雪空に移り変わりそうな静かな静かな夜中の時間。
男は煙草に火を点け。
紫煙をくゆらす。
今日は何と無く目が覚めたのか、ぼんやりと。ぼんやりと。
足下が定まって居ない状態で外に出た。
雪が降る前の。冷たさを伴わせた妙な暖かさを感じる己が居る。
そんな不思議な脆弱感の様なモノを覚えつつも。
何かふと。外に出たくなったのか。
目的も無く夜の静かな歩道を進む。
真夜中に出た為か。今の時間帯には誰も居らず、何と無くこの空間を独り占めしたかの様な。
子供地味た行動を起しそうな。
少々戯けた雰囲気を周りに出しつつ。
男は何の目的も無い。散歩を続ける。
「夜中に歩くのもたまには良いもんじゃねぇか」
独り言を周りに響き渡らせる男。
その言葉にはもちろん誰かが答える訳じゃなく。
見えない何かが形となったかの様に。
静かな空間に、声が酷く酷く。気持ちの良い澄み方を伴わせたかの様に。
男の声が深く深く木霊する。
「……寒いな」
ほんの少しだけの時間。散歩するつもりで軽装で外出した男は、思いの外長い時間出歩いてしまって居ると気付きつつ。
今日が休日なのを思い出したのか、このまま何と無く出歩いてしまおうと。
投げ遣りの様な、自棄(やけ)を起こしたのか定かでは無いが。
このまま気の向くままに。自分の何かが落ち着く迄ずっとずっと歩こうと。どうやら決めたらしい。
「……何してるんだろうな、俺は」
意味の無い事をしてると。男は改めて口にするが、己の中での何かがまだ落ち着かないのか。
まだまだ歩く事を続けるらしい。
男に向かって風が吹く。冷気を含んだ、乾燥した様な風。
この時期特有の、清々しさを感じさせる様な。
心地よい風。だけれど、長時間は吹かれたままでは居る事が出来ない。
一時だけ楽しむ事が出来る。制限付きの風。
男はどうでも良い事を思い付いてると分って居ながらも、場当たり的な思考を止めるつもりはどうやら無いらしい。
「とうとう雪が降り始めたのか……どうりで顔に冷たさを感じる訳だ」
取り留めの無い。纏め様も無い思考に耽りつつも、そうした中に沈み込みながら、さっきから冷たいのが顔に当たるのを感じていた男は、空を見ようと顔を上げる。
「まだ降り始めの。すぐ溶けてしまいそうな雪だな」
積もる様な雪ではなくて、何かに触れたらすぐ溶けてしまいそうな、弱々しさを感じさせる。
脆い雪質の物が降って居る様だ。
「煙草……ちっ。切れてるじゃねぇか」
煙草が入った箱を握り潰しつつ。そのままポケットに入れ、男は歩く。
何も目的も無い、何と無く気が向いて歩いて居る男。
そろそろその行為に飽きたのか、家に戻ろうかと思い始めたその時に。
何かが話し始めて来た。
「そこの人。そこの人。私の声が聴こえますか?」
誰かがこちらに対して問い掛けをしてくる。
男は気になり、辺りを見回すが。
誰一人。男以外の人影すら見当たらない事に気付く。
「(誰だ……俺に話し掛けて来る奴は……)おい。さっき声を出した奴。とっとと姿を現せよ」
先程の声の主に男は粗暴な問い掛けをする。
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ここ迄で終わってます。続きを認めて行こうとした時に、冬が終わってしまい。
本当に続きが浮かばなく成ってしまって。今もそのままで置いて有る物です。
さてと。最後迄これをお読み下さった方、ありがとうございました。
それでは。また次に。