<初めに>
注意事項(書くに当たっての本文中の文面に対する御説明)
1:当作品は戦国時代を題材とした織田信長の物語となります。その上で表記において登場人物の名前は、当時の官位中心の名前では無く、姓・名の表記で統一致します。
<本来なら各人の事を上総ノ介や右府(右大臣)など官位や、他の通称である藤吉郎(豊臣秀吉)・権六(柴田勝家)・又左(前田利家)等で呼ぶのが正しいのでしょうが、この作品では判り易さを重視するため織田信長など姓名で統一致します>
2:作品中に現代の和製英語・単語などが出てくる事もありますが、上記と同様に判り易さを重視するために使用しております(極力使わないようにはしますが)御理解下さい。
3:作品中に作者が勝手に時代劇の言葉だと思う(若しくは思い込んでいる) おかしな <なんちゃって時代劇言葉> が出てくる可能性がありますがご了承下さい。
この作品は作者 <Ika> が初めて書く連載作品となります。
どうか皆様には御指導御鞭撻の程、どうかよろしくお願い致します。
またこの作品は自身では戦記・内政物だと思って書いております。
御意見、またはこうした方が良いのではという提案はどしどし書き込んでやって下さい。
皆様に楽しんで頂ける作品を目指して頑張っていきます。
<追加のご注意>
作者は織田信長という人物を大きく美化して見ております。
また、作品の展開上、寺社勢力への攻撃や虐殺したなどの表現が入ります。
これらに注意した上でお読みください(それらの表現がある場合は本文の冒頭に注意文を明記致します)
<プロローグ>
天正10年(1582年)6月2日 京の都・本能寺。
殆どの人はすでに寝所に入り、起きている者は誰もおらぬであろう深夜。その日、その夜の帳(とばり)を引き裂き、具足の擦れ合わされるガチャガチャという音を響き渡らせながら、とある軍勢が京の町を駆け抜ける。
誰も声は上げない。その兵達は唯々松明を掲げ、京の都の細い路地を無言で走り抜けて行く。
住人達の中には、その軍勢が通り過ぎる大きな音に気づき、起きだしてきた者達もいた。だが、彼らは一様にその完全武装した兵達の姿を見て、これは一体何事か? と吃驚仰天し、慌てて家の中に逃げ込む。
不吉な物を感じ取った彼らは戸を完全に閉め切り、部屋の片隅で災難が自身の身の上に降り注がないようにと必死に祈りながら、ただ不安に震えるのみであった。
「上様! 上様! 起きて下さい! 一大事に御座います!」
「如何したか、お蘭。騒々しいぞ」
その日、織田信長とその一行は山城の国・京の都にある本能寺という寺に逗留していた。中国地方で毛利家相手に戦う羽柴秀吉隊への後詰めの準備の為に上洛して来たのである。
そしてその日の深夜、信長は静寂を破る近従小姓の森蘭丸の悲鳴のような叫び声によって起こされた。
「上様! 謀反にございます! すでに当寺は軍勢によって完全に包囲されております!」
その森蘭丸の報告に勢いよく跳ね起きた信長は、すぐ傍に置いてあった手槍を手に取ると、すぐさま部屋を飛び出る。
信長はその熱く煮え滾る心の内のままに叫び声を上げた。
「誰が裏切ったぁ!」
「旗印は水色桔梗の紋! 明智光秀様御謀反!」
どかどかと足音も荒く、走りながら問いかけてくる信長のその怒号に、後を追う森蘭丸がすぐさま自身が見てきた様子を答える。
その蘭丸の返答に信長は一瞬動きを止めた。だがすぐに笑いながら再度走りはじめる。
「ふふっ、ぐわっはっはっはっはっは! キンカ頭めが、ようもやりおったわ! これはこの信長もいよいよ年貢の納め時よ! 流石は光秀じゃ!」
「なにをおっしゃられますか! 我等が血路を開きます! どうか今すぐ脱出を!」
「よい、光秀が相手ではそんな隙はあるまい。是非に及ばず。この後に及んではジタバタすまい。斬れるだけ斬った後は自害するだけよ。お蘭、我が首は光秀に渡すな!」
主君の身を案じ、脱出を進言してくる蘭丸の言葉を無視し、あくまで戦う事を決断した信長。
その信長の様子に焦りながらも何とかこの死地から主君・信長を落ち延びさせる事が出来ないか、と蘭丸は考え続ける。だがいくら考えても何も思い浮かんでこない。
結局の所はそのまま信長の後に続き戦うという選択肢しか思い浮かばなかった。
信長は女衆達は逃がし、残った男手を全員集め抵抗を試みる。
各々が様々な武器を手に、塀を乗り越えて続々と侵入してくる明智軍の兵士達の群れに立ち向かって行く。
しかし多勢に無勢。こちらは数十人、明智側は万を超す軍勢である。元々兵力差は圧倒的であり、どうにか出来るような状態ではない。
いかな信長の精鋭側近衆といえども明智側の数に押され、味方は一人、また一人と、次々と力尽き、倒れていく。
信長自身も弓矢手槍を手に、向かってくる明智方の兵を射殺し、槍で突き殺しと、思う存分に暴れる。だがその四十九歳に達した身体が先に根を上げてきた。息が乱れ、手足が震え、槍を振り廻すのも辛くなってくる。
そして信長は自身の身体の限界と共に、最期の刻を悟った。一人、戦列よりゆっくりと離れ、蘭丸に最後の声をかける。
「是非も無し…。流石、明智光秀が手勢。強者ぞろいよ…。誠、見事なり。これまでのようじゃな……。蘭丸」
「はっ。ここより先には絶対に明智の兵は通しません。どうか存分に御最後を……」
「うむ、最後まで良うやってくれたな……。蘭丸、大儀であった」
「その御言葉だけで十分で御座います。上様と共に戦ったこの短き人生、本当に楽しゅう御座いました」
驚くべき事に、森蘭丸は今際の際であるというのに、本当に安らかな笑顔を信長に見せた。
それを受ける信長の方も、いつもと全く変わらない静かな覇気を纏う穏やかな笑みを浮かべる。
最期の刻を迎えるその瞬間でも、二人の心はまったく平時と変わらず折れもしない。むしろこの状況を楽しんでいる風すらあった。
「そうだな。楽しかった。この産まれ出でてより四十九年、思う存分暴れてやったわ」
その信長の言葉に二人してニヤリと悪餓鬼のように笑いあうと、次の瞬間には蘭丸が踵を返し走りだす。
「では、おさらばです! お先に地獄でお待ち下さいませ! 拙者も明智勢の足止めが終わりましたらすぐに参ります!」
「ふっ、そうだな。先に逝っておるぞ」
そして信長は蘭丸が向かった方向とは逆に歩きだす。
順に自らの手で建物に火をかけて行き、唯一人、屋敷の奥に向かって進み行く。放たれた炎は、その物にまるで意思があるのでは? と思われるぐらい意味深にメラメラと揺らめき、すぐに建物全体に燃え広がった。
その中で信長は一人で威風堂々と屹立し、歌うかの如く叫ぶ。
「はーっははははは! 是非もなし! 全ては一瞬、夢幻しの如く也! なんともおもしろき世に産まれ! 尽きぬ楽しき夢を追い! 一心不乱に駆け抜けた我が人生四十九年! これぞ男子の本懐也! 人間五十年には一年足りぬが、これもまたおもしろき物よ! この日ノ本の行く末を見れぬは残念なれど、我が生涯に悔いは無し! 皆、後は頼むぞ! この国を南蛮伴天連共に負けぬ程の強い、良い国にしてくれ! さらばだ! 信忠、秀吉、光秀、家康、勝家、長秀、利家、一益、恒興、貞勝、成政、………………、………………、」
信長は劫火の中、ゆっくりと脇差を抜き、自らの腹部に当てそれを横に引く。
その夜、尾張の風雲児、味方・領民からは神の如く慕われ、旧態勢力・寺社勢力からは蛇蠍の如く嫌われた日本史屈指の英雄、織田信長は京都本能寺にて自害して果てた……。
<200○年○月某日 某所>
その日、大阪に住むサラリーマンの織田大助(33歳)は仕事の帰り、家路を急いでいた。
大助はどこにでもいるような極々普通のサラリーマンである。未だ独身で家族もおらず一人暮らし。特に優秀な男では無いが、かと言って無能と言う訳でも無い。金持ちでも無いけど貧乏と言う程でも無い。
本当に社会の中で埋没しているような平平凡凡とした男である。
そんな彼の一番というか、唯一の趣味と言える存在は読書だ。
彼は稀の休日にわざわざ外に出てレジャーやスポーツに興じると言うような熱意やバイタリティーとはまったく無縁な男である。大抵の休日は何所にも出歩かず、家の中でゆっくりとしながら読書をしながらぐうたらに過ごす。
最近はそれだけに飽き足らず、ネットで素人投稿小説サイトのネット小説を読む事にハマっており、その素晴らしい作品達に触発された彼はここ最近は読むだけでは無く自分でも書いてみようかとも考えていた。
大助の一番好きなジャンルは日本の戦国時代を題材とした小説である。
その中でも自分の苗字と同じという事もあってか戦国大名の織田信長が大好きであり、最近は書こうとしている自分の作品の展開を考える事、自分が信長だったらこうする、ああする等々と妄想するのが趣味と言う、一種のマニアとも言えるような行動に耽っていた。
しかしここ最近、仕事が忙しくその時間も取れなくなっている。
本日も残業が深夜にまで及び、すでに日が変わってしまっている時間帯である。日々の激務に心身共に疲れ果てていた。
だからであろうか?
自らにむかって物凄い速度で突き進んで来ている暴走車の存在に気づくのが遅れてしまった。
最後に残った記憶は、衝撃と共に廻る視界。そして浮遊感。
そして薄れて行く意識。
不思議と痛みは無く、むしろ心地よかったのが印象的であった。
<弘治元年(1555年)尾張ノ国>
ふと、頬を撫でる心地よい風に促され、目が覚める。
「ここは…?」
信長はまだまだ寝ていたいと訴える身体に活を入れ、ゆっくりと眼を開けた。
そして自身が河原の土手に横になっているのに気づき驚愕する。
「ワシ(オレ)は……? ここがあの世という物か? どうなっている? たしか光秀の謀反に遭い、自害(車に撥ねられて)し、死んだはずだ……?」
「殿? お目覚めですか? 如何なさいました? 何かありましたか?」
「(!? 馬鹿な! 森可成(もりよしなり)! 随分と前に死んだ可成が何故!? それに若い!?)」
目の前にいた、自分に声を掛けて来た人物を見て驚愕する信長。
森 可成。自身の古くからの重臣であり、そして元亀元年(1570年)に信長の弟の織田信治と共に浅井・朝倉・比叡山の連合軍の攻撃を受け、武運つたなく討ち死にした人物である。
その死んだはずの人物が自分の目の前に立っていた。
驚きながらも周囲に目を配ると他にも見知った人物が、しかも記憶に残るよりも大分若くなっている人物が幾人もいる事気づいた。
「(河尻 秀隆(かわじり ひでたか)、それに丹羽長秀、羽柴秀吉、滝川一益、前田利家に佐々成政も……?)」
全員が甲冑を着込んだ軍装だ。そして自分も同様に甲冑を着込んでいる。
だが不思議な事に、それは随分と古い型の物だ。そう、それはまるで自身がまだ尾張も統一できていないような時期に着ていた物のように……。
「(どうなっている!? ワシ(オレ)は死んだ? いやワシ(オレ)の名前は織田信長(大助)?何かおかしい?何か違う物が混ざっている? 一体どうなっているのだ?)」
混乱した頭で必死に考える。
そんな信長の様子を周囲の皆は不思議そうにただただ眺めるだけであった。
この物語は何の因果か未来の知識という新しい力を手にいれ、もう一度人生をやり直す事になったとある英雄の物語である。
<後書き>
どうも初めましてIkaと申します。
今回皆様の素晴らしい作品に触発され書き始めました。
この話しは信長公が自分の人生と現代人の知識をもった状態で、もう一度人生を生きる物語となります。
皆様、どうかご指導ご鞭撻の程どうかよろしくお願い致します。
ちなみに作中の織田大助は一度きりのキャラでもう出てきません。
記憶と人格は信長と融合し、一人の新しい信長になったという設定です。大部分は信長です。
ちなみに名前の由来は 織田大助⇒おだだいすけ⇒(け→き)⇒おだだいすき です。
また融合した事によって信長の性格がほんの少しだけ穏やかになり、現代人的な心配りをできるような性格になっていると設定しております。
今後もどうかよろしくお願いいたします。