セイス隊長に高町たちを押し付けたのか高町たちにセイス隊長を押し付けたのか分からんけど、あんな感じでどっちも放置して俺がもといた担当区域まで戻って来てから一時間ほど経って、シャマルさんから連絡が入った。
どうやら予想通りにガジェットの大群が現れた模様。現在確認できているだけでⅠ型40とⅢ型8。
ついでに作戦指揮は自分が取るので指示に従うようにとの通達。
とりあえず防衛ラインはティア嬢たちに任せて俺たちで迎撃に出る感じにするような作戦展開のようだ。
こうなった以上デバイスを展開しないわけにはいかないのでシャーリーにデバイス起動の承認もらってささっと起動。
ガンナーを左手に、刀を右手に携える感じでソニックムーブ使ってシャーリーが送ってきた座標データに添って移動。
目についたガジェットをヴァリアブル・シュートでこまごまと迎撃していく。
近くにいたガジェット十機ほど一掃したあたりでシグナムさんとヴィータが合流してきて二人して驚いてた。
この程度の雑魚多少蹴散らしたくらいでそんなに驚くようなことだろうか? 所詮は頭の出来のお粗末な機械兵器なんぞ相手にいちいち遅れ取ってたら、あんなにいろいろ任務こなすことなんて出来やしないと思うので実際大したことないよねこの程度。
とか思いつつ先を急ぐ。今狩った分じゃ全体の四分の一ほども撃破していない。Ⅲ型にも出会ってないし。
そんな折ふと気になったので聞いてみた。
「ところでザフィーラさんどこ行ったんすか?」
「別の区域で他のガジェットを迎撃している。確かにこの区域にガジェットが集中してはいるが、しかしそれでもここだけに攻め入ってきているというわけではないからな」
俺の問いに簡潔に答えると、刀剣型のデバイスレヴァンティンを携えて、シグナムさんは敵の現存座標の方へと駆けて行った。
その後ろ姿見ながらつくづく思うが、あの人ホント『颯爽』って言葉が似合うお人だよね。男の目指す姿を体現する女性とかすげーなと純粋に思う。
「……で、なんであんたは俺の横にいらっしゃるので?」
「前に言ったろ。お前の背中はあたしが守るって」
ヴィータがうっすい胸張りながら偉そうに言った。
そう言えばそんなこと言われてそれを認めた気もする。だけどマジで実行する気だとかちょっとありえんと思うんだが。
俺だってガキじゃないしてめーの始末くらいてめーでつけられる。あんまし過保護にまとわりつかれるのもちょっとなー。
とか思いつつもどうせ何言ってもこいつの鉄壁のような意志相手にゃ無駄だと思うので一緒になって遠距離からⅠ型のガジェット狙撃することにした。
しかし相変わらずなんかすげー魔力弾の撃ち方するよなヴィータ。
目の前に浮かした魔力弾をグラーフアイゼンと言う名のハンマーでぶっ叩いて打ち飛ばすとかいまどきちょっと見ないくらい原始的だ。
だけど単発の威力俺のノーマルショットよりも上だから驚くしかないよね。ゲートボール(?)万歳。
向こうの方じゃシグナムさんも紫電一閃とかでⅢ型真っ二つに両断したりしてるし、ホント隊長陣と一緒に仕事だと楽でいいわ。新人率いてのハラハラ任務は緊張感ありすぎてちょっと疲れるし。
そんな感じでこのまま適度に手間取りつつ今日の任務も無事終了かねーとか思い始めたあたりで戦況に異変発生。
通信やら念話やらになんとも風向きのよろしくない報告がいくつか入ってくる。
敵さんの中に召喚士がいるとかどういうことだよ聞いてねーよ。しかも話を聞いてると随分と異常な魔力をお持ちのご様子で。
そんで俺達が微妙に浮き足立ってるうちにいきなり動きの良くなるガジェット勢。周囲のガジェットと結託して連携して攻撃したり防御したりと活躍を始めおった。
どうやらオートマトンから手動操作に切り替わったようだ。そんな悪いことをするのはどこのどいつだとか思ったけどそれ突き止めるの俺の役目じゃないからまあいいや。
で、シグナムさんから俺に指示。このまま彼女と一緒にこのあたりの敵を片付けるって話に。
ヴィータの方はホテルの防衛線守ってる新人たちの所へ行くように言われてたんだが、なんだか後ろ髪引かれたように俺の方見たのでシグナムさんいるから大丈夫でしょ、それともなんでござるか、ヴォルケンリッター烈火の将が鉄槌の騎士の信用を得ていないことをその身をもって証明なされるおつもりかとか言ったらシグナムさんが俺を睨むの見てから渋々とホテルの方へと飛んで行った。
それ見送ってから頭を下げる俺。
「すみません。下手に説得するより挑発するのが早いかと思いまして」
「……いや、いい。お前の判断は正しかった。私ではああも容易に説得はできなかっただろう」
それにしてもあいつも過保護が過ぎるなとかぼやいていたので全く同意ですと答えたら苦笑が帰ってきた。
で、急に動きのよくなったガジェットどもをちょっとだけ気合い入れなおしてハンティングしてると、少し離れた位置をどこかへと飛び去っていく小さな人型を見つけたので、刀の方のカートリッジ二発ロードして誘導弾フル展開して周囲のガジェットフルボッコにしてからシグナムさんに念話でちょっとふけますと言いおいて追いかけた。
ヴィータがホテル戻ったあとすぐにザフィーラさん来たし、俺いなくてもあの二人なら前線支えられるだろう。俺もだいぶ数削ったし。
とか言い訳頭に浮かべながらさあ待つんだツヴァイ、多少旗色が悪くなったからって敵前逃亡は許さんよとかあいつに限って絶対にありえんこと考えつつ飛行魔法でツヴァイに並走する。
で、
「やあお嬢さん、こんな所で奇遇だね。暇なら一緒にお茶しない?」
「な、何言ってるんですかセイゴさん! 今は任務中なんですよ!」
「この程度の軽口に真面目に突っ込んでくれるとはあなたは間違いなくリィンフォースⅡ空曹長。ところで本物なのならなんでこんな所で油売ってんの?」
とか聞くとシャーリーから通信入って事情を説明される。
よく分からんけどガジェットの動きがいきなりよくなったのは敵さんの中にそういうことの得意な召喚士さんがいるからじゃないかという話。召喚士って便利なんだなー、キャロ嬢もそういうこと出来たりするんだろうか。
で、ツヴァイはその召喚士の所に向かう途中だったんだって。
まあ今の状況とか今回の任務の想定状況遙かに超えてるし、六課としたら何とか敵の尻尾つかんで手柄立てて少しは糧にしないと話にならないだろうから必死になるのは分かるんだけど、でも一人で行ったら危なくない?とか聞いたら、じゃああなたもついてきてくださいとか言われてついて行く羽目に。
なんという藪蛇。まさしく口は禍のもと。
でも乗り掛かった船だから仕方ない。一緒に冒険に出かけようじゃない。
で、
進むにつれて羽虫みたいのが絶賛増量中だったもんだからいろいろめんどくなって横飛んでたツヴァイ小脇に抱えてソニックムーブ発動。シャーリーのナビ通りの場所にたどり着くとそこには全身紫っぽい格好した少女が一人。
両手にはめてるキャロ嬢のと同じようなブーストデバイスっぽいのからして多分こいつが敵の召喚士さんかね。
さて、こっから先が重要だ。こういうやつを相手にする場合は、出来る限り警戒心を解いて友好的な話し合いをしなくてはならん。
暴力は何も生まないとまでは言わないが、話することでこちらにおいしい情報いただきます出来るかも分からんからね。
というわけで、
「やあお嬢ちゃん、こんな所で迷子かい? こっちにおいで、飴ちゃんをあげよう」
「…………」
適当なこと言いながら手招きしたらすんげー怪しい物を見られる視線を向けられました。くそっ、どこで間違えた!?
『凄いなマスター。まるで春先に召喚される、いたいけな子供を誘拐しようとする不審者のような物言いだ。普通人に容易に出来ることではないぞくははははっ』
「怪しさに充ち溢れた言い回しですぅ」
「なん……だと……?」
言われてよく考えてみると確かにヤバかった。
え、なに? 俺不審者の才能あるの? 全然嬉しくねーよそんなもんあっても!
でも飴あげるからこっちおいでよはねーよ。自分で言っておきながら自分でありえねーと自己嫌悪超絶発動で頭を抱えてると、少し離れた位置から小さな声が掛けられた。
「……平気?」
顔をあげてそっちの方見ると、さっきの召喚士の少女が俺の方を見ていた。
敵に気遣われるとか俺ももう末期だね。しかしなんだこの感情は。
久しぶりに掛け値なしにまともに俺のこと心配してくれる子と出会ったからか、なんか微妙に泣きそうだ。
でもここで泣くのもみっともなくてあれなので照れ隠しで叫んでみた。
「べ、別にお前に心配されてもうれしくなんかないんだからなっ!」
「……」
ついいつものノリと勢いで怒鳴ったら黙らせてしまった。このネタが通じないとはなんと純な少女だ……!
しかしこれは酷い。勝手に落ち込んで慰められた挙句、その相手怒鳴って委縮させるとか俺死ねばいいと思う。
『マスターがいたいけな少女を泣かせたぞ。これはしっかと記録して後にしかるべき場所にばら撒かねば。おもにレイジングハートの記録領域とかに』
「おい馬鹿やめろ。そのRECは早くも終了してくださいお願いします。つーか泣かせてません捏造しないで」
「セイゴさん……空気読めです」
そんな感じでグダグダやってたら頭上に気配感じたので俺の肩の近くでふよふよ浮いてたツヴァイ右手でひっつかんでその場から飛びのいた。
言っとくが、どれだけグダグダだろうと周囲への気配りだけは怠っていない。戦場にいる以上それが当然だろう。
飛びのいた数瞬後にさっきまで俺達がいた場所にハルバートのような槍型のそれが振り下ろされる。
「……ほぅ、今のタイミングで俺の攻撃を避けるか。なかなか────…!?」
振り抜いた槍を引き戻して俺の方を見たその男が少し動揺したようだった、尤も、フード深くかぶってるから顔は見えないが。
しかしそんな彼の様子に気を払う余裕など、俺には無かった。
いきなり斬りかかってきたし、そっちの召喚士の女の子かばう位置で佇んでるし、なにより一挙手一投足が全て俺に敵意を向けている。
間違いなく敵であるその男は、明らかに俺を圧倒的に上回る技量を持っていた。
だってどこにも刀打ち込む隙ねーし。
一瞬でも気を抜けば今この場で頭と胴が永遠にさようならすることになるのはどこの誰が見ても認識に相違ないだろう。
……最悪すぎだ。感覚で分かるよ。俺じゃあ確実に敵いません。
まともに打ち合ったら数秒もつかもたないか。
申し訳程度に腰の刀に手をかけて居合抜きの体勢を作りはするものの、どう考えても鯉口切った瞬間リアルファイト勃発である。出来ればそれは回避したい。確実に御逝去ルートへと進む算段が立てられるから。
だからこの場は撤退が最善手だねー、とか結論付けて現状離脱の手順をいくつも思い浮かべていると、男が俺に向けていた槍の穂先を地面に下ろした。
不審に思って眉根を寄せながらも刀にかけた手は離さずにその場で緊張を解かずにいると、男は背後の少女に話しかけた。
「……目的のものはどうなった」
「もうすぐ奪取できるはずだよ」
「そうか、ならば引くぞ」
口数少なくそれだけ言葉を交わすと、男は少女を抱えあげてあっという間に跳び去って行った。
去り際に俺の方をちらりと見た気がするが、いったいなんだというのか。
しかし一方、俺はその背を追うことも、待てと声をあげることすらもできない。
男が俺の視界から消えたのを確認すると、その場に膝をついて崩れ落ちた。
緊張の糸が切れるとはまさにこのことか。全身の感覚が急速に消えて失せ、立ち上がろうと足に力を入れるのすら困難になっていた。
「せ、セイゴさん!?」
ツヴァイに声をかけられながら、俺はぜぇ…ぜぇ…と息を切らす。
……まいったな。冷や汗止まらないし、動悸はするし、息切れはするし……。救心をください。
しかし久しぶりに本気で死ぬかと思った……。
数十秒対峙していたかしていないかくらいの時間だったのに、体が完全に疲弊しきっている。
生まれたばかりの小鹿の気持ちをこの年になって理解することになろうとはねー、足がガクガクでござるー。
なんて馬鹿なことを考えて気持ちを別の方向へと向けて無理やり落ち着けながら、いやー、俺もまだまだ精進足りんよなとか思いつつがくがくと震える手を刀から離した。
「……あー、ったく。マジ洒落になんねえぞ、あれは……」
「セイゴさん。あの男の人は……」
「……さあね。いずれにしろアレの相手は俺には無理です」
多分シグナムさんレベルの達人さんじゃなきゃ目の前で為す術無く自分の腕がナマス切りに仕上がる過程を拝むことができるだろう。
俺が汚いオブジェと化すのも随分容易だろうなー。
「────それにしても」
そんなこと考えながら俺は、あの数分の邂逅の間に頭の端に埃のように、ノイズのように積み重なっていた、何か引っ掛かりを覚えるそれを必死に手繰り寄せようとしていた。
引っかかったらその場で反芻。後になるほど記憶は薄くなりますのでね。早い段階でエピソード記憶を脳裏に刻み込むのが俺のやり方。
で、いろいろ思ったり考えたり思い出してみたりした結果。
「────そう言えばあの声、どこかでいつか聞いたような────?」
なんて結論にたどり着いたんだが、そっから先がどうにも分からん。
仕方ないから息整えてようやく震えの治まってきた体に鞭打って、後のことはツヴァイに任せてシグナムさんとザフィーラの援護に再度向かうことにした。
……しっかし、なんかどうにも胸の奥がむかむかするなー。
ったく、あの人一体なんだったんだよ……。
ガジェットみんなでフルボッコしてシグナムさん達とヘリポートへと向かうとそこには何もなかった。
え、なに、なんでいないの? まさかのヴァイスさん主導のいじめですかマジですかとか思ってるとシグナムさんにシャーリーから通信入って事情を説明される。
なんかティア嬢が任務中に怪我負ったのでシャマルさんと高町と新人たちが付き添って先に帰ったんだとか。
なんでもティア嬢、一人で頑張ってちょーっと前に出すぎて敵の攻撃捌ききれなくなって足がもつれてこけて捻挫したんだとか。
まあでもそこから先はちょうどいいタイミングで新人たちのもとにたどり着いたヴィータがガジェット相手に無双を繰り広げたそうなので大事には至らなかったらしい。
けどちょっと患部の腫れが酷かった上に、ティア嬢の行動そのものが普段の戦闘スタイルとはずいぶんかけ離れたものだったから高町が説教するついでに先に帰ったんだって。
けど無理したおかげでティア嬢の撃墜数とか俺についで二位だったらしいよ。
まあ、俺たちのスタイルとか撃墜数稼ぐのには適してますからね。
とりあえずそういうことなら仕方ない。ヴァイスさん戻ってくるまでその辺で時間潰そうとか思って適当にその辺うろうろしてたらフェイトさん発見。
近付いてみると誰かと話してたので誰ぞやとか思いつつさらに近づいたらそこにたたずむは無限書庫の司書長さん。
おーユーノ君じゃーん。って声掛けたらこっちに気付いて「あ、セイゴ、久し振りだね」と返事してくれたので「おいっすー」と返事して適当に挨拶。
ところでなんで昨今図書館と言う名の牢獄に引きこもり気味な君がこんな所にいるのかとか聞くと「ひ、引きこもりって……」とか傷ついた表情浮かべたので「ごめんなさい冗談です」とあっという間に頭を下げる。
なんか俺この人に頭上がらないんですよね。いろいろあったもので。
そのせいで突っ込んだイジリが出来ないのはちょっと残念。
で、気分とりなおしたユーノくんが事情説明。
なんかこの人このオークションの品物鑑定任されたんでわざわざこんな所までやってきたんだって。
この人そんなこともできるんだねー、すげー多彩だなーとか思いつつそのまま世間話。
そうこうしてるとヘリが戻ってきたという報告入ったのでユーノくんに別れ告げてフェイトさんとてくてくヘリポートへ。
その道中でなんかフェイトさんが若干意気消沈してるくさかったのでどうしたんですかと聞いてみると、今頃ティア嬢と高町がうまくやってるか心配なんだとか。
なんですかその心配の仕方はおかーさんですかとか聞くと意を決したような表情浮かべたフェイトさんにちょっと込み入った事情を聞かされることに。
聞かされた話によると、高町ってなんというかマンツーマンのように新人に教導行うのは今回が初めての経験なんだとか。
「だから今も、ティアナたちとの距離感が少しつかめていないみたいなんだ」
「へー」
ってそんな話を俺に聞かせてどうしようっていうのだろうか。
どうやら最近新人共とのコミュニケーション結構有りな俺に、高町とティア嬢との間を取り持ってほしいみたいだけれど。
……あんまり乗り気にはならないんだけど。
どっちにしろ話はしようと思ってたし、昨日のあれ的にあんまし刺激はしたくないから余計なこと言う気はないけど、ちょっとだけ高町のことを話すくらいなら、ありなのかもしれないけど。
六課に戻ったら医務室あたりでも行ってみるしかないかもなーと思いつつ、ヘリポートへ向かう俺だった。
介入結果その十五 ティアナ・ランスターの燃焼
手当てを終えて、なのはさんに今回のことについていろいろと指摘されて、それから落ち着くまで休んでいるように言われてベッドで横になっていたら、医務室のコンソールから呼び出し音がした。
シャマル先生はさっき所用で出て行ってしまったので仕方なく私が返事をすると、おーっす、みらいのチャンピオンなんて意味の分からないことを言いながらあいつが部屋に入ってきた。
セイゴ・プレマシー。
その軽薄な態度を見ていると、またさらにイライラが募る。
張り切って空回って怪我まで負った自分に、嫌気がさしてくる。
だからつい、こいつは何も悪くなんかないのに、やつあたりのように私は、
「……なに、馬鹿にでもしに来たの?」
「うん」
「────…っ!」
「いや、冗談だって冗談。そんなに睨むなよおっかねーな」
いつもの軽口だと分かっているのに受け流せず、カッとなって睨みつけると、あいつは肩を竦めて苦笑した。
「しかしまあ、よく頑張ったとは思うぜ。本日はお疲れさん」
「それ、皮肉のつもり?」
「……結構お前って何でもかんでも斜に捉えるよな。そんなつもりねーよ。素直に労ってんだ、ストレートに受け取れっての」
そう言って、そいつはベッド脇に置いてあった丸椅子を引っ張り出してそれにどっかりと腰かけた。
……ていうか、斜に捉えるのはあんただって一緒でしょと言い返したら、その通り過ぎて言い返せませんなと笑っていた。
それから、そう言えばスバ公がお前の怪我に関しての報告書の山に潰されかかってたぜー、とか、エリ坊とキャロ嬢達めっちゃ心配してたからあとで挨拶行っとけよーとか、高町もあれで結構打たれ弱いから少しは言うこと聞いてやれよーとか、ペラペラと止まることなく喋り続けるこいつに若干辟易してきたあたりで、こいつは驚くべきことを口にした。
「だけどすげーじゃん。今回お前、新人の中での撃墜王だったんだろ?」
「……え?」
なんだそれは、そんな話、私は聞いていない。
私がポカンとしていると、彼は何かを察したのか、あのアホめ……と悪態をついた。
「怪我のこと窘めるに夢中で褒めるべき所を褒められないとは……。飴と鞭の使い方がなっちゃいませんな」
「……それ、飴と鞭を使うべき相手のいる前で言うようなことなの?」
「本来言うべきじゃないと思うが、俺お前の教導係じゃなくてただの上司だから別にいいんじゃね」
ただし高町さんには内緒な、うっさいからあの人。と言ってから、こいつは今度はにやりと嫌な笑みを浮かべた。
私がそれを見て若干身構えると、こいつは楽しそうに口を開いた。
「まあ、本日の全体での真の撃墜王は我なのだがな。ふはははは」
「そ、そうなの?」
「うむ。今回のG(ゴキブリじゃないよ、ガジェットだよ)狩りは、俺とかお前とかの戦闘スタイルと圧倒的に相性良かったからな。隊長陣いなかったし。お前との差はまあ……戦闘区域での配置と、経験の差と言うやつだろね」
だから今後も頑張れよ、期待のルーキー。
そう言ってあいつは立ち上がり、私の肩をポンと叩いてから医務室を出て行った。
叩かれた肩に手を置くと、そこが熱くなっている気がした。
もしかして私は今、あいつに認められた────?
私の努力が、力が、存在意義が、認めてもらえた────?
そう考えると、心が震えた。
「私が、撃墜王……!」
────出来る。頑張れば私にだって、彼らと肩を並べることが。ランスターの弾丸の価値を証明することが。
あいつに────追いつくことが────!
幸いなことに、クロスミラージュの中にはあいつの戦闘の記録が残っている。
これを見て、努力すれば、まだ────!
絶対に追いついてみせる。
私の遥か先にある、あいつの背中に────
だって私の目的地は、あいつを超えたさらにその先にあるはずだから。
次の日から、私の特訓は始まった────
2009年7月26日 投稿
2010年8月28日 改稿
2011年8月16日 再改稿
2015年7月26日 再々改稿