くはないだろ?」
そう言ってオレたちの前に現れたのはパーシーだ。
「ヒントを最後まで聞かなかったときには、どうなることかとヒヤヒヤしたよ」
そのとき、オレとジョージはギュッと抱きしめられた。
「あぁ。フレッド、ジョージ。怖い思いをさせてごめんなさいね。あの人ったら」
ママの胸の中って、こんなにあったかかったんだ。それに、ほっとするにおい。
「ママ、苦しいよ」
オレが照れ隠しにそう言うと、ママはまだ足りないとばかりに、オレとジョージを交互に抱きしめた。
「あぁ、フレッド。このところ寂しい思いばかりさせて悪かったわ」
オレはやっと気づいた。
どんなにオレとジョージがそっくりでも、どんなに忙しいときでも、ママは決してオレたちを呼び間違えたりしなかった。いつでも、オレたちのことを見ていてくれたんだ。
「ボク、フレッドじゃないよ。ジョージだよ。まったく、この人ときたら、これでもボクたちの母親だってよく言えるな。ボクがジョージだってわからないの?」
「あら、ごめんなさい、ジョージちゃん」
「冗談だよ。ボク、フレッドさ」
オレは、ママをギュッと抱きしめ返した。
【ジョージ】
「ところで、フードをかぶったあと二人は誰だったの?」
ママが何度目かにボクを解放してくれたとき、ボクはパパにきいた。
「あぁ、ディゴリーさんとバグマンさんだよ。二人とも快く協力してくれた」
ローブを脱いだ二人の見知らぬおじさんに、ボクはぎこちなくあいさつした。
「ディゴリーさんは、この屋敷を貸してくださった。そしてバグマンさんは―――ロン! ジョージとフレッドにプレゼントを渡してあげて」
振り返ると、ロンが大きな箒を二本抱えていた。
「このまえは、ほうきをおっちゃってごめんなさい。にぃにぃ、またいっしょにあそんでね」
それはロンに折られたオモチャの箒ではなく、本物の箒だった。ボクとフレッドはロンの頭をなでると、興奮してそれを手に取った。
「バグマンさんはクィディッチの有名なビーターでね。引退後のことで相談に乗っているときにおまえたちが箒を欲しがっていることを伝えたら、お古の箒を譲ってくれると言ってくださったんだ」
バグマンと呼ばれたその見知らぬおじさんは、ボクとフレッドの肩に手を置いてウインクした。
「この箒でいっぱい練習して、おじさんみたいなかっこいいビーターになるんだよ」
ビーターって、かっこいいんだ!
「うん、ありがとう」
「オレたちもかっこいいビーターになるよ!」
ディゴリー夫人に預けていたジニーを抱きとっていたママが、ボクたちを叱った。
「コラッ! ありがとうございます、でしょ!!」
「ハハハッ、いいんですよ、奥さん。威勢のいい子どもたちだ。いつか、私もこの子たちに食われてしまうかもしれないね」
それから、誕生日パーティーは夜まで続き、ベッドの中で二人でおしゃべりをしながら、ボクたちのはじめての冒険は幕を閉じた。
なぁ、フレッド。
思えば、あの日だったよな。
俺たちが、双子であることを誇りに思うようになったのは。
ビーターの選手になろうって思ったのは。
そして、誰かを喜ばせるために悪戯をしようと誓ったのは。
「Surprise!!」
Fin.