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No.9604の一覧
[0] HUNTERxHUNTER ―サムライガールの憂鬱―(現実→HxH オリ主転生 TS)[ぴろし357](2009/06/15 17:48)
[1] 第一話『転生』[ぴろし357](2009/06/15 17:51)
[2] 第二話『修行』[ぴろし357](2009/06/16 14:27)
[3] 第三話『天空闘技場 其の一』[ぴろし357](2009/06/18 17:41)
[4] 第四話『天空闘技場 其の二』[ぴろし357](2010/06/08 22:49)
[5] 第五話『ピエロとイケメンにご注意!』[ぴろし357](2010/06/13 11:29)
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[9604] 第一話『転生』
Name: ぴろし357◆4be33175 ID:280dbc78 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/15 17:51



 HUNTERxHUNTER ―サムライガールの憂鬱―(現実→HxH オリ主転生 TS)



 第一話『転生』



 俺は今、アスファルトの上で最後のときを迎えている。
 流れ出るおびただしい血流は、もはや助かる見込みが無いことを物語っていた。
 そして、それは脇腹に刺さった包丁からとめどなく、今も流れ続けている。

「貴方が・・・・・・浮気なんかするから・・・・・・」

 そう言って涙ぐむ彼女の顔には、まったく見覚えが無い。初対面だ。
 事の発端は一時間前。何時ものように大学の講義とバイトを終え、今日も無事一日を終えようとしていた。
 最寄の駅から、築二十年のボロアパートまでの二十分を短縮しようと、普段通りなれない近道を通ったのが運のツキだ。
 もうすぐアパートが見える場所へと差し掛かったとき、彼女が現れた。
 彼女は、「あの女は誰!」だの、「私は貴方のなんだったの?」だのわけの分からないことを口走った挙句、脇に構えた包丁を困惑する俺の脇腹に突き立てた。

 当然、俺も痛みを我慢して抵抗したさ。でも、それが悪かったらしい。
 彼女は止めとばかりに、包丁をめった刺しに突いてきた。
 それから彼女は動かなくなった俺の頭を無理やり膝に乗せ、頭を梳くように撫で付け続けている。

 もうだめだ・・・・・・そう思った時、初めて彼女の膝の柔かさと良い香りに気づき、不覚にも彼女を可哀相だと思ってしまった。
 だから視界が暗転する直前に素直な感想を口にした。

「・・・・・・あぁ・・・・・憂鬱だ」

 それが俺――近藤勇(コンドウイサミ)の最期の言葉となった。







 う・・・・・・眩しい・・・

 次に目覚めたのはまばゆい光に包まれた世界だった。
 誰かに抱え上げられている感覚があり、ふわふわと中を浮く感覚を味わった後に、柔かい物に包まれた。
 不思議とそれは何年も前に味わった気がして、既視感を感じていた。安心するぬくもり。

「生まれてくれて・・・ありがとう・・・・・・私があなたのママよ」

 そう言って微笑みかける女性に答えるため声を上げようとすると、腹の下から込み上げてくるものがあり、思わず声を上げてしまう。

「ふぎゃぁぁぁぁぁ! ふぎゃぁぁぁ!!(うわぁぁぁぁl!)」

 あれ?
 今口から変な赤ん坊のような泣き声が・・・・・・。

「ふぎゃぁぁぁっぁ!!(なんだこりゃ!)」

 手足を動かそうにも圧倒的に短く、力も入らない事にも気づいた。


 これは・・・・・・俺は赤ん坊に生まれ変わったのか?
 しかし、次に告げられる「事実」に比べれば些細な事だと、この時状況が少しでも理解できていたら思ったに違いない。

「おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!」

 こうして、俺改め――私の第二の人生がスタートしたのだった。

「あぶぅ・・・・・・(憂鬱だ・・・・・・)」






 私――凛=ノーザンライトが第二の人生を迎えたのは、ザバン市の郊外にある片田舎。人口1000人ほどの小さな集落だった。
 いつも柔らかな笑いをたたえる良妻賢母の母と、一家を支えるため片道二時間もかけて、ザバン市の役所に勤める勤労で優しい父との間に生まれた一粒種が私である。
 二人は大恋愛の末の駆け落ちで、結ばれたと聞く。その結果として産み落とされた私には惜しみない愛情が注がれた。
 生まれてすぐの頃は転生を嘆いてよく泣いたものだが、そのたびに両親に暖かく抱きしめられた時は、素直に嬉しかった。
 私はこんなやさしい家庭に生まれたことを感謝し、「俺」としてではなく、「私」として生きていくことを決意した。

 二歳迎える頃、私はようやく私の取り巻く状況を理解していた。
 いや・・・もしかするともっと早く気づいていたのかもしれない。
 そして二歳になったその日に、母様に意を決して聞いてみた。

「ねぇねぇ母様、はんたーってなーに?」

 舌っ足らずなその言葉に少し驚いたようになったが、すぐに慈愛に満ちた笑顔に戻り、とんでもない事実を告げた。

「ハンターっていうのはね、とっても難しい試練を合格した人だけが就けるお仕事よ~。昔母様もハンターだったのよ?」

 なんと! 母様はハンターだったのだ!
 違う! 驚くところそこじゃない!
 独特の文字や聞き覚えのある地名が流れてきているのは知っていた。ただ、気づきたくなかっただけなのかもしれない。


 そう・・・・・・ここは「HUNTERxHUNTER」の世界。私はとんでもないところに転生させられたのかもしれない・・・・・・。

 とはいえ、そに事実を「再確認」した後の私の行動は早かった。
 この世界で生きていくのに、必要不可欠な力を付ける為の努力は惜しまなかった。
 文字の読み書きをはじめとした、「この世界」についての知識に始まり、散歩と称して野山を駆け巡り、基礎体力のトレーニング。
 四歳になる頃には、森を熟知する野生児としての能力を遺憾なく発揮していた。

 でも、そんな慢心が・・・・・・あんなことになるなんて誰が想像出来たろう。

 その日は日がくれる寸前まで、森を駆けずり回っていた事もあり、近道を通ろうと普段は絶対に通らない崖を全力で走っていた。
 前世での教訓が頭に響いた頃には、すでに足を滑らせて宙を舞っている途中であった。

「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」

 このとき以外にも私の頭の隅に湧いた考えは、「あぁ・・・俺もすっかり女の子みたいな悲鳴を上げるようになったな・・・・・・」という場違いな感慨だった。
 こうして私は、全身への激しい衝撃と共に、意識を消失させた。







 <<ビスケ>>

 その日私はザバン市に立ち寄るべく長い間修行の場として生活していた山を後に、麓の村へと下山しているところだった。
 心源流の修行のためといえ、女がシャワーも浴びられない山篭りなんかするものではないと、ひとりごちていた。

「はやいとこ、汗を流したいもんだわさ。明日には新しい弟子の修行を開始しなきゃならないんだから」

 誰に言うでもなくそうつぶやく。たしかウィングとかいう小僧だったか。
 ネテロの爺さんに頼まれたのでなければ断っていたところだ。





「ん?」

 その瞬間に見えた光景にはさすがの私にも唖然とさせられた。
 見たところ四歳くらいの幼女が足を踏み外して崖から落ちていく光景だった。

 気づいたときにはそちらに向って全力疾走していた。
 今まで多くの人の死を体験してきたにもかかわらず、何故かその時は無条件に体がその幼女を助けようと動いていた事に、私は少し安心した。
 まだ、私の心は腐ってはいなかったのだと。

「!・・・・・・これは・・・・・・」

 私が目にしたのは、この崖の落差。
 目測で30メートルはあるだろうか。彼女はピクリとも動かない。
 誰が見てももう助からない・・・・・・そう諦めかけたとき、幼女の体をわずかにオーラが覆っているのに気が付いた。
 それは弱々しくはあるものの、彼女の体を守ろうと漂っている。

 この子は助かる!

 そう直感した私は、幼女を片手に担ぐと麓の村を目指し、一気に駆け下りた。
 おそらく、死を直感した瞬間に、無意識に精孔が開いたのだろう。

 なんという幸運! なんという偶然!

 私はそれでも全身打撲の大怪我には違いない小さな命を絶やすまいと、村へ急ぐのだった。







 うっすらと開いた目に飛び込んできたのは、泣きはらした母様の顔だった。
 全身を激痛が走り涙目になるが、そんなもの母様のこの顔を見たときに受けた胸の痛みに比べればたいした事はなかった。
 私が泣かせた・・・・・・前世では疎遠になってたせいもあり、こんな母親の泣き顔を見るのは初めてだった。
 二度とこんな顔をさせちゃいけない・・・・・・それが一番の感想だった。

「気がついたかい?」

 ふとかけられた声にあまり動かない頭を軽く振ると、一人の少女が立っていた。その顔には凄く見覚えがある。
 私が呆気の表情にとらわれているのを確認すると、その少女は予想通りの名前を名乗った。

「私はビスケット=クルーガー。心源流拳法の師範代をやってる。あんたは私が崖下から助けてきたんだよ。正直無事で驚いてるとこさね」
「ありがとう・・・・・・ございます」
「ふむ、礼儀はしっかりしているようだね」

 困惑する頭をよそに、母様から習った礼儀作法を実践すると、感心された。
 母様は良いとこのお嬢さんであったらしいので、そこの所は結構厳しかったりする。

「あんた、どうやって助かったか覚えてるかい?」
「いえ・・・・・・」

 そんなの覚えてるわけ無い。崖から落ちたのに。

「覚えてないようだわね。というとやっぱり無意識にか・・・・・・」
「あのぅ・・・」
「ずばり言うけど、あんたは念と呼ばれる能力によって一命を取り留めたんだよ」

 おいおい! そんなにあっさり念の事しゃべっていいのか? あんまり広めたりしちゃダメなんじゃなかったっけ?
 と混乱する私をよそに、ビスケは念の説明を始める。
 だけど私も「HUNTERxHUNTER」は読んでたので、ある程度は分かる。ビスケの教えを復習するつもりで聞いてゆく。

「分かってると思うけど、通常この能力は一般には秘匿されている。なぜだかわかるかい?」
「えっと、ねんをおぼえた悪い人が悪い事しないため?」
「なるほど・・・・・・頭はいいようだわね。まあでも実際は、力のあるものは自然と行き着くから、悪人でも念能力者は結構いるわさ」

 なんか矛盾しているような気もするが、幻影旅団やヒソカの件もあるしね。妙に納得させられる。

「ところであんたの体から蒸気のようなものが立ち昇っているのが見えるかい?」
「えっと・・・あっ!」

 気が付くと、全身を生暖かい蒸気のようなものが覆っており、漂うように流れている。
 何てことだ、念能力に目覚めたのか!?あの怪我で?

「そう・・・・・・普通はありえない・・・ことも無いんだけどね、死に直面したときにショックで目が覚めてしまったのよ」
「そう・・・ですか・・・・・・」

 そう言うとビスケは二本の指を差し出して見せる。いわゆるピースサインだ。

「あんたには、二つの選択肢が用意されている。ちなみにどっちを選んでも両親には了解済みだよ」

 私のうなづく動きを確認すると。

「一つは、このままあんたの記憶を私が封じ、念能力も封じて何事も無く平穏に暮らすか」

 そう言って彼女は指を一つ折る。

「もう一つは、私の弟子になって正しく念を習得するか。その場合あんたの行く先は決して平穏とは言えない修羅の道となる」

 私は考えた。このまま平穏に暮らしていくことを両親は望んでいる。しかし、その場合いざという時にこの愛すべき人たちを守れるのかは、正直不安だ。
 少なくとも、原作開始の数年後にはキメラアントの事件によって、かなり広い範囲が危険に晒される事になる。
 そして、この村もその範囲に含まれる可能性を否定する事は出来ない。その状況を回避するにせよ何にせよ、力はあって邪魔になるものじゃない。
 それに、この世界に生きていくと覚悟を決めた二年前から、この人生が一筋縄ではいかないことくらい分かっている。
 そのために野山を駆けて体力を付けてきたのではないか?
 だったら迷う必要は無いな・・・・・・。

「決めました・・・・・・よろしくお願いします! 師匠!」
「よく言った! 怪我が治り次第修行を始めるよ。今のうちに覚悟を決めておきなさいな」

 こうして私は、ビスケの弟子になったのであった。
 このときはまだ、自分が地獄の門を叩いてしまった事にまったくといいほど気づいていなかった。



 こうして元俺―近藤勇と現私―凛=ノーザンライトの長い物語が始まったのであった。






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