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No.9180の一覧
[0] 次世代ドラゴン(巣ドラ物)[あべゆき](2009/07/14 13:48)
[1] 次世代ドラゴン 第二話[あべゆき](2009/11/25 23:19)
[2] 次世代ドラゴン 第三話[あべゆき](2009/07/14 13:51)
[3] 次世代ドラゴン 第四話[あべゆき](2009/07/14 13:47)
[4] 次世代ドラゴン 第五話[あべゆき](2009/12/03 17:10)
[5] 次世代ドラゴン 第六話[あべゆき](2009/12/03 17:10)
[6] 次世代ドラゴン 第七話[あべゆき](2009/07/16 21:17)
[7] 次世代ドラゴン 第八話[あべゆき](2009/12/03 17:11)
[8] 次世代ドラゴン 第九話[あべゆき](2009/11/25 23:21)
[9] 次世代ドラゴン 第10話[あべゆき](2009/11/26 05:05)
[10] 次世代ドラゴン 第11話[あべゆき](2009/11/27 02:41)
[11] 次世代ドラゴン 第12話[あべゆき](2009/11/29 14:31)
[12] 次世代ドラゴン 第13話[あべゆき](2009/12/13 04:21)
[13] 次世代ドラゴン 第14話[あべゆき](2009/12/13 04:39)
[14] 次世代ドラゴン 第15話[あべゆき](2010/06/16 00:52)
[15] 次世代ドラゴン 第16話[あべゆき](2010/10/07 23:20)
[16] 次世代ドラゴン 第17話[あべゆき](2010/10/13 19:22)
[17] おまけ 劇中作① [あべゆき](2010/10/07 23:24)
[18] おまけ物語 超強いローガス君。[あべゆき](2011/08/13 12:34)
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[9180] 次世代ドラゴン 第三話
Name: あべゆき◆d43f95d3 ID:7e84d488 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/14 13:51
 さて、今日は、竜の成長について語りたいと思う。尚、成長と言っても身体的なものではない、所謂、経験等の分野である。
 竜とは肉体的に非常に優れた能力を見せ、骨が折れた・腕が千切れた・内臓が潰れた等の怪我は程度にもよるが、大概が一時間も掛からず、たちまちに直ってしまう。
 更に、頭脳や魔力も他種族が100年掛けて学ぶモノがあったとしたら最長一日、最短一回、見ただけで我が物にしてしまう。太古の昔、天界・魔界・人間界の三界を相手に戦争を吹っかけるだけの自信があってしかるべきだ。しかも、敗戦後の能力が削られた状態でこれだ、戦争前の状態は言わずもがな、だ。
 だが、そんな優れた能力を持っていても、生まれた時より巣に居たメイドに甘やかされ、生きるのに役に立つ知識というのを得る機会が無いのが現状である、が、仮に問題が起きたとしても持ち前の能力で力尽く解決できてしまうので、性質が悪い。
 では、本題に入るが、巣立ち前は対人コミュニケーションというのを全く知らない子供が、村を出る頃には対象限定ではあるが立派な紳士となって巣作りに向かうのだ。
 理由を語りたい所ではあるが、如何に優秀な頭脳を持っていたとしても、それ以上の優秀な腕力の前には無力なのである。
 ふむ、そろそろ、鉄拳が俺の顔に当たるので今日はこれぐらいにしておく。生徒諸君は予習を忘れないように。


次世代ドラゴン


「あー、つい、やっちゃった。はい、おかわり。今度は美味しく淹れてね」
 始まりは簡単だった。
 俺が草原で横になって昼寝していると、ブリッツがやってきたのだ。正直、女には関わりたくないのだが、そうも言ってられないので、適当に雑談をした後にお茶を誘ったのだ。
 ここでミソなのが、女に何もせず『はい、さようなら』とすると、相手は軽んじているのか、と怒る。しかし、相手が忙しい時にそんなことを言うものなら『忙しいのよ!』と怒る。
 確立は単純に二分の一と思われるが、相手の挙動や表情を見逃さないようにすると、殴られないで済む確立が上がるのだ。
「いや、俺が下手だったからな。気にするな」
 普段の俺ならば、何かしらの珍しい物や綺麗な宝石を探し出して、出会い頭の場面に備えるのだが、生憎と持ち合わせが無かった。
 しかし、相手は暇そうにしているので、今殴られるより、後で殴られようとお茶に誘った訳である。
 結果は、今、俺が紅茶まみれで、顔に青痣がついているのですぐに分かると思う。
「あはは、ブラッドも最初は散々だったからねー」
 そういえば父さんも母さんに紅茶を淹れる事が多々あったが、クーにも負けない手際よさだった。きっと父さんもこうやって鍛えられたのだろう。
 しかし、紅茶というのは茶葉を淹れて御仕舞いという訳ではなく、湯の温度や蒸らしたりするのも必要だと知った。。普段、何気なく飲んでいて、手順については全く見てなかったのが悔やまれる。
 勿論、カップを置くときは取っ手を取り易いように置くのもワンポイントの一つだ。
「待たせたな」
 6度目の正直。今回のは中々香りも良い。
「ん、んー…まあ、いいかなぁ? 次出したらダメだけどね」
 手厳しい。だが、これ以上やり直しの度にカップと拳が飛んできては、カップの在庫も俺の傷も大変な事になるのでまずは良しとする。
「いやー、リュミスベルンの子供っていう立場は辛いねー。彼女が村に居たときに苦渋を飲まされたのが一杯居るから、あはは、まあ私もその一人なんだけど。あ、このお菓子美味しい」
「そうなのか、すまない」
 母さんが何をしたのかは分からないが、謝っておいて間違いは無いと思う。多分。
「ローガスが謝ってもねー、まあ私とかミュートは別にいいんだけど、他の大人達にとってはリュミスが居なくなったからねー。皆鬱憤が溜まってるのよ、頑張れ男の子」
 母さんに対する憎しみを俺にぶつけられても困るだけなのだが。
 すると、ルヴィアも母さんが何かしたのだろうか?
「あ、他の女の事考えてるなー? 目の前に綺麗な女性が居ると言うのに、別の女の事なんか考えちゃって…えいっ、竜誅!」
 殴られた。
 何故分かったのだろう。
「ふっふっふ…女性はそういうのに鋭いのだ。離しを戻すけど、大人達と違ってルヴィア達のような年若い子はリュミスベルンを知らない世代でねー、本人に会った事も無いのに恐れる理由なんて無いみたいな事を言ってね、反発してるのよ」
 まだまだ青臭いわー。と、言いつつ本当に美味しいのか、お茶菓子に出したクッキー、その最後の一枚を口に入れる。俺はまだ食べていないのだが、そんなにも美味しかったのだろうか。
「…まあ、ルヴィアには一応、因縁があるかな?」
 お菓子を補充すると、ズイとカップを押し付けてくる。おかわりか。
「ほう、何があったんだ?」
「昔、リュミスベルンと火炎竜の一族の一人が決闘してね。リュミスベルン、殺しちゃったのよ、決闘相手」
 美味しい紅茶を作るために注意を払っていたが、この時ばかりは多少注意散漫になっても許してもらいたい。
「…で、どうなったんだ?」
「戦争になりかけたわ。火炎竜全ての一族とリュミスベルンで」
 言葉を失うとは、今の俺だろう。如何に母さんでもやりすぎではないだろうか。
 同族殺しは禁忌にも近いのだが。
「実際戦争していたら、リュミスベルンの圧勝でしょうけどねー。一人で天界と魔界に喧嘩売れる実力があるからね、くやしいけど、敵わないわ。話を戻すけど、ルヴィアはその殺された決闘相手の妹なのよ。しかも、火炎竜一族の俊英、村全体で見てもかなり上のほうの実力があるわ。勿論、プライドも。だから、ローガス、機嫌を損ねると死ぬから」
 まあ、リュミスベルンには全然届かないけど。と軽く言ってくれるが、俺には死活問題だ。
 何分、混血の上に男である、女に敵うはずが無い。断言しよう、決闘を申し込まれたら俺は死ぬ。
「…まあ、事情はわかったが、その、そんな母さんがなんで混血の父さんの結婚を受け入れたんだ?」
「なんでだろうねー。元々、リュミスベルンが婚約者じゃなかったのよね」
 竜はその親同士が決めた婚約者が存在する。婚約者が決まった男はその婚約者を迎え入れる為に巣を作り始めるのだが、婚約者が変わるなんていうのはまず、無い。
 男が一方的に断れば、婚約者に殺される、女にとって不名誉な事だからだ。
 ちなみに、男が作った巣が気に入らなければ殺される、婚約者に、不名誉な事だから。男は頑張って巣という名の墓を作るのが宿命なのだ。
「あはは、案外、遺伝子が求めたのよ。なんて言うかもね、ともかく、ブラッドの混血には長老の意向が働いてるのよ」
「…? あの仙人が何故だ?」
「私も良く知らないけど、なんでも、竜の弱点を直すんだか、戦争に備えた実験だとか、まあそんな理由らしいわ」
 残念ながら、自分で言うのも悲しいが、弱体化していると言わざるを得ないな。諦めたら如何か、と実験体たる俺から言わせて貰おう。
「じゃあ、もう行くわね」
「そうか、次はより美味しく淹れられるようにしておく。また来てくれ」
「あはは、期待しないで待ってるわ」
 男の嗜みの一つ、次回の来訪を期待しているとの言葉を伝える事。
 こうすれば、相手から好印象を得られ、女は程々に自尊心が満たされるのだ。尚、この言葉が必要というのに気づくまで俺は何度殴られた事だろうか。
 
 さて、知人が去ってまず、すべきことが有る。
 風呂に入る事だ。割れたカップの破片を気にするより、この紅茶まみれの身体を何とかしなければなるまい。
 後片付けもそのままに、浴室に入った俺はイソイソと衣服を脱ぐ。魔法で作れば簡単なのだが、俺にはそんな器用な真似はできない。
 湯を沸かして適温にする。この作業には慣れたもので、自分好みの温度にすることなど今では息をするように出来る。
 湯船に浸かり、気分が落ち着いてきた頃に、玄関からノックをする音が聞こえる。恐らく、カインかリュークか…男しかわざわざ訪れる者がいないからな。
 奴らならば、そう急ぐこともあるまい、とガウンを着込み、タオルで頭を拭きながら――魔法連発は面倒、混血故の悲しさだ――玄関口を開く。
「遅い」
「…………ルヴィ、ア?」
 エターナルフォースブリザード、俺は死ぬ。
「上がるわよ」
「あ、ああ…談話室はそこの突き当たりを右に曲がった所、奥から二番目の部屋だ」
 予想外の珍客にどうしようかと迷い、まずはこの格好をなんとかしようと、服を着替える。
 危ない危ない、この格好のままでは殴られる所だった。
「すまん、待たせぐぉ!?」
「汚い!」
 ドアを開けた瞬間、俺は反対側の壁に激突した。
 そういえば、カップの破片や紅茶が散乱していたままだった…っ。
「す、すまん。すぐ片付けよう」
 水の魔法で汚れを洗い流し、風の魔法で破片を無理矢理集めて、ゴミ箱へ。
 テーブルクロスを元の位置に素早く戻す。勿論、あの空から降ってきた瓶はきちんと退けてあるのでそれを元の場所へ。まあ、何とか、客を迎えれる体裁は整ったと思う。
「今、お茶の用意をする。アールグレイでいいか?」
「何でもいいわよ」
 まさか、俺がお茶の種類を覚える時が来て、あまつさえ、それを自分で淹れる時が来るとは、数年前には思いもしなかった。
 八回目ともなれば、ある程度は雑念が混じっても淹れられる。これなら、満足とは言わなくても及第点だろう。
「待たせたな」
 色、香り、共に初回目とは比べ物にならないぐらい進歩している。味も自信有り、だ、クーのレベルにまで達するのにそう、遅くはないだろう。
「ふん……あら? 中々、お…紅茶は今まで淹れたことがあるの?」
「いや、今日が初めてだ。先刻、ブリッツに鍛えrぐぁ!?」
 先程より強い衝撃が顔を襲う。椅子ごと半回転したが、それでも椅子は壊れること無く、床も傷が付くことがないのは、流石、竜の住処というべきか。
「美味しくないわ、やり直し」
 …一体何が悪かったのだろう。ブリッツに及第点を貰った時より上手く淹れれたと思うのだが。
 いや、成程、気位が高いからそのような妥協は気に入らないのか。
 前回の反省を生かし、都合、九回目に取り掛かり、最高の紳士動作(?)でお茶を置く。
 間違いない、これは、完璧だ。
「やり直し!」
 コトリと、置き終えた瞬間には、カップが俺の額に直撃していた。
 一体何を言っているのかわからないが、拳銃だとか電磁砲だとかそんな、玩具のようなものじゃなかった。もっと恐ろしいモノを味わった。
 カップは衝撃で粉末状になり、湯気の立った紅茶と共に俺の顔を襲う。目がー目がー。
「……」
 一体、何が悪かったのだろう。せめて、一口ぐらい口を付けてから文句を言ってもらいたいのであるが、そんな事を言ったからには俺は、効果があるか知らないが水で薄めた【輪廻回帰】を使わざるを得ない事態になるのは、子供でもわかる。
 だが、これ以上となると、俺は出来る気がしない。
 …いや、待てよ。淹れなおすのではなく、文字通り、最初からやり直せばいいのではないか?
 つまり、ブリッツに淹れた、あの色のついた苦い水から始めればいいのか、いや、しかし、あれは自分でも酷いと思ったが、いやいや、次に同じ過ちをすれば今度こそ、俺は死ぬ。
 いや、人の姿だから死ぬことは無いが、それでも辛い事には変わりない。そも、竜の姿で暴れて、ルヴィアにまたもや殺されるというのも容易に想像が付く。
「…………」
「早くしなさい。殺すわよ」
 …やるしか、無いのか。いざとなれば、頼んだ、お薬よ。
 おもむろに茶葉を適当に一掴みし、泡だった湯に放り込み、適当な色が付くまで放置してからカップに注ぎ込み、茶とは言えない茶が完成。
「で、できたぞ」
「…」
 なんとも言えない匂いをかもし出す、茶を見つめるルヴィア。俺がドモったり、手が多少震えるのも仕方ないと思って欲しい。
 ブリッツならば、この時点では既に手が出ていた後だったが、ルヴィアは何も言わないし、手も出さない。だが、それが逆に怖い。
 ルヴィアがカップを持ち、匂いを嗅ぐ。眉をしかめるのを見て、俺は冷や汗で服を濡らす。
 カップを口に近づける。残り2cm。
 『ルヴィアはその殺された決闘相手の妹なのよ』
 いやいやいや、俺は直接的には関係無いだろう、大丈夫と思いたい。
 紅茶がカップの淵で隠れて見えなくなる。残り1cm。
 『村全体で見てもかなり上のほうの実力があるわ。勿論、プライドも』
 そうだ、堂々としていればいい、女は卑屈だと、逆に情けないと怒る。だから堂々と、堂々と…
 眉をしかめたままのルヴィアが遂にその小さい唇をカップにつけて傾ける。
 ど、どうどうどうどうどうぅ…
 『だから、ローガス、機嫌を損ねると死ぬから』

――ピクリ

「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
 ルヴィアの瞼が動いた刹那、俺は瓶を握り締め部屋の隅にまで転がるように、逃げて、うずくまる。
 恥も外聞もあったものではいが、怖いのだから仕方ない。
 中身は既に無いというのに、必死に【輪廻回帰】の瓶を壊れるのではないかという程握り締め、ルヴィアからの攻撃に備える。願わくば、脳髄部分はやめてほしい。
「ぁぁぁ……あ?」
 別段、胴体が千切れる訳でもない、意識が薄れ行く感覚も無い。まして、攻撃を受けた訳でもない。
 何もされないのに疑問を感じて、ルヴィアをチラリと盗み見る。俺としては、良くて即死と思っていたのだが、ルヴィアは続けて、二口目でカップの残りを一気に飲み終わった後に、
「美味しくないわ、淹れなおして頂戴」
 …こ、これは確率上、二分の一、いや、百分の一の生き残る選択を引けたと思っていいのか?
「何をしているの、早く」
「あ、ああ。すまんな…」
 俺は疑問に思いつつ、死にたくない一心で、茶の量を前回より少し減らした改良版、旧二回目の方法で作った紅茶を、カップの中の下程度注ぐ。
 通常より、少ないが、もし、カップを投げつけられると、火傷の範囲を減らせるのでな。先程は通常通りの分量を入れたが、あれを投げられると、痛いし、熱い。
「先程より、大丈夫だと思うが…」
 色、香り、差し出す時の言葉まで、全てが二回目と一緒だ。だが、やはり、まだ怖いので手は震える。
 これで、機嫌を損ねると元も子もないからな。もし、ルヴィアが美味しい紅茶を求めていたのならば、俺は死ぬ。
「少ないわ。ふざけてるの? もし、そうだとしたら、殺すわよ」
「あ、ああ、確かに少ないな。すまん、淹れなおそう」
 ルヴィアの言葉に慌てて、別のカップに定量注ぎなおす。
 二回目とは言え、またもや冷や汗が出るが、我慢する。
 一口飲んだ後は、同じように眉を潜め、お茶菓子を口に入れる。当然だろう、ただ渋いだけの茶なぞ、美味しくないのだから。
「必要ないわ、下げなさい」
 一向に、カップを投げ捨てようとしないルヴィアに対し、砂糖の入ったガラス容器をさりげなくルヴィアの近くに置くが、にべもないお言葉を貰う。
「…無理に、飲むことはないぞ?」
「黙りなさい」
「…」
 悪戦苦闘しつつも、律儀に五口目には全てカップの中身を飲み干し、
「全然駄目。次、淹れなさい」
 三回目も、まだまだ茶とは言えないが、それでもルヴィアは文句も言わずに飲み干す。いい加減、辛いだろうと、分量を減らそうとしたが、怒られたのでやめた。
 結局、最後の六回目の茶も全て飲み終えたルヴィアが視線で次、と言うが、俺は首を振る。
「いや、さっきので最後だ」
「…そう。帰るわ」
 さて、次は何が来るんだ、と身構えていると以外にもあっさりと席を立ち、帰ろうとする。結局、何をしにきたのだろうか、碌に会話もしていないのだが。
 最も、そのお陰で俺自身はルヴィアの鋭い視線から解放され、漸く、体中の筋肉という筋肉が緊張状態から脱した。勿論、精神も。
 微かな溜息と共に、事有る毎に握り締めていた瓶をテーブルに戻すと、ルヴィアが怪訝そうに口を開く。
「さっきから、それ、大事そうに握り締めていたけどそんなにも効能があったのかしら?」
「ああ」
 迷い無く、首を縦に振っておく。もし、我侭を許してもらうなら、もう一度、この天からの恵み物を貰いたいものだ。今後の為に。
「ふーん……。ローガス、元の姿になりなさい」
 言われた通り竜の姿になり、理由を聞こうとするが、そんな暇もなく、胸部に強打。バキャッという骨が折れる音と、その折れた骨が肺や心臓に突き刺さる感触。
「怯えすぎ――情けないわ」
「ずま゛ん゛、づぎヴぁ、う゛ま゛ぐ淹れよ゛う」
 また来てくれと、紳士に振舞おうとしたが、もう声が、血が邪魔で、息が肺に残って無くて、喋れない。
 俺は、次第に消えていく心音の中、ルヴィアにあの瓶の中身が薬と言ったか? と、どうでも良い事を思いつつ、赤毛を揺らしながら去っていくルヴィアを見送る。
――…嗚呼、瓶が、瓶が遠いよ。手が、届かないよ。

「おーい、ローガス。居てるなら、返事を……うぉお!? ローガス!? 死ぬな!!」
 後日、俺に用事が有ることを伝えに来たカインに助けられた。
 処置が悪ければ、死んでいたらしいが、生きてた。
 うん、生きているって素晴らしい。


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