<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.8531の一覧
[0] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 (真・恋姫†無双 オリ主TS転生もの)[ユ](2009/08/20 18:09)
[1] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第一話「眠れる狂児、胎動す」[ユ](2009/05/06 17:30)
[2] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第二話「動乱の世の始まり」[ユ](2009/05/15 19:36)
[3] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第三話「反董卓連合」[ユ](2009/05/21 17:14)
[4] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第四話「ほのぼの茶話会」[ユ](2009/05/25 20:49)
[5] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第五話「天下無双」[ユ](2009/05/30 13:55)
[6] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第六話「断固たる意志」[ユ](2009/06/04 17:37)
[7] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第七話「洛陽決戦」[ユ](2009/06/08 18:27)
[8] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第八話「誤算」[ユ](2009/08/20 18:08)
[9] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第九話「決着」[ユ](2009/11/25 00:08)
[10] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第十話「帰路」[ユ](2010/05/17 22:38)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[8531] 【ネタ】三国志外史に降り立った狂児 第三話「反董卓連合」
Name: ユ◆21d0c97d ID:b74c9be7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/21 17:14


 ――とある街道を荷馬車を率いて行く一団。

「――ところでご主人様ー?」
「……なんだ、子義?」
「反董卓連合の集まる所に行くのはいいのですが、そこから先の当てはあるのですかー?」

 先頭を行く太史慈が馬上から声をかけてくる。

 魯家の中で一番腕の立つのは彼女なので、この一団の先頭なのは当然だ。一般人より多少はマシだが、この魯粛の身体に戦闘力を求めてはいけない。生まれてから硯より重い物を持ったことがないし、他に連れてきた二人にすら遥かに劣る。

「無い。けどまあ、何とかするさね……」
「あ、主殿? 本当に大丈夫なのでしょうか?」

 楽観的に答える魯粛に、隣の馬上から不安そうな声をかける少女。

 名は賀斉、字を公苗という。

 三国志演義では登場しないのだが、正史の方では『孫呉』にとって欠かせない山越などの異民族キラーの異名を持つ人物である。それらの反乱平定を中心に功績を重ねて出世した将軍の一人で、武勇だけではなく地方政治等にも秀でている……あと非常に派手好きな事も有名。

 この世界においてもその派手好きは受け継いでおり、太史慈と同じくらいの健康的なその肢体を豪華な軍装で着飾っている。まあ金に余裕がある魯家だからこそ、それもまかり通るのだが。

 ただ見た目の派手さと矛盾して、その性格はわりと心配性だった。

 そして単純な『武』の筆頭である太史慈とは違い、今回魯家に置いてきた呂岱のように兵をよくまとめる才能も持っている。特に寡兵を持っての戦術は、歴代の英傑達にも勝るとも劣らないと言ってもいい。

 彼女の性格と能力から、今回のような護衛任務には適任と言える。

「公苗姉、御主人は何とかすると言っている。我らはただ、それを信じてついていけばいい」
「義封ちゃん、でも……」

 不安そうな賀斉に、反対側の馬上から生真面目に言葉を返す幼女。

 その姓は施、名は然、字を義封。

 三国志を知っている人ならば『朱然』と言った方がわかりやすいだろうか。若い頃から孫策に仕え、その経緯から呉の宿老である朱治の養子となった人物。後の孫権にも評価されたその才能は、呂蒙に「決断力、実行力ともに十二分」と言わせ、その後継に推薦された程である。

 魯粛の人材スカウトに引っ掛かった時、元来の姓である施氏だったので気づかずに魯家に招いていた。

 微妙に知らない名前にしてはえらい優秀な子だなーと思い、そんな彼女を側近に起用してみて驚いたものである。思った以上に呉の重臣を引き抜きすぎ……とかいうレベルは既に超越している気がしないでもない。歴史の修正力か何かで、明日自分死ぬんじゃね?とか常々思ったものだ。

 ちなみに彼女、見た目は完全に『幼女』である。でも口調、性格は生真面目一辺倒……何というギャップ萌えか。世間的に男である魯粛の……その風評が今、どんなものになっているかは聞きたくもない。

 とりあえず賀斉を少し落ち着かせる方が先か。

「――公苗、反董卓連合の掲げる大義名分とは何だろうか?」
「えっと……董卓の圧政に苦しむ民を救う為、ですか?」
「そう、つまりは名目として『民の為』というのが連中の強みの一つ。その世論を強める影響力を持つ商家との繋がりを、彼らとしても邪険には出来んよ。まあ、そこから先は盟主の器次第だが……」

 反董卓連合の盟主である袁紹。

 史実における彼の評価を簡単にまとめると、『名は世に知れ渡るものの、概ね決断力は無く器量も不足していた』といったところだろうか。三国志の記述から外面は寛大らしいので、魯粛達がただ面会することは容易い筈だ。しかし内面の猜疑心は強いということなので、下手な策謀を仕掛けようとするのはやめた方がいいだろう。

 まあ、仕掛けるような策謀なんぞないが。

「……董卓側の刺客と疑われないでしょうか?」
「こんな堂々と近づく刺客なんていないだろう、公苗姉はいつも心配しすぎだ……」

 心配性な賀斉を宥める幼女施然……何かシュールな図だ。

 こと戦場において、魯粛というこの身が何かの役に立つとは思わない。貧弱な魯粛と違って護衛である三人は、人間一人くらいなら片手で持ち上げる程の膂力を持っている。生前の常識的にはありえないことだが、いざという時には自分を抱えて逃げてもらおう。

「さて、どうなることやら……」

 目の前に見えてくる大軍団の集まりは、これから先に進む歴史の道標の一つ。

 ――反董卓連合軍。





三国志外史に降り立った狂児 第三話「反董卓連合」





 ――反董卓連合袁紹軍大本営。

 そこで上座に立つ金髪でグルグルな縦ロールの女性が騒ぎ出す。

「――この連合の戦を見学したい、ですって?」

 彼女の名は袁紹、字を本初。

 その彼女の傍らには、二人の女将軍が控えている。太史慈と似たような雰囲気を持つことから、おそらくは袁家の二枚看板こと文醜と顔良だろう。

 魯粛はまずこの反董卓連合の盟主に面会を求めたのだが、予想以上に史実とは違う姿に戸惑っていた。いやまあ、初っ端に「おーっほっほっほ!」とか言いながら現れた日にゃ面食らうのも当然だと思うのだが。

(なんというゴージャス縦ロール……)

 それはともかく、ただの商人でしかない魯粛達に反董卓を掲げる連合の戦いを観戦させるなど無茶な話である。

 しかし、魯粛が平身低頭して袁紹のことを褒め称える姿を見て、気位の高い彼女はそれなりに満足することが出来たようだ。彼女の隣にいた文醜もわりと単純思考なのか、この程度の煽てに袁紹共々気分を高揚させていた。

 そんなノリノリな二人の姿を見て、一人溜め息をつくのは顔良のみ。

「――商人にすぎない私が、こんなことをお願いするのも僭越なのですが……」

 ここまで扱いやすいと逆に困ってしまう。

 そうやって調子に乗って失敗した例を知っているので、程々に自重した方が良さそうだ。

「名家袁紹様の率いるこの正義の大軍団、それ程の大戦をただ静観するのはあまりにも勿体無い。更に天下に名を轟かせるであろう袁紹様の戦いぶり、是非とも大陸の商家の連中に聞かせてやりたいと思いまして……」
「――あら? このわたくしの素晴らしさがわかるなんて、あなた中々見る目がありましてよ?」

 しかしこの袁紹、ノリノリである。

「……いえいえ、袁紹様程の英雄の名を知らぬ者などおりませんよ」

 魯粛の褒め言葉に有頂天なのか、彼女はすごく機嫌が良さそうだ。『豚も煽てりゃ木に登る』ではないけれど、こうも簡単に煽てに乗られると心中複雑なのだが。心の裏の猜疑心すら感じさせないその有様に、魯粛としては驚くよりも呆れてしまう。

(……これでいいのか、連合の盟主)

 ここに来る前に少し情報を集めたのだが、これから向かう先は正史には存在しない汜水関だという。

 つまりは歴史的にこの場面は演義ベースということだ。

 すると虎牢関の戦いが終わった後に、董卓は洛陽を焼け野原にして長安に逃げたりするのだろうか。その場合下手に長居すると、袁紹と袁術の権力争いに巻き込まれるかもしれない。どこまで歴史が演義ベースなのかはわからないが、虎牢関を抜いた後くらいで切り上げた方がよさそうだ。

 元々戦力と数えられていない魯粛達が、途中で抜けても問題は特にないだろう。

「じゃあ、斗詩さん。兵に伝えて、わたくしの陣に賓客として彼らの天幕を用意して……」
「――ああ、そうだ袁紹様。私達はただの商人ですので、これだけの規模での軍行動についていくのは難しいでしょう……残念なことですが」

 折角の上機嫌の彼女に水を差すのも何だが、魯粛の目的を考えると袁紹軍では少し動きにくい。

 何分連合盟主の軍であるから、間諜的な意味で諸侯を探りにくいのだ。

 それに面会前に陣容を観察した太史慈達によると、下手な乱戦になった時に大規模な軍故に統制を保つのは至難とのこと。要するに自分達が巻き込まれずに逃げるのも難しいので、もう少し小さい規模の軍の方が安全面でのデメリットはあるが、行動を阻害されない分そちらの方が都合がいいわけだ。

 そういうわけで、他の適当な軍に逗留したいのだが……その為にも目の前の彼女のプライドを傷つけずに事を収める必要がある。

「袁紹様の寛大なる御厚意には感謝したいのですが、結果として足を引っ張ってしまうのでは意味がありません。折角の袁紹様の華麗な戦いぶりに水を差すなど出来ませんし、出来ればどこか他の適当な軍に逗留させてはいただけないでしょうか?」
「……むむむ。そういうことなら、仕方ありませんわねぇ……」

 気位の高い彼女の言葉を遮ることに不安はあったが、何とか納得してくれたようだ。

「でも姫ー? 他の適当な軍ってどこにするんですかー?」

 一人考え込む袁紹に、文醜が軽く声をかける。

「そうですわねぇ……適当で平均で平凡で普通に影の薄い軍というなら、白蓮さんのところにでもしましょうか。斗詩さん、伝令と案内よろしくですわー」
「は、はぁ、わかりました(そこまで言わなくてもいいのに…………否定はしないけど)」

 何やら彼女がひどいことを言った気がする……気のせいかもしれないが。

 あと彼女達が提示した人物の名前には聞き覚えがない。そんな疑問符を浮かべている魯粛に、その思考を読んだのか顔良が小声でこっそり教えてくれる。

「……えっとですね? 『白蓮さん』というのは幽州の公孫賛さん、という方のことです」
「ああ、あの『白馬長史』ですか。……人選的に随分な適当ですなぁ」

 この頃台頭してきた公孫瓚という群雄は、適当と評されるような人物ではない。

 確かにその人物の逸話には芳しくないものもある。生まれ育った環境が複雑だったという話もあるが、元々名声や実力を持つ者を故意に困窮に陥れたり、重用するのは決まって凡庸な者だったりと、およそ英傑と呼ぶにはふさわしくない所業ばかりだったとか。

 しかし、その戦の能力に関しては侮れない。

 例えば黄巾賊の残党三十万を二万の兵を率いてこれを撃破したり、そこへ追撃をかけ更に数万の兵を討ち取ると共に大量の捕虜と軍需物資を手に入れたりしている。おそらく戦の『機』を見ることに優れていたのだろう。地力の差が相当あった袁紹ともそれなりに奮闘していることから、適当な将とはとても言えない筈だ。

 だが、やはりそこは不思議ワールド。

 この袁紹だけがそう言うならともかく、良識的な顔良がこうして否定しないことから言葉通りの可能性も高い。まあ魯粛達を受け入れることで、袁紹も公孫瓚を迂闊に前線に投入出来なくなるだろうから、安全面で気にすることは特にない筈だ。

 よほどの猪突猛進な将でない限り、自軍を無理に死地に送ることはないだろう。

(……それにしても適当な公孫瓚と言われても想像つかないな)

 あと何故かはよくわからないが、この世界では『公孫瓚』ではなく『公孫賛』らしい。





「――と、そう思ってた時期もありました…………はぁ」

 顔良に案内された公孫賛陣営を見て、魯粛は溜め息をついた。

 一応袁紹には連合内をそれなりに自由に出歩く許可をもらったので、これを機に賀斉と施然には各軍の視察に行かせている。今魯粛の傍にいるのは太史慈のみだが、それでもこの陣営で孤軍奮闘している総大将よりはマシかと思うと複雑な気分だ。

「た、溜め息をつくなぁ~!」

 魯粛達を迎えに来て、公孫賛と名乗った少女が涙目で吼える。

「いやいや、公孫賛殿。これだけの規模の軍で、総大将が常に自ら動かないといけないというのは結構致命的ですよ?」
「ぐっ……! し、仕方ないだろう、人手が足りないんだから……」

 仕方ないだろうと言い訳しようとした彼女を、太史慈が冷静に突っ込む。

「人手が足りないのなら、そもそもこんな連合に参加しなければいいのに……」
「子義、それを言っては見も蓋もないぞ……」
「うぅ……」

 最近は政治方面にも知識を伸ばしているらしいので、その視野は昔よりもっと広く前を見ている。雇い主として、逸材が成長していく姿を見るのは楽しい。……たとえ時代的にその能力を持て余していたとしても。

 それはさておき、今はこの公孫賛軍の方を気にするべきか。

 世間でもそれなりに有名な、騎射のできる兵士を選りすぐって白馬に乗せた『白馬義従』。その騎兵隊としての評価は、涼州騎兵にも優るとも劣らないと言える。しかしそれを指揮する人材が、現状公孫賛一人しかいないというのは大問題だろう。

 流石に魯粛もここまで人がいないとは思わなかった。……時期的に趙子龍がまだいてもよさそうなものなのだが。

「……公孫賛殿、常山の趙子龍という将はいないのですか?」
「え、星……趙雲か? あいつなら桃香……劉備の下に行ったけど、それがどうかしたのか?」
「…………ワーオ」

 公孫賛の早期滅亡フラグが立ちました。

 というか歴史的に劉備に流れ着くのは仕方ないとして、州を治めるものとしてあれほどの猛将を手放すなんて……普通にありえない。おそらく悪い人じゃないんだろうが、隣接する諸侯の中にあの袁紹がいることをいまいち理解していないようだ。かの国の地形的に、これから先どう動くかくらいは想定して然るべきだろう。この乱世の時代において、危機感があまりにも足りない気がする。

 魯粛的には全く関係ないので、この場合放っておくのがベストだ。

 しかし、目の前のいかにも『いい人』な少女をただ捨て置くのは気が引けた。彼女の才は乱世においては三流だが、逆に平時においてのその普遍的で善良な堅実さは貴重である。このまま乱世の波に飲み込まれてしまうには惜しい人材だろう。

(……やれやれ、世知辛い世の中だなぁ)

 とはいえ魯粛に出来ることなどあまりない。

 実際に彼女の国が滅んだ時、その亡命を魯家で受け入れるくらいだろうか。

 先程から公孫賛の話を聞いていると、どうも彼女は劉備とそれなりに縁があるらしい。滅亡の際に劉備が現在の平原の牧のままならいいが、史実のように徐州の州牧になる可能性があることから……間違っても彼女が劉備の所に流れ込むような事態は避けたい。

 公孫賛が滅ぶということは、あの袁紹が河北全てを治めるということである。つまりは後顧の憂いがなくなるわけで、袁紹の性格を考えれば確実に南征が始まるだろう。その時に滅ぼした国の総大将が逃げ込んでいるなどと知れたら、無駄に攻め入る名分を与えることとなる。そして袁紹という大国の侵攻を、弱小国の劉備が止められるわけもない。更に言えば、地形や時期的に周りの国がそんな惨状を放置するわけもないだろう。

 つまりは徐州は確実に戦火に見舞われ、下手をすれば徐州虐殺のようなことに成りかねない。まあ公孫賛の滅亡や、劉備の徐州州牧就任という未だ不確定事項を前提した場合の話ではあるが。

 しかしそれらの可能性を、魯粛としてもはっきりと否定出来ないのもまた事実。

「……ま、いっか。今回この公孫賛軍が連合に対して、特別何かをすることはないだろうし……じっくり考えるかな?」
「――ちょっと待て。それは一体どういうことだ?」

 魯粛の言葉に公孫賛が反応を示した。

「どういうも何も……賓客である私達を預けるのだから、袁紹としても公孫賛殿の軍を迂闊に動かすことはありませんよ」
「な、何だって~っ!?」
「まーいいじゃないですか。功績を上げることはないですけど、その分戦力を消耗せずに楽が出来ますしー」

 それに今回の戦いの主になるのは汜水関と虎牢関、つまりほとんどが攻城戦となるわけだ。公孫賛の主力は騎兵であるから、ぶっちゃけあまり役に立たない。敵が篭城の利を捨てて野戦に出てくることがない限り、騎兵主力の公孫賛や涼州の馬超などの出番はないだろう。

 仮にも防衛線を張る将が打って出る筈もないし、後方でまったり観戦することが出来る。

「公孫賛殿も、こんなつまらない戦いで身内が傷つくのはお嫌でしょう?」
「つ、つまらない戦いって……」
「どんな美辞麗句や大義名分を掲げようと、戦争は戦争……人が傷つき人が死ぬ。傀儡にされている天子を救う? 董卓の暴政に苦しむ民を救う? やってることはただの『他国侵攻』にすぎませんよ」

 かなり過激ではあるが、太史慈が間諜はいないことを確認済みだからこその発言である。

 真実に董卓が檄文通りの人物であるならば、少数精鋭で洛陽を急襲して董卓本人を切ればいい。そこまで暴虐非道な主であるならば、その主が死んでも尚従おうとする者はいないだろうし、そうなれば董卓軍は自然と瓦解する筈だ。まあそれだけの混乱が起こった場合、天子が無事でいる保障はないけれど。

 だが結局それをせず連合として兵をまとめて戦うということは、董卓軍がそれでは瓦解しないと判断したのだ……兵を以て打ち倒す必要がある、と。それだけでも十分に、あの檄文の内容に不信が浮かびそうなものだが。

 というか魯家の情報網によると、洛陽の状況は檄文そのままというわけではないらしい。結局は権力争いからくる茶番劇とのこと。

「その程度のことだから、有力な諸侯は互いの腹を探るばかりなのですよ、公孫賛殿」
「確かに言われてみればその通りかもしれないが……」

 ただ目的はくだらないが、その為に世論を味方につけた手腕は大したものである。

 言った者勝ちではないが世論的に董卓は『悪』とされた為、その董卓を討つ連合に参加しないということは『悪』の一味と思われてしまう。そのような風評を避ける為にも、多少の無理はしても連合に参加する必要があるわけだ。徐州に関してはそれなりの事情があるし、討伐が終わった後にでも相応の貢物を贈る用意はしている。まあ、それ程の資財を備蓄している国は多くはないだろうが。

 不穏なことを言った所為か、公孫賛の顔色はあまり芳しくない。

「お気楽にお気楽に……戦争なんてものは、それをしたい輩に好きにさせておけばいいのです」
「……いいのかなぁ? 桃香達は先鋒で大変そうなのに、私は後方でゆっくりしていて……」
「――公孫賛殿。あなたと劉備殿の仲が良いのは別に構いませんが、その為に兵に無理を言ってはいけませんよ? 公孫賛殿は劉備殿の主でも臣下でもないのですから、その動向を気にしすぎるのはよくありません」
「……わ、わかっているさ」

 毅然とした態度を取り戻す公孫賛。

 しかし賓客にすぎない魯粛に、ここまで言われて納得してしまう総大将ってどうだろう?

(本当に根っからの『いい人』なんだなぁ……)

 やはり、彼女は出来ることなら生かしてあげたい。

 しかし自身の安全と引き換えにする程ではないので、あくまで生き延びた時に劉備の所ではなく自分の所に来るように示唆するくらいである。今から滅亡することを予期されても反応しようがないから、もし困ったことが起きたら徐州の臨淮郡東城県にある魯家を訪ねてくれ、と。

 歴史の表舞台から去ることに変わりはないのだから、修正力云々は気にしなくていいだろう。だが本当にそんな事態に陥った場合、魯粛としても身の振り方を考えなければならない。

 ――最終的に『孫呉』につくか『曹魏』につくか、を。ちなみに『蜀』という選択はない、国の方針と地形的な意味で。

 どちらにしても面倒臭いのだが、歴史的に北方を制圧した曹操と江東の孫策とでは国力の差がある。史実通りに『孫呉』に仕えて『蜀』と結んだとしても、早期に曹操を打倒出来る気がしない。そしてその場合、史実通りぽっくり疫病で死にそうだから困る……華佗がいるからと楽観視は出来ない。

 逆に曹操に仕えてちゃっちゃと大陸を統一し、史実の程昱のように引退するという手もある。

 自分を含め太史慈達という呉の重臣達が魏に流れれば、『小覇王』孫策が健在だとしてもパワーバランスは大きく傾く。呉と蜀の早期同盟を成しえた魯粛もいないのだから、当然のごとく『赤壁の戦い』も起こらない。そうなれば北方を制した曹操に、呉が単独では勝つことはないだろう。そういう意味では曹操につく方が、迅速に大陸をまとめ平穏に暮らすには適しているかもしれない。まあ曹操と性格的に反りが合うか、という不安もあるが。

 ただこれからの歴史がどう動くかは、流石に魯粛にもわからない。何せ自分を含め史実の武将が女ばかりだったり、呉の重臣を引き抜きまくったりと色々と変わっているからである。……不確定要素が多すぎるのだ。

 その為にも歴史の流れをただ遠巻きに眺めるのではなく、それなりの危険を覚悟して渦中において見届ける必要があると判断した。この反董卓連合はその前哨戦、歴史的に演義寄りなのか正史寄りなのかもそのうち見極めていかなければいけない。

 魯粛としてもそこは適当に済ますわけにはいかない問題なのだ……この時代における死亡フラグ回避の為にも。

 たとえ不思議ワールドだったとしても、人が多く死んでいく時代には変わりないのだから。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026907920837402