「李典さん。お邪魔しますよ」
「おお、店長やん、どないしたん?」
こんにちは、徐晃です。
今日はお城の李典さんを尋ねてきました。
部屋にも居ず、調練場にも居ず・・・華琳さんに聞いた所、工房に入り浸っているそうです。
それにしてもこの工房、ものすごく生活臭がします。
それもかなり私用な匂いがしますね。
いいのか、これで?
「どうですか?依頼した物の状況は?」
「ああ、大分進んどるで。ちょっと見る?」
「ええ、是非」
そう、李典さんにはアレコレ色々な物をお願いしています。
全部調理器具ですけどね。
これがまた、色々あるにはあるけど使い難い物ばかりで・・・慣れるまで頑張るのも面倒じゃないですか?だから、もっと良い奴をお願いしています。
「コレなんかはほぼ完成やね」
「おお、凄い」
腸詰め用の器具ですね。この世界の物はまだハンドルが付いていないので作ってもらいました。ハンドルをグリグリ回せば肉が出てくる仕組みなんでしょう。
ところてん用みたいな奴しかないですからね~。
懸念していた螺旋の小型化は完成したようですね。
あいもかわらず、この世界は変ですよね~。ネジが日本に伝わったのは、確か・・・種子島と一緒だから・・・中国でももっと後だと思うんですけどね。
まあ、細かい話は置いておきましょう。
「あとはこの出口の大きさを調整出来るようにすれば完成や」
「流石です。助かります」
「いやいや、ええんよ。店長には色々、案を貰うてるしな。後、これも完成間近やね」
おお、挽肉製造マシーンじゃないか!
これで叩かなくても大丈夫。労力が軽減されます。
結構しんどいんですよね。あれは。
「いやいや、恐れ入りますね。からくり夏侯惇で良いんでしたっけ?」
「そやそや、頼むで。あれと店長の案さえあればウチはまだ十年戦える」
からくり夏侯惇。もう絶版で出回っていない物ですから、探すのに苦労しました。
持ちつ持たれつって奴ですよ。
別途でお金は払ってますよ。もちろん。
「とりあえず目処が立ってるのんは、まだこんだけやけどね。例のブツはもう少し待って頂戴。華琳様から予算も出たよってな。これから本格的に始まるわ」
「十分ですよ。で、今日持って帰れますか?」
その瞬間、李典さんの表情が変わりました。
「あかん!まだ完成はしてへん。こんな状態で使われたらウチの名前に傷が付くやないか!」
「そ、そうですか?十分使えそうですけど?」
虎の尻尾でも踏んだのでしょうか?
あと、顔が近いです。
「あかんもんはあかん!もっとこう、以前のもんとは違うのが一目で分かるような意匠にせなあかん!」
意匠?見た目って事でしょうか?
なら、ハンドルが付いているだけで十分だと思うのですが?
「こう、武具なら強そうな感じ!とか、道具なら便利そうな感じとか!一目で分かるようにせな!」
「それは性能には意味が無いのでは?」
「うん。無いよ」
うそーん。
「あ、何や、その目は!ええか、からくりっちゅうもんはな――――
何故か正座で延々からくりについて説明されました。
なんか理不尽だ。
解放されるまで長かったです。
その上、意匠が完成するまで持って帰らない誓約書まで書かされました。
でも、文句は言えませんでした。
だって、話が長いんだもん。
ではでは、帰りましょう。なんか疲れたし。
「そこー、ぺちゃくちゃ喋るんじゃないのー!その口に<自主規制>なのー!」
えー、うそーん。
何故に海兵隊式の調練?某軍曹さんでもいるのでしょうか?
でも、あの声と喋り方は・・・
「于禁さんじゃないですか」
「あー、店長なのー。こらー、そこーチンタラするんじゃない!なのー!」
広場ではえらく可愛い鬼軍曹が、木刀片手に兵をシゴいていました。
ギャップ萌えでしょうか?
「下品ですよ。流石に」
「そうでもないのー、この調練方法は由緒ある方法なのー。さっさと走れーなの!あんまり遅いと<自主規制>なのー!」
「で、由緒あるとは?」
「フッフッフ・・・これなのー!魔尾将軍の海兵隊式罵り調練手帳~!」
うわー、嘘臭せー。
「これは光武帝の頃の将軍、魔尾と言う人の部隊、海兵隊でやっていた調練方法なの~、だから効果は抜群なの~。むっ!この、ふにゃちん共!貴様等、<自主規制>の<自主規制>に<自主規制>を<自主規制>なの~!分かったか~なの~!」
『サーイエッサー!』
えー、そんな所まで。
「ソウナンデスカ?」
「そうなの~。あ、店長、信じてないの~」
そんな顔をしていたかな?
まあ、胡散臭さに鼻は曲がりそうですけど。
「なら、店長も参加すればいの~。ほら早く早く」
「え、嘘?いや、俺は」
チョット待って下さいよ。
「つべこべ言うな~なの~!さっさとその<自主規制>を<自主規制>なの~!」
「はいー!」
「返事はサーイエッサーなの~!」
「サーイエッサー!」
なんでこんな目に合うんだ?意味が分からん。
「こらー、チンタラ走るな~なの~!<自主規制>の<自主規制>を<自主規制>なの~!」
「さ、サーイエッサー!」
そんなこんなで延々、走る羽目になりました。
もう嫌だ。
「はあ、もう嫌だ。とっとと帰ろう」
解放されたのは日が暮れてから。
なんだかんだで、一番走っていたっけな。
俺を他所に次々と倒れてく兵隊さん達。
それを見下ろしながら罵詈雑言を投げつける、キュートな鬼軍曹。
シュールすぎる。
まあ、根性だけは付きそうですね。
参加するのは嫌だけど。二度と御免です。
もう誰とも絡まんぞ!おれは決めた!今、決めた!
ん?あれは?
「楽進さん。見回りですか?」
「あ、店長さん」
来た、常識人。この人なら関わっても何も起こるまい。
安全牌ですよ。
「こんな遅くまで大変ですね」
「そうでもないですよ。今日は私と部下だけですから。街は平和ですし問題はありません」
「お仕事お疲れ様です」
手に持っているのは籠に入った小ぶりの肉まん。おお、美味そう。
そういえば飯食ってないな。
「お腹空いているんですか?虫が鳴ってますよ」
「今日はお城に用事で行っていたもので・・・なんだかんだで飯食ってませんでした」
「良かったらどうぞ」
「ありがとう御座います。お腹減ってたんですよね~」
と渡される肉まん。まだ、温かい。
いや、この人の気持ちが暖かい。
今日は酷い一日だったからな。心に染みる。
ここはご好意を頂きましょう。
では・・・
「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」
何だ!この辛さは!尋常じゃない。
いや、そんな事はどうでもいい!
水!水!
「ちょっと辛かったですか?飲み物は・・・これしかないですけど。どうぞ」
「・・・!!!」
思わずその場でぶっ倒れてしまった。
ほんのり甘い蜂蜜水。
スイカに塩を振ると甘くなる原理の反対か!これは!
しばらく悶絶してしまいました。
これは・・・つらい。
涙が出ちゃう。
その場から復活するのに時間がかかってしまいました。
上手く喋れなかったので、楽進さんには後日、お礼をしましょう。
結果はどうであれ、好意で頂いたものですからね。
「ただいま~。今日は散々だ」
「お帰りなさい。兄様」
えーっと。何でしょうか?
仁王立ちの流琉が居ますよ?
目は笑ってないよね。それ。
俺、何かしたっけ?
「えーっと・・・何かしたっけ?」
「何もしてませんよ。な・に・も!」
ならいいじゃん。
「兄様、仕入れは?」
「・・・・・・しまったー!!!」
直に終わると思って、その足で仕入れに行く予定だったー!!!
「今日の食材は昼で無くなったのでほとんどありません!臨時休業になったじゃないですか!お金も持って行ったから殆ど無いし!」
「すみません。すみません。すみません」
ついつい忘れていた。
「しかも、こんな遅くに帰ってきて!いいですか?そもそも兄様は<中略>・・・
えー、本日二度目の正座でした。
散々だ。
改名しようかな?きっと画数が悪いんだ。
あとがきです。
勢いだけの作品は非常に薄い。
こういう勢いだけの作品ももっと凝ったものが出来ればいいんですが。
実力が足りません。今後も頑張ります。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座いました。