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No.8823の一覧
[0] じゃぷにか闇の日記帳 【A's再構成】【完結】[男爵イモ](2009/11/19 05:15)
[1] Nachthimmel 1[男爵イモ](2009/05/22 17:24)
[2] Nachthimmel 2[男爵イモ](2009/06/18 02:30)
[3] Nachthimmel 3[男爵イモ](2009/06/18 02:31)
[4] Nachthimmel 4[男爵イモ](2009/06/18 02:32)
[5] Nachthimmel 5[男爵イモ](2009/06/18 02:33)
[6] Nachthimmel 6[男爵イモ](2009/06/13 16:52)
[7] Nachthimmel 7[男爵イモ](2009/07/26 05:27)
[8] Nachthimmel 8a[男爵イモ](2009/06/21 10:24)
[9] Nachthimmel 8b[男爵イモ](2009/07/26 05:28)
[10] Nachthimmel 9[男爵イモ](2009/07/06 20:26)
[11] Regenwolken‐a[男爵イモ](2009/07/26 05:28)
[12] Regenwolken‐b[男爵イモ](2009/07/26 06:08)
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[8823] Nachthimmel 5
Name: 男爵イモ◆16267a69 ID:23e52052 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/18 02:33

 みんなへ

 今日はなんだかすごい夢を見ました。
 夢の中の私は、闇の書片手に秘密結社の幹部になって、正義の魔導探偵をちぎっては投げちぎっては投げ、大暴れしていました。それに、闇の書がきれいな銀髪赤目の女性に変身していました。巨大ロボットもたくさんいたような気がします。
 ちなみに、こんなわけのわからない夢をみんなに説明したかったわけではありません。疑問を思いついたきっかけとして紹介したかっただけです。
 つまり、必要に迫られたのではなくて、ただ興味からの質問だということです。なので、あまり真剣には考えず、はっきりと答えてくれて構いません。
 前置きが長くなりました。
 私がみんなに尋ねたいのは、私にも魔法が使えるのかどうか、ということです。

 はやて






『恐らく不可能かと。 si』

 一撃でござった。

「むーん」はやては口をとがらせる。不満なのではなく、不満を装っている。少しだけ頬が熱い。特に根拠らしい根拠もないまま、自分は魔法を使えるはず、という確信めいたなにかを感じていたので、あっさり否定されたのが恥ずかしかった。

『ちなみにどんなの使いたいの? vi』ヴィータが尋ねた。

『空を自由に飛びたいな。 はやて』はやては答える。

 外では無理だとしても、屋内で空を飛べたら色々と楽になる。彼女が住むのはバリアフリーの住宅だが、それはマイナスをゼロに近づけるためのものである。料理をするときも、トイレや浴室を使うときも、車椅子だとなかなかどうして手間が多いのが現実だった。

『きっとそのうち車イスも魔法もいらなくなると思う。 vi』

 つまり、歩けるようになるということ。しかし、そのあたりについては、ちょっと懐疑的なはやてである。

『そうかな? はやて』首を傾げつつ書く。

『そう。 vi』
『なります。 za』
『良くなります。 si』
『いずれ良くなります。 za』
『きっと治りますよ。 sha』
『治るはずです。 za』

 はやては驚いた。目が丸くなっているだろう。少し遅れて、同じように口も開いていることに気がついたので、ゆっくりと閉じた。
 ときどきこのように、タイムラグなしで騎士たちの書き込みが連なるが、今回は特に速い。ほとんど一瞬だったので、記録が残る日記帳という形式でなければ、発言の順はわからなかったはずだ。現れた全ての文を同時に読もうとした目が混乱して、上下に行ったり来たりを繰り返したほどだった。

「そかそか」はやては膝を撫でた。自分が少し困ったように笑っているのがわかる。「まあ、みんなが口そろえて言うんなら」

 ほんの少しだけ素直になれそうな気がした。
 希望に満ちた自分の将来は信じられなくとも、騎士たちの言葉になら心を寄りかからせることができる。いつの間にか、そういう風になっていた。

「さて……、素直になったところで、そろそろツッコミ入れなあかん時間がやって参りました」はやては華麗なペンさばきで文字をつづる。『みんなありがとう。ザフィーラは落ち着きたまえ^^  はやて』きちんとお礼をしてから突っ込むジェントルなはやてだった。

『自重します。 za』

『魔法が必要なときは、言ってもらえればお手伝いしますよ。 sha』すかさずシャマルが身内の失態をフォローするため話を別方向へと持って行く。

『そのときはよろしく。 はやて』

 そのときは、その日の内に訪れた。
 真昼の図書館である。ここぞとばかりに働く冷房によってもはや屋外とは別の世界になっている館内にて、はやては困っていた。
 本に手が届かない。しばしばあることだった。だから、興味の湧いたタイトルを頭の中にメモしておき、後でまとめて職員に取ってもらうようにしている。しかし、いま彼女は手を伸ばしている。あと少しで届きそう、あと少しが届かない、そんな位置にあるものだったから、どうにか自分の手で取ろうとしていた。
 中指の側面と人差し指の爪が、本の端に触れる。あと数ミリ奥まで届けば、指で挟んで引っ張れそうな状況。
 これ以上は無理だった。
 はやては周囲を見回して、人目がないことを確認してから闇の書を開いた。

『腕が長くなる魔法はない? はやて』

 返事の代わりに、本棚からひとりでに抜け出した本が膝の上に着地した。

「……腕を長くするってなんやねん」しばしの沈黙の後、思わず自分につっこむはやて。「えと、次の本は」シャマルにお礼を書いてから、車椅子を右に向け通路を進もうとしたところで、彼女は見つけた。「あ……」

 先ほど本を取ろうとしていたときの背後、つまり現在は右手側にある本棚、その歯の欠けたくしみたいに本のない隙間から、こちらを見る瞳。
 そこには驚きの色しかない。
 もちろん、相手が見るはやての顔にも原色の驚きしかないだろう。こんなに驚いたのは随分と久しぶりだった。もしかしたら、自分では気づかなかったが、体全体で跳ねたかもしれない。
 魔法を見られたのは明らかだった。
 どうする?
 自問するが、答が出ない。
 答より先に、言葉が出た。

「ノ、ノー、いまのは魔法やなくて……、えっと、そう、最新の科学技術! イギリスの諜報組織のボスにして英国紳士なグレアムおじさんがプレゼントしてくれた、超空間重力装置HGS搭載のスパイ用の秘密道具! 魔法とかじゃないんよ! インディアン嘘つかへんアル!」

 徹頭徹尾メチャクチャだったが、幸いにも目撃者の少女は頷いてくれた。それはもうカクカクと、関節の壊れた人形みたいに。
 だが、この瞬間だけの幸運に頼るわけにはいかない。
 いざ口封じへ。
 はやては珍しく、積極的に他者へと働きかけようと決めたのだった。





 月村すずか。
 それが、彼女の名前だった。
 年齢ははやてと同じ。私立聖祥大学付属小学校に通う二年生。
 聖祥といえば、白くて可愛らしい制服を見かけたことがある。今日のすずかはそれを着ていなかったが、きっとよく似合うはずだ。綺麗な黒髪との組み合わせは、とても映えるだろう。頭の中で彼女を着せ替え人形みたいにして、はやてはそう結論した。

「うん、これでメールも電話もできるね」そう言って、すずかは微笑んだ。

 普段から連絡を取れるよう、アドレスの交換を提案したのはすずかだった。別れ際に彼女が言いだすまで、はやては思いつきもしなかった。というより、図書館で出会った同好の士とのお喋りが楽しくて、遠くのことがすっかり見えなくなっていた。だから、すずかが申し出たことで、はやては喜ぶと共にほっとしたものだった。この場だけで終わりにならなくて良かった、この場だけで終わっていたなら後悔していただろう、と。
 また、すずかは目撃したものについてはなにも尋ねなかった。近づかない方が安全と判断したのか、気を遣って見なかったことにしてくれたのか。ほんの三十分ほどの会話を通して、はやては後者だと確信した。同年代と比べれば子供らしくないと自分を評価しているはやてだったが、すずかは子供らしくないのではない、大人っぽいという言葉が相応しい。斜に構えたところが全く存在せず、綺麗にしなる枝みたいな印象。他人に優しくするのがとても上手な人。

「それじゃあ、またね」すずかが手を振る。

 またね。素敵な響きだ。

「ん、またー」手を振り返す。

 それからはやては数冊の本を見繕い、カウンターで貸し出しの手続きを行ってから帰路についた。
 道中、燦々と降り注ぐ太陽光に日傘で対抗したものの、暑いものは暑い。汗で濡れたシャツが背中に張り付いているのが気持ち悪かった。屋外での唯一の安らぎは、瑞々しい葉をつけた木の影に入ったときだけである。そこに風が吹けば、ひんやりとした感触がたまらなく心地良かった。しかし、実際にそのような場面に出くわすことはほとんどなく、したがって、家にたどり着く頃にははやてはすっかり干からびてしまっていた。まだ七月前半だというのに、これから先が思いやられるというものだ。
 そんな彼女が劇的に復活したのは、ポストにの中に見つけた一通の封筒が原因だった。
 赤と青のラインが縁を彩るそれは、エアメールと聞いて最初に思い浮かべる人も多いであろう典型的なものだ。そして、はやてにとっては更にもう一つの意味を持つ封筒でもある。
 そもそも手紙というものを受け取ることがほとんどない彼女であるが、この封筒だけは例外で、これを使って定期的に手紙を送ってくれる人がたった一人だけ、いる。だから、手紙そのものにも、そしてこの封筒にしても、最初に連想するのはその人のことだった。
 既に亡い両親の友人にして、財産管理などの煩わしさをはやてから遠ざけてくれている恩人。
 グレアムおじさんことギル・グレアムがその人である。
 逸る気持ちを抑え、はやてはまず着替えた。そして、乾いた衣服の肌触りを感じながら、机に向かった。
 引き出しから少しおしゃれな銀色のペーパーナイフを取り出す。
 それを使って封筒を開き、丁寧な手つきで便箋を取り出す。
 白くまぶしい二枚の便箋に、綺麗な文字が綴られている。もちろん日本語だ。グレアムおじさんは実に多才なのである。
 内容は、はやての身体を気遣う言葉、近況を尋ねる言葉、その他諸々。いつも通りといえばいつも通りだったが、それでも嬉しい。
 新しい友人ができたり、グレアムおじさんからの手紙が届いたり、今日はとても運のいい日だ。そんなことを考えながら、はやてはもう一度手紙を読み返すことにした。





・7月10日 土曜日 晴れ
 すずかちゃんと知り合い友達になった。
 グレアムおじさんから手紙が届いた。
 いいことが重なって嬉しいけれども、少しだけ怖い。貯金を切りくずすというか、借金ができたというか。いいことがあった分、いつか悪いことがありそう。
 それはともかく、これを書き終えたら、メールをして、手紙の返事を書こうと思う。
 本当はすずかちゃんとグレアムおじさんに、ヴォルケンリッターのみんなを紹介してあげたいのですが、できないのが残念です。紹介したいという私が、まだみんなの姿を見たことがないというのもおかしな話ですが……。
 というわけで、今さらですが、もしよければみんながどんな姿をしているのか教えてください。

 はやて






 翌朝はやてが見た返信より抜粋。

『シグナムはなんか剣とか持っててポニーテールでつり目です。あと背が高くておっぱいも大きいおっぱい魔神です。 Vita』
『ヴィータちゃんは小さくて可愛いけれど、とても頼りになりますよ。でもシグナムには弱いみたいです。 Shamal』
『ザフィーラは狼です。 Signum』
『シャマルは最年長で一番の美人です。 zafila』


「ほんまかいな……」読み終えたはやては呟いた。見えないところで何があったのかを考えながら。



【残り482ページ】







~・~・~・~・~・~・~・

・超空間重力装置(Hyperspace Gravity System)
 どこかのインディアンの部族が開発した重力制御装置。というはやての脳内設定。彼女自身、思いついてから三秒くらいで忘れたそうな。
 


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