新人共の初出動から数日。
俺がいつもどおりに割り当てられた書類整理してると、なんだかおずおずと俺の方に近付いてきた八神が一緒に108陸士部隊に行って欲しいんやけどだめかなとか尋ねてきたので首を傾げる。
そんなん別に俺じゃなくてグリフィス君連れていけばよくね?とか思ったのでその旨を敬語使って伝えてみると、なんかゲンヤさんに会いに行くんだけど俺が六課に来たことあの人に話してあったせいで会いに来る用事があるなら一緒に連れて来いと言われてしまっているそうな。
そう言うことなら出向くことに吝かじゃない。最近会ってなかったし久しぶりにお目通り願えればちょっと嬉しい。
しかしあれだね。これで今夜は残業確定。今日中にあげなきゃいかん書類が後いくつかあるからねー。
とか思ってたらグリフィス君が用事があるなら書類代わりますよと声をかけてきてくれた。
やべぇ、マジで感動した。こういう気配りができる子とか今時珍しい。若いのに。
少なくとも昔の俺はできんかった。自分のことで手いっぱいだったから。
八神とツヴァイに連れられて108陸士部隊に到着。八神が受付の人に話し通して途中でツヴァイと別れてそこから先も特に迷うこと無く俺を連れて中へ。
随分と迷いなく進みますねと聞くと、勝手知ったる我が家みたいなもんやからねとはにかみながら言った。
なんでも八神、この部隊でゲンヤさんの部下として研修していたことがあるんだとか。
へぇ、それは知りませんでしたとか答えながら適当な会話続けつつ歩いてると、そのうちとある部屋へとたどり着いた。
中に入ると燻し銀な男性が一人。彼は俺たちの姿を見ると、よぉと片手あげながらかっけく笑った。
ゲンヤ・ナカジマその人である。
とりあえず流れでソファ勧められて八神がゲンヤさんの対面に座ったので俺はその背後に『休め』の体勢で控える。
そんな俺見てゲンヤさんが眉を顰めた。
「おいどうした。てめーも座りゃいいじゃねえか」
「いえ、自分は結構であります」
軍人ぽくそう返すと気味の悪い物でも見た表情浮かべて思いきり表情を歪めた。
いやー今までの付き合いが付き合いなだけに訝しがられ方が半端じゃないね。普段の酒飲み友達してる時にこんな態度とったことないから余計気味が悪いらしい。
しかしそこは経験豊富な三佐さん。しばし微妙な表情浮かべてた彼は、ああ、と何か思いついたような表情を浮かべ、
「まさか、あの噂が本当だったってわけか……?」
「う、噂……?」
八神がビクッと反応しながら呟くと、ゲンヤさんは滔々と語り始めた。
曰く、機動六課の部隊長がコネを使って嫌がる局員を無理やり引き抜いた。
曰く、その局員を引き抜いた理由はごく個人的なもの。
曰く、引き抜かれた局員は都合よくこき使われている。
曰く、引き抜かれた局員は遠まわしな方法で隊長陣に嫌がらせをしているらしい。
などなど。
「まあ大体あってますね」
「……せやね」
「八神……」
「……面目ないです」
あきれるゲンヤさんに八神が頭を下げて微妙な雰囲気に。そこへ来たるは救いの女神。青髪長髪の少女とツヴァイが仲良くお茶持ってきた。
八神がその子を嬉しそうにギンガ!とか呼んどったので、ああ、スバ公の姉かと気付く。
確か二歳しか違わんとかゲンヤさんに聞いてたけど、随分あいつと違って大人っぽい。姉さんなんてそんなもんかなーとか思ってるとこっちに気付いて自己紹介してきたのでこっちも自己紹介。
するときょとんと首を傾げた。
「セイゴ・プレマシーさん……? 確かお父さんの言っていた……」
とか聞いてきたのでそのプレマシーで多分正解ですと返答。つーかスバ公は知らんのにこの子が知っとるのはどういうことでしょうか。
じゃあ、あなたが……とかちょっと驚いてたけどゲンヤさん家でこの子に何言ってるの?
これ以上の風説の流布は避けたいのであとで本人に聞いておくことにしよう。
そんなこんなでギンガさんが出て行ってから八神が本題を切り出した。
なんでも密輸品のルート捜査をお願いしたいんだとか。
それの捜査依頼とかこの間俺とグリフィス君とかで頑張っていろんな部署に掛け合ったんですがそれでは足りませんでしたかそうですか。
まあ確かに地上のことは地上の人にも頼むべきかとは思うのでこの判断は正しいと思えるんだけど、なんで他の部署には書類で話し通してこの人には直接会談なのとか思ったんで一応聞いてみると「うっ……」とか口籠ったから、ああ、と思う。
要するにここもあなたのコネの一つな訳ですね。確かに正式ルート通した捜査のあれとか万年人手不足な管理局じゃそこまで綿密にやってもらえやしないでしょうから保険かけたいのは分かるんですがこの微妙な差別具合はどうよとも思う。
けどこんな所まで来てそこまで俺が言うのもなんだかなあと思ったので、この場は何も言わずこの辺でおさめることにしよう。
で、ちょくちょく世間話してるとゲンヤさんが八神見て言った。
「しかし気がついてみりゃ、お前も俺の上官なんだよな。魔導師キャリア組の出世ははえぇなぁ。セイゴはそうでもなかったらしいがよ」
「魔導師の階級なんて只の飾りですよ。中央や本局に行ったら、一般士官からも小娘扱いです。それに誠吾君は、出世しないように頑張っていたみたいですから」
そうです。頑張っていたんです。なんかかなりの数の部署にバレバレだったっぽいけど隠蔽していたつもりなんです。
だけど結果は一応ついてきていたんです。出世してなかったわけだし。だけど、
「その苦労ももう水の泡ですね。一等空士からいきなり准空尉への昇進。……ああ、この先俺を待っているのは危険な戦場」
「う、うぅ……」
また口籠る八神。最近のこいつマジで打たれ弱いんだがそんなにあの掲示板の件が効いたのだろうか。
凄いよ市民の声! ダイレクトなだけに少女の心に響くらしい。
そうこうしてるとどこからか通信。どうやら今回の調査の中心になるらしき人からの連絡のようだ。
それに答えてからゲンヤさんが後で食事に行こうと誘ってくる。
断る理由などありようもないので簡潔に了承。八神もちょっと嬉しそうに受諾した。
打ち合わせ終えた後ギンガさんも連れていつもの居酒屋行った。四人掛けの席で定食だけ頼んでそれをパクパクしながら世間話することに。
酒飲めないのは残念だけど、未成年二人も連れて酒盛りとかもどうかと思うのでまあ仕方ない。それにどうせ俺向こう戻ってからまだ仕事する気だし。
そういやツヴァイどこ行った? ……まあいいか。
「ところでセイゴ。スバルの奴はどうだ? うまいことやってるか?」
箸使って黙って飯つついてるとゲンヤさんが俺にそんなことを聞いてくる。何でそんなことを俺にとか思ったので聞き返した。
「なぜ私に聞くんですか? そう言うことはここにいらっしゃる部隊長さんに尋ねた方がよろしいのではないかと思われますが」
「……すごく刺々しい言い方やね」
「まあこいつも割とちまちまと嫌みくせぇ性格だからな。ま、こいつの機嫌に関しちゃ時間が適当に解決すんだろ。つーかセイゴ、てめーいつまでその気色悪ィ態度続ける気だ。飯食いに来てまで無粋な真似すんな」
「ですね。じゃ、こっからはいつもどおりで」
「変わり身早っ」
俺だから仕方ない。
「それで? どうなんだよスバルは。どうせてめーのことだ、新人連中と一緒に朝練とかやってんだろ」
「なぜバレた」
「てめーとの付き合いもいい加減なげーしな。で?」
そろそろ焦れて来たのかこちらに身を乗り出してきた彼。いい加減答えんと頭叩かれそうなので言ってみる。
「そうですねー、頑張ってると思いますよ。体力は頭抜けてるし、パワーもあるし。ただちょっと猪突猛進なのに敵の攻撃の見切りが未熟と言うか……ゴリ押しタイプでハラハラもんですね、見てる方としちゃ」
そんな感じに見解告げると横で飯食ってた八神が目を丸くした。
「い、意外とよく見てるんやね、誠吾君」
「いえ、このぐらい魔導師の部下に対しては当然ですよ八神さん。いつ背中を預けるような間柄になるかもわからないのですから」
「セイゴォ、口調をいちいち変えんな」
「うぃす。すんません」
「す、素直な誠吾くんとか初めて見た」
なんだその心底意外そうな表情。確かにこんな反応お前たち相手じゃほぼしないと思うけども。
「あ、あの」
そんな感じで会話の応酬してると、俺の前に座ってたギンガさんが話しかけてきた。
「ん、どうしたよ」
「あの、あなたにいろいろとお聞きしたいことがあるんですけど、よろしいですか?」
遠慮気味にそう言った彼女。それにしても、
いろいろとお聞きしたいこと……だと……?
「ゲンヤさん、あんたこの子に俺に対するどんな陰口仕込んだんですか」
「え、ちょ────っ?」
「あぁ? なんだそりゃ、どういう言いがかりだよ」
「だって初対面の子が俺なんかにいろいろと聞きたいことなんぞいきなりあるわけないでしょう。てことはあんたに何か吹き込まれた可能性が高い」
「確かにいろいろと話はしてやったが、陰口を叩いた覚えはねえな。つーかてめー相手なら陰口なんぞ叩かねえで直接言った方がおもしれえから面と向かって罵倒するぞ、俺は」
「ああ、それは確かに」
そもそもこの人そう言うタイプじゃないよね。分かっちゃいたけどさ。言ってみただけ。
てことで彼女のハイパー質問攻めタイムに突入。
最近の六課に関するあの噂は本当なんですかとか昔神童と呼ばれてたことがあったんですよねとかなのはさんを助けたことがあったって話も聞きましたしとか以前の職場では大活躍だったんですよねとか俺にとってかなり噂になって欲しくないことばかりの質問攻め。
つーか凄いな彼女。今の質問一息で言い切るとか。
それら全てにうんとかそーとかいやーとか適当に返事してると、八神がフェイトさんから通信受けて帰っちまった。
俺が若干困ってるの見てあとはごゆっくりーとか言いながら苦笑してたのに無性に文句を言いたかったが、まあいいや。
とか考えながら、苦笑するゲンヤさんの横で俺に質問し続けるギンガさんに適当に返事を返し続ける俺だった。
介入結果その十一 ギンガ・ナカジマの困惑
その出会いは突然だった。
うちの隊舎に八神二佐がたずねて来たのだと私の所にやってきたツヴァイ曹長に聞いて、部隊長室にお茶を持って行くと、そこにはお父さんと八神二佐以外に見覚えのない男性が一人いた。
挨拶もそこそこに名前を尋ねると、セイゴ・プレマシーと名乗られる。
その名前は、以前からよく耳にしていた。
そのほとんどは主にお父さんの口からもたらされるもので、それ以外では噂程度の知識の中でだ。
だけどお父さんの口から語られる彼の印象と、噂話で伝えられる彼の印象は、何もかもが異なり過ぎていて何を信じればいいのかわからない。
だから私は、いい機会だと本人に直接尋ねることにした。
……そこから先はいつもの悪い癖。
気がつくと彼はげんなりとしていて、私の横でお父さんが気の毒そうに彼を見ていた。
責任を取って彼を駅まで送るようにとお父さんに言われ、彼と共に街道を歩いている時だった。
「きみたち姉妹ってさ、昔に大怪我でもしたことあるのか?」
「え?」
唐突にそう聞かれ、私が目を丸くしていると、彼は凄く言い辛そうに頭をガリガリ掻いて続ける。
「いや、医者の息子としての勘なんだけどね。なんとなくこう体の感じに違和感があるというかなんというか……」
「────っ!?」
「あー、いや。すまん、忘れてくれ。俺の勘違いだ」
頭を下げる彼。本来ならそこで愛想笑いを浮かべて誤魔化して、話を切り上げるべきだったのかもしれない。
だけど、私は聞かずにはいられなかった。私だけでなくスバルにも同じ疑問を抱えている以上、野放しにはできない。
釘をさすなら早めにと、そう思ったから────
「……もしそうだったら、あなたはどう思いますか?」
「は?」
「もし私とスバルが過去に普通では手のつけられないような怪我を負って死にかけて、その命を拾い上げるために体の半分以上を機械化してしまったとしたら、あなたはどう思いますか?」
それは事実とはかけ離れたブラフだった。だけど、本質とは相違ない。
私たちの体の機能を機械が補っているのは、紛れもない事実なのだから。
「……んー、そうだなあ」
彼は左の眦を下げて困ったような表情を浮かべていた。今頭の中では、どんなことを考えているのだろう。
同情? 嫌悪? それとも他の何か?
……悪趣味な質問だと自分でも思う。
だけど、聞かずにはいられなかった。
先ほどまで一緒にいて話をしたから、少しだけ期待してしまっているんだ。彼は私たちを普通に受け入れてくれるんじゃないかと。
数瞬ほどそうして黙りこんでいた彼は、いきなり何か閃いたかのような表情をし、
「運が良かったな、とか?」
「……は?」
「だってよ、世の中いくら頑張ったって亡くなっちまう人は居る。なのに結局キミたちは生きてるわけだから、よかったじゃんか……としか言えねーよ」
彼の声はどこまでも透明で、でもだからこそ本気でそう思っているんだと伝わってきた。
けどだからこそ私は、それを素直に受け入れられない。
「な、なんでですかっ! 体の半分以上が機械だなんて、そんなの化け物と同じだと思ったっておかしくないのに……」
「化け物……?」
「……っ?」
彼の目つきが変わった。
息を呑まされるくらいに鋭くなった彼の目つきに、一歩後ずさりそうになって、それを必死で押しとどめた。
「俺が思うに化け物ってのはどっちかってーと、生まれてこの方そういう苦労をしたことのない、そう言う事例を受け入れられない連中の考え方の方だと思うけどな」
「セイゴ、さん?」
「あ、いや、なんでもない。忘れてくれ。人生無駄にいろいろあったやつの戯言シリーズだからさ」
そう言った彼の表情が印象的で、私はもう二の句が継げなくなってしまった。
それが、私が彼と出会った最初の日の夜の会話で、彼との微妙な関係の始まりだった。
仕事の残り具合を確かめるために六課の隊舎へと戻り、それから今日の分の訓練をしようと思って演習場へと向かうと、なぜかティア嬢が思いつめた表情でビル群の一角に立っていた。その近くにはおろおろしているスバ公もいる。
何事かと近付いて事情を聞きだそうとしてみると、ティア嬢は俺の姿を確認すると同時にクロスミラージュを起動させた。
おいおい物騒過ぎるにもほどがあるぜティア嬢とか軽口叩いてみるが効果なし。そして、
「お願い。私と、戦って」
顔を俯かせながら簡潔にそう言って、手元の双銃を構えた。
……嫌悪ここに極まれりだなー。とか思いながら場違いにもなぜか和んだ。
なんか知らんが嫌われるのもここまで来るといっそ清々しいね。まあ、あんな態度取られ続けるよりはこんな感じに決闘申し込んできてくれる方がよっぽど好感持てるよ俺としては。
けどねー、それとこれとは話が別だと思うわけですよ。
「……返事は?」
「────」
────あー、違ったわ。
不安そうに言いながらこちらへと向けた目には、無い物をねだるような光があった。
嫌になるほど見覚えのあるその目は、あの時の俺と同じ色。
つまりあれだ、こいつが俺を嫌ってるとか、あの態度は嫌がらせだとか、そんなん全部俺の勘違いだったってわけか。
……よく考えてみれば、これだけいろいろ似てたってのに、なぜ今まで気付かんかったのだろうね。
こいつは自分の目的のために強さを求めている。
そして今回、俺はこいつの中にある強さの矜持の何かの琴線に触れてしまったのだろう。
要するに、こいつは俺に何らかの教えを請いたいわけだ。
あの管理局のエースオブエース、高町なのはの教導受けてるってのに贅沢なことである。
でもまあ、気持ちは分かる。高町の教導とか、どっか他人行儀くさいというか、親身さが感じられない。
あいつが真摯な態度で頑張ってこいつらを導こうとしているってのは蚊帳の外から見てる俺には十分すぎるくらいに分かるんだが、生徒ってのはえてしてそう言う部分が見えないものなのよね。
ティア嬢は動かず、俺の返事を待っている。
俺の答えを求めている。
ただ、そんな目で見られても俺の気持ちは変わらんのでした。
……俺の答え? そんなん決まっとろう。俺は────
「────戦えって? 断るよ」
断ったとはいえこのまま無碍に追い返すのもいろいろ違うと思うので、とりあえずロビーのソファに移動して話を聞くことにした。
ティア嬢は俺が決闘断った瞬間から超絶に暗い表情になってしまっていたので、スバ公がそれを滅茶苦茶心配そうに覗き込んでいたもんだから二人を説得してここまで連れてくるのには骨が折れた、けどしょうがないな。俺の断り方も悪かった。
適当に缶コーヒー買ってきてそれを二人に手渡し、俺は自分の分を開けて一口煽る。
ティア嬢もスバ公も飲むような気分じゃないのか手をつけないけど、奢ってやったのに飲まれないのってちょっと心に来るよね。なんか悲しくなる。
このまま誰も喋らないと空気が悪くなり続けそうだったので俺から口を開いて事情を聞く運びに。なぜ俺が気を遣わんとならんねんとか思うけど年長者だから仕方ないね。
そんなわけでティア嬢のスーパー懺悔タイム。
何でもこの子、俺が初めて夜練やった日の一部始終を目撃してて、ありえないと思ったんだとか。主に俺の運動量的な意味で。
しかもそのウォーミングアップの後にやった刀振り回してたやつ見て自分とのレベルの違いにわなわなしたんだってさ。
それだけならまだしも、この間のこいつらの初任務の時の俺の誘導弾使ったガジェット撃破も混乱に拍車をかけたそうな。近接格闘は自分の分野じゃないからまだしも、誘導弾はモロに専門分野だったので、そちらも衝撃的でしたというこって。
で、今日はもう辛抱たまらんくなって俺に決闘申し込んでそれなりの勝負して俺の戦闘技術いろいろ盗み見ようとしたんだとか。
でもあれだぞ。お前たちの訓練見てて思うんだが、今のティア嬢たちじゃ天地がひっくりかえっても負ける気がせんぞ俺。思うにこいつら数秒持たないんじゃなかろうか。
なんつってもあれだ。経験が圧倒的に足りないせいか全体的に攻撃が真面目すぎる。
あれじゃあどう攻撃してくるか見え見えだし、俺みたいに捻くれた戦法取る相手にゃ相性が悪かろう。俺死角から死角から攻めるからね。
俺の戦法に正面突破の文字とかないから。抜け道探索とかはあるけど。
犯罪者とかの逮捕の時って正面からだと割に合わないんだよね。マジな話。
とかそんな文句言ってもあれなので話を戻そう。
大体あれじゃん。キャリア違うんだからその程度の力の差とかあって当然じゃね?とか聞いたら、ぼそぼそと小声であんたみたいな不真面目な奴に追いつけてない私自身に腹が立ったのよとか言われた。
……うん、あれだね。若いよね、ホント。
いやすんません。今回のこの子の暴走とか完全に私の日頃の態度が悪いのが原因ですねごめんなさい。
だけどいろいろな経験を経た末に形成してしまったこの性格は今さら一朝一夕じゃ変えられないというか変える気が無いし、そこは諦めてもらうしかない。
代わりと言っちゃあ何なんだが、
「しかしそういうことなら今日からの夜練、ティア嬢も参加する?」
「え?」
ポカンと間抜けな表情浮かべるティア嬢。
何その意外そうな表情。俺確かに戦うの嫌とか言ったけど、一緒に訓練するの嫌とか言ってないよ。
そもそも戦うの嫌とか言ったのだって、どうせこいつ高町に内緒で決闘しようとしてるんだろうなと思ったからであって他意はない。相手してやったってよかったのだ。
だけど結局のところ、こいつの上司としての役回りは高町のもので、先生としての立場も高町のものだ。決闘するならあいつの意向を伺うのは当然のことだろう。俺の独断でそれを冒すのはやったらいけないことだと思う。
だけど暴走してるなら止めてやるくらいはいいよな。直属ではないとはいえ俺だって上官だ。
このまま突っ走って昔の俺みたいに阿呆なことになると見ている方としても嫌な気分になるしね。
と、最初の方のあたりさわりない部分の旨のみを伝えて、体力面のみ面倒を見てやることを約束。「しかし朝練の時のような手加減は一切出来ませんがよろしいか」と聞いたらあっさりと「お願い!」と返事が返ってきた。
それに反応してスバ公とかも「私もやるっ!」とか言って来たんだが便乗ですねわかります。
このままいくとエリ坊とキャロ嬢も明日あたりには参加してきそうなのは俺の気のせいじゃないんだろうなー。
……はぁ、どっちかってーと俺、一人で体動かす方が好きなんですけどねー。仕方ないとはいえちょっと悲しい。
ま、ちょっとぐらいこいつらの面倒見るのも悪くねーかなとも思う。
────二人してこんだけ嬉しそうな顔されたら、もう。ねえ?
2009年6月29日 投稿
2010年8月23日 改稿
2011年8月16日 再改稿
2013年6月2日 再々改稿
2015年3月16日 再々々改稿