<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.9180の一覧
[0] 次世代ドラゴン(巣ドラ物)[あべゆき](2009/07/14 13:48)
[1] 次世代ドラゴン 第二話[あべゆき](2009/11/25 23:19)
[2] 次世代ドラゴン 第三話[あべゆき](2009/07/14 13:51)
[3] 次世代ドラゴン 第四話[あべゆき](2009/07/14 13:47)
[4] 次世代ドラゴン 第五話[あべゆき](2009/12/03 17:10)
[5] 次世代ドラゴン 第六話[あべゆき](2009/12/03 17:10)
[6] 次世代ドラゴン 第七話[あべゆき](2009/07/16 21:17)
[7] 次世代ドラゴン 第八話[あべゆき](2009/12/03 17:11)
[8] 次世代ドラゴン 第九話[あべゆき](2009/11/25 23:21)
[9] 次世代ドラゴン 第10話[あべゆき](2009/11/26 05:05)
[10] 次世代ドラゴン 第11話[あべゆき](2009/11/27 02:41)
[11] 次世代ドラゴン 第12話[あべゆき](2009/11/29 14:31)
[12] 次世代ドラゴン 第13話[あべゆき](2009/12/13 04:21)
[13] 次世代ドラゴン 第14話[あべゆき](2009/12/13 04:39)
[14] 次世代ドラゴン 第15話[あべゆき](2010/06/16 00:52)
[15] 次世代ドラゴン 第16話[あべゆき](2010/10/07 23:20)
[16] 次世代ドラゴン 第17話[あべゆき](2010/10/13 19:22)
[17] おまけ 劇中作① [あべゆき](2010/10/07 23:24)
[18] おまけ物語 超強いローガス君。[あべゆき](2011/08/13 12:34)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[9180] 次世代ドラゴン 第16話
Name: あべゆき◆d43f95d3 ID:e14cd408 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/07 23:20
「御主人様…」
 居並ぶメイド1号以下、上位ナンバーのメイド達の視線が突き刺さる。
 子供のようにはしゃぐ婚約者達の部屋と比べてここは、何と重い空気なのだろう。
 無論、メイド達が言っている事は嫌と言う程わかっているつもりだ。現在の資金状態が続くならば、商会からの信用を失います、とセリアからも明言されている程なのだから。
 …ここで優遇措置が受けれなくなるならば、即ち破産。破産だけは免れねばならないだろう。
 だが竜にとって、俺にとっては、破産そのものは、怖くは無い。襲い掛かってくる人間共も怖くは無い。
 破産だとかそんなもの正直な話、どうでもいいのである。怖いのは、破産した後の婚約者なのだ。 
 竜の死因が第一位――女竜に殺された…ぶっちぎりのナンバー1。二位以下を驚く程引き離して、ナンバー1。人気ランキングに母が絶対TOPになるぐらい、ナンバー1。
 人間が褒め称える『竜殺し』の英雄なんぞ、8割以上が破産した後に殺された男竜の屍骸を貪っただけのなんちゃって英雄という時点で察してもらいたい。
 だからそんな軽々しくお金無いので町襲ってきてください、なんて言わないで貰いたい。
 普通の状況ならともかくとして、今は、あろうことか、よりによって、婚約者達が滞在中――しかも自分が呼んだ――なのである。俺だって普通の状態なら、言われるまでも無く、行って襲って帰ってくる。
 呼ぶだけ呼んで、自分自身は何処かにお出掛け、なんぞ俺が酷い目に会うのは嫌でもわかる。
「御主人様…ご決断を」
 選択肢は二つに一つ。行って、死ぬか、破産して、死ぬか。右か、左か。男か、女か。ルヴィアかエルザか。
 選ぶなら――
「――エルザだ」
 そう結論付け、ルヴィアの部屋のドアノブから手を離し、回れ右。まずはエルザから許可を取ろうじゃないか…。
「御主人様。気が利く事には定評のある私メイド1号は――既にエルザ様の許可は貰っております」
「……」
 全然利いてない。本当に利くのならルヴィアのほうの許可を取って来てもらいたい。
「ささ、御主人様、ルヴィア様がお待ちでございます。我々忠実なメイド部隊は、御主人様の武運を自室にて心からお祈り申し上げます」
 撤退せよー、と足音も立てず、しかし、迅速な動きで逃げていくメイド部隊。
 ――逝くしか、無いのか。
「…あのー、ルヴィア…さん。ちょっと、お話が、有るんですが…」
 いけるのか、俺。大丈夫なのか、俺。生きていられるのか、俺っ。


次世代ドラゴン


「では行ってくるから、二人を頼んだぞ」
 目標は貢物に期待できる河口にある大きな港町。強い敵も来るだろうが、事前の偵察情報で熟練した冒険者連中が集まっていると聞いているので最早多少は変わるまい。我が家の家計は火の車、止まったら其の時点で負けなのである。 
「ご主人様…そのー、言っちゃあなんですけど、戦艦で例えるなら、撃沈判定食らってますよ?」
「竜族にとってこの程度は撃沈ではない、大破だ。そして俺にとってこれは中破だ」
 他の男共が如何かは知る由も無いが…ルヴィアと何十年も過ごしてきたのは伊達ではないのだ。
 それに、不器用な俺が唯一完璧の域まで使える治療魔法と相まってメリメリと傷が塞がっていくのを見て、戦闘にも支障は無いだろうと確認する。
「竜が飛ぶだけで、夜の生活練習をします。ご主人様、頑張れ!」
 とは、メイド1号の談である。毎回毎回、町を襲うときにコレを言われるのだが、一体何が言いたいのだろうか。
 そうして、俺は空を飛ぶ、人間共に恐怖を与えるために――弁当を手に持って。(エルザ謹製)
 なんだかなぁ、と思わないでもないので、少々、心持ち高空を飛ぶのは仕方が無い。
 …
 ……
 ………
 さて、街を襲うと一言で言っても色々と考えねばならない事が有る。例えば、何度も何度も同じ集落を攻撃してはいけない、という事だ。
 一度攻撃した集落に再度攻撃を加えても、最早出せるだけの金品など無いし、余計な恨みを買うばかりか、集落消滅という事になると貢物の出所が無くなる為だ。
 生かさず、されど、殺さずを心がける事と、もう一つ…集落同士を競い合わせるように仕向ける事だ。
 例えばAという集落が100の貢物を持ってきたとして、Bという集落が70の貢物、そしてCが50の貢物だったとしよう。これは我々の中ではAの集落は『優』判定であり、Bは『可』、Cは『不可』判定となる。
 『優』判定のAの集落にはその後、ある程度の貢物を維持しているとなると、我々からも色々と特典を出すのだ。再度攻撃しないのは勿論、治水工事の手助けだったり、病人の治療や火急用件での運搬、伝言等…優秀な村には飴を与える。無論、多少の貢物が減っても多めに見る。
 『可』判定のBの集落には、基本的には手を出さないが、それだけであり、別に我々からの特典は無く、貢物を維持してくれればそれで何も言わない。減らせば『不可』判定になるが。
 そして、『不可』判定のCの集落は、再度の攻撃を仕掛ける。それは示威行動であったりもするし、見せしめとしての殲滅だったりもする。それで態度を改めれば『可』判定にはなるが、『優』判定には相応の誠意が必要になるという具合だ。
 こうする事によって、村が競って貢物を出すし、我々としても無為な労力は必要としないという共生関係とも主従関係とも言える関係を構築していくのだ。普段貢物が来るのはこういう努力があってこそ、である。
 無論、村の貧富等も考慮しなければならないので、人間に化けたメイド達が散歩や買い物がてら村に立ち寄ったりもする。最近は生贄も夏の間、帰省したりとバリエーションも増えてきている。
 ――だが、それはあくまでも巣の近辺にある『小さい村』の場合である。
 巣から相応に遠く、また規模の大きい街には、継続した少量の貢物よりも、年に一度か二度程、大規模徴収するという具合が良いだろう。その理由としては幾つかある。
 ①街に赴くまで時間が掛かるし、何度も同じ街を壊せる程の魔力に余裕が無いという事。
 ②経済という魔物は、血液たる金が無ければ衰弱するが、反面、金があれば更に金を増やしてくれる為。
 ③貢物を小分けに巣まで運ぶ労力と費用が割に合わないだろうという試算。(無駄金を使わず貯蓄しといてもらいたい)
 という具合に、俺からしても人間からしても、そっちのほうが嬉しいだろうという俺の優しさ故に。決して俺が力の制御が出来ない癖に、燃費が悪く、又、魔力補充量が少ないからではない。あくまでも、合理的思考によりこの結論が出たのだ。もう一度言う。決して①が深刻という事ではないのだ。
 まあ、それは置いとくとして、眼下に広がる大きな町並みと何隻もの交易船…どうやら到着したらしい。
「りゅ、竜だ…っ」
「竜が来たぞー! 逃げろー!」
 上空から見ればノロノロと動いている用にしか見えない人間の群れ…まずは何時もどおり逃げる時間を与えておく。
 さて、その間にもう一度おさらいしておこうか。
 セリアからの情報ではこの『港街』はこの国の基幹都市にあたるらしく、議会や外交施設等の重要施設が目白押しでまた、交易を中心とした富を生み出す場所でもあるらしい。
 そして幸運にもこの国はギルド連合が支配する商人の町であり、戦争は小規模な軍隊は有るモノの常に傭兵主体で、有り余る資金と情報網で国を防衛しているらしい…いやはや、利益の無い癖に手強い軍人が居ないというのは、現在の巣の防衛状況から見れば有り難い事だ。傭兵なら、竜相手となると尻込みするのが普通だし。
 勿論、普通の人間なら困るであろう荷留めに代表される経済制裁は俺にはまるで痛くないし、情報もより巨大で近代化されているギュンギュスカー商会がバックに付いているので怖くも何とも無い。
 いやー、本当に立地だけは最高だ、と浮かれた辺りで、人間の避難も終わったようで、気配も悲鳴も感じない。
 後は攻撃する場所をどこにするか検討する。無論ここで、船を代表とする富を生み出す物や施設を狙ってはいけない。となると、後は…なるべく富を生まない癖に心の拠り所にしてそうな施設を…、
「お、ここにするか…」
 一人そう呟いた俺が見つけたのは大きな広場の中心に聳え立つ時計台。その広場を中心に放射線状に広がる町並みを見るに街の中心部だろうか。よし、周りには重要施設も無いし…いっちょやりますか。
 息を大きく吸い込み、体内で魔力を混合させる。使う力は自らの相性が最も良い古代竜。
 準備は出来た…後は、この町並みを――瓦礫にするだけだ…っ!
 吐き出されるは、竜の吐息、ヒトが恐れる破壊の象徴。
 竜が竜たるその由縁は余すことなく、時計台へと直撃し――
「ふむ、上出来だな」
 土埃が晴れた後には目を覆うような惨状が延々と続いていた。
 やりましたっ御主人様! と何故かメイド1号の声が聞こえたのは唯の幻聴だろう。

 巣に帰ってセリアに街攻撃成功の旨を伝えようとした所、既に情報が入っていたのか珍しくもニコニコと笑って出迎えてくれた。
 なんでも、街の壊した規模が丁度良く、人間は恨みを抱かないが恐怖を最大限抱いたとの事らしい。
「報告によれば、襲撃した街では現在貢物の仕分けが最終段階に入っているようです」
「そうか、何時も通り到着次第報告してくれ…所で、何だこれは?」
 机の上に置かれた一本の瓶、付いたラベルの文字は東方の文字が一つ『達筆』と呼ばれる独特の文字体系。えーっと、何々…?
「『竜殺し・改』と呼ばれる東方のお酒です。里帰りしていたメイドが魔界で見つけ、買ってきたらしいです」
 二本買ったので一本は贈り物とも言ってました、とセリア。
「……変わった、名前だな」
 というか、嫌な名前である。
 なんだろうか、そのメイドは俺に何か恨みでも持っているのかと、考えないでもない。
「実際に殺すわけではなく、竜でも殺せる程酔う、という意味らしいですよ? 我々、魔族も酒には強いですが、これには参ったと言ってましたから」
 ふーん。いや、まあ毒だろうがなんだろうが、その程度では竜は死なないから如何でもいい。
 事実、何度か俺も村に居るときに毒物を試しに食べて見たが、何とも無かった。というより、書物で知らされていなければ、毒とすら気付かなかったが。また、後で知ったという事もあった…つまり、実際の竜殺しと女以外、竜は殺せないという事だ。
「あ、御主人様、婚約者様が御呼びですよー?」
「ん? ああ、わかった」
 がたりと席を立って、手早く身だしなみを整える。最早慣れきったこの仕草は一瞬の内に終わる程だ。
「御主人様の部屋でお待ちですよ…あ、ああーっ、竜殺し・改じゃないですか! 御主人様もやっぱり酔いました?」
「いや、まだだが…」
「なら折角ですし、これを婚約者様達と飲んできてくれませんか?
魔界では長年、これを飲むと本当に竜が酔いつぶれるのか、というのが議論されてまして…」
 あー、つまり、それを知りたい、と。
 毒じゃないですし、本当に普通のお酒ですから大吟醸ですからーっと必死なメイド17号に押された形で承諾した俺は一路、自室へ。
 どうやら、頼んでいた絹の服が届いたらしいのだが…婚約者が俺の部屋で待っているという場合、これは、ノックをすべきなのだろうか。
 普通ならそのまま入るんだが、自分の部屋なのにノックするというのも何か違うだろう、いや、でも…ノックせずに入ったら怒られそう。そんな葛藤の末、ノックをする方を選んだのは悲しい性とでも言うべきか。
「入るぞ?」
 かちゃりと開けた扉の先、二人の婚約者がソファーに座り、俺を待っていた。
 共に、普段とは違う姿。服装だけではない、髪型も何時もと違うだけで雰囲気が変わるのは気のせいなのだろうか。
 エルザはむき出しのノースリーブが、ルヴィアは深いスリットの入ったドレスが、艶かしい色気を出している。
「…何をしておるのかや? こっちへ来りゃれ?」
「あ、ああ…すまんな」
 どうやら俺は見とれていたとも、固まっていたとも…扉を閉めて、俺の座る場所は、と眺め見る。
 暖炉の傍に置かれた、座り心地が密かな自慢の3つの長椅子の両隣は占有され、最も特等席たる正面が暖炉の長椅子がぽつりと一つ開いている。無論、ルヴィアが体を楽にしている椅子にも十分に座れるし、長椅子のど真ん中に座るエルザも同様だった。
 普段なら、この冬も真っ只中の、この季節。暖炉前の椅子は二人共勝手気ままに座っているというのに、何故か、今回に限って妥協の産物と感じるのは何故なのだろうか。
 無論、ここでルヴィア側の椅子に座る、エルザ側に座るといった選択肢は無い。唯でさえ、普段二人が座っている時に、ルヴィアに近い方に座ればエルザは良い顔をしないし、エルザに近い方の椅子に座れば今度はルヴィアが不機嫌になるという、実に気まずい選択をしている――別の場所に座る等という選択肢は許されず、用も無いのに部屋を出て行くというのは、尚更に――というのだから。
 となれば、後はもう、二人が来る前までは俺の場所だった、ここ、中央席の更に中央に座るしかない。
「すまんかったな、放ったらかしにしてしまって…その、なんだ――似合っているぞ」
 そして、褒める。無論、機嫌取りだとかそういうのではなく、本心からそう口に出た。
 ルヴィアは一枚の絵画のよう…暖炉の火に当てられた表情が憂いている用にも見える、深窓の令嬢。対して、エルザは白と黒のコントラストが魅力的な闇夜の貴人だろう。
 これだけでも、苦労が報われるというものだ。呼んで良かったと心から実感。
「汝が為の服なのじゃ…喜んでくれて妾は嬉しい」
 ありがとう、とエルザに言っておく。本当はエルザの為なのだが…。まあ、兎にも角にも喜んでくれているようだ。ルヴィアからの返事は無いが、多少顔が赤くなっているのを見るに、ルヴィアもそうなのだろう。
「……それは何なの?」
 ルヴィアの言うそれ、とはやっぱりこの酒の事なのだろう。
「ああ、何でも東方の酒らしい。メイドから貰った奴でな…飲んでみるか?」
 名前は言わないでおく。俺の為にも、相手の為にも。
「妾は酒精を口にした事がないのじゃ。美味しいのかや?」
 まあ、それはそうだろう。竜の村では酒の需要がまるで無かった…酔えないから。酒というか何と言うかそういう、状態異常を起こす類のモノはてんと効かないのが竜種なのだ。
 俺は試しとばかりに一度飲んで見たが、美味しいとは、思わなかったな。苦いというか、何と言うか、普通に茶を飲んでるほうが断然良かったのだが。
「まあ…ワインとはまた違うとは聞いているが、俺も飲んだ事が無いから何とも言えない。それに、折角の貰い物だしな。二人はどうする?」
「妾にもグラスをくりゃれ?」
「結構よ」
 恐らくはルヴィアも俺と同じで試しに飲んでみたのだろう、そう断りを入れてきた。まあ、それが普通だなと思いつつ、磨かれたグラスを二つ選ぶ。圧倒的にカップが多い食器棚とは言え、グラスなら幾つか入っている。
 キュポンといい音を立てて抜けた栓を置いてグラスに注ぐと、無色透明の液体…成程、東方の酒には色が付いていないのか、と無駄な感心。
「…東方の酒とは、水なのかや?」
 俺もそう思った。
「いや、水では無いと思うんだが…」
 試しに鼻に近づけると、アルコール独特のツンとした香りが鼻に付く。矢張り、これも歴とした酒なのだろう。エルザもアルコールの匂いに顔をしかめていた。
「無理そうなら飲まなくてもいいぞ?」
 と、言ってから一口飲んで見る。
 ワインとは違った…鋭さと言うべきか、清流というべきか、キレがあるとでも言うのだろうか、僅かな甘みと口に広がる何とも言えない辛味、そして、焼け付くような感覚が有る臓腑。
 こんな感覚は、ワインにはまるで無かった。これが、酒なのか。
「…っ! 汝、この辺が…熱いのじゃっ」
 と、胸の辺りをさするエルザ。ああ、全くだ。俺も驚く程だから、エルザも驚いて当然だろう。
「ワインを飲んだ時にはこんな事は無かったのだが…大丈夫か、エルザ」
「むぅ…何と言うか、不味くは無いのじゃが美味しくもない…しかし、この熱さは心地良いのじゃ。恋敵よ、お主も飲んだらどうかや?」
 ローガスが隣に居るような感覚なのじゃ、と。俺が隣に居る感覚とは何なのだろうか。
 それはさておき、エルザの言葉が効いたのかルヴィアも飲むとの事でグラスに注いでやると、これまた、エルザと同じような反応が返ってきた。
 恐るべし、竜殺し・改。竜種がここまで反応するような酒を造るとは…竜でこれなのだからメイドが参ったというのも頷ける話だ。
 二人共、この酒が気に入ったのか、注いでは飲んで、注いでは飲んで…俺の分は恐らくもう来ないだろう。そう思うと悲しくなり、酒を一気に煽る事で紛らわす。
「所で、二人共寒くないのか?」
 暖炉の熱は十分に部屋に行き渡っているとは言え、露出の多い服装である。普段着と比べれば薄布一枚だけと言っても過言ではない。
「…その、隣に座っても…いいかしら?」
 少し寒いの、とルヴィアが言う。普段なら俺の許可を取らないというのに、珍しい事もあるものだ。
「ああ、構わないが………あー、これを羽織っておくといい」
「…うん」
 とりあえず、上着を羽織らせておいたが、目が眠そうというか、何というか、変だ。何か様子がおかしい。隣というかすぐ傍というか、そういう距離に座る辺りとかも普段のルヴィアじゃない。
「妾も寒いのじゃ…隣に座らせてくりゃれ?」
「あ、ああ、構わないが…何か羽織る物を取ってこよう」
 生憎と俺はもう羽織らせるようなものは着ていないし、俺のシャツをどうぞという訳にも行かず、席を立とうとすると、服をエルザに引っ張られた。
「こうすれば…寒くないのじゃ」
 と、俺の腕を避けて密着してくるエルザ。どうにもこうにも、手の置き場の困った俺に気付いたのか、俺の手を誘導して、自らの肩を置き場とする始末。
 無論、手の置き場に困っているのはエルザ側だけではない。ルヴィア側もそうだ…余りにも近いが為に手を下に置いていると、少しばかり困った事になる。さりとて、足の上に手を置くと今度は重心が傾いてエルザに体重を掛けるという事態に陥る。
 さて困ったな、と思案し、最終的にルヴィアの羽織っている上着を直すついでに腕を後ろに置く事になったのは必然とも言うべきか。
「汝…飲まないのかや?」
「ん、そうだな」
 確かに見れば俺の分のグラスにだけ酒が残っている。
 だがしかし、ここでまた問題が起きた。酒を取ろうにも、両手の位置が悪いのだ。右手で取ろうとするも、エルザは俺の脇にくっつき、俺の手を離そうとしない。左手で取ろうとするとルヴィアの頭部に手が当たってしまう。
「…はい」
 有ろう事か、困った俺にグラスを渡してきたのは、あのルヴィアだった。
「…え、あ、ああ、すまんな」
 想定の範囲外、理解外の範疇。挙動不審になるのも仕方ないと思ってもらいたい。
 だが、受け取った所で結局、根本的問題が解決しておらず、飲もうと思えば、必然、腕でルヴィアを俺の方に引き寄せる形になってしまう。
「………頂こう」
 結局、俺は素直にルヴィアを引き寄せた。小さい悲鳴とも吐息とも取れる声を発するルヴィアからの鉄拳制裁は無いばかりか、かつての泉のように俺に体を預けてくる始末。
 流石に事ここに至り、酔ったのではないかと考え出す。酔ったときの基本症状は、滑舌の悪化・血圧上昇・判断力の低下…だったか。だが二人共、言葉は少ないモノの違和感は感じず、顔も別段赤くは無い。判断力は…少々わかりかねる。
 二人の様子が――特にルヴィア――変だというのに、両手から伝わる二人の体温が邪魔をして考えが進まない。白磁のような肌触りが自慢の絹に負けず劣らない二人の肌の滑らかさに俺は酷く興奮、いや、発情とも言えるような感情が胸を満たす。
「…妾は汝が傍に居ると怖いのじゃ」
「何故だ?」
「心の鼓動が早くなって、破けそうなのじゃ…」
 と、抱いていた腕の手のひらを、自らの胸へと押し当てる。
 ドクンドクンと早鐘のようになるその音は確かに俺に伝わった。
「…妾もな、寂しかったのじゃ。折角、汝に会えたというのに、汝は忙しそうであったから…でも、それが妾達の為というのも、それが妾達の所為であるとも解っておるのじゃ」
「いや、俺が不甲斐無い所為だから気にするな」
「…何時も、何時も、妾の為に恋敵の為に…自分の事なぞそっちのけで…貰ってばかりで…今もまたこのような服を贈ってもらえて…ほら、心地良い肌触りじゃろ…」
 心臓の有る場所から右へ、まだ幼い小さな膨らみの柔らかさが、痛いほどに伝わってくる。
「…そう思うと…嬉しいのに苦しゅうて…っ…胸が痛いほど締め付けられて…っ怖いのじゃ…如何すれば汝に…んっ…返せるのかや…」
 力強く、柔らかく、しつこく、ゆっくりと自らの胸元を弄るようにするエルザに、それは拙いと、止めなさいとは口から出なかった。喉がカラカラで、焼ける程、弄っている手が熱くて、エルザが、愛しくて。
「…っ…ぁっ…」
 熱くなる体躯、早くなる吐息、漏れ出す小さな声。
「…エルザ」
「熱いよう…苦しいよう…助けて…助けてくりゃれ…」
 性が禁忌な竜の身で、押し付けられた性欲という名の炎の消し方をエルザは知っているのだろうか。
 拙いながらも次第に激しくなる俺の手を始めて自分で動かして、一際感じるその頂を、一つ強めに引っ掻いた。
「あぅっ!? ひっ…あっ…やっ! あぁっ!」
 面白いように反応するエルザが可愛くて、何度も何度も弄ぶ。
 いよいよ、本格的に雌の顔をしたエルザに我慢できなくなった俺はより強く、より過激になっていく。止まらない、隣にはルヴィアが居るというのに。
 しかしルヴィアは何も言わない。エルザの痴態なぞ、眼中にも無いとばかりに唯、俺の顔を見ているだけだった。
「飲ませてくれ」
 だから、普段なら絶対に言わない様な事も口に出るのだろう。
 それは酒の所為なのか、服の所為なのか、エルザの所為なのかはわからない。
 もしこれが普段通りなら、今の時点で俺は壁に叩きつけられただろう…だが、今のこの状況は違う。男として、雄として、この雌を支配できると確信している。
「違う」
 ルヴィアに手渡したグラス。それをゆっくりと俺の口に近づけたのを見て、俺はそう制止させた。
 ぴくりと止まったルヴィアは如何すればいい、という目を向けてきたが俺は口には出さない。そのかわり、俺はルヴィアの唇に啄む程度のキスをする。
 驚いた顔をしているが、俺の意図は伝わったのだろう。グラスを傾けて口に含み、ゆっくりと俺に口を寄せ、
「――ん…」
 コクリ、と流し込まれた液体を飲んでいく。それは一人で飲むよりも、ずっと甘い味。ゆっくりと離れるルヴィアの顔は今までに無いほど赤く火照り、今までに無い程、魅力的だった。
「まだ…残っているだろう?」
 二口、三口…、その度にこくりこくり、飲み干して、最後の一口を飲み終わる。
 名残惜しそうに離れようとするルヴィアの頭を抑え付け、残った酒を飲む為に、ゆっくりと、しかし確実にその口内へと舌を伸ばす。
「…ん…んっ…」
 それを跳ね除けないが、それでもふとした拍子に追い出そうとするモノを同じもので絡みつかせる。
 生暖かい、甘酒の味が薄れ行くのを許さぬように、より激しく、より濃密に、ルヴィアから全てを奪うように飲み干していく。
「…ん」
 ぬらりと糸を引く唾液。荒く、しかし、方法を忘れたような不規則な呼吸をするルヴィアを安心させるように、ぐいと身を引き寄せる。
「黙って俺に身を任せておけ」
「…うん」
 そうして、また口を寄せる。今度は抵抗らしい抵抗もせず、俺を受け入れる。
 水音が場を満たし、俺自身も余裕が出てきた頃合だろうか。嬌声止まらないエルザのドレスの脇へと手を伸ばす。
 服越しよりも余程感じる熱と少し汗ばんだ肌。そして大きくなる声。
 ルヴィアはどうなのだろうか、と頭から手を離し、首から肩、そして脇に手を通して、その豊かに実ったその場所へと。
「――ふぁっ!」
 びくり、と震えた所為か口が離れ、艶声とも驚きとも取れる声が出る。
 あのルヴィアが俺の為すがままという事もあり、俺は興奮した手つきで荒々しくその胸を揉みしだく。
 ルヴィアも炎の存在すら知らないのか、嫌々と身を捩って快感に耐えているがそれを俺は許さない。
「っ!?」
 不意に、余った口が寂しいと気付き、エルザの口へと覆いかぶさる。
 焦らず、ゆっくりと、驚きに固まったエルザの口内に進んでいく。ルヴィアとはまた違った甘さ…小さい舌はやがて俺の舌を受け入れた。
「…ふ…んぅ…」
 背丈の関係上、俺はエルザの唾液を飲み干せない、だから俺の唾液を送り込むと、こくりこくりと小さな喉を鳴らして飲んでいく。
 まるで獣が如きマーキング。外も内も全て俺の色で満たしたような快感が堪らない。
「ぁ…ローガス…んっ」
 だから、ルヴィアにも同じように溜まった唾液を次から次へと送り込む。この雌は俺の物だと、誰にも渡さないと。
 やがて、手は丘を離れて、その下の窪みを通ってより奥へ。二人の下着がわかるほど、強めに尻を撫でていく。
 二人の下着は共に絹、装飾はシンプルながらもそれが俄然に俺を高ぶらせる。
「あぁ…ローガス…ローガス…」
 スカートを、スリットを、それぞれの位置へと手を伸ばす。ぴくんと体を震わせて、無意識ながらに拒もうとするのを意に介さず、より奥へ。抵抗が強いルヴィアにはより強く、口内を犯していく。
――くち…。
「――…あぁっ!」
下着を避け、エルザの秘奥に手が届く。
「ゃ…っ…ぁあっ…くっ…ふっ…」
 傷つけぬよう、怖がらせぬよう…まだ外見相応の場所ながら、雌としての役割を、にちゃり、という音を立てている。
 なぞるだけの愛撫。だが、エルザにはそれすらも耐え切れないとばかりに、俺の体にしがみ付き、声を漏らす。
「…っ…ぅっ…っ…あぁっ!」 
 ルヴィアの抵抗を圧し折るように、強く胸の頂点を摘むと、ルヴィアの目尻から、一筋、流れた。
 快楽か恐怖か興奮か、俺には解らない。だから、無我夢中で貪った、乳を、尻を、口内を、今はくたりと身を預けている。
「……ぁ」
 スリットを掻き分け、下着に手を潜り込ませる。窮屈ではあるが、それが余計に密着感を生み興奮させる。
 僅かに生えそろった恥毛の奥、濡れた場所へと進んでいく。ルヴィアは只、身を震わせている。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ローガス…許して…」
 ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、俺にそう哀願するルヴィアに普段の気丈さはまるで見当たらない。
「怖いか?」
 やりすぎたか、と思ったが、首を振るのを見る限りどうも違うらしい。
「なら、どうして謝るんだ?」
「私…っ何時も…酷い事をしてっ…本当は、こうやって…傍に居たいのに…っ。謝らなくちゃって…思っても…出来なくて…でも、今ならって思ったら…私…ごめん、なさい…ごめんなさい…!」
 幼子のように涙でくしゃくしゃになったルヴィアの頭を抱き抱えるようにして、落ち着かせる。
「…大丈夫…大丈夫だから」
 思えば、ルヴィアの手助けが有った様な場面が多々有った気がする。となれば、あれは照れ隠しだったのか…。いや、今はきっと初めての感情に情緒不安定になっているのだろう。今度落ち着いて話をしてみるか。
「…ん」
 唇が触れるだけの優しいキス。まだ肩を震わせているものの、ルヴィアは大分落ち着いたのだろう。
「汝…汝…止めないでくりゃれ…」
 そう、むしろ大丈夫じゃないのはエルザでもなければルヴィアでもない、俺の方なのだ。完全に興奮しきったこの体はちょっとやそっとでは落ち着かない。二人の痴態に留まる事を知らない。
「いいな?」
 と、聞くと、素直に頷いたルヴィア。今度こそ、その奥へと潜り込み、到達した。
 快楽に震えるルヴィアは、先程とは違い、硬さも何も無い、本心から俺を受け入れてくれている。
「…んっ、んんぅ…っ」
 ルヴィアに口を塞がれ、少し手を動かすとその度に鼻息が漏れ出してくる。
「ふっ…あっ! な、汝っ!」
 エルザも本格的に快楽を受け入れ始め、自ら腰を擦り付けてきた。
 甲高くなる嬌声、激しくなる動き、止まらない水音。
「――…!」
 同時に、きゅっと、押し潰した。
 声にならない声とガクガクと弓反りになる体。
「――! ――!」
 その最中でも、俺は手を止めず、何度も、何度も押し潰し、捏ね繰り回し、弾いた。途中、何度かもう止めてと言われた気がするが覚えていない。
 やがて、二人の反応が鈍くなったと思えば、どうやら気絶したらしい。
「…んっ」
 試しに弄ってみてもぴくりと動くだけ。調子に乗りすぎたか、と反省する。
「…しかし、まぁ…」
 惨状は酷いものだった。
 純白だったドレスは染めている部分を除き、色々な体液で色が変わっているし、座っていた長椅子に至ってはまるでカップをひっくり返したかのようにもなっている。
 どうしようか、これ…。
 …
 ……
「と、言うわけで、『竜殺し・改』はもう無いのか?」
 後始末をメイドに任せた後、俺はそう聞いてみる。
 竜の身でありながら、あの感覚を少ししか味わえなかったのが残念極まりないからだ。
「あれは元々数が少ない上に需要も無いですから…また見つけたら仕入れてきます。あれ、何処行くんですか?」
 しょんぼりと肩を落として次の目的地に行こうとするとそうメイドが声を掛けてくる。
 何処ってそんな事聞かれたら、ねぇ?
「コレを見てわからないか?」
「うわ、凄い夜の戦闘態勢ですね、でも良いんですか? 婚約者様に見つかるかもしれませんよ?」
「…少しだけなら大丈夫だろう」
 今この状態を放置すれば、二人に襲い掛かるのは間違いない。
 だが、流石に結婚もしてないのに致すのは如何なものか、と思った末に行くは女の場所なのである。
「じゃ、準備しますから」
「いや、必要ない」
 普段なら呼び出す時には事前にメイド達から女へ伝えられるのだ。そして、相応の準備をして…となるのではあるが、今は時間が惜しい。
 … ム、リュウヨドウシタ?
 …… キ、キサマ、マタワレヲッ!?
 ……… ヤ、ヤメヌカァーッ
 翌日、二人は帰ったらしい。メイド曰く、凄い速さでした。との事。

 余談ではあるが後日、街から凄まじい量の貢物が届いた。
「ひぇえ…御主人様、凄い量ですね」
 メイド1号の目が財宝に負けんばかりに輝いているのが少し怖い。
「だが、少しばかり多すぎないか?」
 何かの間違いではないかとセリアに聞いてみるも、
「調べて見た所、周辺地域を流通で抑えている所為か長い間戦争が無かった用ですね。
そこへ急に御主人様が来たので、脅威らしい脅威もなく、ぬくぬくと育った上層部は恐れたのでしょう」
 成程、つまり平和ボケしていた分、衝撃も大きかったと。しかも、相手はお金持ちと来たもんだ。
「最も、竜に対する準備期間とも受け取れるので警戒は必要ですが」
 構わない。これだけあれば、防衛体制が整いそうだ。
「…も、もう一度襲いましょうっ御主人様!」
「時間を置こうとも、流石に二度目は常識内の貢物量ですよ」
 恐れていても、出すものが無ければ無意味ですとはセリアの言。
 全く持ってその通りだ、袖を振っても出ないものは出ないのだ。今はあの街が復興して肥え太るのを我慢しようじゃないか。
 無論、魔力がもう無いからではない。
「そうですか…なら御主人様、次はこの街なんてどうでしょうか?」
 とメイド1号に中規模な町を紹介されたが、そこはほら、咳払いで誤魔化しておいた。




現在の状況

・財力『8350万B』(借金総額2000万B)
・H技術『18H』
・魔力『5M』
・恐怖『427!』
・捕虜『3人』
・巣豪華度『20豪華』
・配下モンスター『12部隊』


おまけ劇場
『俺達街の警備隊』

警備隊長「私達は、何者だー!」
警備隊員「街の治安を預かる警備隊です!」
警備隊長「私達は、何者だー!」
警備隊員「恐れを知らない、泣く子はもっと泣く警備隊です!」
警備隊長「よろしい。今回は流石に急すぎたので逃げたが、あの竜を倒すぞー!」
警備隊員「おーっ!」
警備隊長「次こそ倒すぞー!」
警備隊員「おーっ!」
警備隊長「絶対倒すぞー!」
警備隊員「おーっ!」
警備隊長「俺達無敵の!」
警備隊員「警備隊っ!」
街の人「また竜が来たぞー!」
警備隊長他「「に、逃げろーっ!!!」」
街の人「…冗談だったのに」


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022584915161133