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No.8853の一覧
[0] オリジナル転生物(題名は続きを上げてから変更予定)[凛](2009/05/18 04:26)
[1] 2話[凛](2009/05/25 13:48)
[2] 4歳の秋[凛](2009/07/10 17:15)
[3] 7歳の夏[凛](2009/07/11 15:37)
[4] 7歳の秋[凛](2009/07/11 15:42)
[5] 7歳の秋 後編[凛](2009/07/13 00:56)
[6] 7歳の秋 2前編[凛](2009/07/15 22:02)
[7] 7歳の秋 2後編[凛](2009/07/19 16:36)
[8] 7歳の冬[凛](2009/07/23 21:36)
[9] 7歳の冬 2[凛](2009/07/27 12:38)
[10] 8歳の春[凛](2009/07/28 12:53)
[11] 8歳の春 2[凛](2009/07/29 12:09)
[12] 8歳の春 3[凛](2009/07/29 19:22)
[13] 春の収穫祭にて[凛](2009/08/21 16:38)
[14] 8歳の初夏[凛](2009/07/30 20:01)
[15] 8歳の初夏 2[凛](2009/07/31 15:59)
[16] 8歳の夏[凛](2009/08/01 22:11)
[17] 8歳の夏 2[凛](2009/08/02 15:33)
[18] 8歳の夏 3[凛](2009/08/03 00:38)
[19] 8歳の夏 4[凛](2009/08/03 15:30)
[20] 8歳の夏 5[凛](2009/08/04 10:57)
[21] 8歳の秋[凛](2009/08/04 21:52)
[22] 8歳の秋 2[凛](2009/08/05 23:25)
[23] 秋の収穫祭にて[凛](2009/08/06 20:29)
[24] 秋の収穫祭にて 2[凛](2009/08/07 17:54)
[25] 8歳の冬[凛](2009/08/09 23:03)
[26] 8歳の冬 2[凛](2009/08/09 23:02)
[27] 8歳の冬 3[凛](2009/08/10 13:44)
[28] 8歳の冬 4[凛](2009/08/11 17:33)
[29] 8歳の冬 5[凛](2009/08/12 17:52)
[30] 8歳の冬 6[凛](2009/08/13 12:03)
[31] 8歳の冬 7[凛](2009/08/14 14:18)
[32] 9歳の春[凛](2009/08/15 03:47)
[33] 9歳の春 2[凛](2009/08/15 17:17)
[34] 9歳の春 3[凛](2009/08/17 16:52)
[35] 9歳の春 4[凛](2009/08/17 16:51)
[36] 9歳の春 収穫祭[凛](2009/08/19 16:13)
[37] 9歳の夏 [凛](2009/08/21 16:38)
[38] 9歳の夏 2[凛](2009/08/23 00:05)
[39] 9歳の夏 3[凛](2009/08/27 20:18)
[40] 9歳の秋 [凛](2009/09/05 07:16)
[41] 9歳の秋 2[凛](2009/09/05 07:16)
[42] 9歳の秋 収穫祭[凛](2009/10/13 16:35)
[43] 9歳の秋 収穫祭 2[凛](2009/10/13 16:36)
[44] 9歳の秋 収穫祭 3[凛](2009/10/13 16:07)
[45] 9歳の秋 収穫祭 4[凛](2009/10/19 00:50)
[46] 9歳の秋 収穫祭 5[凛](2009/10/22 17:59)
[47] 9歳の冬[凛](2010/01/03 00:14)
[48] 9歳の冬 2[凛](2010/01/26 16:25)
[49] 設定集[凛](2009/08/31 23:09)
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[8853] 9歳の冬
Name: 凛◆8705ab0d ID:8b0a96ee 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/03 00:14


     9歳の冬




親族の尽力により建てられた私の住まいは、窯で生活を始めて1週間もしないうちに出来上がった。

その間に私がしていたことといえば、全力で食料集めである。

私の財産は、鍛冶工房で作ってもらった幾らかの道具類と、木の実の詰まった袋くらいのもので、生活は可能であるが豊かな生活というものは望めないのだ。

家畜は家族たちの物であり、ヤギからとれる乳等を今後摂取することが出来ない以上なんらかの形でその栄養を補う必要がある。

というのは建前で、配給される穀類等だけで生活するのは味気ないのだ。

冬が近づいてきているとはいえ、まだ林に入れば幾らかの秋の恵みを拾い集めることも可能であるし、ウォルフやウィフの散歩兼餌狩りも出来るという一石二鳥なのだからして。

やるべきことが多いのは確かなのであるが、私はどうも気になり始めると止まらない性格をしているらしく、かつての井戸掘りの時のように一日中そればかりをしているような行動を取り始めるとなかなか止まらない。

何をやるにしても最低限の食料を貯蔵してからじゃないと、生産的な思考ができない。余裕のある生活があってこそ、文化的なナニカは生まれ出るものであるというのは間違いではない。日々の生活に困窮する切羽詰った人間が、生活をする以外の思考ができないように。

そして一人暮らしをする以上遊んでいても食事がでてくるような生活が送れるわけも無く、林に分け入って木の実や食べられるキノコ等を探して回っているというわけである。

ちなみに、木の実探し等にもそれは発揮されて、窯に暮らし始めて1週間が経過するころには寝る場所しかスペースが無いほどに窯の中に木の実の山が積み上げられた。止まらない性格といっても一長一短である



出来上がった家は、従来の住居となんら変わらぬ泥壁萱屋根であった。

玄関に木戸は無く、入り口用に切り取られた穴から家の中に入ると、10畳くらいの広さの1ルームである。

何も無い。・・・いや空間だけがある

生活を彷彿とさせるものが何も無く、部屋の中央に屋根を支える柱が据えられており、微妙に邪魔に見えなくも無い。

泥壁はまだ乾ききってはいないようで、土臭さが香るこの家が、今後の私の住居になるのだな。と、妙に感慨深く思った。



それから1ヶ月は瞬く間に過ぎた。

林に分け入って焚き木を拾い集め、薪を作るのによさそうな木々を伐採して、ウォルフに手伝ってもらいながら家に持ち帰り、家の中で調理するために竈を作るために粘土を取りに行ってレンガを作り、竈を作って、ついでに冬を過ごすために暖炉を作ったところで


風邪をひいた。


考えてみれば当たり前の事である。

一ヶ月休むことなく働きつめ、林を駆け、村を駆け、誰も止める者がいないとくれば、いつかはガス欠を起こすに決まっている。




ケホケホと咳をしながら、暖炉の前に座り込んで火を眺める。

暖炉に薪をくべながら、パチパチと爆ぜる薪の音をBGMにウトウトしていると、今日もそれは現れた。

黒い鳥である

もはやこの奇怪なナニカが現れることに対して、なんの感慨も浮かばなくなって久しい。

分かっていることは、夜になると現れる。光が無くても姿かたちを認識できる。特に何かをすることもない。

という3点だった。

最初の頃は、ソレに対して理不尽な気持ちをぶつけようと石を投げてみたり土を投げてみたりしていたのだが、ソレは実体を持たないかのごとく投げつけたそれらを尽くスルーしてくれるうえに、こちらが行なう拒絶の反応に対してなんら行動を起こさなかったがために、もはや達観の領域に達した私は逆にスルーをしかえしてあげるという行動を取ることにした。

第三者が見ていたら、癇癪をおこしている子供にしかみえないことに気がついて恥ずかしくなったというのもあるが。



ただ、昼間は現れることもない。

それがそこにいるという感覚は視覚で感じることができるし、目を閉じて眠っている時も家の中にいるのは感じる。

そしてこれは重要なことだと思うのだが、夜になると現れるのであって、常に私の近くにいるわけではないということだ。

何がしたいのか意味不明すぎて困る。

現れ方もいくつかバリエーションがあり、壁から黒い影が染み出すように現れることもあれば、普通に玄関の木戸から染み出すように現れることもあり、時には屋根の上から降りてきたと感じるように上から現れることもある。

そして、決まったことのように屋根を支える柱の袂に落ち着いて、私を眺めている雰囲気だけが伝わってくるのである。

どうしろというのかこれ

ウォルフもウィフもそれを感じることはない、見えているのも感じているのも私だけのようで、たまにソレに重なるように彼らが眠っている時などをみると微妙な気持ちになったりもする。



身体がだるくてしかたがないうえにすることもないので、麦茶?を啜りながら今日もソレを観察するのであるが、今日のソレは何かがいつもと様子が違うようだった。

暖炉の前をキープして温まっているウォルフを背もたれにして、寝転びながら様子をみていたのであるが、柱の袂に落ち着いて私のほうを一瞬眺めた後に、翼を広げたと思った直後に急速上昇して飛び去っていった。

むしろアレは形が鳥なだけに飛ぶのか、それとも実体を持っていないはずなので、見たことは無いが幽霊のように浮くのであるか?といった疑問が氷解した瞬間である。

翼を広げて羽ばたきながら飛んでいったという見解が正しいと思われる。

ただし、物質的な質量を持っていないので羽ばたいた反動で風が起こることは無かった。

だとすると、飛ぶのに羽を広げるが、実際は浮いているのであって、飛ぶのに羽を広げる必要は無いはずである。鳥が羽ばたくのは飛ぶためであって、浮くことができるのならその必要は無いはずだ。

ぼんやりする頭で思考ループに陥りながら、伸ばした足の上に乗ってきたウィフの背中を撫ぜていた。

片手に麦茶の入ったカップを揺らしながら、暖炉の火が放射する遠赤外線効果で暖まっているウィフの背中を撫ぜながら、これでウィフが猫だったらどこぞの悪役貴族に見えないことも無いだろうなと考えていた。







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