今回の試合は第一小隊と第十七小隊との対戦。
それは最古参の小隊と最新の小隊の戦いであり、事前人気の高い試合だ。実際、この試合の観戦チケットがかなりの額で取引されていたという話まである。
無論、これが機械ならば最新のシステムが性能がいいのは当然だが、これが人間ではその意味が異なる。
人間とは、経験によって成長する生命体だ。
逆に、経験不足では一部の天才を除けば、その力を存分に発揮出来ない。
だからこそ、現在第一小隊こそがツェルニ最強と呼ばれているのだった。
さて、第十七小隊と対戦する際、いずこの小隊に措いても鍵となるのはレイフォンなのは変わらない。
レイフォンが何人分の戦力として扱われるかは毎試合ごとに変わる、と定められている。
最低0から最大5まで設定されているが、さすがに0や5は滅多な事で出てくるものではない。選択は完全なランダムだが、それこそ100面ダイスで連続して1か100を出すぐらいの確率は必要だ。
この何人分の戦力として扱われるか、というのが結構な仕掛けになっている。
何しろ、それが伝えられるのはそれに関わる少数の生徒会員を除けば、レイフォン当人だけで、ニーナにも伝えられる事はない。
こうした処置には理由がある。
ツェルニで行われる小隊戦という観点で見るならば、事前情報は互いに持っていて当然の話だ。
だが、これが武芸大会となるとまた事情が異なる。
学園都市と学園都市同士が激突する武芸大会に措いては、対戦相手がどこになるかは直前まで分からない。当然、相手に関する情報など全くなく、汚染物質で都市間が遮られているこの世界では、迅速に相手に関する情報を収集するなどという事も出来ない。
こうした状況への対応能力を鍛える為と称して、はじめられた形式だった。無論、ニーナにも知らされていないのは、彼女の突発事態への対処能力を鍛える為だ。
他が第十七小隊を対戦相手とする事で鍛えられたのに、彼女には何もなしでは、差がついてしまう、という訳だった。
ちなみにこのレイフォンの『今回は何人分相当』。
次の一週間の小隊戦の勝ち負け予想共々、生徒会公認賭博の対象となっている。
無論、ブックメーカーがきちんと設立され、これらの賭博による収入は生徒会による都市運営費用の一環となっている。
『賭博にせよこうした行為はなくならない。それならばある程度は許可して、破産する者が出たりしないようコントロールするのが最善だよ』、という事だった。
実際、一度の賭けに対して使用可能なのは幾等まで、年間収入に対して幾等まで使用可能、ときちんと定められてもいる。
そんな試合の光景をカリアンがボックス席から見ている。この辺りは生徒会長の特権の一つだが、今日はそこに普段はいない同席者がいる。
サリンバン教導傭兵団の念威操者、フェルマウスだ。
そもそもハイアに直接声を掛けただけで、ハイアが納得するとはカリアンは思っていなかった。
ハイアはサリンバン教導傭兵団に入ってからは、ずっと鍛え、戦ってきた。
確かに、それは傍から見れば、『少し休みを入れるのもいいのでは?』と思えるかもしれないが、当人にしてみればどうだろうか?
『余計なお世話さ』
きっとそう思うだろう。
彼にとって、これまでの生活は別に苦痛であったとは思えない。人間、それが日常となれば自然とそれが当たり前になっていくものだ。当たり前の事にいちいち苦痛と感じる事はあるまい。ましてや、汚染獣との戦闘といっても団長となる程の腕を持つ彼の事、確かに先代団長でもあった義父を失ったのは辛い事だっただろうが、戦闘そのものは然程苦にしていたかは怪しい。
という訳で、カリアンは教導傭兵団の面々とも会談していたのだった。
無論、そこにはハイアの事だけならず、サリンバン教導傭兵団にこれ以上騒ぎを起こしてもらいたくないという思惑もある。それを避ける為に、カリアンは彼らと会話を行ったのだ。
曰く『グレンダンからの書状次第では、ここで貴方がたの旅の終焉となる可能性はある』
曰く『貴方がたは、その時グレンダンに帰ればいいと思うが、君達の団長はどうだろうか?』
曰く『彼としては抵抗感もあるのではないだろうか?』
曰く『彼はずっと戦い続けてきた、ここらで少し学生生活という休みを取るのも一つの選択肢として考慮に入れてもいいのじゃないかな?ああ、無論、落ち着いて考えてもらう、という意味合いもありますが』
そこにあるのは思考の誘導だ。
あくまでカリアン自身は仮定と提案という形で話を進め、押し付けるような物言いはしない。その上で、相手の心の奥底に眠っている疑念を起こしてゆく。
あくまで強制的なものではないと相手が思うように、あくまで自分達がそう考えているように思考を誘導してゆく。
それが彼らの心の奥底にあるものならば、尚の事誘導はしやすい。
その上で、カリアンの巧妙な所は即効で決める事を促したりはしなかった事だ。
『まあ、これらはあくまで、グレンダンからの返事が来てからの話です。その上で予想通りの事態になった場合、考慮に入れていただければ、と思うのですよ』
そう告げて、未練を見せず帰っている。
ある程度まで誘導した後は、後は彼らに話しあってもらい、決定してもらう。全てを彼の誘導の下に決定してもらっては、自分達で最終的な決断をした、という感覚が起きないからだ。
それでは意味がない。
あくまで彼らには『自分達の判断で決断』してもらわねばならないのだ。
ある程度の成功は収めたと判断しているが、その後の最終的な決定がどのようなものになったのかは、カリアン自身も知らない。
彼らの会話を盗み聞きするなどばれたら、彼らの心象を悪化させるだけでしかないし、気付かれる心配なく彼らの、優れた念威操者と武芸者を擁する集団の盗み聞きをするなどツェルニの武芸者には不可能だろう。
可能性のある者がいない訳ではないが、確信は持てないし、した所でリスクに見合うリターンがあるとは考えづらい。
とはいえ、その後彼らとの会談で幾つか彼らから提案という形で、ツェルニのシステム上の問題指摘があった所を見ると、少なくとも当面敵対行動は避けるという選択は選んでくれたみたいだし、こうした提案は先だっての事件に対する謝罪の意味合いも兼ねているという事だと判断すると、こちらの心象の改善を図ってきたという事は、頭から無視された訳ではないらしい、とカリアンは判断している。
彼らの指摘と以前から考えていた事を合わせて大きな変化を遂げる予定なのが、武芸大会に措ける作戦立案形式だ。
これまでのツェルニの作戦立案形式は、小隊対抗戦で最優秀の成績を収めた小隊指揮官が武芸長と共に総司令官となるものだった。第二位は副司令官となる可能性があったが、それ以下は例え三位という成績を収めようが、直接指揮に関わる判断は下せなかった。
これを大幅に改めた。
あくまで総司令官は結果如何に関わらず武芸長。
その下に直接のサポートをする形で、最優秀の成績を収めた小隊の隊長。もし、それが武芸長と同一の場合は第二位の成績を収めた小隊の隊長。ここまではこれまでと大差がない。
ただし、これはあくまで最終決断の責任者を明確にする為のシステム。
これまでと異なり、この作戦会議には各小隊の隊長と各小隊からもう一名が参加可能となっている。
また、これに加え、事前に行うシミュレーションテストの結果から作戦立案に優れた能力を有していると判断された人材が一般人、武芸者問わず合計十名が参加する事になっている。
何故か?
……個人の武芸者の力量と作戦立案能力は全くの別物だからだ。
例えば、レイフォンは武芸者の力量としては頂点に近い所にいる。
しかし、少なくとも現時点での作戦立案能力となれば、これはおそらく底辺の方が余程近いだろう。
ならば逆もあるのでは?
武芸者としての力量は未熟或いは低くても、作戦立案に関しては優れたモノを持っている者もいるのではないか。……そんな武芸者や一般人はこの世界では通常埋もれてしまう。
普通の都市に措いて、上に立つ者とは同時に優れた力量を持つ武芸者だ。
一般の武芸者として実績を上げ、その中から推薦で上へと上っていく。
だが、これでは当然、頭が良くても力が足りない武芸者は隊長クラス、或いは更にその上へと上る事は出来ない。上がる事が出来ねば、そうした能力が発揮される事もなく、更に言うならば、こうしたシステムが常識となっている都市では反論した所で負け惜しみと取られるのがオチだ。
サリンバン教導傭兵団がこうしたシステムの提案が出来たのは、それでも世界の自律移動都市の中には、こうしたシステムを持った都市が存在していた事。
傭兵団自体が家族同然という関係から、作戦を立てる際でも『構わないから気付いた事があれば、どんどん言え』という姿勢が築かれていた事などがある。
『船頭多くして船山に登る』という事態が起きてはいけないから、最終的な決定を下す責任者は明確にしておかねばならない。
だが、同時に『三人寄れば文殊の知恵』という言葉もある。少数の決まった方向性の作戦立案しか出来ないよりは、大勢の違う視点からの意見も出してもらった上で、最終的な決断を下した方が参加した者も納得するだろうし、いい案が出るだろう、と判断されたのだった。
こうした決定には、紆余曲折に反対意見も強かったが、一つには前第十小隊がどうして、あのような事態を引き起こしたのか、という反省や、次回の武芸大会は方法を選んでいる余裕はない、という点。そして、これまでは一位にならなければ無理だった作戦立案に自分達の意見も反映してもらえるかもしれない、という期待などが最終的な賛成へと繋がった。
無論、これらとは別に現在小隊対抗戦上位に位置し、一位を獲得する可能性の高い小隊、具体的には第一小隊、第五小隊、第十四小隊、第十七小隊らの賛同が得られた事も大きかった。
実際、いざ小隊の勝利や敗北の内容を分析してみると、初めて対戦する新規の小隊との対戦内容が勝ちはしたが、余りよろしくない小隊であるとか、初めて対戦する情報のない小隊との戦いとの成績が悪い小隊もあった。裏を返せば、それは情報分析には優れているが、情報がない状態では余りよろしくない……突発事態などには弱い事を示している。
この変更の結果、小隊対抗戦の意味合いもまた大きく変わった、変わらざるをえなかった。
これまでは一位になる事こそが武芸大会で指揮権に関与する手段だった。
だが、一位にならずとも指揮には関与出来るとなればどうだろうか?
無論、小隊がエリートであり、武芸大会では或いは指揮の中枢として、或いは先陣を切る役目を負う核として、或いは特殊部隊的な任務を遂行する部隊として不可欠なのは変わらない。
けれど、一位=総司令官というのが変わるとなると、小隊対抗戦で重要なのは上位の成績を収める事ではない。
むしろ、互いに自分達の引き出しを試す事、相互にお互いの実力を見せ合い相手を理解する事が重要になってくる。互いに研鑽を積み、新しい戦術を試し、それが間違っていたなら指摘し、或いは打ち破る事で間違いを示す。
まあ、こちらの方が都市を守る仲間としての有り様としては正常とも言える訳だが、これらが実現した背景にはレイフォン道場の存在もある。そこで協同で訓練を行っていたからこそ、ある程度は互いの情報を共有するという姿勢が自然と身についていたのだろう。
無論、実戦形式の試合が重要な事は変わらないので、それはそれとして試合は本気で行うが。
「さて、始まりますね」
カリアンのその呟きが合図となったかのように試合は始まった。
この試合におけるレイフォンは『二人分相当』。
ただし、ここで重要なのはヴァンゼ含めた第一小隊側の最強二名を抑えても、逆に最弱二名を抑えてもどちらも二人分。まあ、実際には第一小隊員の中に、そこまで明確な大差はないが。
ただ、ヴァンゼらはその『二人分』でレイフォンを食い止められる、という事は知らない。
ひょっとしたら『一名』で抑えられるかもしれない。だが、間違っていれば次々と倒されていく事になる。
最近はレイフォンには最低二名以上で当たるのが一般的だ。
二名で当たれば、『三名分相当』であっても、即座にはやられない。増援を派遣する時間がある。
無論、そこには二名以上を最初から割り振るのが困難という意味もある訳だが。
三名以上を割り振る小隊もあるが、その場合は劣勢の人数でどう迎え撃つか、或いは攻撃するかをしっかりと作戦を立てなければならない。それはそれで、小隊の実力を鍛える、という意味合いではもってこいだ。
ましてや、敗北したからとて、作戦会議には参加可能となれば、ここ最近では新しいフォーメーションや作戦を試してみる小隊も増加していた。もちろん、その結果上手く機能しなくて敗退した事もあるし、想定外のそれがばっちりと嵌って勝利を得た事もある。
それが重要。
確かに必勝のパターンを構築するのは重要だが、所詮それは小隊と小隊という小さな規模での有効な戦術。
何時か来る武芸大会、何時かあるかもしれない新たな汚染獣との戦い。
そこでの勝利を目指す事こそが、学園都市ツェルニの現在の住民のあるべき姿だ。
今回は第十七小隊が攻撃側。
フェリが後方に位置し、一方今回は前衛がレイフォン、ニーナ、ダルシェナにナルキ。シャーニッドは銃衝術で白兵戦闘もこなせはするが、これだけ十分な数の前衛がいれば、今回は後方支援だ。
戦闘フォーメーションとしては、ダルシェナを中心に置く鏃の形式。
ひし形の先端にダルシェナを置き、そこを突端として、敵陣に向い、その左右をレイフォンとニーナが固め、やや後方からナルキが追従する、という陣形になる。
ナルキがやや後方にいるのは、前の三人に比べると彼女の戦力が見劣りする、という事もあるが、それ以上に彼女が接近戦よりは捕り縄を活かせる中距離の方が向いているからだ。
一方、第一小隊側としては……。
「!左!」
瞬時に反応。
左の崖が崩れる。トラップを仕掛けられるのは防衛側の権限だが、次の瞬間には飛んだ反対側の藪がいきなり爆発する。
といっても、大規模なものではない。
むしろ……。
「煙幕か……」
煙で瞬間の視覚を奪う。
次の瞬間、第一小隊からの射撃が来る。それも爆裂形式の攻撃、端から命中精度は重視していない。とにかく、広範囲に対して攻撃を仕掛けるのが目的の攻撃だ。立て続けにおそらく正確な狙いなど行わずにただ煙目掛けて攻撃が行われる。
その光景を後方からシャーニッドは、しかし狙撃を行わずに見ていた。
「やってくれるなあ……」
つつ、と汗が頬を伝う。
実の所、これが第一小隊の狙撃手が行っているならば、シャーニッドは既に発砲していた。
だが、今、この砲撃を行っているのは第一小隊側の狙撃手ではない。そちらは未だシャーニッドと互いに隙を窺った睨み合いを続行している。
今、こちらが動けば、間違いなく次の瞬間にはシャーニッドが向こうの狙撃手にやられる。
では誰が、と言えば、第一小隊の他の面々……すなわちヴァンゼらだ。
狙いをつける必要はない、ただ煙の中に相手を分断可能な攻撃を加える事が出来ればいい。それならば、という事で第一小隊側は今回前衛の面々もまた射撃型の錬金鋼を持って試合に臨んでいた。
複数の錬金鋼を持つ事は違反ではない。
実際、第十七小隊でもニーナは二本の鉄鞭を、レイフォンは使わないとはいえ天剣・鋼糸用の青石錬金鋼・通常使用用の鋼鉄錬金鋼の三種類を、ダルシェナは騎兵槍とは別に細剣を、シャーニッドは軽金錬金鋼の狙撃銃の他に銃衝術用の黒鉄錬金鋼を、ナルキは打棒と捕り縄二種類の錬金鋼をという具合に、全員が複数の錬金鋼、複数の種類を所持している。
ちなみに、今回ダルシェナは細剣型の錬金鋼を柄に仕込まない形で保有している。理由は単純で、それを取り出してしまうと、騎兵槍は当然細剣を戻すまで使えなくなってしまうからだ。それは戦術の幅を縮めてしまう。
まあ……本当にいざという時の予備として残してはあるのだが。
だが、通常は前衛ならば接近戦闘型の錬金鋼を所持するのが普通だ。
前衛が射撃型の錬金鋼を持って、というのは珍しいというか奇襲の類だ。だが、今回、間違いなくそれは有効に作用していた。
回避を優先で、第十七小隊側は分断されていた。
煙が薄れた瞬間に、射撃型錬金鋼をその場に残し、ヴァンゼらは突撃する。
この砲撃の最中でも態勢を崩さず、即応態勢を取っていたのはレイフォンだけだが、飛び込んできた二名に拘束される。
更に、ニーナの前にはヴァンゼが、ダルシェナとナルキの前にも一名ずつが立ちはだかる。
ニーナにも焦りが内心に浮かぶ、当初考えていた陣形や作戦は第一小隊の奇手によって、バラバラだ。この状態では各個に対応するしかない。レイフォンもあの様子から見て、今回はおそらく『二名分相当』なのだろう、押されもしていないが、撃破も出来ていない、演技をしている。
そして、この状態では……不安要素がある。
「さて、しばらく付き合ってもらおうか」
そう告げ、棍を構える。
さすがに第一小隊長にして武芸長を無視出来る程、ニーナは自信家ではない。というより、全力でやっても勝てるかどうかは分からない相手だ。
ヴァンゼらの狙いは分かる。
第一小隊は全員が精鋭揃いだ。
レイフォンはいい。二名相当というなら、今の二名きっちり抑えてくれるだろう。
ダルシェナも問題ない。元第十小隊副隊長であった彼女ならば、対応は可能だろう。
問題はナルキだ。
彼女も十分に腕を上げている、小隊員としてはまだ未熟な所もあるが、上級生とて一対一ではそうそうひけを取るまい。
だが、第一小隊員と対戦するとしては彼女ではまだ力不足だ。
果たして何時までもつか……?
ニーナは内心の焦りを押さえ込む。焦って攻撃が荒くなって、それで勝てるような相手ではない。
「ふむ、これは第一小隊側の勝利かな?」
『そうなりそうですね』
無論、離れた所から見ているカリアンとフェルマウスは冷静に状況を判断していたが。
そして、結果から言えば、その通りになった。
まず善戦したが、ナルキがやられた。
煙に紛れて、接近戦の間合いまで踏み込まれては、捕り縄は満足に使えない。そうなると打棒のみで対応する事になり、防戦一方に追い込まれ、最後は殴りつけるような一撃で気を失った。
ナルキを倒すまで防戦に徹する事で、ダルシェナの攻撃を抑えきっていた相手も、そちらが片がついたと見るや、攻撃に出ようとする。後方からはナルキを片付けたもう一人が、ダルシェナから片付けようとしているのか、接近してくる気配が分かる。
かといって、フェリの念威は他の者が彼女に手を貸すのが困難な情勢も伝えてくる。
『こうなれば……』
瞬間、ダルシェナは所持していた細剣の錬金鋼を投げつけ、相手が怯んだ瞬間、騎兵槍を再度復元、一気に突撃をかける。
確かに今の現状は第十七小隊に不利。
だが、逆に言えば、相手側の狙撃手がシャーニッドとの睨み合いで動けない以上、ここを突破さえすれば、第一小隊のフラッグを守るのは、向こう側の念威操者のみ。
それならば勝機はあると踏んだのだが……。
「っ!?念威、爆雷……っ!」
煙幕が発生した瞬間に設置された為にフェリも間を突かれ、見落としていた。
それがダルシェナとフラッグの間に設置されており、そこへ見事に彼女は突っ込んだのだった。
以前ならば、ディンのワイヤーがそれを探知していただろうが、今彼はいない。
結果、爆雷で完全に勢いが削がれた所へ彼女を追っていた二名が追いつき、負傷した彼女もまた倒された。
やむを得ず、ニーナもまた雷迅にて逆転を図るも、ヴァンゼを倒しきるには至らず……。
ここで彼女はギブアップを選択した。
「……負けました。まさか、武芸長らが射撃を行うとは……」
「倒すのが目的ではないから、狙いはどうでもいいからな。煙の中に適当に撃ちこめばいいだけなら、あれで十分だ」
「……確かに」
「とはいえ、所詮奇手だ。無闇やたらと弾をばら撒いた所で味方を撃つのが関の山だからな。このような状況を作り、相手を倒す以外の目的で使うしかない」
「そうですね……今日はありがとうございました」
「ああ」
試合が終われば、先輩と後輩だ。
次は勝つ、と想いを新たにすると共に、戦術をもう一度勉強し直さなくては、と思う。
『いっそ、シャーニッドに教わるのも手かもしれないな。うん、一度全員で作戦の勉強会も行ってみるか……』
こうしたやり方もある。
それらを学び、いざ本番となった際に、活かさねばならない。折角、作戦会議に参加出来るのに、そこで何も出来ない、ただ他の者が作戦を構築していくのをただ聞いているだけでは、参加してもしなくても同じだ。
個人の強さは武芸者には必要だ。
だが、ただ武芸が強いだけが武芸者の強さではない。
レイフォンのような強者でない限り、武芸者は一人で雄性体の汚染獣に相対するのも危険だ。だからこそ、武芸者は隊を組み、危険をより減らして戦いに挑む。
汚染獣の持つのが獣の強さならば、人は集団としての強さを活かさねばならない。
だがまあ、とりあえずは……。
「とりあえずはシャワーを浴びて、反省会といくか」
そう呟き、ニーナは小隊の部下である彼らの方へと歩み寄っていった。
『後書きっぽい何か』
作戦システムの変更
正直、小隊戦で一位になったから総司令官、ってのは納得いかなかった
やるなら、各隊の隊長クラスぐらい集めようよ?きっちり決断を下せるのがトップにいれば、いいんだからさ
という訳で、新しいシステムにしてみました
要は、中世風のトップに権限集中方式ではなく、ナポレオンを打ち破った以後の参謀本部の形式を目指した訳ですが
最新刊15巻読みました
次回以降に続く激動の展開ですね
去る者、来る者
グレンダンでは色々な動きと不穏さも増してきて……
ツェルニでは思い切り積極的な行動に出つつあるフェリ。まさか彼女があんな事を言うなんて……!
引越ししたレイフォン。長年殆ど賃貸契約者のいなかった建物にレイフォン共々申し込んだのがまさか……!
カリアンらは卒業し、これでヴァンゼはもう出てきそうにないですね。しかし、カリアンが選んだ道は……!そして、再会したのがまさか……!どうやら、カリアンは今後もますますメインキャラの一人として活躍してくれそうです
そしてツェルニにもまた!
けど、自分としては、旧生徒会でもゴルネオが次期武芸長に一番相応しいと思われてたのが確認出来て、ほっ
っていうか、何ともえらい展開の15巻です
ちなみに、某人の親父さんまで登場しました。実に盛りだくさんの最新刊でした