2001年11月11日日曜日 11:47 日本帝国 新潟県
作戦の主役を国連軍に移した第三次防衛ライン攻防戦は、四個連隊の砲兵による突撃破砕射撃から始まった。
遂に平野部へと侵入したBETA三個師団に対して、合計1,000門を超える火砲が火を吹いたのだ。
それはまさに黙示録的な、と形容すべき光景だった。
砲撃開始から十数秒後、前進するBETA集団およびその周辺の地面が沸騰する湯の表面のように泡立つ。
勿論それは泡などではなく、155mmもしくは120mmの砲弾が炸裂し、その危害半径内にいる全てのBETAに致命的な損傷を負わせている事を示している。
相手が人類の軍隊であれば、例えそれが重装甲師団であっても容易に進撃を阻止できただろう。
だが、相手は良くも悪くもBETAという生命体であり、それは人類の持ついかなる軍隊よりも精強だった。
周囲の地形を変えるほどの激しい砲撃に怯みもせずにBETAたちは前進を継続する。
<<敵集団に対して極めて効果大。効力射を続行されたし、オクレ>>
戦術機甲連隊に同行する前進観測班から報告が入る。
目の前にいる十数体程度ではなく、双眼鏡の視界一杯に広がる敵集団に対しての効果を報告する彼らがそういうのであれば、本当に効果が出ているのだろう。
最前線の観測班や戦術機から情報の提供を受けている砲撃は非常に効果的に実施されており、既に一個旅団が壊滅、さらにもう一つの旅団が無力化されようとしている。
しかし、突き進むBETAたちは、それだけの打撃を受けたとしても未だに無傷の二個師団と一個旅団が残されている。
対する日本帝国軍の防衛戦力は、攻撃正面以外に展開した二個師団しかない。
本来であれば、ここで日本国の歴史に終わりを告げる、恐怖の首都圏侵攻が始まるところである。
だが、かつてとは違い、今の日本帝国には物理的な意味での力強い味方がいた。
「第101から第103戦術機甲連隊は正面のBETAに対して阻止攻撃を開始、重火器で遠距離から叩け。
両翼に展開する第104から第107連隊は鶴翼陣形を維持しつつ中央を援護」
国連軍新潟基地の作戦司令室で、俺は全てをモニターで見ていた。
損害を受けた二個師団強のBETAに対し、こちらは増援も可能な五個師団弱の戦力を持っている。
そして、各個撃破も迂回突破も図らない敵に対して、鶴翼陣形は非常に効果的だった。
前進してくる敵軍先頭に対し、こちらは常に最大火力を投射することが出来るからだ。
現在の戦況を簡単に示すと以下である。
西(海岸)
↓↓
南 | ↓|北
\ /
Ⅴ
○○ ○○
東(国連軍新潟基地)
下向きの矢印三本がBETA集団であり、それを受け止めるように展開している縦線や斜線、V字が日本帝国・国連合同軍である。
後方に位置する○は四個連隊規模の砲兵部隊だ。
この布陣は、帝国軍には詳しく説明していないが、高度な電子機器を優先目標にするというBETAの習性を利用したものである。
中央を担当する8492戦闘団各機はその大半が無人機となっており、おまけに数がまとまっている上に第四世代機ということで高性能だ。
敵を誘引する餌として、そして最大の損害を受けるであろう盾として、これほど適した戦力はない。
「砲撃を絶やすなよ。各連隊は陣形を維持したまま後退。敵の圧力をモロに受けるな」
ひたすらに東進を続けるBETAに対し、それを受け止める国連軍は周囲の友軍が取り残されないようにしつつ後退を実施する。
前線部隊の速やかな移動を支援すべく、砲兵は手持ちの弾薬全てを投げつけるための高い発射速度を維持しつづけた。
滅茶苦茶な勢いで連射される155mm砲弾に叩かれ続け、BETA先鋒集団は大きな出血を強いられている。
砲撃開始から十分後、その進撃速度は若干ながら低下を見せてきた。
もちろんそれは戦意の低下や混乱などが原因ではなく、降り注ぐ砲弾により地形が変わり、さらに撃破されたBETAの死体があちこちに散乱している事が原因だ。
「これだけの砲撃を浴びてもまだ止まらないか。
まったく、これだから異星人は困る」
作戦司令室の中で、俺は忌々しげに呟いた。
整備や補給作業のために砲撃を中止する部隊が出始めているが、それでも砲撃は続行されている。
BETAたちは前進を止めないが、彼らを止める手段は砲撃だけではない。
砲煙弾雨と地雷原を乗り越えてきたBETAたちに待っているのは電磁投射砲と機関砲、そして戦車砲の一斉射撃だった。
要塞級が、突撃級が、要撃級が、戦車級が、兵士級が、闘士級が、次々と砲弾に貫かれ、あるいは弾き飛ばされ、撃ち砕かれ、地面に倒れていく。
大きな戦果だが、BETAの総数から見れば僅かな損害に過ぎない。
しかし、攻撃を行った各隊はそれ以上の戦果を求めずに速やかに後退を開始する。
不退転の覚悟で防戦すべき場所はここではないからだ。
<<こちらは帝国軍第14師団司令部、当戦域の人類諸君へ通達。
我々は反撃時刻を繰り上げ、間もなく全軍が戦闘に突入する。よろしく支援されたし。以上>>
戦域マップの下から、右から、無数の光点が前進を開始する。
小さな光点の一つ一つには、数百人から数千人の帝国軍人がいる。
包囲はどうしたのかとさらに広域のマップを見ると、どうやら各地から抽出された部隊が包囲網を完成させようとしているらしい。
なるほど、帝国軍は気合を入れたわけだな。
「こちらは国連軍極東方面軍第8492戦闘団。
日本帝国の誇る精鋭部隊との共闘を嬉しく思う。
物資補給および砲撃支援は当方に任されたい。戦域チャンネルブラボー・ワン・ツーにて特殊戦術機甲大隊待機中。
数は一個中隊と少ないが精鋭だ、危険な時には呼び出してくれ。以上>>
<<当地域を担当する第12師団戦域司令部より友軍各隊へ。
BETAの残りはおよそ2個師団弱、阻止砲撃でかなりの数が削れている。
どういうわけかわからんが、光線級がいない事が幸いした。
異常地中振動なし、日本海艦隊からも増援の報告なし。
もう少しだ。以上」
増援が無いのはありがたい話だが、光線級がいないというのが気にかかる。
妙に敵に打撃を与えられていると思ったら、答えはそれだったか。
<<第一次BETA上陸部隊は全滅。第14師団各隊は現在防衛ラインへ移動を開始>>
<<第12師団残存兵力、第三次防衛ライン南部へ撤退完了>>
<<北部防衛線担当8492戦闘団104連隊はBETAと接触、距離を保ちつつ防衛ラインへ誘導中>>
入ってくる報告を聞く限りでは、作戦はおおむね順調に推移している。
海岸に対して口を開けたアルファベットのUに近い陣形で展開する我々に対し、BETAたちは進撃方向を変えずに中心部へ飛び込んできている。
<<続いて8492戦闘団105連隊も敵と接触、北部防衛線は全域が戦闘状態に入りました>>
現在の俺の手持ちの戦力は、戦術機甲連隊が101から107までの七つ、自走砲連隊が三つ、戦闘工兵が二個大隊、その他支援兵器が一個連隊である。
そのうちの104と105連隊は北部の防衛線を担当しており、地図全体から見れば北部に展開している。
翼端に位置する彼らが先に接敵するのは当然の事だ。
<<国連軍主力部隊がBETA先鋒集団と接敵、第三次防衛ラインは南部を除く全域が戦闘状態に入りました!>>
若干高揚した雰囲気の戦域司令部オペレーターの声が聞こえる。
それでは終わりの始まりといこうか。
「爆破パイプライン点火、敵の足並みを乱せ。リンクスたちは直ちに退避。補給と休養に入れ」
俺の命令と同時に、戦域各所に機械化工兵が設置した爆破パイプラインが点火された。
爆破パイプラインとは、地中に埋設され、点火すると深さ10mほどの対戦車壕を瞬間的に構築できる優れものだ。
しかし、現実の世界では実戦配備には至らなかった。
危険な爆発物の束を日常的に設置しておく事はできないし、そもそも迂回されれば無意味になる。
それならば主要幹線道路に対戦車障害物を用意したり、進撃路の橋に爆破用の設備を設けておくほうがよほど意味がある。
国境全域をカバーできるだけの数を設置すればまた話も変わってくるのだろうが、当時のNATOとワルシャワ条約機構軍の勢力図を見れば、その案に賛成できる財務担当者など存在しない。
あれこれと問題がある装備ではあるが、この世界では使用に当たって問題はない。
それを埋めに行くのはG.E.S.U達なので敷設場所の記録は完璧だし、新潟県西部は常に戦闘地域だ。
おまけにBETAたちには戦闘工兵などという洒落た種族は無いので、彼らは突破するために少なからぬ同属を蹴落として前進しなければならない。
対戦車壕突破に必要とされる十秒、あるいは五秒かもしれないが、とにかくこの装備によって稼がれる時間は貴重だ。
津波のように押し寄せるBETAたちの足並みを僅かでも乱すことが出来るのであれば、それは大変に価値のある結果である。
「続けて支援兵器部隊は攻撃を開始、一発ブチかましてやれ」
今回の作戦では、自走式GPS誘導自転式・ロケットアシスト推進10t爆弾や、自走式30mm機関砲を投入している。
前者は自転する巨大な車輪の中心に10t爆弾を装備した突撃用無人兵器で、敵集団に突入して自爆する爆弾だ。
横転を防ぐため、また進行方向を変えるために、側面に無数のスラスターがついている。
コスト度外視の装備ではあるが、コストではなく重量で全てが判断される我が軍ならではの決戦兵器だ。
後者は胴体の大半が弾倉になっている局地防御兵器で、早い話が基地の砲台に四本の足を生やした不恰好な戦闘車両である。
不恰好ではあるが、あえてキャタピラではなく四脚にしただけの効果はあり、配置にかかる時間は非常に少ない。
まあ、胴体に比べて随分と細い四本の足が忙しなく動く姿は非常に気持ちの悪いものではあるが。
これらの装備品は防衛ラインの火力強化のために思いついたもので、咄嗟の思いつきとメニュー項目が結びついた創作兵器だ。
アーマードコアやメタルマックス、鋼鉄の咆哮のファンである俺にとって自作兵器とはたまらない機能だったが、今は喜んでいる場合ではない。
数秒で考え、あれば役に立つかもしれないと思った装備を作っただけである。
このあたり、帝国軍の技術将校たちの意見を聞ければいいものが出来るかもしれないな。
そんな他力本願な要望はさておき、支援兵器たちは攻撃を開始した。
まず攻撃を始めたのは、一斉射撃を行っている戦術機や戦車と並んでその砲身をBETAに向けていた自走機関砲である。
彼らは四本の足で地面をしっかりと踏みしめ、必殺の30mmタングステン弾を一斉発射した。
携行できる事を前提に設計されている戦術機の機関砲とは違い、これらの支援兵器は搭載している兵器を運ぶために足が付いている。
この違いは大きく、彼らが放つ砲弾は無数のBETAたちを一瞬で粉砕する。
それを見て前線の衛士たちは歓声を上げるが、その様を無視するように第二陣が突撃を開始する。
車輪が大地を踏みしめる音と推進を補助するロケットモーターの轟音を周囲に振りまく突撃爆弾である。
戦術機が自決用に装備している大型爆弾をヒントに考えてみた装備だ。
彼らは大まかな方向に向けて全力で突撃を開始し、その異常な速度によってあっと言う間にBETA集団へと激突した。
その数120両、直後に連鎖的な爆発が発生し、BETAたちの姿が消える。
決してオーバーな表現ではない。
120個の10t爆弾が若干のタイムラグがあるにしろ爆発したのだ。
再び歓声が挙がる。
見るからに無人兵器な外見をしていたという事もあり、衛士たちは素直に喜んでいる。
これはこれで使えるのかもしれないな。
使いどころは正面からぶつかり合う決戦くらいしかないが。
いや、佐渡島ハイブへの揚陸作戦でこれらを一斉に突撃させれば、あるいは。
史実において異様な兵器を数多く考案した英国を笑えない俺の脳が囁くが、何はともあれ、今回の作戦は成功だ。
既に南部も含めて全域で戦闘が行われているが、おおむねこちらの優位に進んでいる。
この作戦はもらったな。
ニヤリと笑った俺の顔は、その直後に引きつった。
「地中から増援だと!日本海艦隊は何をしていた!」
ディスプレイに映し出された敵襲の文字。
総数はおよそ一個連隊規模。
出現予想場所は砲撃部隊と我が軍基地の間。
なんて事だ。
「前線の部隊を、いや、防衛線が崩れる。ネクストたちは!?」
戦闘中の部隊を照会する。
戦術機甲連隊はいずれも交戦中。
予備兵力も含めてこちらへ派遣する事はできない。
リンクスたちは帰還中だが、ほぼ全ての武器弾薬を消耗している。
帝国軍各部隊はいずれも決死の防衛戦闘中で、こちらへの支援など期待できない。
手持ちの戦力は旧式の戦術機甲大隊および帝国軍の一個中隊と基地の防衛設備のみ。
どうやら自力で何とかしないといけないようだ。
「一個連隊を追加、防衛施設増強、念のため俺も戦術機に乗っておくか」
追加生産を命じ、格納庫へと向かう。
道すがら、いつもの基地が大きく姿を変えようとしているところを随所で目にする。
下ろされた隔壁。
戦車級が侵入可能なサイズの通路に設置された機関砲。
武装し、巡回するG.E.S.Uたち。
気がつけば、俺は完全武装の彼らを従えて格納庫へ到着していた。
「こちらは8492戦闘団、グラーバク01だ。
戦域司令部応答せよ」
戦術機を操縦しつつ回線を開く。
基地の端に、BETAの返り血を大量に浴びたネクストたちが到着してきた。
整備車両が素早く駆け寄っていく。
<<こちら戦域司令部。そちらから通報を受けた地域へ部隊を派遣中。
さらに敵の増援が?>>
そんな言葉を返してしまう気持ちは良く分かる。
先日から続く新潟防衛戦で、BETAたちは延べ四個師団近い戦力を投入してきている。
そこへ頼んでもいないのに追加の一個連隊である。
地中のBETAを探知する事に定評のある我々からの通信が入れば、当然そのような反応となる。
「帝国軍の部隊は砲兵の防衛にまわしてほしい。
こちらは基地内で待機中だった予備の一個連隊で何とかする。
それと、護衛の一個中隊を後方に下げてほしい。
我々の防衛施設で誤射をしてしまったのでは申し訳が立たないからな」
我ながら随分と偉そうな物言いだが、帝国軍を後ろに下げる事は重要である。
彼らは俺の部下たちとは違い、使い捨て可能な無人機ではない。
そして、砲台が次々と地面から沸いて出る光景を見られるわけにはいかないのだ。
<<了解、部隊を後ろに下げさせます。ご無事で>>
幸いな事に戦域司令部は俺の要望を聞き入れてくれた。
直ぐに命令が飛んだらしく、護衛部隊は跳躍噴射で素早く飛び去っていく。
「さてさて、それでは締めくくりといきますか」
腕のPipBoy3000を操作し、必要な戦力を呼び出す。
手始めに現れたのは50基の砲台だ。
旋回の際にぶつからなければ良い、という短い間隔で次々と砲台が出現する。
「増援の戦術機甲連隊は直ちに出撃!有澤社長!」
出現するなり発砲を開始した砲台たちを見つつネクストたちを呼び出す。
<<補給完了まであと三分。ダンが先に出ている>>
カメラを向けると、続々と出撃する戦術機たちに混じり、ダンの愛機であるセレブリティ・アッシュが出撃している様が見える。
元の世界では汎用人型決戦兵器であるネクストに乗りながら「通常兵器相手ならば役に立つ」と酷評された彼である。
しかし、この世界では機体を一歩降りれば、取り囲む衛士たちから歓声が挙がる掛け値なしの英雄だ。
必然的に、彼の士気は極めて高い。
<<こちら8492戦闘団、セレブリティ・アッシュ。助けに来たぜ!>>
ありがたい事だ。
レイヴンでもネクストでも、弾薬補給が中途半端な状態で出撃する事はまずありえない。
未熟ゆえかもしれないが、彼はそのありえないことをしてくれた。
通常のネクストが一騎当千ならば、彼は一騎当百かもしれない。
しかし、基地と砲兵の間にBETAが出現した今は、猫の手でも借りたい状況だ。
「感謝する。直ぐにかき回してくれ」
手短に感謝の意と命令を伝え、続けて迫り来るBETAたちを見る。
「さてさて、帝都防衛戦に比べれば随分と難易度の低いミッションだな。
BETA諸君、チート連発を味わってくれたまえよ」
上から目線で余裕を持って対処できているのには当然理由がある。
精神と時の部屋で行われていた仮想現実世界の中で、対BETAの絶望的な戦闘は多々あった。
最終的にはその大半を自分だけでも生き残ることが出来るようになった、それらに比べれば現状は随分と楽である。
極端な話、こちらの基地と自走砲部隊ならば別に叩かれても取り返しが付く。
帝国軍の損害は怖いが、彼らがよほど無能でない限りはそれほど大きな損害は考えられない。
というわけで、俺の心は以前のように恐怖に押しつぶされる事はないのだ。
「俺のターン!砲台による先制攻撃!30mm機関砲100門の乱れ撃ち!」
既に発砲は始まっているが、改めて命令を下す。
基地へ向かっていたBETAたちは鉄の暴風に晒され、一瞬で前衛のほぼ大半が消滅する。
特に速度の関係から最前列に出ていた突撃級や、それ以下サイズの脆弱なBETAたちが甚大な損害を受けているようだ。
「続けて増援の戦術機甲連隊先発の一個大隊による制圧射撃!出撃中の他の部隊にも攻撃指示!」
我が軍は圧倒的ではないか。
砲台による攻撃で少なからぬ損害を受けた所に戦術機甲大隊の放つ制圧射撃が降り注ぐ。
だが、それだけの攻撃を受けてもなお、BETAたちの足は止まらない。
大きく数を減らしてはいるが、それでも突撃級たちが基地の支配地域へと侵入を遂げた。
「プラントで爆破パイプラインを連続生産!突撃級たちの足元に出現させて爆破!」
基地の支配地域内では、プラントが創造したものを即座に出現させることが出来る。
もちろん巨大な建設物ともなればそれなりに時間が必要だが、建物に比べれば随分と小さい爆発物ならば瞬間的に出現する。
結果として、チート極まりない情景が出現した。
進撃を止めない突撃級たちの足元が突然広範囲に渡って爆発し、彼らは吹き飛ばされるか地中へと落ち込む。
そこに後続していた様々なBETAたちが次々と落ち込み、足元にいた仲間たちを圧死させていった。
戦術機甲連隊にネクストにプラントという魅力的な餌を目指す彼らは、そのような些細な問題は気にせず突撃を継続する。
だが、狭い戦闘正面に非常識なまでの火力を集中させている我々が相手である以上、BETAたちの殲滅はそれから十五分ほどで達成された。
2001年11月12日月曜日 09:00 日本帝国 新潟県新潟市秋葉区新郷屋 国連軍第8492戦闘団新潟基地
「はあ、出頭命令ですか」
BETAの死骸を満載した車両が行き交う基地の営門で、俺は完全武装の歩兵一個大隊および戦車二個中隊、戦術機甲一個大隊の訪問を受けていた。
わざわざ横浜からこれだけの部隊を派遣してきた理由は明白である。
横浜と新潟に勝手に基地を設け、どこから呼び出したか誰も知らない軍団規模の戦力を用いる『自称国連軍軍人』を捕まえにきたのだ。
これだけ大暴れすれば当然の事である。
事前に香月副司令から連絡を受けていた事もあり、すっとぼけた返事をしつつも俺は素直に横浜へと移送される事になった。
そこでモニターごしに国連軍のお偉方一同から査問会的なものを受けるのだそうだ。
身辺整理のためと称して五分間時間を貰い、リンクスたちへの待機命令とBETA回収作業の続行を命じる。
幸いな事に、処分先に困っている帝国軍も回収に協力してくれるそうだ。
どうなるかはわからないが、できれば拷問や問答無用の銃殺は勘弁してほしいところだ。
見送りに来てくれた帝国軍上級将校たちの心配そうな表情に見送られつつ、俺は横浜への安全だが安心できない旅に出発した。