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No.9452の一覧
[0] 砂漠の少女(H×H オリ主転生 TS)~チラ裏から~[まじんがー](2009/07/19 02:10)
[1] ぷろろーぐ[まじんがー](2009/06/14 20:46)
[2] 死亡フラグのない平和な部族です[まじんがー](2009/06/14 20:47)
[3] 私の手が真っ赤に燃える![まじんがー](2009/06/13 17:29)
[4] 夢がある限り、私たちは戦い続ける![まじんがー](2009/06/11 18:55)
[5] 過去なんて簡単に変えられるんだよ![まじんがー](2009/06/12 15:36)
[6] これが私たちの追い求めたものなのか![まじんがー](2009/06/14 20:48)
[7] NTR………だと?[まじんがー](2009/06/13 17:28)
[8] お腹痛いです………。[まじんがー](2009/06/14 19:28)
[9] あの夕日の向こうまで全速力で駆け抜けろ![まじんがー](2009/06/21 01:31)
[10] 私の裏側見せてやんよ!(念能力解説)改定[まじんがー](2009/06/21 01:30)
[11] 修行、修行、修行だよ![まじんがー](2009/07/19 02:07)
[12] 何でお前がここにいる![まじんがー](2009/06/19 09:04)
[13] スーパーエルリオタイムなんだよ![まじんがー](2009/06/21 02:03)
[14] スーパーコンちゃんタイ――コンちゃんの馬鹿![まじんがー](2009/06/28 14:20)
[15] 紳士と呼ぶのも生温い![まじんがー](2009/06/21 20:19)
[16] 何か憑いている……のかな?[まじんがー](2009/07/19 02:08)
[17] 呼び方って大事だよね?[まじんがー](2009/06/28 14:05)
[18] 飛行船の中の惨劇だよこれ![まじんがー](2009/06/30 14:15)
[19] PV10万記念 さすらいのロリコンドル前編[まじんがー](2009/07/01 18:03)
[20] PV10万記念 さすらいのロリコンドル後編[まじんがー](2009/07/01 17:17)
[21] 容赦なんてありゃしないんだよ![まじんがー](2009/07/17 17:20)
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[9452] ぷろろーぐ
Name: まじんがー◆2e2abe3d ID:2e416595 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/14 20:46
 黄褐色一色。

 見渡す限り延々と続く広大な砂漠が、目の前どころか前後左右包囲するかのように広がっていた。熱風に舞う砂は視界を黄色く染め、雲ひとつない空から照りつける日差しは布越しに肌を焼く。唸るような暑さ。じわじわと奪われていく体力。

 丘ほどもある砂の山を上り下りするたび、ちゃぷん、ちゃぷん、と水音の奏でる竹筒がすでにこれサタンの誘惑である。正直何度手が行きかけたことか……。


「ホタル」

「大丈夫ですお父様! ホタルは決して竹筒の蓋を開けて水をがぶがぶと飲み干してしまおうなどと大それたことは考えてはおりません!」


 水を取り上げられた。泣いた。

 パブーンという名の虎のような馬のような珍妙な獣の上の、さらにふとましいお父様の膝の上で、めそめそと泣く幼い私を見かねてか、お父様は一つため息を吐く。


「しょうがない。一口、舐めるだけにしておけ」

「お父様っ」


 感激の余りことさらに涙を流す――ことは水分の無駄なのでやめておいて、竹筒の蓋を開けた。そこだけ気温が下がったような涼しさをほんのり味わい、頬を緩めてから、一気に竹筒を傾けようとして、竹筒をお父様に取り上げられる。


「次のオアシスまで待つことにしよう」

「嘘です! ちょっとした茶目っ気です! 決して独り占めしてお父様の言葉を反故しようと思ったわけでは………ああ、仕舞わないで。その逞しい胸毛の中に隠さないで。お父様のギャランドゥに顔を埋めるほどの覚悟はまだホタルにはありませぬっ」

 さめざめと再び泣く私だが、さすがに前科ありでは情状酌量の余地はないらしい。お父様はその残虐な行為にも顔色一つ変えずにパブーンの手綱を持って、景色の変わらない砂漠を進ませていた。

 えーん、えーんと泣きながらちらりと窺うと、やはりお父様の憮然とした顔に変化はなかった。どうやら仏の顔は一度だけだったようだ。


「実に馬鹿だな、君は」


 ドラ○もん!?

 じゃなかった。隣を歩くパブーンの上、私と同じように父親の膝の上に乗る、認めたくないけど幼馴染であるエルリオが嫌らしい口調で私を見下していたのだ。


「うっさいチビ」

「ち、ちち、チビじゃねぇ! それに今は俺のほうがでかいんだぞ!」

「それはおじさんの膝の上だからね」


 自慢にもならないどころかそれでいいのかエルリオくん。私たちの部族の中の一番のチビっこは、他人より上から見下ろすためにはプライドなどいらないようだった。


「はん。いいもん。ホタルにも分けてやろうかと思ったけど、分けてやんねぇ」


 ちゃぷん、と揺らされる竹筒。かぽん、と外される蓋。ちろり、と舐められる水滴。


「うーめーぇー」

「お父様! 今すぐパブーンをけしかけるべきです!」


 しかし遺憾なことに私の提案はお父様の「駄目だ」という無難すぎる一言で却下された。にやにやと笑うエルリオが憎らしいことこのうえない。今なら視線でエルリオのイチモツを不能に追いやることも不可能ではないのではないだろうか。凝縮された殺意を込めて、じーっじーっじーっ。


「やべぇ! 何か今とてつもなく恐ろしい予感どころか視線に襲われている!?」

「エルリオの男として命を絶とうしているんだよ!」


 ふおぉっ、と手を上げて上半身だけの荒ぶる鷹のポーズ! 異界共通体言語に、びくり、と肩を震えたエルリオは慌てて股間を抑えた。


「やめろ! やめろよ!」

「ぶっぶー。もうエルリオは子孫を残せないどころかアッーになってしまう呪いにかかりましたー」

「くっ。ば、バリアー! バリアーで跳ね返った!」

「バリアー返し! そしてこのバリアー返しはもはや返すことのできない無敵防御結界です!」

「なん……だと?」

「エルリオくん残念。エルリオくんはもうお嫁さんにしかなれないね」

「いやだ! 俺はお婿さんになるんだ! そしてお嫁さんに養ってもらうんだ!」

「ただのヒモじゃん」


 そしてそれならお嫁さんのほうが割りと世間体はいい。

 そんな私たちのお馬鹿な会話に、お父様は何も言わずに寡黙なお父様のままであったが、エルリオのお父さんは、ははっ、と短く快活に笑った。


「いやはや、実に6歳児にしては先行き不安になる言葉の応酬だが、それぐらいにしておきなさい。エルリオ、君も水は勝手に飲んじゃだめだ。そしてホタルちゃん。仮にもエルリオの未来のお嫁さんなんだから、エルリオの男としての一生を勝手に断つのは止めておこう」

「ホタルはそれが一番気に食わないんです! 何でこんなチビが私の許婚なんですか! 私はもっとおっぱいの大きな女の子がいいです! チビの男は嫌です!」

「いやはや、何だか部族で集まらなくちゃいけないようなことを言っているような気がするがね。一応私、エルリオの父親だから。あまりそう息子を貶めちゃだめだよ?」

「何だよ、ホタルのくせに! この……くっ……ば、ばーかばーか!」

「いやはや、私この子の父親であること止めておこうかなと思う語彙の少なさだねエルリオ」


 ぎゃーぎゃーっと私たちが醜い言葉と稚拙な言葉の戦いを繰り広げている間に時間は幾ばくか経過していたらしく、私たちの部族の先頭を進むお兄さんから目的地であるオアシス発見の報が伝えられた。

 ハーレルヤー、と諸手を挙げて飛び回りたい気分ではあるものの、陽炎の可能性もあるし、もし本当にあったとしても豆粒ほどの大きさで視界に収まるようになった程度だからまだ途方もない距離が開いていることだろう。ぬか喜びはしないほうがいい。


「ホタル。待ち遠しいのはわかるが、あまり体を揺するな」

「あ、はいお父様。ごめんなさい。パブーンが揺れてしまいました?」

「いや。残像が見えていた」


 邪眼の力を舐めるなよ!

 しかしエルリオとの攻防のせいで渇いた喉には潤いが足りない。オアシスという言葉に反応して、体は水を求めていた。陸に打ち上げられた魚のごとしである。

 うーうーうーうーうーうーうー、としつこく唸っていると、それまで無言だったお父様がやれやれとでも言いたげに肩を落とした。


「わかった。少しだけだぞ」

「お父様!」

「はは。いやはやスザンは娘にめっぽう弱いな」

「お前ほどじゃあないさ。ほら、ホタル」

「はい!」

「垂らすから舌を出せ」

「でも案外信用がない!?」


 少なかったけどお水は美味しかったです。











 実を言うと私、ホタル=ウエタエには誰にも言えない秘密がある。

 それはお父様にも言えない秘密である。棺桶の中まで運ぶつもりの秘密だ。

 実を言うと私、ホタル=ウエタエは前世の記憶を引き継いでいるのである。

 前世の名前は定森蛍。蛍と書いてケイと読む。何かの因果かしれないが、ただの偶然にしては出来すぎているので運命と言う素敵な単語で象っておこう。

 私の前世はごくごく普通のアニメとゲームとエロゲとマンガとラノベと美女美少女美幼女ツンデレヤンデレダルデレクーデレ巨乳も並乳も貧乳も差別なく平等に愛する平凡すぎる都立の高校生だった。

 しかし可もなく不可もなく平凡だった私は、美少女たちを縛って脅して聖なる交渉を果たすゲームの新作発売日にゲーム屋へと直行したその日、トラックに轢かれることなく踏み外した歩道橋の階段から転落。敢え無く学校の鞄に18禁の本を隠し持った英雄の名を欲しいままにして、その短くも儚い一生を終えたのである。


 そして気付いたら赤ん坊。

 そして気付いたら幼女だった。


 私、ホタル=ウエタエ。生憎僕っ子萌えはなかったので一人称を改めた次第である。実際、三次元での僕っ子はかなりの精神力が必要だった。実際、ちょっと言ってみたらイタかった。

 そんなことを自覚した日、やはり砂漠はとても暑い。



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