持ち出した甲冑を片付け終わった俺とヒナさんは、高速船で一路シャボンディ諸島へ。
そびえ立つレッドラインを見ながら、俺は甲板で一休みしていた。
「しっかし何度見ても凄い光景だな」
遙か上空まで絶壁が続いてるんだもんな・・・・タイガーさん、よくもまあこれを登ろう何て思ったな。
たぶん俺でも行けるんだろうけど、流石になあ・・・・・
そんなことを考えていると、ヒナさんが俺の方にやってきた。
「部隊配属の前に聞いておきたいことがあるんだけど?」
「はい、何ですか?」
「部隊では前衛とか色々とあるんだけど、あなたはどういった配置が良いのか聞いておきたいのよ」
ああ、そういやポジションってのを決めておかないといけないのか。
「んー・・・・、俺の能力を考えると、別に何処でも行けそうな感じですねえ。なので中尉におまかせしますよ。」
「そう?所であなたの能力って何なのかしら?その棺桶と何か関係があるのかしら」
ああ、そう言えば全く説明してなかったっけ。
「俺はスミスミの実を食べた筆人間です。能力は存在の本質を書き換えるって所ですか?」
俺の能力を説明するならこういう言い方が一番解りやすいかな?
取り敢えず論より証拠って事で、近くに置いてあった棒きれを“松明”にしてみた。
「こいつが俺の能力です。俺の能力でこの棒きれは松明に早変わりしたんですよ」
「ずいぶん便利な能力ねえ・・・・」
「色々と縛りはあるんですけどね。ちなみに人間にも有効で、やろうと思えば一般人を“一騎当千”の強者に変えられますよ」
「そんなことができるの?」
「できますよ。まあ、鍛えてないのにそんなことすりゃ一発で寝込むでしょうけどね」
俺の能力は人の限界を容易に超えるからなあ。自身の限界知らなきゃただじゃ済まん。
「棺桶の方は俺の能力で作り出したエモノが大量に入ってるだけですから気にしないでください」
まあ実際の所、これが弾薬庫って知られたら取り上げられそうだしね。
やろうと思えば、ちょっとした戦艦並みの火力になるからな・・・・・・
第16話:一応人にうらやまれる立場・・・・・なのか?
「本日より配属となったモンキー・D・キース准尉です。若輩者ですがよろしくお願いします」
シャボンディ諸島に着いた俺はまず始めに隊員達との顔合わせを行っていた。
俺の前にはヒナ中尉の部下30名が整列している。
うーむ、階級准尉とはいえ部隊配属って初めてだから緊張するなあ。
「准尉は私の副官としてこの隊に配属となったわ。立場的には隊の№2よ。命令にはしっかりと従うように」
「「「「「はっ!!」」」」」
全員一糸乱れぬ敬礼。凄い練度だな。やっぱヒナさんの指揮レベルはずいぶん高いんだな。
俺みたいな子供が自分たちの上司になるって聞いても、表面上は何も感じさせないしねえ。
俺も見習っていかないとねえ。
ただなあ、俺が№2ねえ・・・・・・・
「あのー、中尉。ちょっと良いですか?」
「何かしら准尉?」
「あー、自分は部隊に配属されるのは初めてなので、できれば部隊のことを一から知りたいのですが・・・・」
下の階級思いっきりすっ飛ばして昇進したから、そもそも部隊で何すればいいのかさっぱりなんだよね。
部隊のトップ階級が指揮官てのは解るんだけど、それ以外の階級がどういう役割を担ってるのか知らないからねえ。
「・・・・・・部隊に配属されずにどうやってそこまで昇進したのかしら?」
「休暇中に出会った海賊を片っ端から捕まえてたら、いつの間にかこんな階級になってたんですよね」
あはは、いやー参った、って頭掻いてたらどうしようもないなコイツって目で見られたし。
「はあ、しょうがないわね。サンダース軍曹!」
「はっ!」
見たところ30歳ぐらいのおっちゃんが列から一歩前に出る。
「准尉に案内と部隊の説明を行え」
「了解しました!」
すげーなヒナさん。自分より年上の人間にあんだけびしっと命令できるんだからねえ。
俺もそうしなきゃ行けないんだろうけど、俺今10歳なんだよね。
周りから見たら痛い光景だろうなあ・・・・・この年で准尉になってマジすんませんって感じ?
「よろしくお願いします、軍曹さん」
「はい、どうぞこちらへ」
うう、気まずい。年上に(中身の実年齢的にも)敬語使われるのは何かな・・・・
「あのーすいません」
「はい、何でしょうか?」
「悪いんですけど、もうちょっと楽に話してもらえませんか?」
「いえ・・・・ご命令であろうとも、こればかりは軍の規律を保つ為に必要なことですので」
ダメで元々で聞いてみたけど、やっぱダメですか・・・・・
原作では愉快な海兵が多く出てきたけど、こういうのが普通なんだろうねえ。
もしくはヒナさんがこういう規律に厳しいだけかもしれんが。
まあ、慣れるっきゃないか・・・・・・
で、軍曹に連れられてあちこち回っていたんだけど、やっぱり目立つなあ。
子供であることに加えて、腰に棺桶ぶら下げたまんまだしなあ。
一応なんて話されているか聞いてみるか?丁度良いところにヒナさんの部隊の人が話てるし。
そう思った俺は“地獄耳”を発動させ、彼等の会話を拾う。
『なあオイ、あそこにいる棺桶背負ったガキは誰だ?』
『ああ、あれか。何でも上層部の肝煎りで入隊した天才児だそうだ』
『っは、天才ねえ。どうせ実戦を知らないボンボンだろ?』
『ボンボンなのは否定できんな。ガープ中将のお孫さんだそうだ』
『けっ!じいさんのコネで入隊したのか?何が天才だ』
『いや、それがそうでもないらしい。イーストブルーで結構な武功を上げて准尉にまで昇進したって話だ』
『イーストブルーねぇ。どうせ箔つけるために小物でも倒させたんだろ』
うーん、やっぱりあんまり歓迎されてないのかね?
他には『棺桶は虚仮威し』『ガキの命令なんぞ聞けるか』『ここは子供の遊び場じゃない』等々。
正直ムカッとくるのもあったけど、まあ解らんでも無いしね。
俺だって子供が自分の上司だって言われたら、すんなり受け入れられんだろうしねえ。
しょうがない。いずれ実力を示してグウの音もでないようにしてやるとするか。
そう新たに決意を固めていると、新しい場所に着いたみたいだ。
「准尉、こちらが訓練所になります」
へえ、ここが・・・・うん、悪くない。
さすがに本部が間近にあるだけあって、設備も充実している。鍛錬に励む海兵が何人もいるし。
おや?あそこにいるのは・・・
「次!」
「お願いします!!」
やっぱりスモーカーさんだねえ。部下をしごいてる真っ最中って所か。
うん、鬼のしごきだなありゃ。周りの海兵連中は死屍累々って感じだし。
ふむ、一応声ぐらいはかけておくかな。
「軍曹さん。悪いんですけど、知り合いがいたんでちょっと挨拶行って来ます」
「はっ!了解しました」
やっぱり硬いなこの人。少しは柔軟性も必要だと思うんだけどね。
さてそれはともかくとして、まずはスモーカーさんに気づいてもらわないとねえ。
「おーい!お久しぶりです、スモーカーさん!!」
「ん?お前キースか?ちょっと待て。・・・・・総員気を付け!!!」
スモーカーさんの一喝で、そこら辺に死体よろしく転がっていた海兵達が起き上がる。
ただまあ全員ヘロヘロなんで、気を付けって感じじゃないけどな。
「訓練は一時中断し、30分の休息をもうける!休息後再度訓練を再開するからしっかり休んでおけ!!」
「「「「はっ!了解しました!!」」」」
それだけ言って、海兵達はぶっ倒れた。
ヒナさんとこと違って、熱血根性路線だな・・・・・・・良かったヒナさんの部隊で。
もっとも、俺はちょっとやそっとの訓練じゃ疲れんぐらいには鍛えてるけどね。
「久しいな、キース。だが何でお前がここにいる?」
「ありゃ、聞いてませんか?俺はヒナさんとこの部隊に配属になったんですよ」
「ほう、あいつの所か・・・・・」
「部隊に所属するのは初めて何で、部隊の事とか色々覚えなきゃ行けなくて大変ですよ」
「おいおい、所属無しでどうやってそこまで昇進したんだ?」
「ああそれヒナ中尉にも聞かれましたよ。やっぱりおかしいですかね?」
うーん、俺の所属は元々海軍本部だけど、実際に昇進したのは支部でだからなあ。
本部と支部って同階級でも実際には3階級ぐらいの差があるって聞いてるんだけど、俺の場合どうなるんだろうねえ?
実際問題支部だろうが本部だろうが、将校でもない限り一人で海賊潰せないらしいとは後で知った。
かくかくしかじか、とスモーカーさんに説明したら、
「やっぱりお前は非常識だな・・・・・」
と言うコメントをいただきましたよ。
「そうですかねえ?まあ原因は間違いなく青キジさん達にあるんですけどね・・・」
あの人達のおかげでこの世界でも生きていける実力と自信はついたけど、常識から大分外れた存在になっちゃったからなあ。
思い出されるのはさっきスモーカーさんがやっていた訓練が遊びに思えるような地獄の鍛錬。
もう2年以上前になるけど、何で俺はあの年で海軍大将3人と手合わせしなきゃ行けなかったんだろう・・・・
「ほう、青キジ大将か・・・・・・そういやお前は俺より強いんだったな」
ああ、そうなるのかな?でもなあ、俺はあなたの能力の破り方知らないんだけど・・・・・ってあれ?
「そう言えばスモーカーさんって能力者じゃ無いんですか?」
「ああ。俺は食ってねえ」
まだ、食ってなかったのか。この分だとヒナさんも食ってなさそうだなあ・・・・
「所でお前は何の能力者なんだ?」
「スミスミの実を食べた筆人間って所ですよ」
「墨だあ?そんな能力でそんなに強くなれるのか?」
あ、やっぱり疑いますか。そりゃあ当然でしょうねえ。
俺も最初は戦えないって思ったしねえ・・・・・・・・
「ふむ、論より証拠。実際に見てみます?」
目の前に並ぶのは『一筆入魂』を施された海兵達。
「良いですか?絶対に無茶はしないでくださいよ。少しでも疲労、痛みを感じたらすぐ止めるように」
今回の形式は1対1の組み手。まあ書き込んだ文字からするとちょっと勿体ないかな。
使った文字は1対多数が一番の見所だからなあ・・・・・・
「では、始め」
俺の合図と共に各々の武器が激突する。
書き込んだのは“奥州筆頭”“天覇絶槍”“征天魔王”etc.
武装も文字のキャラに合わせた物を使ってもらっているんだが、目の前に広がる光景は、何て言うか、そう・・・・
「凄く・・・・BASARAです」
自分でやっておいて何だが凄い光景だな。
2等兵、3等兵ですら凄まじいオーラ放ってるしなあ。
「で、こんな感じですけどご感想は?」
隣でポカーンやってるスモーカーさんに尋ねてみるけど反応がない。
「もしもーし!スモーカーさん?!」
「あ、ああ。何というか・・・・・凄いな・・・・・・・」
ですよねえ。俺もそれ以外の感想でないし。
適当に割り振ったから同キャラ対決もちらほら見えるが、誰も彼も将校クラスの動きをしてる。
「って、あ・・・・」
20秒を過ぎた辺りから、一人、また一人と脱落し始めた。
やっぱり俺ですらキツイ『憑依合体』を初心者にやらせるのは無理があったか。
「そろそろ止めんとマズイかな?全員ストーーーーーップ!!」
俺の制止の声で全員が動きを止める。
んで、整列した海兵達にかけた能力を解除すると全員もれなくぶっ倒れた。
「「「ぐおぉぉ・・・・っ!!」」」「「「か、体いたい・・・・・!!」」」
あー、やっぱりこうなったか。
「おい、キース。これはどういう事だ?」
「なんだもクソも無いですよ。無茶をするなっていったのに、彼等はやっちゃったんですよ」
俺はちゃんと限界を見極めて能力を使うけど、あの人ら調子に乗って限界以上に動いたな。
「大丈夫なのか?」
「二、三日筋肉痛に悩まされるでしょうけど、ほっときゃ直りますよ」
やれやれ、無茶すると反動が来るって言っておいたのにねえ。
「まあ、今日は一日使い物にならんでしょうけどね」
「手っ取り早く強くなれるって聞いて飛びついたんだから自業自得だな」
うむ。君らの尊い犠牲は忘れない。
俺の部下を指導するときはもうちょっとおとなしい言葉にしよう。
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今回の一言
あれ?おかしいな。今回戦闘シーン入れるぜ!って決めてたんだけどな・・・・
それはともかくとして、この世界の海軍の指揮系統が良く解らないんで、後々調整するかもしれません。
現在は艦単位を1部隊扱いで書いています。
大型の戦艦=将(部下1000ぐらい)、中型=佐(100~500)、小型=尉(数十人)
って位だと思ってください。
部隊の規模(大隊とか)も適当なので余り突っ込まないでもらえるとありがたいです。