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No.894の一覧
[0] 戯言遣いと魔眼の少年[素敵索敵](2005/09/11 11:04)
[1] 第一話「回想」[素敵索敵](2005/09/11 11:08)
[2] 第二話「遭遇[素敵索敵](2005/09/11 11:09)
[3] 第三話「交渉」[素敵索敵](2005/09/17 11:04)
[4] 第四話「帰路」[素敵索敵](2005/09/17 11:04)
[5] 第五話「帰宅」[素敵索敵](2005/09/23 20:21)
[6] 第六話「再開[素敵索敵](2005/09/23 20:22)
[7] 第七話「晩餐」[素敵索敵](2005/10/03 20:40)
[8] 第八話「存在意義」[素敵索敵](2005/10/10 18:16)
[9] 第九話「エゴ」[素敵索敵](2005/10/23 15:57)
[10] 第十話「死亡フラグ」[素敵索敵](2005/10/27 20:17)
[11] 第十一話「出会いはラブコメの如く」[素敵索敵](2005/12/10 18:58)
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[894] 第六話「再開
Name: 素敵索敵 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/09/23 20:22
人の記憶は不思議なものだ。

長い間離れていた人を思う時。

理性では分かっているはずなのに、

どうしても過去の記憶に引き摺られる。

目の前に現実があるのに、

思い出が認識を拒む。

よくある事だ。

つまり。

目の前にいた少女は、

本当に秋葉なのかと見紛うくらい、

美しかった。

第六話
「再会」

「あ、ああ。久しぶり、秋葉」
「―――?お久しぶりです、兄さん」

あまりにどもっていた所為か、秋葉は不思議な顔をした。
その仕草も可愛くて、正直直視し辛かった。
改めて、彼女を見る。
長い黒髪。
端正な顔立ち。
上品さが溢れ出ているようだった。
・・・どこぞの赤い女とは大違いだ。

思った途端に、横から殺気。
人の心が読めるのだろうか?

沈黙は気まずいので、話し始める。

「秋葉、この人は哀川潤さん。
 公園で倒れてた俺を介抱してくれた人。
 お礼がしたくて連れて来た」

一息で言った。
・・・後半二行は嘘だけど。
まあ、怒るか疑うかするとは思うけど。
出来る範囲で、潤さんを援護するつもりだ。
飽くまでも、出来る範囲で。

しかし、彼女は腫れ物を触るようにこう言った。

「ええと、あの・・・それで、体は大丈夫なんですか?」

「え?」

よく分からない。
貧血でよく倒れると、聞いていなかったのだろうか?
いや、そのせいで追い出されたようなものだっただろう。
知らないはずが無い。

「・・・・ですから、お体のほうは大丈夫なのか、と聞いているんです」

二回目は強い声で。
それでも、憂いを秘めた声で。
不可解だったが、同時に嬉しくも有った。
妹が、自分の身を案じてくれていると言う状況が。
そう、昔から秋葉はこういう奴だった。
いつも俺達の心配ばかりしていた。

秋葉が、親父に叱られそうな時。
俺は身代わりを買って出た。
・・・まあ、それが勘当に繋がったような節もあるが。

そんな時、いつもあいつは心配していた。
いや、叱られる原因を作ったのは、いつだって俺だったけど。

何だか昔を思い出す。
目頭が熱くなるのも近そうだ。
なので、強引に回想を止める。
流石に、人前で泣くのは憚られる。

秋葉の心配そうな顔が見える。
妹に心配させちゃいけないと思ったので、

「大丈夫。いつものことだから」

と、なるたけ朗らかに言ってみた。
これで心配要らないだろう。

が、

「そうですか・・・。」

と呟き、秋葉は更に落ち込んだようだった。

何故だろうか。
貧血って、それほどまでに憂慮すべき問題なのか?
というか、これは俺の所為なのか?

罪悪感を感じる暇も無く、

「志貴たんってば女泣かせ―」

などとほざくこの人を追い出したいと思った。切に。
というか、泣いてはいないのだが。
むしろ、泣くというよりは後悔とでも言った方が良さそうな雰囲気。
全く理由は分からないが。

それに、今気づいたことではあるが、
翡翠さんの様子もおかしい。
俯いて、何かに耐えているような様子。

―――当事者のはずだよな、俺?

さっぱり理由が分からない。
とにかく、この状況を何とかしなければ。

「大丈夫だって。それに、何も秋葉の所為じゃないだろ?
 落ち込むこと無いって」
「はい・・・。そう、ですね・・・。」

言う度空気が重くなる。
何故かテンションうなぎ下がり。
朝礼の校長スピーチよりもアンニュイだ。
そういえば、三回に一回は気絶してたっけ。

いや、そんなことを考えている場合ではない。

なんとかして状況を変えなければ。
思考する。
考えろ。
考えろ。
この状況を打開する策を――――――

そんな自分を尻目に、隣の女はやってくれた。

「おーいおいおい、どうしたんだ少年少女たち。
 ここはアレか?葬儀場か?青春の欠片も感じられないぜ?
 八年ぶりの再会なんだしもっとこう突然現れた赤い美女に対する質問とかその他諸々―――
 ってちょっと待て少年、何か用か?」

本当は関わりたく無かったけど。
というか、異様に朗らかだ、この人。
空気を読めていない。

「いや、意味がわかりません。残念ながら。
 ってか、最後の一文は何ですか?」
「それはアレだな、あたしのレベルに追いついてないんだな。
 早く追いつけ。そして追い越してみろ。
 っつーか、最後の一文の何処がおかしい?返答次第じゃ殺す」
「一生無理です。てか嫌です」

「・・・兄さん?」

遠慮がちな秋葉の声。
恐る恐る、といった形容が最も相応しいだろう。
加えてその上目遣い。ああもう可愛いなコンチクショウ。

というか、妹の前で今のやり取りってのもヘコむ。
次からはTPOを弁えたい。

「・・・色々と考えることがありましたので、つい考え込んでしまいました。
 では、気を取り直して。おかえりなさい、兄さん」

考え込んでいる、って様子じゃ無かったけど。
ともかく、今は一つでも秋葉の不安を減らしてやりたい。

「「ああ、ただいま」」

できるだけ明るく、そう言った。
二つの声が。

・・・何故あなたがそれを言うんですか?

「ん?ああ、ノリ」

なんだか念話でもしている気分だ。
秋葉も、状況が上手く飲み込めていない。
そりゃそうだろう。同じ声だったんだから。

と、話が一段落した様子を見て取り、翡翠さんが手を叩いた。

・・・翡翠さん、あんな位置に居たっけ?
確か、俺たちを先導した後、斜め後ろに佇んでいたような。

「では、ご夕食に致しましょう」

微笑みながら、朗らかに。

あれ?
こんな喋り方をする人だっただろうか。
というか、違和感が有り過ぎる。

確かめてみようか?
潤さんに聞こうとして、横を見た。

潤さんの斜め後ろ、
翡翠さんが居た。

「ッ・・・・・・・・!」
声も無く驚く俺。

「・・・・・・何してんだ?お前」
「い、いえ。ただ翡翠さんが二人居たので」
「・・・私は一人です、志貴さま」
「いや、そういう訳じゃなくてですね」

「それは私から説明しましょう!」

えっへん、と胸を張る偽翡翠さん(仮)。
胸はあまり無いけど。

てか、何故こんなにもテンションが高いのだろう。

「私はこの屋敷の使用人で、琥珀と申します。
 翡翠ちゃんの双子の姉なんですよ、これが!」
「・・・妹の翡翠です」

ああ、成る程。
何というか、性格は真逆といったところか。

というか、何故潤さんは分かったのだろうか?
パッと見、気づく要素は無かったと思うが。

「潤さん、なんで分かったんです?」

ストレートに聞いてみた。

「何故だと思う?」

聞き返された。

・・・さっき(坂道で)、『質問に質問で返すな!」とか言って
暴行されたのは気のせいだろうか。

にやにやと笑う彼女。
・・・絶対に意識してやっている。
いつか、ヘコましてやりたい。
無理だけど。

ともかく、二人を見比べる。

―――同じメイド服。
最高だ。・・・じゃなくて。

―――同じ髪の色。
可憐だ。・・・でもなくて。

―――同じ・・・では、ない――

「瞳の色?」
「ご名答」

満足げに頷く潤さん。
聞いていたのか、琥珀さんも嬉しそうに頷いている。

「瞳の色と名前が一緒なんですよ。生粋の日本人ですけどね」

嬉しそうにいう琥珀さん。
何だか、とても可愛い。

・・・翡翠って、何色だったっけ?
というか、翡翠って宝石だよな・・・?どんなのだっけ?

と、確認しなくとも分かる、皮肉気な笑いが横から。
いや、これは完全に見下した笑い方だ。
―――本当に、読心術の使い手なのか?

「さて、それじゃあお夕食にしますので、こちらへどうぞ」

朗らかにいうと、琥珀さんは食堂と思しき部屋へ向かった。
居間に居る自分たちも、移動を始める。

と、話にしばらく参加していなかった秋葉が眼に留まった。
どこか、嬉しそうな顔をしていた。

―――帰ってきて、良かったと思った。

食堂へ向かおうと、歩き始めたときに、
潤さんに呼び止められた。

「待て」

なんだろうと思い、彼女の顔を見る。
何か、ボコられるようなことでもしただろうか?
少なくとも、屋敷に入ってからヘマはしてないと思う。

「お前、さっきの琥珀の目の色、見えたのか?」
「・・・見えたのか、って?」
「だからさ、お前眼鏡だろ?視力悪いんじゃねーのか?って。
 翡翠はともかく、琥珀は結構遠かっただろ」
「ああ、実はこれ、伊達眼鏡なんです」

一瞬どきりとするが、落ち着いて答える。
眼のことは、言えない。
デーブ某よろしく、少し眼鏡を浮かす。

「ふーん、そうか。分かった、ありがとう」

考え込むように佇む彼女。
それを背にして、食堂へと向かう扉に相対した時。

「・・・ところでさ、最近冷えてきたよな」
「はい、そうですね。でも、それが?」

首だけ捻って問い返す。

「いや、なに。この屋敷ってさ、結構暖房炊いてるじゃん?」
「そういえば、かなり暖かいですよね」
「そこでだ。お前の眼鏡、結露しただろ?」
「・・・ええ」

何を言わんとしているのだろう?

「あたしはさ、眼鏡は掛けないけど、グラサン掛けることがある。
 で、当然寒い日は曇るわな。
 結露して曇ったときって、そのままにはしない人が多いと思うんだよ。
 まして伊達だろ?外しゃいいのに」
「俺は割と平気ですよ、そういうの」
「そーなんだ、ならいいや。時間使わせて悪かったな」
「いえ。潤さんも、早く来てくださいね」
「あいよ」

・・・結局何が言いたかったのか?

満足したのか、大きく伸びをしてから彼女は言った。
それを見て、また歩き始める。

「それとも、眼鏡自体を外せない理由―――か」
「―――え?」

振り返ったときには、彼女の姿は無く。
もう、扉を抜けるところだった。
今の間抜けな声は、肯定も同然だろう。
というか、カマを掛けられたようなもの。

ああ、このやり方。

適当に質問しておいて、最後に核心を衝く。

刑事コロンボか貴女は、と思った。


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