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No.10109の一覧
[0] ハリー・ポッターと聖者の卵 (ハリポタ、セブルス短編書き下ろしの告知あり)[檀 蒲乱](2010/01/24 19:46)
[1] 世界観・用語解説[檀 蒲乱](2010/01/23 14:40)
[2] 主な登場人物 (順次更新)[檀 蒲乱](2010/01/23 14:57)
[3] 争奪戦ルール (第3章から抜粋)[檀 蒲乱](2010/01/23 15:02)
[4] Prologue ダンブルドアの苦悩[檀 蒲乱](2009/07/20 22:13)
[5] 第1章 争奪戦[檀 蒲乱](2009/07/20 22:13)
[6] 第2章 ハーマイオニーの動機[檀 蒲乱](2009/07/20 22:13)
[7] 第3章 聖者の卵[檀 蒲乱](2009/07/20 22:13)
[8] 第4章 リーダーの素質[檀 蒲乱](2009/07/20 22:14)
[9] 第5章 作戦会議 -1[檀 蒲乱](2009/07/20 22:15)
[10] 第5章 作戦会議 -2[檀 蒲乱](2009/07/20 22:16)
[11] 第6章 すれ違い -1[檀 蒲乱](2009/07/20 22:16)
[12] 第6章 すれ違い -2 (少し修正しました)[檀 蒲乱](2009/09/25 21:59)
[13] 第7章 波乱の幕開け -1[檀 蒲乱](2009/07/20 22:17)
[14] 第7章 波乱の幕開け -2[檀 蒲乱](2009/07/20 22:17)
[15] 第8章 かたちないもの -1[檀 蒲乱](2009/07/20 22:18)
[16] 第8章 かたちないもの -2 (お題あり)[檀 蒲乱](2009/08/18 16:49)
[17] 第8章 かたちないもの -3[檀 蒲乱](2009/07/20 22:19)
[18] 第9章 諜報部隊結成 -1[檀 蒲乱](2009/07/20 22:19)
[19] 第9章 諜報部隊結成 -2[檀 蒲乱](2009/07/20 22:20)
[20] 第10章 人魚の唄 -1[檀 蒲乱](2009/07/24 18:49)
[21] 第10章 人魚の唄 -2[檀 蒲乱](2009/07/24 18:42)
[22] 第10章 人魚の唄 -3[檀 蒲乱](2009/07/26 20:35)
[23] 第11章 駆引き -1 (お題あり)[檀 蒲乱](2009/08/18 16:49)
[24] 第11章 駆引き -2[檀 蒲乱](2009/07/31 17:07)
[25] 第12章 “尻尾”と“影”と[檀 蒲乱](2009/07/31 22:05)
[26] 第13章 フレッドとジョージの切り札 -1[檀 蒲乱](2009/08/03 23:14)
[27] 第13章 フレッドとジョージの切り札 -2[檀 蒲乱](2009/08/08 14:49)
[28] 第14章 狩る者、狩られる者[檀 蒲乱](2009/08/11 14:47)
[29] 第15章 目覚め[檀 蒲乱](2009/08/17 16:32)
[30] 第16章 気まずい道連れ -1 (お題あり)[檀 蒲乱](2009/08/18 16:48)
[31] 第16章 気まずい道連れ -2[檀 蒲乱](2009/08/20 14:16)
[32] 第17章 セドリックのススメ[檀 蒲乱](2009/08/21 14:05)
[33] 第18章 守護者と予期せぬ“手” -1 [檀 蒲乱](2009/08/25 14:20)
[34] 第18章 守護者と予期せぬ“手” -2[檀 蒲乱](2009/08/25 14:20)
[35] 第18章 守護者と予期せぬ“手” -3[檀 蒲乱](2009/08/29 13:20)
[36] 第19章 穴熊の巣窟 -1 (エンブレムの色を修正)[檀 蒲乱](2009/09/12 12:19)
[37] 第19章 穴熊の巣窟 -2[檀 蒲乱](2009/09/12 12:20)
[38] 第20章 エンプティ・エッグ -1[檀 蒲乱](2009/09/25 21:39)
[39] 第20章 エンプティ・エッグ -2[檀 蒲乱](2009/09/25 21:38)
[40] 第21章 鷲の高巣 -1[檀 蒲乱](2009/10/02 13:43)
[41] 第21章 鷲の高巣 -2[檀 蒲乱](2009/10/10 22:23)
[42] 第22章 フィルチの復讐 -1[檀 蒲乱](2009/10/16 21:58)
[43] 第22章 フィルチの復讐 -2[檀 蒲乱](2009/10/24 10:13)
[44] 第23章 運命の輪 -1[檀 蒲乱](2009/11/13 17:05)
[45] 第23章 運命の輪 -2[檀 蒲乱](2009/12/04 22:44)
[46] 第24章 再会 -1[檀 蒲乱](2010/02/28 11:53)
[47] 第24章 再会 -2[檀 蒲乱](2010/01/24 19:47)
[48] 第25章 行方不明者の落とし物 -1[檀 蒲乱](2010/01/30 15:05)
[49] 第25章 行方不明者の落とし物 -2[檀 蒲乱](2010/02/28 12:00)
[50] Surprise!! ~フレッドとジョージの幼少時代~ 前編[檀 蒲乱](2010/04/01 21:14)
[51] Surprise!! ~フレッドとジョージの幼少時代~ 中編[檀 蒲乱](2010/04/01 21:15)
[52] Surprise!! ~フレッドとジョージの幼少時代~ 後編[檀 蒲乱](2010/04/01 21:16)
[53] 第26章 追いつめられたライオン -1[檀 蒲乱](2011/07/18 17:30)
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[10109] 第25章 行方不明者の落とし物 -2
Name: 檀 蒲乱◆48eb02f3 ID:9e75b708 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/28 12:00
【第25章 行方不明者の落とし物 The Thing The Missing Lost その2】


ハリーは、ハーマイオニーがなんと言ったのか一瞬理解できなかった。

「ロ……ン?」
「えぇ、そうよ。ロンはあなたやフレッド、ジョージとはぐれた後、アリシアたちと合流してエリアに帰ってきたの。そしてさっき、独りでマルフォイたちを食い止めると言って―――」
「そんなはずはない!!」

ハリーは喚き声をあげた。ハーマイオニーはびくっとして、ハリーから離れるように後退りした。

「ロンは、確かにロンだった! スリザリン生のわけが―――」
「わかったから叫ばないで、ハリー。私は可能性の話をしただけよ。私だって、さっきまでのロンがスリザリンのスパイだったとは思えないわ」

ハーマイオニーが、ハリーをなだめるように言った。

「そもそも、スリザリンがスパイを送り込んでいる可能性自体が―――」
「その“可能性”が高まる証拠を、たったいま君自身が示したんだ! それなのに、よくそんな悠長なことを言っていられるな! 僕はエリアに戻る!!」
「落ち着いて、ハリー!」

ハーマイオニーが哀願するように言ってハリーの腕を掴んだが、ハリーはその手をはねのけた。
自分がハーマイオニーに八つ当たりしていることを、ハリーはわかっていた。しかし、いくつもの考えが目まぐるしく頭の中を回り、自分がどうしたいのかすらハリーにはわからなくなっていた。

スパイが化けていたのがロンだったとしたら、いまさらエリアに戻っても仕方がない。せいぜい、いまからスリザリン生が攻め込んでくると警告できるくらいだ。
とはいえ、それだけでも十分有意義なことかもしれない。
いや、何を考えているんだ。
そもそも、さっきまでのロンがスリザリン生のスパイだったはずがない。
しかしアンジェリーナにそう言ったところで、信じてもらえるのだろうか。ロンがスパイでないという証拠はない。
……違う。
ロンがスパイかどうかを議論する必要はないはずだ―――

考えがまとまらないままに階段を上り始めていたハリーは、後ろからローブを強く引っ張られ、危うく転げ落ちそうになった。

「危ないだろ、ハーマイオ―――」

しかし、そこにいたのはハーマイオニーではなかった。

「そんなに急いでどこ行くの、ポッティちゃん?」

大口で小男のポルターガイストが、ケッケッと笑いながら宙に浮かんでいた。ハーマイオニーは戸惑いの表情ですでにピーブズに杖を向けていたが、ハリーに当たるのを恐れて呪文をかけるのをためらっているようだった。ハリーは脅すように唸った。

「どけ、ピーブズ」
「オォォゥ、いかれポンチがイライラしてる」

ピーブズが意地悪くニヤニヤ笑いながら、ハリーの頭の周りをプカプカと一周した。

「どうしてそんなに動転してるの? いや、狂ってるのはいつものことか」
「ほっといてくれ!」

再び階段を上がりながら、ハリーが叫んだ。

「そんな態度でいいのかな? これ、な~んだ?」

振り返ると、ピーブズは緑色の何かを掲げていた。ピーブズが空中でくるりと宙返りし、その何かが鈍く光った。
ハリーはハッとローブの胸元に手をやった。しかし、それはそこにはなかった。ピーブズはいつの間にか、ハリーがクラムから預かっていたエンブレムをかすめ取っていたのだ。
ハリーがローブから目を上げたときには、すでにピーブズは階段の手摺を背中で滑り降りていた。ピーブズが手をかざすと、隠し扉が勢いよく開いた。

「ハーマイオニー、ピーブズを捕まえて!」

しかしハーマイオニーが状況を呑み込んだときにはもう、ピーブズは廊下に飛び出していた。

「ごめんなさい、ハリー。いつものように嫌味を言いに来ただけだと思って、ピーブズがエンブレムを奪っていたなんて思わなかったの」
「とにかく、エンブレムを取り返そう」

ハリーはハーマイオニーと一緒に、月明かりが差し込む廊下に出た。

「ポッツン・ポッツリ・ポッター!」

ピーブズは二人を嘲笑うかのように、空中でヒョコヒョコと跳ねていた。

「ステューピファイ! 麻痺せよ!」
「インペディメンタ! 妨害せよ!」

ハリーとハーマイオニーが同時に叫んだが、ピーブズは上下方向にぐるんと反転して二つの光線をかわした。そして逆さま状態のままで、舌を突き出してベ~ッとやった。

「タイミングをずらして、追い詰めましょう」

そう言うとハーマイオニーは、ハリーの二度目の呪文を避けたピーブズに杖を向けた。

「インカーセラス! 縛れ!」

ピーブズは辛くもその呪文から逃れたが、鈴飾りのついた帽子がずり落ち、オレンジ色の蝶ネクタイは歪んでいた。イライラが頂点に達していたハリーは、その鬱憤をぶちまけるように魔法をたたみかけた。
さすがのピーブズも、これには参ったようだ。ピーブズは何度目かのハリーの呪文を辛うじて避けたはずみで、花瓶に頭から突っ込んでしまった。

「マジになるなよ、ポッター。あぁ、興醒めだ。こんなもの、こうしてやる」

それは一瞬のことだった。水を被り頭に花が引っかかったピーブズが窓を一睨みすると、パッと窓が開いた。そしてピーブズはエンブレムを窓の外に投げ捨て、悪態をつきながらズームアウトして消え失せた。

「拾いに行かなきゃ!」

あれはクラムのエンブレムだ。もちろん三十点というその点数も大きかったが、再戦のときまで預かっておくと約束したものだった。
ハーマイオニーが窓の外を見下ろした。

「ちょうど城の正面玄関のすぐ外だわ。急ぎましょう。もうすぐ十分が経ってしまう」

二人は一番近くの大理石の階段を一階まで駆け下りた。玄関ホールはダーズリーの家がまるまる入りそうなほど広く、天井はおそろしく高い。あまりに広い空間なので、寮の点数を記録した巨大な砂時計の脇を駆け抜けたハリーの足音は、石畳の床や松明の炎に照らされた石壁に反響こそすれど、増幅することなく天井へと吸い込まれていった。樫の扉を開けた途端、ハリーの顔を夜気が包んだ。
クラムのエンブレムはルーモスを唱えるまでもなく、玄関ホールから漏れた光の筋の中にすぐ見つかった。ハリーはエンブレムをしっかりと胸に留め、ハーマイオニーを安心させようと振り返った。
しかし、ハーマイオニーはそこにはいなかった。

「ハーマイオニー?」

ハリーが樫の扉を入ると、興奮した面持ちでハーマイオニーが駆け寄ってきた。

「ここよ! ここなのよ、ハリー!」
「えっと、何の話だい?」

ハーマイオニーが両手を広げ、玄関ホールを振り返った。

「マクゴナガル先生が仰っていたでしょ。『“永遠”という言葉が虚しく響き、零れ落ちる時を留めてはおけない』というのは、まさにこの玄関ホールのことを言っているのよ。足音も吸い込まれてしまうこの広大な空間。そして、宝石が零れ落ちるこの砂時計」

ハリーも玄関ホールを見回した。ハーマイオニーの言うとおりだ。ここ以外に、マクゴナガル先生のヒントにピッタリの場所があるはずがない。

「それなら、この玄関ホールのどこかにロンの手がか―――ウワッ!!」

喜びのあまり駆け出そうとしたハリーは、何か小さくて丸い物を踏んづけてしまい、ドスンと尻餅をついてしまった。

「大丈夫、ハリー!?」

ハリーはお尻をさすりながら立ち上がった。

「うん。何かがここに落ちてて―――」

前方に転がっていったその何かに、ハリーは見覚えがあった。よく確認するために、ハリーはそれを拾い上げた。

ハリーの頭の中でバラバラに存在していたパズルのピースが、途端に組み上がり始めた。

一週間前のマルフォイの不審な行動とハリーが感じた違和感。
スリザリンの大胆な作戦。
ロンのタロットカードの真意。
行方不明のロン。
廻り続ける掛け時計の針。
ルーピンの残したヒント。
スリザリンのエリアがいくら探しても見つからない理由。

それらのすべてを結ぶ最後のピースが、いまハリーの手の中に収まっていた。

ハリーの肩越しにそれを見たハーマイオニーも、興奮で目を輝かせ、両手を口に当てた。


しかし、その口から言葉が漏れることはなく、その目の輝きは虚ろに消えていった。
スローモーションの映像を見ているかのように、ハーマイオニーがハリーの脇に倒れた。

「これでまた独りぼっちだな、ポッター」



ハリーを取り囲んだスリザリンの集団の先頭で、杖を掲げたマルフォイがせせら笑っていた。




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