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No.8836の一覧
[0] 【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました【チラ裏より移転】[ちーたー](2016/12/24 22:35)
[1] 第一話『白い部屋』[ちーたー](2009/05/23 21:10)
[2] 第二話『出撃準備』[ちーたー](2011/04/04 01:50)
[3] 第三話『初陣』[ちーたー](2009/05/23 21:10)
[4] 第四話『交渉』[ちーたー](2009/05/23 21:11)
[5] 第五話『食料調達』[ちーたー](2009/05/23 21:12)
[6] 第六話『対BETA戦闘(初陣)』[ちーたー](2009/05/23 21:14)
[7] 第七話『BETA=資源』[ちーたー](2009/05/25 21:21)
[8] 第八話『新仕様発覚』[ちーたー](2009/06/01 01:56)
[9] 第九話『コマンダーレベル』[ちーたー](2009/06/08 03:00)
[10] 第十話『新潟戦線チートあり 前編』[ちーたー](2010/01/11 01:46)
[11] 第十一話『新潟戦線チートあり 後編』[ちーたー](2009/06/17 02:43)
[12] 第十二話『鳴り止まない、電話』[ちーたー](2009/07/07 02:38)
[13] 第十三話『月月火水木金金』[ちーたー](2009/07/18 22:31)
[14] 第十四話『三周目白銀武颯爽登場!』[ちーたー](2009/07/20 03:17)
[15] 第十五話『2001年度第二次新潟防衛作戦(チートもあるよ!)前編』[ちーたー](2009/07/20 03:18)
[16] 第十六話『2001年度第二次新潟防衛作戦(チートもあるよ!)中編』[ちーたー](2009/07/20 03:15)
[17] 第十七話『2001年度第二次新潟防衛作戦(チートもあるよ!)後編』[ちーたー](2009/08/14 00:56)
[18] 第十八話『査問会』[ちーたー](2009/09/24 00:56)
[19] 第十九話『新潟地区防衛担当者』[ちーたー](2010/01/11 01:48)
[20] 第二十話『佐渡島奪還準備』[ちーたー](2009/11/19 02:09)
[21] 第二十一話『出師準備』[ちーたー](2010/01/01 02:20)
[22] 第二十二話『上陸』[ちーたー](2010/01/17 21:36)
[23] 第二十三話『横槍』[ちーたー](2010/01/15 23:24)
[24] 外伝1『とある合衆国軍将校の証言』[ちーたー](2010/01/17 21:36)
[25] 第二十四話『決戦!佐渡島ハイヴ 前編』[ちーたー](2010/02/15 01:51)
[26] 第二十五話『決戦!佐渡島ハイヴ 中編』[ちーたー](2010/03/21 10:51)
[27] 第二十六話『決戦!佐渡島ハイヴ 後編』[ちーたー](2010/04/06 00:44)
[28] 第二十七話『LevelUp』[ちーたー](2010/05/17 01:40)
[29] 第二十八話『遠足』[ちーたー](2010/05/24 01:48)
[30] 第二十九話『敵襲』[ちーたー](2010/06/14 01:43)
[31] 第三十話『反撃』[ちーたー](2010/07/18 06:35)
[32] 第三十一話『諜報担当者爆誕!』[ちーたー](2010/09/03 01:01)
[33] 第三十二話『状況開始』[ちーたー](2010/12/23 17:14)
[34] 第三十三話『戦闘開始』[ちーたー](2011/01/04 22:25)
[35] 第三十四話『防空戦闘開始』[ちーたー](2011/01/14 22:21)
[36] 第三十五話『戦場の情景 1』[ちーたー](2011/04/04 01:51)
[37] 第三十六話『戦場の情景 2』[ちーたー](2011/04/04 00:29)
[38] 第三十七話『戦場の情景 3』[ちーたー](2011/04/26 01:57)
[39] 第三十八話『宇宙での密談』[ちーたー](2012/01/04 21:46)
[40] 第三十九話『終わらない会議』※2/5 14:30一部修正[ちーたー](2012/02/05 14:29)
[41] 第四十話『最後の会議』[ちーたー](2012/02/13 00:53)
[42] 第四十一話『反撃!』[ちーたー](2012/02/23 23:11)
[43] 第四十二話『応戦』[ちーたー](2012/07/05 00:11)
[44] 第四十三話『ユーラシア方面作戦』[ちーたー](2013/05/14 00:02)
[45] 第四十四話『決戦兵器』[ちーたー](2016/08/26 00:35)
[46] 第四十五話『喪失』[ちーたー](2020/08/31 00:40)
[47] 第四十六話『物量』[ちーたー](2017/09/05 02:19)
[48] 第四十七話『桜花作戦の現在』[ちーたー](2020/08/31 01:09)
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[8836] 第三十九話『終わらない会議』※2/5 14:30一部修正
Name: ちーたー◆7e5f3190 ID:84a555e7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/05 14:29

2002年1月9日水曜日16:02 日本帝国佐渡島 本土防衛軍第66師団本部 第二テレビ会議室

「えー、以上のとおり概略をお伝えいたしましたが、なにか質問はございますか?」

 三時間に渡る大量の報告を終えて、俺はご臨席の皆様に質問した。
 何も質問はない。
 それはそうだ、この先をやりやすくするために、幾度と無く練習を繰り返した上でこの会議に望んでいる。

「よく練習してきたようですね」

 笑顔でそう言ったのは、日本帝国本土防衛軍代表代理として参加してる第十四師団長だった。
 しかし恐ろしい政治力である。
 世界中の利害関係を調節する場に、たかだか師団長程度の立場で参加を許されるとは。
 ただ有能なだけでは到底不可能な仕事ぶりである。
 その立場を与えられるだけの何かがあるのだろう。

「人類の一員として言わせていただくと、ハイヴを落としてもらったことには何の異論もありません。
 そもそもが、こちらの要望で無理やり強行偵察をしてもらっている以上、結果がどうなったとしても我々に何かが言えるとは思えません」

 どうやら、彼は明らかにこちらを擁護する立場にたってくれているようだ。
 まあ、実際に8492戦闘団は人類に対して明らかに貢献している。
 世界各地の戦場に無償で増援と補給物資を提供し、ハイヴを落とし、大陸への橋頭堡を確立した。
 今までの人類の苦戦は何だったのかと問いたくなるような仕事ぶりだ。
 この貢献を無視されれば、こちらとしては実にやりがいがない。

「ありがとうございます。
 さて、あたり前のことですが、ハイヴを一つか二つばかり落として満足できるような状況に人類はおりません」

 俺の言葉に全員の視線がこちらを向いた。
 さあ、最終決戦をはじめよう。

「今回の作戦は、ある目標を達成するために行いました」

 あえて勿体ぶった表現をする。
 おお、アメリカ軍大将閣下が明らかにいらついた表情を浮かべているな。

「ほう、それでは何が君の目的なのか、聞かせてもらおうじゃないか」

 彼の質問は当然のものだ。
 そして、俺はこの言葉を引き出すためだけに不明瞭な表現をあえて行っていた。
 勝手にペラペラと喋り倒すのでは顰蹙しか買えないからな。

「ありがとうございます。それでは説明させていただきます」

 今回の説明用にわざわざ用意させた巨大なモニターを背景に、笑みを浮かべた俺は言葉を続けた。
 照明が消され、別の資料データが全員の手元に送信される。
 背後のモニターに特に意味はない。
 何度も繰り返しになるが、趣味なんだよ。

「ハイヴは残念なことに地球上に多数残されています。
 これを1つずつ潰していくというのも方法の一つではありますが、BETAたちの学習が予測されるという問題点があります。
 ああ、もちろん最終的には全て破壊しなければならないということは理解していますよ」

 本当であれば、このような会議はすっ飛ばして早々にオリジナルハイヴを破壊してしまいたいところだ。
 準備ができたら直ぐにオリジナルハイヴを落とす。
 いわゆる読者の視点としては当たり前すぎて説明が不要なレベルなのだが、この世界の人々にはその解に至る経緯がまだ明かされていない。
 確かに、これだけ人類を苦しめたBETAが地球上ではたった一つの司令部で動いており、それを破壊すればこれ以上の学習は防げるなどという事は予想の範囲外だろう。
 まあ、元の世界の創作物に馴染んだ日本人たちであれば「ああ、悪の組織って大体ボスを倒せば終わりだよね」と変に納得してくれるかもしれないが。

「それはもちろんそうだ。
 だからこそ、我々は間引き作戦一つに対しても十分な検討を重ねた上で作戦を実行していた。
 今回のようにいたずらにBETAへの攻撃を行う行為は、長期的には悪影響を及ぼす危険性が十分にあることを君は理解していなかったのかね」

 規模はさておき通常戦力だけでハイヴを落としたことがよほどお気に召さなかったらしい。
 いや、8492戦闘団だけでやってしまったことが気にくわないのか。
 合衆国軍大将閣下は俺の言葉尻を捕まえて攻撃を試みている。

「ですから、今回の作戦は通常戦力のみで実施したのです。
 そして、次もそうしようと考えておりますが、ああ、ソ連邦の代表者の方はいらっしゃいますか?」

 別に俺が会議の参加メンバーを把握していないのではない。
 国連軍参謀本部では重要度に応じて発言権がない傍聴が認められており、この会議はそうだっただけである。
 マイクのスイッチが入れられる独特の音が鳴り、誰かの咳払いが聞こえる。

「ソビエト連邦中央軍事会議のスタニスキー陸軍元帥だ。
 諸外国との共同作戦の調整を担当している」

 中央軍事会議のメンバーとはまた大物が出てきたな。
 俺の世界の知識で合っていれば、彼の役職は陸軍総司令官にして、有事の国家意思決定機関である中央軍事会議の参加メンバーという事になる。
 この世界のソ連は崩壊どころの騒ぎではない状態だから、国の規模からしてそんな彼でも傍聴しか許されないんだろう。

「はじめまして元帥閣下。
 早速ですが、H25とH26のハイヴは貴国領土内にあるわけですが、これを攻略する許可を頂けませんでしょうか?」

 俺の言葉に、元帥のマイクの向こうに広がるざわめきが入る。
 万が一の誤解も無いように補足を入れておこう。

「もちろん、他国に被害がでないように我々の戦力だけで行います。
 BETAの反撃に備え、十分な予備戦力をもたせ、さらに貴国と合衆国の許可があれば作戦終了までアラスカに軍団規模の防衛部隊を配備することも吝かではありません。
 それと、誤解なきように先に説明させて頂きますと、核兵器およびその他特殊兵器は一切使用しません」

 マイクの向こうのざわめきは更に大きくなる。
 ありえない、とか、いや彼らならば、など、意味の分かる言葉まで拾っている。
 まずいな、何か誤解されているぞ。

「ああ、誤解しないで下さい。
 占領して陣地を作るのではなく、この先に説明する作戦のために攻略する必要があるだけです。
 我々は攻略完了後は一ヶ月もしないで前進してその場を去りますよ。
 もちろん、それにあたって何か我々にご要望があれば、可能な限りは受け入れるつもりです」

 あまりにも周囲の雑音が大きくなりすぎたためだろう、元帥のマイクが切られる。
 恐らく回線の向こうでは、好き勝手に話す将軍たち相手に進行役の佐官が困り果てていることだろう。
 黙って見ていると、画面の中の元帥に秘書官らしき男が近寄り、メモらしきものを手渡している。
 なるほど、彼に命令を出すことの出来る立場の人間も回線の向こうにいたらしい。

「ああ、失礼した」

 何かが決まったらしく、メモを読み終えた彼は直ぐにマイクを戻した。

「条件がいくつかあるが、君たちの要望は叶えられるだろう」

 良かった。
 その言い方をするということは、受け入れるつもりがないか、あるいは無茶苦茶な要望はないということだろう。

「条件ですか、私どもで手配できることならばいいのですが、どのようなものでしょうか?」

 物資の提供や自国軍の同行といった範囲で済ませてくれるとありがたい。
 無茶な要望の筆頭として出てくるライセンスフリーの要望ということはないだろう。
 正義と隣人愛に目覚めた合衆国軍が総力を挙げて手伝ってくれても国土奪還は不可能だということぐらいは理解できているはず。
 俺はそれを無料で、しかも何故か条件付きでやってもいいと言っているのだ。
 ある程度のおねだりはしてみたくもなるだろうが、度を超えた我儘を喚き散らしたりはしないはずだ。

「手書きのメモしか無いので読み上げさせてもらうよ。
 一つ、カムチャッカ半島戦線およびサハリン戦線への支援。
 これは別にハイヴ攻略の前後どちらでも構わないそうだ」

 おお、逆にそれを我々にやらせてくれるのか。
 これらの地域は内陸侵攻にあたっての海上輸送路の維持を考えれば絶対に死守が必要だ。
 自分たちの手でしっかりとそれが行えるのであれば、こんなに嬉しいことはない。

「二つ、ハイヴ攻略にあたっては、我が国の精鋭部隊も同行させてもらいたい。
 国土奪還にあたって、助力を受けるとしても完全に人任せというのはさすがに心苦しい」

 まあ、そうだろうな。
 他所様の軍隊に全部を任せて本土を奪還しました。
 それはもう独立国ではない。
 まあ、今のソ連は国というよりは亡命政府みたいなものだが、実働可能な戦力がある以上、僅かであっても自国軍を出したいのだろう。

「三つ、そちらがどこまで攻めこむつもりかによるが、BETA支配地域との境界線への防衛部隊配備。
 これはまあ、国連軍本隊がどこまで戦力を抽出できるかにもよるがね」

 当然だろう。
 せっかく取り返したとしても、十分な防衛部隊がいなければ直ぐに東進したBETAたちによって再占領されることは目に見えている。
 それにしても、こちらからお願いしたいような話ばかりだ。
 カムチャッカ半島およびサハリン島は戦略的に考えれば絶対に確保しておきたいし、BETA支配地域との境界線防衛は我々じゃないと不可能だろう。
 ハイヴ攻略だって国土を土足で踏み荒らし云々と言われかねない行為だというのに、彼らはそれに以上の広大な地域に大兵力を展開してくれという。
 しかも、自分たちの顔を立てるためだろうが自国軍の同行まで申し出てくれた。
 おかげで要請による国土奪還という大義名分が成立する。

「四つ、我々でも使用可能な兵器と、それを動かすための物資の提供」

 それを読み上げると、元帥はメモから視線を上げてこちらを見た。
 表情が固い。
 それはそうだろう。
 一国の元帥が諸外国も見ている場で物資の融通をしているのだ。
 仕事とはいえ同情するな。

「他国の方々もいる前で全く恥ずかしい話だが、友人たる諸国の支援を受けてもなお、我が国ではあらゆるものが不足している。
 砲弾、ミサイル、兵器の補修部品、そもそもが兵器自体も、国際的な支援を受けてはいるが十分な数ではない。
 そちらの作戦を支援するという意味合いでも、何らかの援助を求めたい。
 要望は以上なのだが、何とかならないだろうか?」

 最後の要望である兵器の提供。
 弾薬のたぐいはいくらでも送りつけることが可能だが、彼らの装備や補修部品についてはライセンス国産の許可が必要だろう。
 まあ、それさえ貰えれば青森重工業地帯で製造する事が可能だ。
 あそこはプラントでの兵器製造の弊害を避けるために作ったわけだが、戦力については別の製造拠点が確立されているために一部の設備以外は遊んでしまっている。
 他のメーカーでは手が回らない範囲の製造委託という事業をさせてはいたが、仕事はあるものの購入する側の予算の問題で思ったよりも調達の依頼は少ない。
 これ以上待っても仕事の増加は望めないだろうから、自分の都合で使ってしまうか。
 幸いなことに治具その他必要な製造装置はプラントに発注すれば完成形で出てくるから、ライン転用は比較的短期間で完了できる。
 機材の調整や経験のある作業員の確保は問題だが、そこは何とか頼み込んで人員をレンタルすればいいだろう。
 Su-37M2とT-80辺りを師団規模で揃えたら絵になりそうだ。
 ああそうだ、折角だからロシア連邦軍の誇るBM-30とTOS-1、それに2S19M1も入れた砲兵師団も付けておこう。
 革命的火力戦を展開し、憎むべきBETAをセンメツする我が人民。
 ソビエトの人々もきっと喜んでくれることだろう。
 装備の提供はしてほしいけど生産技術は表に出せないと言うのであれば、それ以外の兵器を提供することになるが、その時はその時だ。
 第4世代機はさすがに出すわけにはいかないし、撃震を始めとする日本帝国系の戦術機も輸出許可は降りないだろう。
 戦車についてはありったけの技術を投入して幻のT-95モドキでも作ってやろう。
 戦術機の方は旧式のソ連機になるだろうが、そんな無駄をさせられるのは何とも嫌だな。
 どうせ物資も提供するのだし、その場合には第三世代機を名乗らないことが嫌味になる程度に改造しておけば活躍できるはずだ。 
 
「はい元帥閣下、解決をお約束できるでしょう。
 まず、カムチャッカ半島およびサハリン島への兵力展開は、ハイヴ戦の前になるでしょうね。
 完全に抑えておかないと、海上輸送路の安全が確保できません。
 確実な確保をお約束します」

 俺の言葉に元帥閣下は意外そうな表情を浮かべる。
 ハイヴ攻略という大作戦を実施するにあたって、戦力の分散につながる要望を受け入れたのだから当然だろう。

「境界線の防衛は、侵攻部隊をそのまま転用する形になりますのでお任せ下さい。
 兵器や物資の提供はもちろんさせていただきましょう。
 その詳細については、まあ、あとで個別に会議をさせて頂いた方がいいでしょうな」

 他のモニターを見れば、各国の参加者たちが慌ただしく連絡を取り合っている姿が映し出されている。
 結局、俺がやりたい事は半分も説明することが出来ず、この日の会議は一旦取りやめとなってしまった。
 拒否したならばまだしも、条件を全部飲んだというのにこれは酷いと腹を立てたが、香月副司令からは国家間の交渉で最初から全部飲むなんていうやり方があるわけないでしょうと叱られてしまった。
 まあ、それはそうなんだが、こちらの作戦内容と被っていたし、予備兵力にきちんとした装備がないのであれば提供するのが当然じゃないか。
 それに、交渉して手に入れるべき何かが俺にはない。
 行動の自由と邪魔をしないという確約が貰えれば、それ以上は必要ないのだ。
 何はともあれ、延期になった会議は各国首脳も合わせて改めて執り行われることとなり、その日程調整のためだけに一ヶ月という時間が浪費されることとなった。
 実に無駄なことこの上ないが、歴代の前任者たちはこういうところに我慢が出来ずに自滅している。
 地球上のいかなる勢力にも左右されすに独自の戦略規模の戦力を生産、維持できるというのは、人類から見ればBETAと変わりないのだ。
 別にこの世界の人間を侮辱するつもりはないが、そんな勢力がBETAを殲滅した後もおとなしく下部組織として黙っているとは通常考えられない。
 仮にこちらの言っていることは信じてもらえたとしても、国民たちが謎の勢力に感謝し、支持を叫べば、少なくとも民主主義国家であれば何らかの対策を打ってくる。
 この世界の人々をモブキャラではなく、人格や利害関係を持つ人間として考えれば考えるほど、我々のような根無し草は配慮を目に見える形で示す必要があるのだ。
 面倒な事この上ないが、楽しく戦争をするためには、手間を惜しんではならない。
 それに、合衆国一極の世界というのは余り望ましいものではない。
 日本帝国の人々には苦労をかけることとなるだろうが、ソビエトの復興は決してマイナスだけではないはずだ。


2002年2月1日金曜日 日本時間19:00 地球近傍空間 スペースコロニー『ランド2』 生命科学研究所モニタールーム

 ランド2は農業コロニーである。
 真空で遮断された生物科学研究所があり、より効率的な土壌を生み出すための化学プラントが大量にあるが、そうなのである。
 広大な面積を誇るシリンダー内の大半は試験場および農業工場で埋め尽くされ、一刻も早く地球全土に品種改良種を提供するための研究が行われていた。
 このコロニーだけでもかなりの食料供給能力を持っていたが、必要なのは俺が与えれば解決できるということではなく、この世界の人々が、俺の支援を余裕の笑みで拒否できるという未来だ。
 そのためには、今の地球環境が快適に思えるような前提条件で設計された植物を創りだす必要がある。

「んーそうか、それが一番効率いいのか」

 研究レポートを読み上げた俺は、憂鬱になった。
 繰り返しになるが、ランド2は農業コロニーである。
 だが、最先端の農業は生物科学および化学と密接な関係にある。
 そういうわけなので、俺のいるこの研究所では、対外的には全く公開していないがコスト度外視で大量の兵士を『生産』する方法を研究している。
 俺は、最近余りすぎて使い道が見つけられないポイントで、何かができないかと手当たり次第に複数の世界の技術を収集していた。
 その中には、様々な技術情報があったが、当然と言うか残念というべきか、兵士そのものを創りだす技術も多数あった。
 成体クローン技術、ナノマシン制御、人格転写による人間の電子化、電脳化、全身義体、洗脳、パペットソルジャー計画、メタルワーカープロジェクトなどなど。
 ちょっとばかり他所の世界の成果物を貰っただけで転用可能なものに限られるが、それでもなかなかの数だった。
 現在の8492戦闘団主力を務める第4世代戦術機は、ごく一部の例外を除いて無人機だ。
 これはこれでG.E.S.Uの技術を用い、さらに統合情報通報システム「HAL」を採用することで、全で個、個が全となる特殊なネットワークを構築したため、強力だ。
 しかし、文字通りの神の悪戯だと思うが、無人機が全力を出すには人間の指揮官との距離が問題になる。
 もはや仕方が無いことということで諦めているが、指揮官先頭で突入せざるを得ない。
 だが、最終決戦においては地球上の様々な地点で戦闘を繰り広げる必要がある。
 つまり、指揮官が大量に必要となるのだ。

「手間を惜しまず特注で創りだした主人公クラスの人造人間の人格をコピーした成体クローン兵を電脳化して全身義体にするわけか。
 やれやれ、俺は死んでも天国には行けそうもないな」

 いくつもの実験を繰り返した結果がこれだった。
 調整に調整を繰り返したデザインベイビー。
 遺伝子レベルで調整を施し、衛士として最適な肉体構造を作るための人間の元を造る。
 次に、成体クローン技術を用いて、造りだした遺伝子に基づき、成人の体を生産する。
 だが、そのままでは空っぽの肉の塊だ。
 そこで、かつてブラドと呼ばれた天才科学者が産み出した人格の転写技術を応用して意識を書きこむのだ。
 こうして製造された衛士たちは、超一流の能力を持つ下地を持っている。
 この状態で研究所に併設された高効率教育訓練センターに外の時間で三日間入ってもらい、人間としての仕上げを行う。
 だが、そこまでやったとしても人間であるが故の限界を超えることはできない。
 そこで最後の処理である電脳化と全身義体化手術を行う。
 これにより、即死しかねない戦闘機動を軽々と繰り返し、疲れ知らずの衛士を大量生産することが出来るようになるわけだ。
 当然ながら彼らは単なる兵士としてではなく、危険な最前線に無人機を率いて突入する前線指揮官を務める。
 全部無人機でやれれば苦労はなかったんだが、人類が勝つためにはこういう事も必要なのだろう。
 レポートから視線を上げると、無数に並べられた培養槽がモニターに映し出されているさまが嫌でも目に入る。
 この研究所兼プラントは、週に八百人の衛士を生産することが出来た。
 つまり、廃棄物ブロックには既に数千人分の人体の残骸が転がり、そして無数の脳髄が工場で加工されつつある。
 繰り返しになるが、俺は絶対にろくな死に方をしないな。

「閣下、そろそろ地球に戻る時間です」

 まだ残っていたことに驚く良心との戦いを楽しんでいると、オペ子が後ろから声をかけてくる。
 国連との会議にはまだ時間があるが、その前に済ませておかなければならないことは無数にある。

「重要度の高いものから報告してくれ」

 制帽を被りつつ廊下へと足を進める。
 緊急事態に備えて空調その他すべての設備が真空のブロックで隔離されている研究区画は、内部は機械任せで完全無人化されており、何かを搬入する時には使い捨ての宇宙機で専用ドックからアクセスすることになる。
 だが、俺がいるのはコロニー側にあるモニタールームであり、ここは警備が厳重なだけの普通の研究所だ。
 窓はないし通気口は人間が物理的に入らないサイズだし、入り口は正面玄関とその横に設けられた搬入路だけ。
 非常口一つないために正面突破以外では入る事は不可能な物件となっている。
 火事が怖いといえばそうだが、まあ、防火設備は十分すぎるほど用意してあるからな。

「はい、まず惑星番号AAAA00008492ですが、開拓は順調に進められております。
 降下部隊はここから提供される予定ですが、期日には大幅な余裕を持って全部隊を届けられる見込みになっています。
 なお、現在のところ星系内にBETAと思われる兆候は発見されておりません」

 うん、順調で何より。
 もう随分と前になるが、超光速宇宙船で送り出したG.E.S.Uたちは、一つの惑星を巨大な兵站設備に変化させていた。
 開拓は未だに始まったばかりというレベルだが、そうであっても複数の国家が全力で支援をしてくれる程度の効果は既に発揮できている。
 AAAA00008492という番号からも分かる通り、俺が開拓させているのは確認された生存可能な惑星の中でも相当に遠い。
 仮に銀河系を一つの街に例えると、オルタネイティブ第5計画で行く予定のバーナード星系など、隣の席に手を伸ばしただけのようなものだ。
 ちなみに、この例で行くと開拓中の惑星は隣の国に行ったようなものとなる。
 貴重な資源を使いやがってと文句を言われることはないだろう。

「順調なのはいい事だ。
 引き続き星系内の安全は確認させろ。
 それと、部隊の輸送に余裕があるなら先に物資を搬入させてくれ。
 今後の展開次第ではアラスカからの反攻作戦が前倒しされる可能性もあるからな」

 今は兵器しか求めないソ連邦の人たちも、ハイヴを潰せば今度は本土復興支援を求めてくるだろう。
 それに、全人類規模で軍が動けば、確実に世界中で餓死者が大量に出るはずだ。
 面倒な事この上ないが、そのあたりは提案者が責任をもって何とかしないとな。

「監視衛星からの情報によると、合衆国軍の戦略原潜が四隻、本土を離れつつあります。
 目的地は不明ですが、不定期の出港であることを考えるに、我々に対する最悪の場合のオプションとして使われる可能性があります」

 どこまでいっても我々は所詮はよそ者である。
 大量の戦力を戦闘可能状態で保有している以上、この手の対策は当然取られるだろう。
 まあ、恐怖にかられて先制攻撃してこないのであればそれでいい。

「情報部からの報告では、日本帝国内の不穏分子の一掃はほぼ完了した模様です。
 クーデターの反動もあり、国内は極めて安定に向かいつつあるようです」

 放っておいても激発するところをわざわざ煽って決起させ、鎮圧のためにオーバーキルを前提で盛大に部隊を動かしたかいがあったというものだ。
 別に帝国政府を我々のコントロール下に置いたわけではないが、後でいきなり暴発して襲いかかってくる可能性を落とせただけで十分だ。
 死にたくないという理由で主義主張を曲げることが出来る人々は、もう二度と暴力的な手段での政治的主張に参加しようとは思わないだろう。
 今後、無いとは思うが合衆国がもう一度内乱を起こそうとしても、前回と同じ規模のそれは絶対に起こすことはできない。
 そんな事を思いつつ、厳重に警備された正面玄関を通り過ぎ、研究所前で待機していた公用車に乗り込もうとする。

「戦術機と共に降下する軌道降下兵の装備が完成しました。
 一個連隊で降下できた場合、少なくとも戦術機甲大隊並の活躍が期待できます」

 限られた地域にできる限りの戦力を投下する以上、無駄はできない。
 できれば全て戦術機で固めたかったところなのだが、作戦エリアの広さからして、際限なく戦術機を送り込むことはできない。
 もちろんHLVを使って戦車隊も送り込むが、彼らが降下できるのはある程度の空挺補確保ができてからだ。
 戦術機ですら生き残ることが難しい場所に機動歩兵を送り込むというのは大量殺戮にも見えるが、実際は違う。
 彼らは倍力機構やアシストシステム、ロケットブースターにより人間とは全く異なる機動力を有している。
 そして、小型とはいえレールガンは要撃級程度は相手にできるし、被害半径37.5mを誇るジェノサイドガンは戦術機に負けない火力を発揮してくれることだろう。
 ゲームのように時間をかければ無限に撃てるという訳にはいかないが、何とか小型化が出来た補充用の機材も降下艇に乗せてやればそれでいい。
 撃ち落されれば盛大に吹き飛んでしまうが、どのみち降下中に撃墜されれば中の人間は助からない。
 機動歩兵たちには申し訳ないが、彼らもその程度は理解してくれるだろう。
 戦域手前に投下し、降下艇に載せた車両で機動歩兵を送り込むことが出来れば、少しは足しになるはずだ。
 数で対抗してくるBETAを相手に、最低限の火力をもたせた機動歩兵が火力で対抗する。
 毎分で測れないほど発射速度が低いことは残念だが、そこは歩兵らしく数でフォローすればいい。

「そういえばさあ」

 不意に口を開いた俺に、先ほどまで報告を行なっていたオペ娘は不思議そうな表情を浮かべる。
 大抵の場合、報告を受けている俺はおとなしく相手の話が終わるのを待っている。
 今のように唐突に口を開く事は少ないのだ。

「何でメガネをかけているんだ?」

 そう、今の彼女は、いつもの服装に加え、何故かメガネをかけていた。
 それも黒フレームの野暮ったいデザインのものだ。
 一言で言えば大変に良く似合っているのだが、俺はそんな事をするように命じた覚えはない。

「情報収集活動の一環で全世界の秘書官に対しての人物評価を行ったところ、男女を問わず71%がメガネもしくはコンタクトレンズの装着、あるいは視力回復手術を行った事が判明しました。
 閣下が他国の代表者もしくはそれに類する立場の方と交渉を行う際、違和感をより少なくできると判断し、装着しました」

 自律行動してくれるのはいいのだが、計算ずくとはいえそういう行動を取るというのは随分と面白いな。
 まあ、俺の害にならないのであればなんでもいいさ。
 それにしても、随分と無駄な方向に分析をしているな。

「よく似合っているよ。
 報告の続きは移動しながらにしようか」

 恐らくは何の役にも立たないとは思うが、何かを考え自律行動したという事実が重要だ。
 それに、陸上自衛軍のオペレーターみたいで素晴らしいじゃないか。

「次に軌道掃海ですが、順調です。
 大型のデブリは既に国連宇宙総軍によって排除されていたため、現在は念のために化学レーザー艦で小型のデブリを潰しています。
 現時点で作戦発動となっても降下部隊に影響が出る可能性は極小といえるため、軌道掃海は完了段階と評価できます」

 軌道爆撃や降下を戦術として採用しているだけあり、国連宇宙総軍は涙ぐましい努力を持って軌道の安全維持に務めていた。
 おかげさまで盛大に投入した化学レーザー式軌道掃海艇が無駄になったが、まあ、作戦発動に間に合わないよりはこちらのほうがマシだ。
 せっかく用意したのだし、ネジ一本、グリス一滴たりとも残さずに軌道を掃除しておこう。

「北海道に移動中だったサハリン支援部隊の進発準備が完了しました。
 まず先遣隊として一個旅団が直ぐに渡洋可能です」

 運転席との間に設けられたモニターに戦域地図が表示される。
 BETAによる迎撃を警戒して太平洋側に大きく迂回する形になるが、支援物資を満載した船団に囲まれるようにして一個旅団が移動可能になっていることがわかる。
 先遣隊の任務は、現在展開中のソビエト陸軍の一部と交代して戦線を支えることにある。
 これによって展開中の部隊の支援を行うと同時に、後続の一個師団の展開を助ける事が目的だ。
 
「カムチャッカ半島戦線への増援は現在も準備中です。
 来週月曜日には先遣隊として一個連隊を送り込めますが、それ以上の戦力を送り込むにはあと二週間は必要です」

 遠慮無くプラントを使用出来た頃が懐かしい。
 あの頃であれば、輸送用の船団も含めて一瞬で用意することが出来た。
 まあ、自分が呼び出したに等しいBETAの大軍に押しつぶされたくはないので仕方が無いのだが、それでも面白くはない。
 戦闘可能な師団を装備を問わず月単位で用意できるというのは十分に異常な事なのだが、もっと便利な方法を知っている身としてはそれですら不満に思える。

「一個師団程度を単体で放り出しても仕方が無いからな。
 しっかり準備を整えてやってくれ」

 この作戦の最大の問題点は、投入する戦力をどのように配分するかではない。
 作戦開始をずらせばいくらでも送り込むことが出来る。
 大切なのは、あちらもこちらも、全ての戦線において人類の優勢を勝ち取ることだ。

「はい、ご命令通り十五個師団を投入予定です。
 しかしながら、ハイヴ攻略後の戦域確保を行うことを考えますと、最低でもあと数個師団は必要と思われます」

 まったく、戦力がいくらあっても足りないな。
 まあ、地球規模での反攻作戦ともなれば仕方ないのかもしれないが。

「置き場所に困らなければ構わんだろう。
 港湾の拡張を行えることを計算に入れて、どれだけの戦力を送り込めるかを再度確認してくれ」
 
 順調に進めば更に西進する可能性がある部隊だ。
 前提条件を作り替えてでも増派が可能であればそうするべきだろう。
 


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