…目が覚める。

視界はまだ映らんが、それは後回しだ。

機体チェック…異常なし、うん、上々。

つうか、まだ改造されたばっかで以上あったら嫌だよ。


「どうかね?」


おっ!　モノアイから、周囲が見えるようになった。

周りは……機械やら何やらある部屋だ。

…ちょっと面白そうな感じだ。



んでもって目の前には、薄紫色の髪をした白衣の男。

…あぁ、この人が創造主、だったっけ。

なんとも悪、っていう感じのする笑みしてらぁ…。

それはともかく、さっさと問題なしって言わなきゃ。


「上々っす、ドクター」


ここまで言えば、俺のことが分かるだろう。

そう、俺はなんと!


自我を持ったガジェット・ドローンⅠ型なのさ!

…えっ、別にどうでもいい?　あ、そう?


実は創造主でヒステリーなスカ公…もとい、ジェイル・スカリエッティが、実験で改造したんだ。

ガジェットでも自我が持てるか、みたいな感じの。



思いつきでやんなよ、こんなん…。

まぁ、自我が持てたし、強化されたから、いいけどさぁ～…。

つうか自我もって分かったけど俺、意外と毒舌だな、おい。


「そうかそうか。他の三体はどうだい?」


そんな考えもつゆ知らず、スカ公が横を向いた。

俺も向いてみたら、俺の弟達がいた。

もちろん、みーんなガジェットだ。


「自分も良好です、ドクター」


薄っぺらい飛行機みたいな形のⅡ型が、フラフラと宙に浮く。

なんか、生まれたての小鹿みたいだな…落ちるなよ?


「ボクも同じく～」


んでもって、一番おおきくてまん丸な身体のⅢ型。

…兄である俺が小さく見えるのは、とても悲しい。


「私も、です」


人型であり、いちばん最初に作られたガジェットⅣ型。

本来ならこいつが兄なんだろうけど、ドクターは番号で長男を決めた。

だから一番の末っ子だ……能力は断トツで一位だけどね。



結果、み～んな揃って同じことを言った。

だから、出来たばっかなんだからそりゃ良好だって。


「うむ、どうやら自我は問題ないようだな」


うん。色々と感情もあるし、成功だよこりゃ。

でも自我があると愚痴とか思えるし、いいね。


「それで名前だがⅠ型、ガジェワなんてどうだ?」
「え?　ガジェワ?」


なんだ、名前もくれるのか?　顔に似合わず、案外いい奴なのか、こいつ?

…あれ?　でも名前は、ガジェット・ドローンⅠ型を略して数字を英語にしただけじゃね?

とりあえずセンスがないのは間違いない、うん。


…でも、自我がないガジェットと同じ分類にされるのもちょっと嫌だし、無いよりゃマシか。


「それでいいっす」


ちょっと不満はあるけど、いいや。

自分じゃあんまり良いの思いつかないし。


「じゃあ自分はガジェツですね～?」


弟のⅡ型は、喜んだみたいにフワフワ動く。

…ただ略して、数字を英語にしただけなのにね。

そんなに嬉しいか、名前がつくの?


「ボクは…ガジェスかな?」


Ⅲ型も喜んでるみたいだ。

…やっぱり、名前があるのは嬉しいのか?


「…私は、ガジェフ、か」

寡黙のⅣ型は、あんまり喜んではいないみたいだ。

…しっかし、脚が沢山あんなぁ、怖ぇ～。


「…うん、スペックも本来の倍以上。良い結果だな」


どうやら、満足しているようだ。

でも成功体だから扱き使われるんだろうなぁ…まぁ、しょうがないけど。


「では早速だが四体とも、数日後のホテル・アグスタで行われるオークション会場に行ってもらうよ」


はい?　オークションかいじょおぉ?

…なんでだろう、果てしなく嫌な予感がする。


「あの～ドクター、そのオークションにはなんで…?」


おっ、ガジェツよく聞いた。

俺もミッション内容、気になってたんだ。


「ロストロギアがオークションにかけられる。その回収の時間稼ぎだ」


言うなれば囮、か。

よくもまぁ、そう考えられるもんだな。


「あと機動六課の警備付きだから、用心はした方がいい」
「「「え…?」」」
「………」


なぁにぃぃぃいいいいいっ!!!!?

こいつ、俺達にあの女をぶつける気かよ!!?

自我がない時とはいえ、俺は“あれ”を鮮明に覚えてるぞ…!!!



あの桜色の魔力光をもつ悪魔の姿が…!!!

空を舞い、白いドレスに身を包んだあの悪魔を…!!!

だ、だめだ!　これ以上、思い出したくねぇ!!!


「だ、大丈夫ですか兄貴?」
「さささ、さっきから震え、止まってないよ?」


弟達よ、それはお前らの身体もだろ…。

こいつ等も、俺同様に恐怖が染み込んでるようだな…。

お互い、生きて戻れて良かったね…!


「…問題ない」
「「「あるよ!!」」」


それでもただ一機、ガジェフは怯えてすらいない。

さすがだなぁ。伊達に昔、エース・オブ・エースを墜としたわけじゃないな～…。


「まぁ、それまではゆっくりとしていてくれ」


っておい、もう行きやがったぞあの野郎。

結局、参加は決定事項!?　マジで!?

そして俺の頭の中で、ある図が出来上がった。


自我が出来たばっかで出撃→白い悪魔とバッタリ＝スクラップ＝終了


い、いやだぁぁぁああああ～～～～!!!!!

なんで自我ができた早々、俺達は崖っぷちなんだろ…?





あとがき

ただ単にガジェット達に意思があったらいいなぁ、と想い、書いてみました。

少し短かくなってしまいましたが…。

ご感想、ご指摘をどうぞ、よろしくお願いします!

（題名、変更いたしました）