ヴ――――――――――――ッ、ヴ――――――――――――ッ
「何ですこの音?」
部下が全員使い物にならなくなったスモーカーさんと別れ、軍曹と2人であちこち回っていたら、いきなりけたたましい音が鳴り響く。
明らかに警報音っぽいけど、まさかな・・・・・・
『全部隊に通達!!現在16番グローブでバトー海賊団が暴れている!!第1隊出動せよ!!繰り返す・・・・』
ギャーーーーーーーーーッス!!着任初日でいきなりかい!!
いや待て。何も滅茶苦茶強いヤツとは限らないよな?
ここまで来れるんだったら間違いなくそれなりの実力者だけど、それなりに開きはあるはず・・・・あってくれ!!
「准尉、出動です!中尉の元まで戻りますよ!!」
「あ、了解です軍曹。所でどんな奴らなんです?そいつら」
ヒナさんの所まで走りながら軍曹に聞いてみたんだが・・・・・
「船長はバトー。『豪腕』の異名を持つ男で賞金は1億9千万ベリー」
ゴッド・・・・・・・・俺何かしましたか?
ヒナさんの所まで戻った俺達は16番グローブに向けて出動した。
走りながら聞いたんだが、ここで騒ぎを起こすやつってのは本当にマレなんだとか。
まあ、海軍本部目と鼻の先だしなあ。駐留している海兵も3000人はいるし。
今回出動した第1隊も1000人の大所帯だからな・・・・。ちなみに隊長は少将。
「准尉、取り敢えずあなたは遊撃をお願い。今回の動きで後の配置を決めるわ」
「了解です。今回は好きに動かせてもらいますよ」
でもあれだな、一人で行く分には全員で向かう10分の1の時間で済むんだけどな。
海軍の一番の強みは数と連携なのは解るんだけど、もっと早く走れんもんかね。逃げられるぞ?
まあ、実際には杞憂だったけどさ。
第十七話:さて、腕試しと行きますか
16番グローブの状況はお世辞にも良いとは言えん状況だった。
何て言うか台風一過?倒壊した建物が幾つもあるし、今現在火の手を上げている建物もある。
っち、人の営みが壊されるって言うのは痛々しいな・・・・・・
「バトー!!おとなしく投降しろ!!」
「おう、出てきよったか。出てくる前に出航しようと思ってたのだがな」
あれがバトーか・・・・・・・しかし何て言うか、見た目GGXのポチョムキン?
身長は3メートルぐらいで、腰から上だけで2メートルはある大男。体格的には『暴君』くまを思い出してもらえれば解るか。
後クルー達も全員もれなくマッチョ・・・・ぶっちゃけ暑苦しい。
「貴様、よくも海軍のお膝元で暴れてくれたな・・・・・・・!!」
「なに、船のコーティングが終わったのでな。魚人島に向かう前に幾ばくか使った金を補填しようとな」
そんな理由でここで暴れんじゃねよ・・・・脳みそまで筋肉で出来てるのか?
「くっ、所詮は海賊か・・・・!総員戦闘準備!!」
俺は少将の命令通り戦闘準備しようと棺桶に手を伸し、「あ!」重要なことを思い出した。
「どうしたの准尉?」
「あー、そのー、ちょっと装備が・・・・・・」
「装備?何か不備でも?」
「なんと言うか・・・・、近接用の武装をあんまり持ってきてないんですよ」
「その腰の剣は飾りかしら?」
うう、それを言われると辛い所なんだけど・・・・・・・・今手元にあるのはほとんど弾丸用なんだよね。
発動させると暴発するんで、遠距離でしか使えないって言う・・・・・・
接近戦は甲冑兵団にやらせて、自分は後衛で済ますつもりだったからなあ。
「一応これも書き換えれば使えるんですけど、そんな時間は無さそうですし・・・」
「一体何を言っているのか解らないわ?」
まあ能力の事全部説明した訳じゃないからな、解らんのも無理は無いか。ぱっと見で解りそうなのは、と。ああ、これでいいや。
棺桶から取り出したのは一振りの鞭。
手持ちの武器の中でもトップクラスの破壊力だけど、まあいっか別に。
体に“絶縁体”を書き込み、人垣より一歩前に出て鞭を振り上げる。
「要はこういうのばっかりって事ですよ。“雷公鞭”!!」
能力を発動させた瞬間立ち上る雷。それを今だ睨み合いを続けていた海賊達に向けて振り下ろす!!
〈ピシャァァァァーーーン!!!〉
「「「「「「「「ギャアアァアァァァァァァァァァァアッ!!!」」」」」」」」
本物に比べりゃあ威力は半分にも満たんけど、それでも神の裁き(エル・トール)ぐらいの威力はあるだろ。
エネルの攻撃食らって生きてる人結構いたから、俺の“雷公鞭”でも死人はでんだろ?たぶん、きっと。
「こんな具合ですけど、どうしましょ」
「・・・・・・・取り敢えず使用禁止。いえ、没収!」
「ですよねー」
だから知られたくなかったのに・・・・・武器が無くなったら肉弾戦しか手段が無くなるじゃないか。
正直どつきあいが楽しかったのは最初だけなんだよね。俺って基本痛いの嫌いだし。
そのための甲冑であり、そのための剣弾だったんだがねえ・・・・
まあもっとも、痛いの嫌いな分接近戦の修練は遠距離戦以上に積んでるんだけどね。
「おのれ海軍!!不意打ちとはやってくれる!!!」
あ、無事だったんだ船長。適当に振り下ろしたから、半分ぐらい生き残りがいたようだね。
あー、でも船長以外逃げ腰だな。その程度の覚悟で新世界とか無謀じゃない?
そもそも、こいつらが暴れなかったら武器取り上げられることもなかったんだよな。
何か腹立ってきたな・・・・・
「何が起こったのか良く解らんが・・・・ともあれ敵は僅かだ!討ち取れ!!」
流石は少将、抜け目ない。でもこれで許可が出た、憂さ晴らし含めて派手に行きますか。
色々(九蛇の一件とか武装禁止とか)鬱憤が溜まってるからな。今からやるのは少々好戦的になるから、丁度良い。
服が破れると嫌だから着流し脱いで、シャツまくってと・・・・良し、これで準備完了。
「さていくか、熾きろ!“火山獣”(ボルカニカ)!!」
両肩から吹き上がる炎!隆起する筋肉!!そして何よりわき上がる闘争本能!!
こいつの凄いところは『一筆入魂』『真言武装』『憑依合体』の複合発動という点だ。
憑依による技能継承に加えて、武装による身体能力上昇に一筆の性質変化!! 本物より多少劣化するとはいえ十分すぎる!
“東方不敗”“明鏡止水”からヒントを得たこれこそ、フーシャ村での修行の成果だ!!
ただモノがモノだけに俺の方にも影響くるんだよ。則るのは破面(アランカル)だからな・・・
十刃(エスパーダ)クラスやると半分乗っ取られるし、5・6はほとんど暴走状態になるからな・・・・・・
4は発動させたら血反吐はいて3日寝込んだ。以来それ以上は試してないんだよね。
おまけに人格にも影響が出てくるのがな・・・・・最近どうも好戦的な性格になり始めてる。
発動直後、剃で誰よりも早く飛び出し、敵上空へ。そのまま月歩で敵の中心に向かって突っ込み両腕を地面に叩き付ける。
ズゴムッ!と爆炎が巻き上がり、周囲にいた海賊が吹き飛んだ。
武装のおかげで大して熱くはないんだが、炎のせいでちょっと酸欠でクラクラ。
「こんの!化け物がぁあぁーーーー!!」
勇敢な海賊が爆心地である俺に向かってくるけど、ごめん、今あんまり手加減できないんだよね・・・・・
軽く右腕を振るうと、火だるまになって吹き飛んだ。
あーやっぱ制御が難しいな。まだ使える程度で使いこなすのは無理か。
そのまま両足の“響転”(ソニード)で周囲の敵に向かい次々と蹂躙してるんだが、徐々に黒いモノがこみ上げてくる。
ああ、いかんなぁ・・・・大分ホロウとしての本能が俺を浸食してきてる。
こんなにも闘争と破壊が心地よいと感じるなんて・・・・・・・ああ、思わず笑みが・・・・・
「貴様ぁぁぁぁぁーーー!!よくもクルー達を!!」
おお?!何だ?この状態の俺がガードごと吹っ飛ばされるなんて。
せっかく良い気分で・・・・って、いかん、いかん、飲み込まれていたな。落ち着け俺、Coolに行こうぜ。
さて、俺を吹っ飛ばしてくれたのは誰かなー、ってありゃ?何で俺の所に船長が?他の人たちは何やってんだ?
船長に注意しつつ部隊の方を見ると、良い感じの炎上網に阻まれて右往左往してら。
あー、ひょっとしなくても俺のせいですね・・・・・・自業自得って事で、自力で何とかしますか。
「先ほどの雷といい、その炎といい、貴様何の能力者だ?!」
聞かれたら答えるのが礼儀かな?別に種が割れて不利になる訳じゃ無いしな。
「俺はスミスミの実の筆人間!俺の刻む言葉は全て真実となるのさ」
「墨か、なかなかに面白い能力だな。だが勝つのは私だ!!」
殴りかかってくる船長を紙絵で悠々と回避しつつ殴り返す。
散々練習した拳闘士(ボクシング)スタイル!俺のナックルパートから逃げられると思うな!!
繰り出された拳をカチあげ、がら空きのボディーに潜り込む。くらえ、必殺の・・・!!
「オォォ、デンプシィィー!!!」
〈ズゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・!!!〉
一撃の威力はボムボムの実?何それ、おいしいの?ってレベルだからね。あっという間にボロボロになっていく船長。
それでも立っていられるあたりは流石なんだけど、自分でやっておいてなんだが流石に痛々しくなってきたな。
「あのー、そろそろ投降してくれませんか?」
「ほ、ほざけ・・・・小僧!!この私がこんな所で(ry」
あーそうですか、可哀相に思った俺が馬鹿だったよ。まだ抵抗する気満々だし。
後半はもはや聞く気はない、どうせどいつもこいつも似たようなことしか言わないんだからさ。
にしても、頑丈だ事。あのデンプシー、ルフィのストーム以上の威力はあると思ってたんだがな。
しょうがない、大技で止め刺すかな?
腰を落とし、右正拳突きの構えを取る。更に右腕に文字を浮かせ、右手の爆炎を更に吹き上げる。
「もう一度聞いておきます。投降する気、あります?」
「くどい!!」
「ああそうですか、じゃあ散れ。見よう見まね!劣化“大噴火”!!」
〈ズゴォォォォォォンッ!!!〉
右腕から吹き上がった爆炎は敵船長を飲み込み、おまけに進路上にあった建造物を貫き、16番グローブを揺るがした。
「やれやれ、俺もまだまだだな」
この光景を見て俺の中で一番にわき上がった感情は不満。
普通に考えれば十分すぎる威力なんだろうけど、十年後に黄猿さんが一撃でグローブ折るの知ってるからな。
あっちは無造作に撃ってへし折れ、俺のは全力ではないとはいえ揺るがす程度。
億越えでも楽に勝てるのは解ったけど、まだまだ上がいるんだもんなー。
「遠いなー・・・・・・って、町のこと忘れてた」
Side:ヒナ
「熾きろ!“火山獣”(ボルカニカ)!!」
あの子がそう叫んだ瞬間、周囲を禍々しい空気が覆った。
今までも戦場で殺気を向けられたりしたことはあるけれど、それでもこれほど深く、狂気を含んだモノは感じたことはない。
その後の光景は惨劇と呼ぶほか無かったわ。
「鬼・・・・」
誰かがそう呟いたけど、戦場で炎と共に踊り狂う様は正に『鬼』と呼ばれるにふさわしい。
消えるように動き回り、天を焦がし、地を砕き、人を焼く。炎で遮られたあそこは、処刑場でしかない。
本部で准尉はホープ・・・・次世代の希望の星、なんて呼ばれているのを聞いたことがある。
けれど、あれは希望なんてモノじゃない。
私には海軍・海賊問わず、全てに絶望をもたらす凶星にしか見えなかった・・・・・・
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今回の一言
ころころと変えてすいません。
仕事で疲れが疲れが溜まっている状態でちょっと凹んでました。
で、あげようとしたところでリアルに風邪ひきました・・・・orz
後、自重するのを止めました。今後は開き直ってネタ全開の最強系で行こうと思います。
そもそも全力ではないにせよ、大将と戦えるんだから、そんじょそこらの海賊に苦戦してたらおかしいですよね・・・・・