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No.8836の一覧
[0] 【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました【チラ裏より移転】[ちーたー](2016/12/24 22:35)
[1] 第一話『白い部屋』[ちーたー](2009/05/23 21:10)
[2] 第二話『出撃準備』[ちーたー](2011/04/04 01:50)
[3] 第三話『初陣』[ちーたー](2009/05/23 21:10)
[4] 第四話『交渉』[ちーたー](2009/05/23 21:11)
[5] 第五話『食料調達』[ちーたー](2009/05/23 21:12)
[6] 第六話『対BETA戦闘(初陣)』[ちーたー](2009/05/23 21:14)
[7] 第七話『BETA=資源』[ちーたー](2009/05/25 21:21)
[8] 第八話『新仕様発覚』[ちーたー](2009/06/01 01:56)
[9] 第九話『コマンダーレベル』[ちーたー](2009/06/08 03:00)
[10] 第十話『新潟戦線チートあり 前編』[ちーたー](2010/01/11 01:46)
[11] 第十一話『新潟戦線チートあり 後編』[ちーたー](2009/06/17 02:43)
[12] 第十二話『鳴り止まない、電話』[ちーたー](2009/07/07 02:38)
[13] 第十三話『月月火水木金金』[ちーたー](2009/07/18 22:31)
[14] 第十四話『三周目白銀武颯爽登場!』[ちーたー](2009/07/20 03:17)
[15] 第十五話『2001年度第二次新潟防衛作戦(チートもあるよ!)前編』[ちーたー](2009/07/20 03:18)
[16] 第十六話『2001年度第二次新潟防衛作戦(チートもあるよ!)中編』[ちーたー](2009/07/20 03:15)
[17] 第十七話『2001年度第二次新潟防衛作戦(チートもあるよ!)後編』[ちーたー](2009/08/14 00:56)
[18] 第十八話『査問会』[ちーたー](2009/09/24 00:56)
[19] 第十九話『新潟地区防衛担当者』[ちーたー](2010/01/11 01:48)
[20] 第二十話『佐渡島奪還準備』[ちーたー](2009/11/19 02:09)
[21] 第二十一話『出師準備』[ちーたー](2010/01/01 02:20)
[22] 第二十二話『上陸』[ちーたー](2010/01/17 21:36)
[23] 第二十三話『横槍』[ちーたー](2010/01/15 23:24)
[24] 外伝1『とある合衆国軍将校の証言』[ちーたー](2010/01/17 21:36)
[25] 第二十四話『決戦!佐渡島ハイヴ 前編』[ちーたー](2010/02/15 01:51)
[26] 第二十五話『決戦!佐渡島ハイヴ 中編』[ちーたー](2010/03/21 10:51)
[27] 第二十六話『決戦!佐渡島ハイヴ 後編』[ちーたー](2010/04/06 00:44)
[28] 第二十七話『LevelUp』[ちーたー](2010/05/17 01:40)
[29] 第二十八話『遠足』[ちーたー](2010/05/24 01:48)
[30] 第二十九話『敵襲』[ちーたー](2010/06/14 01:43)
[31] 第三十話『反撃』[ちーたー](2010/07/18 06:35)
[32] 第三十一話『諜報担当者爆誕!』[ちーたー](2010/09/03 01:01)
[33] 第三十二話『状況開始』[ちーたー](2010/12/23 17:14)
[34] 第三十三話『戦闘開始』[ちーたー](2011/01/04 22:25)
[35] 第三十四話『防空戦闘開始』[ちーたー](2011/01/14 22:21)
[36] 第三十五話『戦場の情景 1』[ちーたー](2011/04/04 01:51)
[37] 第三十六話『戦場の情景 2』[ちーたー](2011/04/04 00:29)
[38] 第三十七話『戦場の情景 3』[ちーたー](2011/04/26 01:57)
[39] 第三十八話『宇宙での密談』[ちーたー](2012/01/04 21:46)
[40] 第三十九話『終わらない会議』※2/5 14:30一部修正[ちーたー](2012/02/05 14:29)
[41] 第四十話『最後の会議』[ちーたー](2012/02/13 00:53)
[42] 第四十一話『反撃!』[ちーたー](2012/02/23 23:11)
[43] 第四十二話『応戦』[ちーたー](2012/07/05 00:11)
[44] 第四十三話『ユーラシア方面作戦』[ちーたー](2013/05/14 00:02)
[45] 第四十四話『決戦兵器』[ちーたー](2016/08/26 00:35)
[46] 第四十五話『喪失』[ちーたー](2020/08/31 00:40)
[47] 第四十六話『物量』[ちーたー](2017/09/05 02:19)
[48] 第四十七話『桜花作戦の現在』[ちーたー](2020/08/31 01:09)
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[8836] 第三十五話『戦場の情景 1』
Name: ちーたー◆7e5f3190 ID:84a555e7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/04 01:51
第三十五話 『戦場の情景 1』
2002年1月3日木曜日20:15 日本近海 日本帝国軍8492戦闘団 新潟第二哨戒戦隊 旗艦イージスシステム搭載大型打撃護衛艦『やまと』CIC

 全てを艦載のシステムに任せるオートスペシャルへ切り替えたことにより、艦隊は全自動で防空戦闘を開始した。
 急速に接近しつつある空対艦誘導弾が次々とグループ分けされ、個別にラベリングが行われ、飛行経路が算出され、迎撃すべき地点が計算されていく。
 既に中距離と区分すべきエリアは突破されつつあり、無傷での迎撃に使用できる時間は極めて少ない。
 旗艦の大型電算機の指示を受けた各艦の迎撃システムたちは、電波妨害装置を全力で稼働させ、艦対空誘導弾を連続発射する。

「電波妨害、出力最大」
「全艦誘導弾発射開始、目標アルファおよびブラボー群へ誘導中」
「副砲群砲撃準備完了、CIWS全基作動開始、異常なし」
「合衆国軍へ誘導データ送信中、応答信号来ました」

 闇夜の海面を照らし出すようにして無数の誘導弾が発射され続けている。
 複数のイージス艦で構成されたこの艦隊は、統一された指揮のもと、複数の目標群に同時対応することが出来た。
 同じデータリンクで結ばれた合衆国軍を指揮下に置いてもなお、その能力には余裕がある。
 彼らはありがたい事に共同してこの危機に対応してくれるようだ。

「誘導弾第一波発射完了、目標到達まであと一分。次弾装填中」

 一斉に発射された誘導弾たちの飛行経路がモニター上に表示される。
 反乱軍側にはAWACSや沿岸のレーダーサイトがついており、敵の電波妨害は極めて強力である。
 そのような中、この瞬間に備えて整備された防空艦隊たちは、与えられた任務を全うすべく行動を続けている。

「旗艦対地攻撃システム稼働中、目標は千葉県沿岸部のレーダーサイトの模様」

 旗艦に搭載されたシステムは、反乱軍のレーダーサイトを敵と認識したらしい。
 巡航誘導弾が弾庫から引き出され、止めるまもなく発射されていく。
 だが、その報告を聞いた艦隊司令は止めようとはしなかった。
 これだけの状況下に置いて、現在も電波妨害を行うということは、つまり敵ということだ。
 敵は殲滅しなければならない。

「続けて対レーダー誘導弾発射、AWACSを照準しています」

 これも止める必要のない報告だ。
 大量に発射され、さらに追加が発射準備中の誘導弾で対処は出来るだろうが、万全の対策を持ってAWACSを潰そうとする行動は理にかなっている。
 
「誘導弾第一波、目標アルファに到達、撃墜82、第二波発射準備完了、発射」

 ハイヴに対する面制圧にも匹敵する密度と量の迎撃は、それでも敵誘導弾の先鋒を全滅させることは出来なかった。
 8492戦闘団の使用している誘導弾は極めて高性能かつ高い品質を保っていたが、だからといって魔法のミサイルではない。
 しかも、現在は地上基地とAWACSからの強力な電波妨害もあり、撃墜数が50を割らなかった事を喜ぶべきだ。

「第二波発射中、次弾装填開始、敵誘導弾先鋒を探知、副砲有効射程に到達、副砲群砲撃開始」
「トラックナンバー2014から2058へ砲撃開始、迎撃中」

 CIC内部にも微かに伝わる振動で、各艦に装備された127mm砲が砲撃を行っていることがわかる。
 艦砲は誘導弾に比べると迎撃可能距離が短いが、その優れた砲撃精度と速射能力は信頼に価するものだ。
 やまとを始め各艦に装備されたOTOメララ127mm速射砲がそれぞれに与えられた目標を狙い、意外さを覚えるほどの連射速度で砲撃を開始した。
 少しでも敵誘導弾の狙いを逸らすべく、艦の側面に配備されているフレア発射機とチャフ散布機が次々と夜空に熱源と乱反射を撒き散らす。
 
「目標アルファおよびブラボー群を迎撃中、残数3、迎撃成功」

 短いが十分な情報量と満足すべき結果を伝える報告に、CIC内部の人間たちから安堵の声が聞こえる。
 しかし、迎撃戦闘は未だ完了していない。

「第二波、目標チャーリーおよびデルタに到達まであと30秒、次弾装填中」
「第三波攻撃開始、目標チャーリーおよびデルタに第二派命中、撃墜74、残数に第三波を割り当て中」
「副砲群目標捕捉、CIWS射撃準備中」
「第四波準備開始」

 音速で迫る誘導弾相手の戦いは、短いが非常に密度が濃いものだ。
 飽和攻撃を仕掛けられているとは思えないほどに静かな艦内で、艦隊司令はかつて読んだ教本を思い出していた。
 自分はBETAと戦うために海軍に入ったはずだと当時は憤慨したものだが、思えば若かった。
 それにしても、反乱軍とはいえ日本人相手に戦うハメになるとは思えなかったがな。

「第三波命中、目標チャーリーは全基撃墜、目標デルタは残数32」

 この艦隊は極めて優れた対空迎撃能力を持っていたが、追い込まれた状況があまりにも悪すぎた。
 至近距離と言ってもいい距離からの飽和攻撃、しかも民間人たちを盾に使われており、長距離での迎撃が出来ない。
 おまけに強力な電波妨害を受けており誘導に支障が出ている。
 それでもなお、これだけの戦果を上げたのだ。
 しかも、艦隊の位置関係からして合衆国軍への損害はおそらく出ないだろう。
 部下たちには申し訳ないが、任務は全うできそうだな。
 艦隊司令が内心で満足そうに頷いている間に、防空戦闘は最終段階へと移行した。

「敵誘導弾はさらに接近中。全CIWS射撃開始」
「敵レーダーサイトに誘導弾命中、電波妨害が弱まりました」

 巡航誘導弾がようやく仕事を終えたらしい。
 千葉県沿岸部から発せられていた強力な電波妨害が止まっている。
 その間にも艦隊は休むことなく第四波の誘導弾発射準備を整える。
 ランチャーを移動させることなく弾庫から直接装填できるVLSは、矢継ぎ早の迎撃任務には最適の装備だ。

「第四波開始、目標は敵航空機集団」

 既に誘導弾に対して誘導弾を使用することはない。
 とりあえず、今後の事を考えて敵航空機に打撃を与えるだけだ。
 後の仕事は、艦砲とCIWSに一任される。

「チャフ・フレア連続射出、敵誘導弾への迎撃続行中」
「敵AWACS撃墜を確認、敵電波妨害は消滅しました」

 対レーダーミサイルも仕事を終えたようだ。
 強力な妨害にさらされていたレーダースクリーンは完全にクリアになった。
 敵誘導弾の残存数は19基、チャフやフレアは思ったより効果を発揮しなかったようだ。

「敵誘導弾命中まで五秒」
「耐衝撃体制をとってください!」

 これまで無表情かつ抑揚のない声で報告を続けていたオペレーターが叫ぶ。
 その言葉に人間たちは慌てて手短な固定物に飛びついた。
 そして、衝撃がやってきた。


 最初に命中弾を受けたのは、艦隊の最も本土側を進んでいた『あきづき級三番艦』だった。
 ネーミングセンスの欠片もない名前の彼女は、第五次砲撃の準備中に左舷中央へ命中弾を受けた。
 搭載されていた大量の炸薬は彼女の船体中央を一撃で引き裂き、その付近にあったVLS内部の誘導弾を吹き飛ばした。
 人間では知覚できない短い一瞬で爆発は全艦に広がり、艦内にあった全ての爆発物が一斉に炸裂した。
 轟沈であった。
 次に命中弾を受けたのは、彼女の前方1kmを進んでいた『みょうこう級一番艦』である。
 駆逐艦に比べてやや大きな船体を持っていた彼女であったが、現代の艦艇にとって対艦誘導弾の直撃は致命傷にしかならない。
 全弾が一斉に誘爆するようなことはさすがになかったが、艦橋構造物を吹き飛ばされた彼女は、船体を大きく傾斜させつつ急速に沈没していく。
 人間が載っていないことから死傷者はゼロだが、損失は損失だ。
 
「あきづき級三番艦轟沈!」
「みょうこう級一番艦通信途絶!」
「敵弾なおも接近中!」

 損害は続いた。
 三番艦に続き、あきづき級二番艦も轟沈し、四番艦は艦尾への命中弾で機関停止。
 六番艦は艦橋構造物上部への命中弾で、機関は生きているが応答がない。

「あきづき級二番艦轟沈!」
「四番艦機関部全滅、漂流します」
「六番艦応答ありません、CICをやられた模様」

 猛烈な弾幕を展開する艦隊に向かって対艦誘導弾たちは進み続けている。
 周囲は立ち込める黒煙とばらまかれたチャフ、それを照らし出すフレアや損傷艦の火災、際限なく撒き散らされる曳光弾で大変に賑やかな事になっている。
 終末誘導に入った誘導弾たちは、強烈な電波妨害の中でも辛うじて認識出来るいくつかの目標へ突進した。
 そのいずれもが8492戦闘団所属艦艇であることは、合衆国軍の極東における影響力を排除するという作戦目標からすれば失敗もいいところなのだが、彼らにそこまで判断するだけの頭脳は搭載されていない。
 さらに二発が『みょうこう級四番艦』の艦首と艦尾に命中し、一発が極めて艦に近い位置で撃墜されて艦中央部の喫水線付近へ飛び込んだ。
 残念なことに、彼女も助かりそうにない。

「本艦に命中コースの誘導弾三発!迎撃間に合いません!」

 あくまでも人間をサポートするという任務を帯びているオペレーター達は、感情ではなく警告の意味で次々と叫んでいく。
 パニックを助長するつもりはないが、現状が極めて危機的状況であることを心理面から伝えるためである。
 副砲群が連続砲撃を続け、CIWSが弾幕をばらまく中、三発の誘導弾は極僅かな時間差をおいて艦の三箇所に命中した。
 最初の一発は主砲の第一砲塔に浅い角度で命中し、爆発エネルギーの大半を空中に撒き散らしつつそれを使用不可能にした。
 二発目は左舷第四副砲に命中し、最後の瞬間まで砲撃を放ち続けていた砲ごと爆発した。
 砲の下部にある弾庫は当然誘爆したが、揚弾機は既に閉鎖されており、さらに主弾薬庫は命中の直前から注水が開始されていたことから被害はそこまでだった。
 最後の一発は艦橋構造物に命中する直前、追尾を続けて真上を向こうとしていたCIWSによって撃墜され、超高温の放流となって航海艦橋へ飛び込んだ。
 当然ながら航海艦橋は使い物にならなくなったが、被害はそこまでだった。
 人間の乗員は全てCIC内部に退避していたことから人的被害は皆無であり、おまけに8492戦闘団所属艦艇はフネの形をした機械生命体のようなものなので、失われた施設の代替が艦内にある。
 レーダーマストが使用不可能になったことは痛いが、この戦艦の戦闘能力は限定的ながら今だ健在である。

「艦橋被弾、航海艦橋全滅!」
「SPY-1レーダー使用不能!」
「主レーダーマスト倒壊、通信を後部艦橋に切り替えます」
「主砲第一砲塔使用不能、誘爆の危険は無し」
「左舷第四副砲全壊、誘爆は止まりました」
「第十六通路、第八兵員室、第二十備品庫全壊。第六通路に火災発生中、第七通路との隔壁閉鎖不能。自動消火装置作動中」
「主弾薬庫注水継続中」

 大したものだ。
 いち早く立ち直った艦隊司令は、次々と入る被害報告を聞きつつ艦内配置図を見た。
 三発の対艦誘導弾を喰らっておきながら、この戦艦は未だに戦闘能力を維持している。
 攻撃を喰らった付近はさすがに真っ赤に染まっているが、このCICを含めて機関室や後部艦橋などの重要な施設は健在だ。

「みょうこう級三番艦沈みます!」

 想定していたよりは随分と小さい衝撃に人間たちが安堵していた頃、弾幕を突破した誘導弾たちの最後の仕上げが行われた。
 同一目標への命中や最終段階での撃墜を免れた四発が、最も合衆国軍に近い位置を航行していた『みょうこう級三番艦』に殺到したのだ。
 彼女は最後の瞬間まで電波反射が最大になるように横腹を晒しており、さらに射耗したCIWSの再装填まで行おうとしていたが、その勇敢な行動が仇となった。
 最初から最後までで2秒程度の誤差で続けて四発の誘導弾を受けた彼女は、合衆国海軍将兵たちの眼前で左舷全てを吹き飛ばされ、誘爆を繰り返しつつ横転沈没した。

「みょうこう級二番艦よりデータ受信、敵航空機集団114機を撃墜。
 誘導弾残存無し、電波妨害無し、残存敵機は急速に離脱しつつあります」

 残存艦艇からの索敵データが表示される。
 電波妨害がなくなり、本土防衛軍とのデータリンクが復活した現状では、全てがクリアに表示される。
 艦対空誘導弾の嵐を受けた敵航空機集団は、僅かな残存兵力を何とか基地へ返すべく、全力で退避行動に移っていた。
 
「やれやれ、何とかなったな」

 艦隊司令が安堵の様子を隠そうともせずに呟く中、艦隊は勝手に逆襲の準備を進めていた。
 そのため、彼が気がついた時には全てが手遅れになっていた。

「敵残存兵力を捕捉、誘導弾発射」
「百里、厚木両敵基地に向け巡航誘導弾発射準備完了、発射」
「近隣の友軍部隊へ通報。敵航空脅威は消滅、反撃せよ」
「横浜第一戦闘ヘリコプター中隊は帝都城周辺空域に侵入、敵軍と交戦中」
「第二および第三戦闘ヘリコプター中隊は全機離陸を完了、所定の作戦に従い移動中」
「新潟基地よりの増援部隊は帝都郊外に到着、敵軍検問を砲撃中。敵の反撃はありません」

 オペレーターたちの報告を聞いた彼は、8492戦闘団たちの徹底した反撃に顔色を変えた。
 反乱を起こした帝国軍部隊を敵軍と明確に識別し、軍事行動の鉄則である敵戦力の破壊を戸惑わずに行おうとしているのだ。

「待て!行動中の部隊はともかく、基地には無関係の人間もいるはずだ!
 空爆は必要ないだろう!直ぐに止めろ!!」

 空軍基地とは、広大な施設内に多くの人員がいる。
 いくらなんでも末端の軍属から司令官まで全員が決起に同意したとは考えにくい。
 この非常事態下に反対した人間たちが素直に自宅へ帰されているわけもなく、そうなれば基地内の何処かに拘禁されているに違いない。
 いくら反撃とはいえ、それらの人々を傷つければ、この事件終結後に8492戦闘団はあまり好意的とは言えない状況下に追い込まれてしまう。
 
「司令官、ご安心を。
 使用弾種はただの多弾頭誘導弾です。
 核弾頭やG弾頭は使用しておりません。
 また、目標は滑走路に限定していますので、滑走路上に捕虜を立たせてでもいない限り敵基地の航空機運用能力を奪うだけで済むはずです」

 空襲を受けたとはいえ、別に8492戦闘団に整備員や基地要員に報復したいという意思はない。
 あくまでもこの作戦が終了するまでの間、これ以上敵航空戦力の攻撃を受けないようにしたいだけなのだ。
 通常弾頭ならばいいという問題ではないのだが、既に誘導弾は放たれ、首都圏上空に侵入しつつある。
 この状況では自爆をさせても民間人に被害が及ぶ可能性が非常に高く、もはや広大な敷地を持つ空軍基地で受け取ってもらうほかない。

「自力航行不可能な艦艇はここで自沈処理を行います」
「人間の損害は0、溺者救助の必要なし。艦隊を再編成します」
「合衆国艦隊へ通報、危険を避けるため、直ちに太平洋方面へ退避せよ」

 唖然としている艦隊司令たちをそのままに、オペレーター達は戦後処理を始めていった。
 この海域において二度とあのような攻撃があるはずがないのだが、たった今眼前で展開された大規模な防空戦闘は、合衆国海軍の人々に大いなる不安を与えた。
 傷ついた目の前の艦隊では、同程度の攻撃は防げない。
 そして、政治的な配慮から出されている今回の出動命令に、今のような大規模な攻撃は入っていなかった。
 日本帝国軍の対艦攻撃機はこれで出尽くしたかもしれないが、まだ他の手が残っているかもしれない。
 艦隊全滅の危機を許容することは、命令には含まれていない。
 自分たちの代わりにこの損害を引き受けてくれた8492戦闘団に感謝しつつ、司令官は艦隊進路の変更を指示した。
 同時に、よくわからない権限に基づいて艦載ヘリを離艦させようとして拘束された中尉を尋問室に呼ぶよう命令する。
 きっと、先程の大規模な攻撃と自身の行動の相関関係について、興味深い話を聞かせてくれるだろう。



2002年1月3日木曜日20:34 日本本土 神奈川県箱根市上空 城ヶ崎離宮東方21km地点

 神奈川県上空を、総勢81機のヘリコプターが幅の広い編隊で飛行している。
 彼らは主に本土への敵襲撃と今回のクーデターを想定して作られた部隊であり、帝都の空中支援に向かわせた一個中隊を除く、三個戦闘ヘリコプター中隊および一個偵察ヘリコプター中隊で構成されていた。
 完全編成ではないとはいえ、その装備は強力である。
 この部隊は完全無人化したOH-1を索敵のために使用し、ジガバチ・アドヴァンスと呼ばれる無人機を使用している。
 無人なのは今日に始まった話ではないが、今回使用している攻撃ヘリについては始めから無人運用可能という珍しい機種だ。
 それがどのような結果を生むのかというと、地上部隊に対して絶望的な状況を生み出すのだ。


<<狭霧大尉、敵です。空対地レーダーと思われる電波を複数探知>>

 レーダーをパッシブモードでのみで動かしている斥候が報告する。
 それなりの規模で決起した狭霧大尉だったが、鎮圧側が無慈悲な鎮圧作戦を展開したことにより急速に全滅へと向かっていた。
 合衆国軍の艦隊を叩くための空軍部隊は迎撃により全滅し、続報によると基地も徹底的に叩かれてしまったらしい。
 おかげで空中輸送のために待機していた部隊がまるごと遊兵となっている。

「発見は時間の問題だな。もはやここまでだろう。
 かくなる上は全機にて城ヶ崎離宮に突入し、殿下が到着されている可能性に賭けるしかあるまい」

 決起した後で言うべき言葉ではないが、不敬にもほどがあるな。
 部下たちから次々と入る了解の言葉を聞きつつ、狭霧は苦笑した。
 
<<レーザー照射警報!我々は発見されています!>>

 一瞬の気の緩みは、絶望的なまでの反応の遅れとなって狭霧たちに襲いかかった。
 当然ながら、レーザー照射警報とは別に光線級の存在を意味しているわけではない。
 レーザー照準誘導弾の誘導用レーザーを探知したというわけだ。

「全機ただちに散開!城ヶ崎離宮へ突入する!」

 狭霧の判断は素早かった。
 すぐさま自身の機体を跳躍させると、部下たちの応答を待たずに反撃のための機動を取り始める。
 空中を自在に進む戦闘ヘリと、跳躍噴射できるとはいえ地上を進む戦術機ではその行動能力に大きな違いがある。
 彼は、敵を振り切って離宮へ突入できるとは考えていない。
 延々と追撃を受けつつ、恐らくはされているであろう通報に基づいて万全の体制を整えた護衛部隊との交戦になるだろう。

<<狭霧大尉!ここは我々が食い止めます!大尉は殿下の元へ急いでください!>>

 真っ先に探知されたであろう斥候が必死の声で呼びかける。
 だが、彼は他人を気にしている場合ではなかった。
 音速で迫る誘導弾は、一番手前に居た彼の乗機を補足し、教本に載せられるような見事なダイレクトヒットを行った。
 主力戦車ですら一撃で破壊できる誘導弾に対して、第三世代戦術機は余りにも脆すぎた。

「繰り返す!全機突入せよ!敵は容赦なく撃ってくるぞ!」

 戦術機には対空戦闘用のシステムなど搭載されていない。
 だが、ハイヴへの突入を前提とした設計のため、自分より上にいる敵を捕捉・攻撃するためのシステム程度は積んでいる。
 あとは全てを人間が補佐すれば、やってやれないことはない。

<<全機突入!何としても殿下の元へ!>>

 狭霧の指揮下にあった17機の戦術機たちは、一斉に跳躍噴射を実行した。
 まずは地面という危険な場所から離れることが先決であると判断したからだ。

<<さらに敵電波!畜生!あのヘリは対空戦闘も出来るぞ!>>

 部下からの警告に、狭霧は画面内の敵ヘリコプター部隊を睨みつけた。
 見たこともない形状の偵察ヘリと戦闘ヘリ。
 そのどちらもが誘導弾発射機らしいものを装備している。

「全機地上に降りろ!相手が戦闘ヘリでは空中は不利だ!」

 警告が遅すぎることは自覚しているが、一機でも助かるかもしれない可能性に賭けるしか無い。
 部下たちに呼びかけつつ、自機を敵に向かって進める。
 相対距離を縮めれば、撃ちたくても撃てなくなるはずだ。

<<警告!敵は誘導弾を発射!回避!回避!>>

 ヘリコプターたちは一斉に誘導弾の発射を開始した。
 既に鳴りっ放しのレーザー照射警報に加えてレーダー警報が鳴り始める。
 
「何とか懐に!」

 警報を無視し、部下たちの悲鳴を無視し、狭霧は機体を前へと進める。
 こちらを追尾していた関係から、既に敵偵察ヘリは頭上を通過している。
 もう少し、あと少しで敵の戦闘ヘリを捕捉できる。
 真下から撃てば、いくらなんでも対応できないはずだ。

<<なんてこった!9時方向に反応多数!3時方向からも来るぞ!>>
 
 何度目になるか分からない部下からの悲鳴。
 それを無視し、狭霧は敵機に狙いをつけようとした。
 そして、自分を向く銃口と視線があった。

 ジガバチは、攻殻機動隊において登場した自動爆撃ヘリである。
 無人であること、重武装であることなど特徴は多いが、最も特徴的なのはハチの尾部のように大きくせり出した大型機関砲だ。
 これは特徴的な外見からも予測できるように、前後左右どころか真下へも攻撃が可能な形状をしている。
 狭霧は、自身が知っている戦闘ヘリコプターの常識に沿って行動したが、今回においては完全にそれが裏目に出た。
 自らの危機を悟った彼が次の行動に移る前に、戦闘ヘリコプターたちは最寄りの目標、つまり狭霧に向かって一斉射撃を行った。
 放たれた大量の30mm機関砲弾は、多少の誤差は無視できるだけの物量で狭霧大尉を乗機ごと爆散させた。


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