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No.894の一覧
[0] 戯言遣いと魔眼の少年[素敵索敵](2005/09/11 11:04)
[1] 第一話「回想」[素敵索敵](2005/09/11 11:08)
[2] 第二話「遭遇[素敵索敵](2005/09/11 11:09)
[3] 第三話「交渉」[素敵索敵](2005/09/17 11:04)
[4] 第四話「帰路」[素敵索敵](2005/09/17 11:04)
[5] 第五話「帰宅」[素敵索敵](2005/09/23 20:21)
[6] 第六話「再開[素敵索敵](2005/09/23 20:22)
[7] 第七話「晩餐」[素敵索敵](2005/10/03 20:40)
[8] 第八話「存在意義」[素敵索敵](2005/10/10 18:16)
[9] 第九話「エゴ」[素敵索敵](2005/10/23 15:57)
[10] 第十話「死亡フラグ」[素敵索敵](2005/10/27 20:17)
[11] 第十一話「出会いはラブコメの如く」[素敵索敵](2005/12/10 18:58)
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[894] 第五話「帰宅」
Name: 素敵索敵 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/09/23 20:21
八年間、想い続けていた。

自分には無いものを持つ少年。

楽しそうに駆け回る姿。

それを見るだけで、心が満たされた。

けれど、彼は突然居なくなった。

しばらくして、帰ってきた少年。

そして、彼は家を去る事になる。

何の意味も無かったかも知れないけど、

リボンを、彼に手渡した。

あの場所で。

その時、私は、

―――再会を、信じていたのだろうか?

第五話
「帰宅」

「うわぁ・・・これは・・・」
「メイドか・・・。ご近所様に見られたら困るな」

思わず呟く彼と彼女。
視線の先には少女inメイド服。
微動だにせず、門の前で佇む彼女。

既に日は落ちかけている。
それでも、この少女を視認するのは難しくない。
これがいつもの事なのか、今日に限った事なのかは分からない。
前者なら、ご近所さんはどうしているのだろう。

「・・・世間体とか、どうなんでしょう」
「さあな。お金持ちだから良いってことかも」
「いや、良いってことはないと思いますけど」
「ん?ああ、こーいうの慣れてないのか?志貴たんは」

仕事柄、多くの世界を見てきた彼女。
メイドくらい腐るほど見てきた。
これほど奇妙な状況は除いて。

「ええ、まあ。慣れてないといえば全く。でも、」
「でも?」

一拍おいて、彼は言った。

「嫌いじゃないですよ、こういうの」

爽やかな顔に、どこか寂しさを含ませた眼。
一陣の風が吹き抜けるような、そんな台詞。
言うタイミングによっては、名言に成り得た台詞だった。
今この場で言ってしまったのが悔やまれる。

「ちょ・・・おま、正気か?」
「いや、完全に正気ですけど何か?」
「お前、昔からこういう趣味があったのか・・・?」
「いえ、全く」
「そうか。天賦の才能ってやつだな」

彼女は思う。
どうしてこう、一見まともな奴に見えてどこかブチ切れた人間ばかりなのか。
まあ、職業柄仕方が無い事だ。
もとより、完全に正常な人間と会えるとは思っていない。
今は仕事中なのだから。

ちなみに、やり取りの間中、彼は目を離していない。

どこか遠い目をした二人に、彼女は目を移す。
どうやら、彼らに気づいたらしい。
表情を全く変えず、彼女は言った。

「志貴さまでございますか?」

メイド服の少女が
敬語で
自分の名を――――――

別世界にトリップする少年。

「ああ。志貴さまで間違いない」

呆ける少年に代わり、彼女は言う。
少女は顔を曇らせる。
あまり表情には出さないけれど。

「あの、失礼ですがどちら様でしょうか?」

無闇に堂々とした不審者に、彼女は言った。

「ん?ああ、あたしか。
 こいつが公園で息絶えてたのを救った通行人」
「いや、死んでませんよ」
志貴、復活。
「何言ってんだお前。あたしの処置が数十秒遅れてたら死んでたぞ」
「・・・何もしてないじゃないですか、あんた」
「あれ?バレてる?」

どさくさに紛れてあんた呼ばわりしてみた。
何も無く切り抜けられて、少し感動する少年。

しかし、そんなやり取りにもメイド少女は表情を崩さず、

「・・・お話は済みましたか?」

静かに、そして苛立たしげに。
しかし、顔には出さず、
間髪入れずに彼女は言った。

思わず顔を向き合わせる二人。
しゃがみこみ、小さな声で作戦会議。

それこそ、ご近所さまには見られたくない不審さだった。

「(まずいぞ志貴たん、何か怒ってる)」
「(いや、十中八九哀川さんのせいですよ)」
「(どさくさに紛れて苗字で呼ぶな殺すぞ。
  ともかく、お前がメイド服見て呆けたのがやばい)」
「(な―――、だ、だってしょうがないじゃないですか。
  こんな完璧な、パーフェクトジオングみたいな娘がいるなんて)」
「(しかも赤髪。萌え?)」
「(いや、それは関係ないと思います)」
「(我慢すんなよ。素直に潤さん萌えって言え)」
「(神に誓って言いません)」
「(いい度胸だな、小僧。
  それは一度死んでみたいってことか?ぁあ?)」
「(くっ・・・・、でも、脅しには屈しませんよ。
  それだけは譲れません。男として)」
「(・・・お前、案外暗い奴だな。さっきも思ったけど)」
「(いきなり冷めないでくださいよ・・・)」

「(お話は済みましたか?)」

「「!?」」

声の主を見る。

始まりが突然なら、終わりも突然。
秘密会議は、突然の侵入者によって幕を下ろした。

しゃがんで向き合う二人と、
それを至近距離で見下ろす少女。
何時の間にか接近していたようだ。
音も無く。

中々やるな・・・などと呟く女を無視し。
定位置に戻り、少女は言った。

「遠野志貴さまと、哀川潤さまですね。
 では、屋敷にお連れします」

何事も無かったかのように、彼女は言った。
そのまま背を向け、屋敷へと歩いていく。
彼女の名前が分かったということは、かなり最初のほうから聞いていたのだろう。

事態は上手く進行してはいるのだが。

「・・・なあ、普通、疑うとか、なんかさ、あるよな」
「ええ。普通は、ですけど」

首も動かさずに二人は言った。
とりあえず、彼女は普通ではないのだろう。

以上なのはお前もだよ、と心の中で呟く彼女。
まあ、こういう人間を始めて見た訳じゃない。

まあいいか、と声に出して歩き出す彼女。
それに続く少年。

少年は思う。
八年ぶりの帰宅は、感動に満ち溢れては居なかった。
何と言うか、もっとこうあるんじゃないかな?
と、取り留めの無いことを考えてもみる。
でも結局なるようになるさ、と自分に言って、玄関を抜けた。

夕方の冷気は体を離れ、
体を包む柔らかな暖気。

八年ぶりの家は、とても普通で。
そしてやはり、余所余所しい感じだった。
しかし、記憶にあまり残っていないとはいえ、
ここが自分の実家なのは事実。
そして、あの思い出の場所だということも。

少年が感慨に耽っていると、少女が反転し、言った。

「申し遅れました。私はここの使用人で、翡翠と申します。
 以後、お見知りおきを」

居間へとお連れします、という彼女。
流れるように言い、彼女はまた前に向き直る。

それに対し、
気の利いたことも言えず、生返事を返す少年。
―――なんて、無様。

「・・・お前、今物凄く格好悪い」
「・・・でしょうね」

更に追い討ち。

彼女の一挙一動に、少年の心は動かされっぱなしだった。
―――しょうがないじゃないか、可愛いかったんだから。

とはいえ、いつまでも呆けているわけにはいかない。
覚悟を決めて、居間へ入る。

「・・・お久しぶりです、兄さん」

妹が、其処に居た。


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