俺が帰ってきてから半月が経った頃、いよいよ待ちに待った人達が来た。
「おーーーーーーーーーーい!!シャンクスーーーーーーーーー!!!」
「ルフィ、はしゃぎすぎだぞ」
何か俺が帰ってきたときより、喜んでないかい?
まあそんなことは置いといて、これが後に世界最強の海賊団の一つとなる赤髪海賊団か・・・・・・
マンガの方では陽気なだけのように見えたが、実際に見るとこの時点ですげえプレッシャーだな。
なんて言うか、大将や中将直属の精鋭を見たときと同じような感覚だ。
そうか、これがグランドラインで生きていけるレベルってことか・・・・
うん、この感覚は大切にしておこう。この気配がしたら逃げ出さんと最悪死ねるからな。
基本俺はチキンだからね。勝てない戦いはしないんよ。
敵前逃亡?命あっての物種ってね。生きてりゃリベンジもできるしな。
おおっ!!向こうに見える赤髪と麦わら帽子は!!
「シャンクスーーーーーーーーー!!!」
「おっと、危ねえなルフィ」
この人が後の四皇、『赤髪』のシャンクスか・・・・・
うーむ、当然だが勝てる気が全くしねえ。
そういやこの人って、両手あったときは『鷹の目』とライバルだったんだよな。
世界最強の剣士と互角で見習いって、海賊王の船ってどんだけ敷居高いんだよ。
第10話:ついカッとなってやっちゃった
俺の探るような視線に反応し、彼はこちらに振り返る。
「あん?だれだ、オメエ?物騒な視線を向けて?」
「ああ、すいません。初めましてシャンクスさん。俺はルフィ達の従兄弟でモンキー・D・キースと言います」
「おお、お前がキースか!話には聞いてるよ。ガープのじいさんの生け贄にされたんだってな。」
誰だよそんな説明した奴は。ってルフィ、目え逸らして口笛吹いてたら丸わかりだぞ。
「ははは、まあそんなとこです。おかげでそれなりには強くなれたんですけどね・・・・・・はぁ」
「へえ、そいつは楽しみだな。どうだ?腕に自信があるなら、うちの入団テスト受けてみるか?」
「あー、残念ながら俺はじいちゃんのあとを継いで海兵になったんで・・・・一人ぐらいはあと次いでやんないとねえ」
「へぇーそうか。俺のことも捕まえるかい?」
「俺はそんなに命知らずじゃないですよ。もっと強くなるまでは保留させてもらって良いですか?」
「楽しみに待ってるよ。そうそう俺の事はシャンクスで良いぜ」
「では、お言葉に甘えてそう呼ばせてもらいます」
「礼儀正しい奴だねぇ。ん?どうしたルフィ」
うん?何拗ねてるんだルフィの奴?
「だってシャンクスは俺は海賊団に入れてくれないのに、キースの奴は誘うんだもん」
そこかよ・・・・。シャンクスも冗談で言っただけだと思うんだけどねえ。
で、ルフィは根性見せてやるってシャンクスさん連れて船の方にいっちまった。
あれ?ひょっとしてここって原作第一話の場面か?だとしたら・・・・・・
「いっっってェ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
「バ・・・バカ野郎!何やってんだぁ!!」
「いてーーーーーーーよーーーーーーーーーーーー!!」
そうか、ルフィの顔面刺しか。なんであんな根性の示し方したんだろうねえ。
俺は甲板に飛び上がり、「こぉの、どあほーーーーーーー!!」拳骨を叩き込んだ。
「いでーーーーーーーーーーーー!!」
「ったく、根性の示し方が間違っとるわ!」
「おい!そんな事してる場合じゃ無いだろうが!!」
っは、取り乱してしまった。この半月で完全に弟として定着してるんで、つい反射的にやっちまった。
「野郎ども乾杯だ!!ルフィの根性と俺たちの大いなる旅に!!」
ルフィの治療も終わり酒場にやってきたんだが、俺はさっきの罰として料理番&皿洗いさせられてる。
「ごめんねキース。あなたに手伝わせちゃって」
「いえ、良いんですよマキノさん。一人じゃこのメンツの相手は大変でしょう?」
やーれやれ、楽しそうだねえ。俺も海賊になれば良かったかなぁ・・・・
まあ『赤旗』のドレークも海軍から転職したって言うし、居心地悪くなったら俺もそうするかね?
ルフィとシャンクスはカウンターで原作通りのこと会話してるんで、俺は戦利品の話をしている連中に意識を向ける。
「なあ、おめえらこれ食ってみる気あるか?」
「いやいや、ゴムゴムの実だろ、これ?カナヅチになるのと引き替えにゴムになるのはな」
「だよなあ。それに売れば一億ベリーはくだらねえんだろ?俺なら金の方が良いね」
不人気だなゴムゴムの実。ロギアとかなら喜んで食うんだろうけど、パラミシアって微妙だしな。
俺も原作でルフィが活躍しているとこ見てなかったら、食いたいとは思わんな。
おっ、椅子の横に無造作に置いた。チャーンス!
俺は出来上がった料理を持ち彼らの元へ向かう。
「あいよー!追加の料理お待ち!!」
「お!待ってました!!」
このテーブルの人間が料理に意識を向けたとき、俺はスプーンを落とし、
かがんだ際にゴムゴムの実を“認識阻害”を施した袋に一瞬で入れる。
そのまま調理台の裏に戻り、ミッションコンプリート!!
酒場から見えない位置で袋から取り出し皮をむき、そのまま綺麗に切り分ける。
確か悪魔の実は一口で効果が発生し、そのあとはただの実になったはず・・・・
「おらよ、ルフィ!さっきの詫びだ、口開けな」
さっきから泳ぎの練習云々話してたルフィの口の中に一切れ放り込み、残りを目の前に置いてやる。
許せルフィ。これもお前のためだ。
ってゆーか、俺が原作生で見たいだけなんだがね。
そんな事を考えていると、酒場の入り口が蹴り開けられる。
「じゃまするぜえ」
そういやいたな、こんな馬鹿。
「俺たちは山賊だ」
なんちゅう自己紹介だ。ふつー自分で山賊って名乗るか?
「が、店を荒らしに来たわけじゃねえ。酒を売ってくれ。樽で十個ほど」
すでに店壊れてるんだが?
俺はこいつらの応対をしようとするマキノさんを制し、前に出る。
「すいません。お酒は今出ている分でお終いです」
「あん?売り切れだと?」
「すまん、すまん。俺たちが飲み尽くしちまったみたいだな。これで良かったら飲むか?」
そう言ってシャンクスが酒瓶を差し出すが、それは山賊のこぶしで割られてしまう。
飲まないからって、割らんでもよかろうに。もったいね。
「これを見ろ。俺の首には800万ベリーが懸かっている。第一級のおたずねものってわけだ」
だから自分で言うなと・・・・・・
まあ、このあとはお決まりのやりとりが続くんで割愛させてもらうが・・・こいつらマジむかつく!!
このあとがどうなっても知るか!まとめて突き出して俺の手柄にしてくれる!!
マキノさんの制止を無視し、店から出て行った山賊どもの後を追う。
「もしもし?店の入り口を壊した修繕費払ってくの忘れてますよ」
「なんだクソガキ!俺と出会って命があっただけでもありがたいと思いやがれ!」
三下が・・・・・身の程ってモノを教えてやる。
「つまり払ってはもらえないと」
「っち!もう良いから死んどけや!!」
弱い犬ほどよく吠える。
俺は抜きざまに斬りかかってきた剣を鉄塊で弾く。
「っな!剣を弾きやがった!!てめえ一体なにしやがった!!」
「特に何も?この程度の事出来る人は、某所には結構いますよ」
CP9とかね。それに六式はCP9の専売特許じゃないしね。
「くそっ!テメエらやっちまえ!!」
ホントこういう奴らって代わり映えのしない。こないだも同じ事言ってた奴いたな。
まあ良いや。ちゃっちゃと片付けないとヌシイベントが発動しちまう。
とは言っても村ん中に血溜まり作りたくないし、建物も壊れるから大技は使えんな。
あんまりにもザコ過ぎてうっかり殺してしまいそうだしな。
なんてことを考えながら適当にカウンター入れてたんだが、
「あれ?もう終わり?」
弱っ!!子供の一撃で沈むなよ。まだ能力使ってないんだが・・・・・
よくこんなんで山賊やってこれたな。海だったら最初の戦闘で全滅すんぞ。
「っく!なんだこのガキは!!」
「ただの一般人ですがなにか?それより残るはあなただけですよ」
頭が一人残ったけど、原作みたいに煙幕使われたら面倒だな。そうこうしてる間に使おうとしてるし。
剃で一気に距離を詰め、煙玉を持った手を掴む。
「逃がさんよ。あんたには地獄の苦しみを味あわせてあげるよ」
掴んでいる手とは逆の方で斬ったり殴ったりしてくるが、“鉄塊拳法”で無視。
何が良いかな~~~?そうだ“悶絶躄地”(※1)にしよう。
上着を破り捨て、胸から腹にかけてしっかりと書いてやる。
「じゃあ逝ってこい」
「――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!!!!!」
おお、痛みで声も出ないって言うのはこういう事を言うのか。
まあいいや、しばらくほっとこ。こいつが壊れても喜ぶ奴はいても悲しむ奴はいないだろ。
しっかし、あんまりにも弱すぎ。何か不完全燃焼気味だな。
ところで山賊って届けるの海軍で良かったんだっけか?賞金首だから政府関係なら何処でも良いのか?
そんな事を考えていると、歓声が聞こえてくる。
「やるじゃねえか坊主!!」「スゲェじゃねえか!!」「ほう、年の割にはなかなか・・・・」
見てたんですかあんたら。どうせなら手伝ってくれても良いじゃん。
「もう!!危ない事しちゃダメじゃない!!」
マキノさんには怒られましたけど、じいちゃん達の修行のほうがもっと危険だったんだがねぇ。
それはそうと、山賊どもほっとく訳にもいかんから、縄でも取ってくるか。
俺の能力で動けなくしておいても良いが、疲れるし効果が切れたら面倒だからね。
海賊さん達に背中叩かれたりしながら店に戻ったら、シャンクスとルフィがケンカしてましたよ。
シャンクス達が戦わなかった事に怒ってるみたいだけど、まあ相手が小物すぎたからな。
俺?俺も小物だからあいつらの相手ぐらいが丁度良いのさ。
「シャンクスのバカヤローーーーーーーーー!!!なんであんな奴らぶっ飛ばしちまわねえんだよ!!」
「おい、まてよルフィ」
びよーーーーーーーーーーーーーん
おお、伸びる伸びる。計画通りうまくいっていたか。これで原作通り事が進むはずだ。
俺が原作を守ろうとするのは、ルフィが旅に出ないと解決しない事が多すぎるからなんだよね。
麦わら海賊団のクルーが仲間になるときって、結構切実な問題が起きてるからねえ。
俺も色々仕込むつもりだけど、中には海兵の俺じゃ関わるのが難しいのもあるしな。ロビンの一件とかね。
「なんだこれはーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
「ないっ!!敵船から奪ったゴムゴムの実が!!!」
それはそうと店内大パニックだねえ。うーむ、これは素直に白状したほうが良さそうだな。
「あー、あれって悪魔の実だったのか。そこら辺にほっといてあったから調理しちゃったよ」
「「「「「「オマエのせいかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」
おお、全員がシンクロしよった。まーそりゃそーだろうけどさ。
「いやあ、すんませんねえ。まさか悪魔の実がそこら辺に転がってるとは思わなかったもんで」
原作でも思ったが、一億ベリーのお宝をそこら辺に置いとくなよ。
結果を言えばシャンクス達は「喰っちまったもんはしょうがない」って言ってくれたよ。
おおらかな人たちだねえ。どんぶり勘定なだけかもしれんが。
まあ命がけとはいえ、元々が敵から奪ったもんだから元手タダだからね。他にも戦利品はあるらしいし。
ただまあ、ルフィがしつこいや。海賊になるのに一生カナヅチにしやがってとかさ。
そこら辺は予想していたんで、海兵やら海賊にも悪魔の実の能力者はいっぱいいるって事を教えてやった。
誰がどんな能力を持っているかまでは教えなかったが、それでも機嫌は直ったようだ。
現金なこって。
で、村の人に船を出してもらって、山賊どもを最寄りの海軍基地に送って帰ってきたんだが・・・・・・
何でシャンクスの片腕無くなってるんだ?!
でまあ、出航準備している本人に話を聞いたら、ぶっ倒れたよ。
要点だけまとめると、以下の通り。
・ シャンクス達がこの村を拠点にしていると気づいた海軍がやってきたが、シャンクス達不在。
・ 指揮官の大佐がろくでなしで、村人に危害を加えそうになった。
・ ルフィが俺は海賊見習いとか言って戦いを挑んだが敗北。シャンクス達到着。
・ 赤髪海賊団による蹂躙戦。大佐ルフィを人質に海へ逃走。→ヌシイベント
おおう。原作かわっちまってもいいやと思ったが、こんな修正力が働くとは・・・・
ルフィを助けてくれた事といい、海軍が迷惑かけたことといい。シャンクスには土下座して謝罪とお礼を言いましたよ。
まあ海軍はあんたら捕まえんのが仕事ではあるんだけどさ。
でも何考えてんだその大佐。海賊目指してるとはいえ、ルフィは海軍中将の孫なんだがねえ。
それにしても海軍、実力主義にも程があるだろ!!昇進にもうちょい人柄とか考慮しろよ!!
いやまあ、赤犬大将辺りだと、村ごと焼き払いそうだけど・・・・・・海賊に協力したとか言って。
海軍の立て直しはコビーに大将になってもらって、がんばってもらうか。
俺がやると恐怖政治みたいになっちゃいそうだからね。
気の長い話になりそうだ。
※1【悶絶躄地】もんぜつ-びゃくじ
非常な苦しみの形容。立っていることができないほど悶え苦しんで、転がってはいずり回ること。
「悶絶」は悶え苦しんで意識を失うこと。苦しんで気絶すること。「躄地」は両足で立つことができず、地をはうこと。
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今回の一言:残念ながらシャンクス戦は出せませんでした。
元々はシャンクスと互角に切り結ばせて、鷹の目フラグたてようと思ったんですけど。
若干原作に絡めてみました。原作文があると自分の色が霞んでいるような気が・・・・