ほぼ一定の間隔でガタン、ガタンと電車が揺れる。向かい側の席にはいつも通り"彼女"が座っている。
川島幸(カワシマサチ)。俺と同じクラスで、今風のストレートな黒髪と品の良い軽いメイクをした女の子。
一見どこにでもいる普通の女子高生の川島さん。でも実は少し変わっている。
『○○駅、○○駅』
ドアが開く。
「あ、川島、おはようー」「……」
そう、彼女は誰とも口を聞かないのだ。学校でも授業や教師との最低限な会話しかしない。
「無視かよ、うぜー」
「A子、川島なんかかまってないで座ろう」
もちろん友達なんていないだろう。寧ろ、みんな彼女を嫌っている。
突然、川島さんが席を立つ。そして、ドアのすぐ端に座っている俺の横に移動した。
不思議に思っていると、おばあさんが川島さんにお礼を言っていた。席を譲ってあげたようだ。
「へぇー、えらいな」
俺がそう言うと、隣で立っている川島さんは一瞬視線を向けて来たが、すぐにまた外を向いてしまった