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No.9180の一覧
[0] 次世代ドラゴン(巣ドラ物)[あべゆき](2009/07/14 13:48)
[1] 次世代ドラゴン 第二話[あべゆき](2009/11/25 23:19)
[2] 次世代ドラゴン 第三話[あべゆき](2009/07/14 13:51)
[3] 次世代ドラゴン 第四話[あべゆき](2009/07/14 13:47)
[4] 次世代ドラゴン 第五話[あべゆき](2009/12/03 17:10)
[5] 次世代ドラゴン 第六話[あべゆき](2009/12/03 17:10)
[6] 次世代ドラゴン 第七話[あべゆき](2009/07/16 21:17)
[7] 次世代ドラゴン 第八話[あべゆき](2009/12/03 17:11)
[8] 次世代ドラゴン 第九話[あべゆき](2009/11/25 23:21)
[9] 次世代ドラゴン 第10話[あべゆき](2009/11/26 05:05)
[10] 次世代ドラゴン 第11話[あべゆき](2009/11/27 02:41)
[11] 次世代ドラゴン 第12話[あべゆき](2009/11/29 14:31)
[12] 次世代ドラゴン 第13話[あべゆき](2009/12/13 04:21)
[13] 次世代ドラゴン 第14話[あべゆき](2009/12/13 04:39)
[14] 次世代ドラゴン 第15話[あべゆき](2010/06/16 00:52)
[15] 次世代ドラゴン 第16話[あべゆき](2010/10/07 23:20)
[16] 次世代ドラゴン 第17話[あべゆき](2010/10/13 19:22)
[17] おまけ 劇中作① [あべゆき](2010/10/07 23:24)
[18] おまけ物語 超強いローガス君。[あべゆき](2011/08/13 12:34)
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[9180] 次世代ドラゴン 第八話
Name: あべゆき◆d43f95d3 ID:25761afd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/03 17:11
 さて、最初のほうの講義にて竜の村におけるルール等について語ったのではあるが…今回はもうすこし掘り下げて、諸事情を抱えた竜の行く末を学んでもらう。
 とはいえ、一言で言うには幾分と込み入った事情もあるので一概にこうだ、とは言えない辺りを念頭にいれてもらいたい。
 まず典型的な例として、結婚して巣立ちした夫婦のどちらかが戻る場合である。竜は結婚すると生涯、その巣に篭り生活をするではあるが、例えば金銭的に巣を維持できなくなったり、侵入者や予期せぬ事態にて配偶者が死亡した時には二つの選択肢がある。
 ・巣に篭って、生活する。(※害を成した人間や夫またはその原因に報復後)
 ・竜の村に戻り、生活する。(※害を成した人間や夫またはその原因に報復後)
 前者における選択肢は老衰による自然死も含まれているので注意してもらいたい。後者における選択肢ではまだ子供が作れる年齢と判断された場合、他の竜との再婚もありうる。…まあどちらにしろ、男にとってはどちらも色々な意味でよろしくない。
 そして、数は極めて少ないながらも竜の村で問題を起こし村に居辛くなった竜や追放された竜の今後における例を紹介しよう。処罰内容については割愛させていただくが、まあ大体において実家(両親の巣)に戻ったり世界を放浪したりするのが普通だ。中には自暴自棄になり戦争を吹っかけるような無謀な勇者も居てそうだが、これは馬鹿の極みであると言える。
 実家に戻るのが大半ではあるが、ある程度理由がないかぎり恥の上塗りであるし、なにより親の愛の巣に戻るのも考えさせられる。なまじ弟妹ができた時の気まずさは達筆しがたい。
 世界を放浪するにしろ、自らの自尊心や矜持は傷つけられたままであり、時間も立ち、目撃者も増えればあっという間に『はぐれ竜』の仲間入り…末は冒険者達の餌食か国家に丁重に利用される奴隷がいいとこである。
 つまるところ、関係希薄な竜といえど、異端者には容赦がないのは人間も竜も変わらないのである。
 今回の講義はあまりテストとは関係ないのでノートを取る必要はない、こういう事もあるんだと頭の片隅に入れておけば十分だ。
 では諸君、今日はこれで終わろうと思う。


次世代ドラゴン


「よう、今話題のローガス…結構、いや…多少…少し…違うな、僅かに良い話と極めて悪い話とそれと同等程度の悪い噂と俺本人として貴様を殴りたい話、どれから聞きたい」
 昼下がりの午後、何をするでもなく暇という事象を弄んでいた俺に来客者ではる親友は開口一番、玄関でそう言い放った。何やら不機嫌な様子で嫌な予感がしないでもないが、どうせ起こりうる事ならば先に聞いて心の準備をしておくに越したことはない。竜生、諦めが肝心である。
「…それは俺に関係する事なのか?」
「シャラップ! ちぇあっ!」
 途端、ガツンと視界がブレたあと、頬に痛みが走る。無論ルヴィア程ではないのでなんともないのだが。殴るならば、カインが言う『殴りたい話』とやらの時に殴ってもらいたいものだ。
「…ふぅ、すまん。ついカッとなって殴ってしまったよ。で、何から聞きたい? 良いほうから言ってやるから聞け」
 何も言ってないのに決められるとは…。
 まあいい、どうせ全部聞く事だと思い直し、応接間まで話を待ってもらい、椅子に腰掛けるとカインは意地が悪そうな顔で、
「お前は村から出て行きたがっていたな? おめでとう、出れるかもしれないぞ?」
「――ぇ、どういうことなの…」
 晴天の霹靂とはこの事なのか、村から出られるというこの一語は正に俺にとっては救いの光。つまるところ、俺は村の女達にパシらされたり殴られたりしなくて済むという事。
 今、思い返せば俺はこの時の為に生きていたのかもしれない、とまで思ってしまう。
「勿論、村から出るんだ、婚約者『達』が居るぞ。まあ、今はまだ候補程度だが」
「…『達』?」
 竜は一夫多妻とはいえ、最初は一夫一婦が当然なのである。
 その一番最初の妻の許可を得て第二婦人、第三夫人になっていくのだが、最初から婚約者が二人も三人も居るのは制度上を見ても無い。
「ああ、疑問は後にしてくれ。正直俺も如何言えばいいのか解らない上に、多少俺の我侭でお前を殴りたい。だからまずは椅子から立って殴られる準備をしておけ」
「断る」
「断る選択肢は無いと思ってくれ…まあいい、で、その…婚約者だが、な…あー、なんだ、その、あれだ」
 言い難そうに俺から顔を逸らすその仕草はまるで、精肉所へ連れて行かれるのを見てられないような、そんな類。
「ルヴィアだ」
 いや、まだ候補だから大丈夫。まかり間違ってそうなってもお前なら耐えれるって、何、巣作りを引き伸ばせばなんとかなるんじゃないか、いや、ほんと、逃げちゃダメだって。と早口で捲くり立ててくるカインの言葉が俺の耳を右から左へと通過していく。
 この気分はなんと言えばいいのか、絶望ではないんだが、諦めでもない。賭け事の騎馬争いでいきなり、初っ端から出遅れて、早10馬身開いている最下位に全財産を注ぎ込んだというのだろうか。
 いや、これは夢に違いない、もしかしたら逆転、一等で俺は掛け金を総取りなんていう淡い希望だってあるかもしれない。
 そうだろ?

「ああ、すまんな、ちょっと気が散ってしまってな。わざわざ済まないな」
 カインが入れた紅茶を手に一息をつく。わざわざ客人に茶を入れてもらう等とこのような失態はこれからは避けねばな。
「何、気にするな。親友だろ?」
「ああ、そう言って貰えると助かる、で、話を戻そう。お前が殴りたい話だったか」
「そうだった…、とりあえず今から殴るからその手に持ってる紅茶を降ろしてくれ、3,2,1」
 言い終わるや否や、視界が縦に半回転した後、椅子ごと床に叩きつけられ勢いで後ろ回り、首が下になり回転は足で止められているので今の俺は非常に情けない姿をしているだろう。
「で、だ。その婚約者候補の一人に俺の妹がっ、エルザが入ってるんだ!
くぅっ、可愛い可愛い俺の自慢の妹がっ! 男とちゅっちゅするなんぞ、俺は嫌だっ知りたくないーーーっ!
ローガス! そこに直れ! 修正してやる!」
 机に乗り出して飛び掛ってきたカインを俺は必死に止める。前々からシスコンだとは思っていたが、ここまでだったとは。
「落ち着け、大体それは俺の責任なのか?」
「ただの嫉妬だ!」
 なんでこいつはこんなにも清々しいのだろうか。俺もこういうのは見習うべきなのか迷うところである。
 なんとか、落ち着きを取り戻してくれたシスコンは大人しく椅子に座ると、こうなった経緯を話し出した。
「俺も聞いただけだからな? 本当の事知る由もないが…。
本来なら長老が追放の沙汰を下してはい、お仕舞の筈だったんだが、ルヴィア側の両親筋達が猛烈に反対してな、例え自分達が死のうとも、追放なんてしたら戦争という姿勢を崩さなかったらしい。
まあ、普段なら打ち滅ぼせばいいんだが、相手が火炎竜一族きってのお偉いさん、さらに当事者がたった一人残った跡継ぎ娘と来たもんだ。それを失うというのは種族にとって痛手だからな。
加えて相手は普通の電光竜とその両親。両者の力量差を見てもな。
まあ、だからといって、こんなので無罪放免なら竜の村運営はやっていけない、というわけで。
そして出番だローガス君?」
「何 故 そ こ で 俺 が 出 る」
「被害者側の面子をたてつつ、加害者に配慮した結果の妥協の産物だろ?
つまり被害者側からみたら相手は純血種としての歴史が終わるわけだ。お前と結婚すると。
加害者側からみたら、追放はしないかわりに、お前の所の跡継ぎ娘が生んだ子供は純血じゃないよって事だ。お前混血だし。
やったな、ローガス! 村の危機を救った英雄という名の生贄だ!
ま、これは俺の推測だが、なかなか真に迫っているとは思わないか、全く俺の知略は素晴らしいな。おいおい、いくら俺が凄くても男に頭とか撫でられても嬉しくないぞ?」
 褒めてない。この最後辺りエルザの影響だろうなと思わざるを得ない。 
「ああ、そういえば、なんでエルザが俺の婚約者候補に入っているんだ?」
「貴様ァ! 妹のどこに不満があるんだっ!」
 またもや机を乗り越えて俺の胸倉を掴み唾を飛ばしながら叫んでいるカイン。
 とりあえず非常に顔が近いのでもう少し離れてもらいたい。
「俺の婚約者になることを歓迎しているのか、反対しているのかどっちなんだ…」
「複雑な心境だから困っているんだ! …まあいい、今は真に不本意ながらその疑問に答えてやろう。
ルヴィアがお前の婚約者というのをどこで聞きつけたのやら、その足で長老に直談判しにいったんだ。勿論、それを知った俺は引きとめたとも、それはもう全力で。無駄だったがな。
まあ、全くもって関係のない第三者の小娘が異議を唱えたところで、一蹴されたんだが、そこで妹はあろうことか…。
あろうことかっ! 『妾はローガスに惚れておる。まかり間違ってもローガス以外には身も心も開かぬ、故に妾をローガスの元へ行かせてくりゃれ』なんて、村の上層部が居る中で言い放っちゃってよぅ、俺、涙目。
もうさ、なんていうの? 例え妹とは言え竜の女があそこまで堂々と言い放つなんて、俺でも…真似できるけどさ、なんていうの、貴様がっ!貴様が、居なければっ、妹は、妹は! って感じでさ。
なあ、頼むから殴らせろよ、先っぽだけでいいから殴るね。3.2.1」
「え、ちょ…っ」
 
 今まで女共には数多くの暴力を振るわれたが、まさか男に、しかも親友にここまで有無を言わさず殴られたのは初めてである。
 悔しいことに、力関係では負けているので反撃の余地も無かったが、気持ちはわからなくも無い。
 エルザは基本的に腕力で有無を言わせず、男というのを総じて尊重し、立ててくれている節があるので、男は皆エルザに対して一定以上の感情を持っているのだ。
 それが一番、近いところに居ながら、絶対に手が届かないのがこの男、兄であるカインなのだから。
「…ふぅ、すまん。取り乱してしまった。これからも取り乱すから反省はしない」
「その情熱を他にぶつけてくれると助かる。しかし、エルザが俺にそんな感情を持ってくれているとはな。
その、なんだ、中々にむず痒いものがあるな」
 うん、エルザとならもうそれは最高の未来があるだろう。巣作りは墓作りというのが相場だったが、正に愛の巣といえるかもしれない。
 そう思うと人知れず、顔が緩んでしまう。
「なぁ、ローガス。取り乱していいか?」
「すまん。しかし、俺に関わるとエルザが…」
 余計なトラブルに巻き込まれる、と心配していると、
「ああ。そのことならば、問題ない。まさか、5mはありそうな大岩を1cm程の小石にするぐらいの高密度重力場を詠唱無しで使えるなんて思いもしなかった」
「……」
 その言葉に俺は唖然とした。普通の重力魔法程度ならば魔族でも人間でも使えるが、それでも物を浮かしたり、少量の水を彫刻のようにできるだけである。
 それを、詠唱も無しに、しかも重力を打ち消す斥力ではなく、難度の高い加重力を扱うとは…。
「流石にそれを目の辺りにした、女は逃げていったけどな。まあ、妹は予想以上に強かった。多分、ルヴィアといい勝負できると思うぞ、俺は」
「争い事は御免だな」
「ま、そんな素晴らしい妹も残念だったな! あくまでもルヴィアが有利だぞ、当事者だけにな。
俺としては何故、長老が断らなかったのか、わからないが、とにもかくにも妹はお前の婚約者という立場なわけだ」
 しかし、巣作りか…年齢がもうすぐ4桁の男竜もまだ居るというのに、2桁の年齢で村を出るのは俺が最初ではなかろうか。まあ、竜は年齢なんてあってなきに等しいものだが。
 精々、二人の女性を失望させない程度には頑張ろうと思う。



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