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No.8447の一覧
[0] 国取りドラゴン(真・恋姫無双×巣作りドラゴン) 第24話追加[PUL](2011/03/13 15:31)
[1] 第1話:竜星墜落[PUL](2009/12/13 18:40)
[2] 第2話:突発的開放[PUL](2009/12/13 21:39)
[3] 第3話:同床異夢[PUL](2009/05/23 11:53)
[4] 第4話:実力の片鱗と影響[PUL](2009/06/02 15:16)
[5] 第5話:ある日常の乙女達[PUL](2009/06/10 19:36)
[6] 第6話:ブラッド歴史の表舞台に立つ[PUL](2010/07/12 12:50)
[7] 第7話:激突! 天下無双対決[PUL](2009/12/13 21:39)
[8] 第8話:黄昏の戦乙女(少しエッチ)[PUL](2010/09/05 15:10)
[9] 第9話:華、開く(少しエッチ)[PUL](2010/01/12 21:56)
[10] 第10話:虎と麒麟児と小鹿(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:33)
[11] 第11話:私の瞳の中のあなた(少しエッチ)[PUL](2009/12/22 22:53)
[12] 第12話:新しい時代の幕開け[PUL](2009/10/27 23:21)
[13] 第13話:昨日と違う同じ空[PUL](2009/10/31 22:05)
[14] 第14話:彼女達の考察[PUL](2009/11/17 20:27)
[15] 第15話:愛紗、朱里、揚州紀行(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:35)
[16] 第16話:北方情勢と穏気な軍師(少しエッチ)[PUL](2009/12/28 16:30)
[17] 第17話:伏竜、昇り竜、落ち零れ竜[PUL](2010/07/22 23:55)
[18] 第18話:最強工作員と最弱竜(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:11)
[19] 第19話:料理スキルの効果(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:12)
[20] 第20話:逃げる桃香、追う華琳、阻む雪蓮[PUL](2010/04/25 23:48)
[21] 第21話:新旧弓使い対決[PUL](2010/07/22 01:13)
[22] 第22話:魅惑の三位一体攻撃[PUL](2010/08/05 22:01)
[23] 第23話:新戦力発掘(少しエッチ)[PUL](2011/03/13 17:21)
[24] 第24話:パワーファイターVSスピードスター[PUL](2011/03/13 15:31)
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[8447] 第7話:激突! 天下無双対決
Name: PUL◆69779c5b ID:7f4a62e1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/13 21:39
第7話:激突! 天下無双対決
 
 虎牢関攻略は汜水関に続いて連戦となる劉備と袁紹が担当することになった。汜水関で
孫策が援軍を出したことで劉備軍の損失があまりなかったこともあるが、捨て駒扱いは変
わらなかった。またあまり活躍させたくないという袁紹の意向が働いたのか、雪蓮達は後
方に引いて陣を張っている。

「いいように使われていますね劉備さんは」
「弱小勢力の悲しいところだな。しかも、虎牢関を守るのはあの飛将軍呂布だ。それに
張遼と汜水関から撤退した華雄もいる。汜水関を落として意気揚がるところだろうが今度
は厳しいだろう」
「劉備達にとってはこれが最初の関門てところね」
「そうね。もっとも今回は袁紹軍という大きな盾があるから、それを上手く使って被害を最小限に
止めて成果をかげることも可能だ。あの軍師ならな」
冥琳は朱里の能力を高く評価しているのか、好敵手となりうる者の登場に嬉しそうだった。
「それで、私達はどうするの?」
「無駄に多い袁紹軍が邪魔になって思うように動けないし、呂布相手に正面突破する訳に
もいかないわ。私達は敵本体の脇を突いて虎牢関を落とす」
「えー! 私も呂布と戦いたい!」
冥琳の案は武に誇りを持つものとしては受け入れがたく、雪蓮はあからさまに不満げな態
度を見せた。もっとも国を預かるものとしての態度にも見えない。
「駄目よ。自分の主をむざむざ犬死させるわけないでしょ?」
「…さらっと酷い事言うわね。もう少し主人を信頼して欲しいわね」
主従関係にあっても義姉妹の気安さからか身も蓋も無いことを言われ少し凹む雪蓮だった。
「雪蓮のことは信頼してるけど、呂布だけは別。次元が違うわ」
「ぶー」
一応引き下がったが雪蓮はまだ未練が残っているらしく子供っぽく膨れっ面をしている。

ブラッドは他国の武将のことは殆ど知らない。当然、冥琳達が警戒する呂布の事も知ら
なかった。
「冥琳、その呂布って奴は強いのか?」
「あぁ。それも桁違いの強さだ」
「常識を超えた鬼神の如き強さらしいのぅ。一人で軍を壊滅させた事も数知れんという話じゃ」
「策を弄しても力でねじ伏せてしまうそうです。軍師としては一番関わりたくないという
のが正直なところです」
「ほぉ、それは中々興味深いな」
敵ながら天晴れといったところか、呂布こと恋に対する称賛と畏怖の言葉にブラッドの恋
に対する興味が強まった。
「ブラッド、変な気は起こすな。私達は呂布が桁違いの強さであることは知っているが
お前の本当の実力がどれ程のものか知らない。そしてお前は呂布の強さを知らない。軍師
として計算の立たない戦いは出来ん。お前も我が軍の戦力の頭数に入っているのだから、
こんなところで失うわけには行かない。自重しろ」
冥琳なりにブラッドの事は評価しているが、それだけに迂闊な行動を認めるわけにはいか
なかった。
「じゃあ、奴の強さがどれほどか見ておく必要はあるな?」
「だから変な気は起こすなと言っている。私達と行動を共にする以上最低限の決まりには
従ってもらうぞ」
「……」
「何だ? 不満か?」
無表情に自分を見るブラッドの態度に冥琳は少し目を細めて威圧するように尋ねたが、そ
れでブラッドが引き下がるわけは無く、不敵な笑みを浮かべ反撃に転じた。
「中々強気な態度だな? 三人の中では一番しおらしい態度だったのに随分変わるもんだな?」
「三人の…?」
一瞬何を言っているのか分からなかったが、ブラッドが雪蓮と祭に視線を移したことで意
味が分かったようだ。 
「な、何を言っているのだ! い、今はそんな事を言っている場合ではない!」
ここが戦場であることも忘れて真っ赤な顔で盛大にうろたえた。
「冥琳て可愛いわね」
「うむ、冥琳も普段からこれくらい可愛げがあった方がいい」
「冥琳様、何かあったんですか?」
「ただの戯言だ気にするな」
状況を知らない穏が冥琳に尋ねるが薄々分かっているらしく顔がにやけていた。
「そうですか? じゃあこの戦が終わってからじっくり聞かせてもらいますね♪」
「……」
この手の話を穏が見逃すはずが無く、引きつった顔の冥琳とは対照的にニコニコ顔で
追い詰めていった。


孫策隊は実利優先策をとって敵本体との衝突を避け側面に展開していた。しかしブラッド
は本体と行動を共にせず別行動をとっていた。
「どこに行くの?」
背後から雪蓮に声を掛けられた。
「…言う必要があるか?」
「それはどういう意味かしら? 軍律に背いて勝手な行動をとっても構わないってこと?
それとも言わなくても私が分かってるって思ってるの?」
少し意地悪な顔でブラッドに尋ねる。勿論処罰するつもりはサラサラ無く、ブラッドが
自分と同じ事を考えているのが嬉しいのか少しからかっているだけである。尚、ブラッド
は自分の目的のため便宜上雪蓮と行動を共にしているという意識しかないので、行動を制
限される謂れは無く、当然軍律はまったく意識の外である。
「取り合えず考えていることは大体同じということだ。呂布がお前達の言うような奴なら
俺が見逃すはず無いだろう?」
「相変わらず自信たっぷりね? でも私もあなたの実力を見ていないから冥琳の気持ちも
分かるわ。呂布の戦いぶりを見るのは構わないけど無理はして欲しくないわ」
「分かっている」
現時点で無理をすれば暴走し、その後どうなるかも分かっている。ブラッドは短く答えた。

 恋は篭城は取らず、虎牢関を出て連合軍に決戦を挑んできた。
「潔いわね。突破できる自信があるんでしょうね」
「篭城策は守備に長けた者がやれば効果的ですが攻撃型の者にとっては受けに回ることで
自分の長所を消すことになります。呂布が皆さんの言う通りの実力者なら十分考えられる
戦法です」
「なるほど。でもクーは良く知ってるわね」
文官としてオールマイティーな才能を発揮するクーに雪蓮は改めて感心していた。
「ありがとうございます。ですが過去の事例から可能性の高い答えを出したまでです。連
合軍の連携の拙さに加え呂布個人の能力を考えれば、この策が最も有効と考えます」
「冥琳が気に入る訳だわ」
もしかしたらブラッド以上にクーの方が呉にとって有益ではないかと思う雪蓮だった。

 ブラッド達が話している間に呂布軍に動きがあった。恋が先頭切って連合軍に突っ込ん
でいった。その強さは圧倒的で恋は正面で待ち構える袁紹軍を怒涛の勢いで蹴散らしてい
く。呂布が方天画戟を振り回すたびに袁紹軍の兵士が五人、十人と紙屑のように薙ぎ払わ
れていった。
「何だ? あいつ等紙で出来てるのか?」
「そんなわけ無いでしょ。呂布の力が凄すぎるのよ」
呂布の圧倒的なパフォーマンスに雪蓮は少し気圧されているがブラッドの驚くポイントは
微妙にずれていた。

「待て、ここから先は通さん!」
「鈴々達が相手なのだ」
「三対一だが悪く思うな」
呂布の前に劉備軍の愛紗、鈴々、そして趙雲こと星が立ちはだかった。三人とも一騎当千
の武将達である。
「…ふふ」
恋はぼーっとした表情で三人を眺めた後、小さく笑った。
「な、何がおかしい」
「お前達強そう。だから楽しみ」
「なるほど。武人としてその気持ちは分からんでもない」
「星、今は楽しんでいる場合ではないぞ。我々は第一に桃香様を守らねばならんのだ」
任務を無視するわけではないが最強の敵を前にして武人としての血が騒ぐ星に対し、愛紗
は私情を捨て任務に徹していた。
「分かっている。呂布よ、残念だが今は任務を優先させてもらう」
「構わない。恋もやる事がある」
お互いの都合を優先するといっても戦うことに変わりは無い。愛紗、鈴々、星は一斉に恋
に攻撃を仕掛けた。
「はぁぁ!!」
「やぁ!」
「はい!」
「……」

ガシィ!
「うわっ!」
三人の攻撃を最小限の動きでかわし、間髪入れずに反撃する。恋の鋭く重たい一撃に愛紗
達は大きく体勢を崩した。
「お前達強い。でも恋はもっと強い」
「く、まだまだ」
「ま、負けないのだ」
「これほどの相手、武人としては喜ぶべきところなのだがな」
果敢に恋に勝負を挑むが、愛紗、鈴々、星を以ってしても恋の牙城を崩すことは出来ず徐々
に押し込まれていった。
「な、何と言う強さだ」
「反則なのだ」
「我ら三人でも適わぬとは…自信無くしそうだな」
力の差を見せ付けられ武人としての誇りを傷つけられた愛紗達は少し気落ちしている。
「しかしここで引く訳にはいかん。我等は我等の出来ることをやるまでだ」
気を取り直し愛紗達は、後退して距離をとった。しかし、足止めにはなっているがあまり
持ち堪えられそうに無かった。

四人の攻防を少し離れた所で見ていたブラッドは少し呆れた顔で呟いた。
「三人掛りであの様か。情け無いな」
「あの三人の実力は相当なものよ。関羽の青龍刀、張飛の蛇矛、趙雲の槍。どれをとって
も一級品よ。それを物ともしない呂布が異常なのよ。天下無双の名は伊達じゃないってこ
とね」
実力を見せ付けられ、冥琳達の判断を認めざるを得ないことに雪蓮は少し悔しそうだが
ブラッドは対照的に嬉しそうだった。
「天下無双か…。仕方ない。どれ程のものか実際に俺が確かめてやろう」
「ご主人様、無茶してリミッター外さないでくださいよ」
「分かってる。確かめるだけだ」
「え? ま、待ちなさいブラッド」
雪蓮が慌てて引きとめようとするが、ブラッドは既に駆け出して四人の戦いの中に飛び
込んでいった。

「お前ら邪魔だ!」
「え?」
「な、何だ!?」
急に背後から声が掛かると愛紗達の遥か頭上をブラッドが飛び越していた。
「と、跳んだ?」
「鳥?」
ブラッドは上空高く舞い上がると、恋目掛け渾身の一撃を振り下ろした。
「はっ!」
「!」
バキッ!

しかしブラッドの剣はギリギリのところで恋の方天画戟に防がれ、その衝撃であっさり折
れてしまった。
「…使えないなこの剣は? もっと丈夫な奴はないのか?」
「ご主人様、戦闘中に余所見はいけません」
「何?」
呆れ顔で折れた剣を見ているブラッドの隙を逃さず、恋は力任せに方天画戟で薙いだ。

ドカッ!

格好付けて攻撃したものの、ブラッドは恋の攻撃まともに受けまたも高く舞い上がり空中
で一回転して地面に頭から激突してしまった。

「ブ、ブラッド!! …って、あれ?」
目の前で起きたショッキングな光景に悲鳴にも似た声をあげる雪蓮だが、その直後に起き
た光景に今度は間の抜けた声をあげた。
「マイトなら三回転に捻りまで加えるんだが高さが足りなかったな」
ブラッドは何事もなく立ち上がると服についた埃を叩いていた。
「…嘘?」
「呂布の一撃をまともに食らって無傷だと?」
「信じられん」
「お兄ちゃん化け物?」
「手応えはあった。こんな奴初めて見た」
全員が呆気にとられている中、ブラッドは倒れている兵士から剣を二本拾うと再び呂布と
対峙した。
「人間でここまでやれる奴が居るとは驚きだ。フェイといい勝負かも知れんな」
「パワーなら漆黒騎士並みでしょう。“ただ”の人間でこれ程の実力がある者は私も見た事
ありません。今のご主人様でも負けることは無いでしょうが、結構荷が重いかもしれませんね」
「能力の開放、制御のためには良いサンプルだ」
恋の実力にブラッドもクーも驚いているが、恐怖心は皆無だった。

「仕切りなおしだ。行くぞ!」
ブラッドは再び恋に突進した。
「はぁぁ!」
「ふん!」
ガキッ!
ブラッドの剣と恋の方天画戟が激しくぶつかり合い、鋭い金属音が辺りに響く。ブラッド
は攻撃の手を緩めずひたすら攻め続けた。

恋は雑兵相手の時は問答無用で一気に片付けるが、将相手の時は出方を伺ってから反撃
することが多い。今もブラッドの攻撃を受け止めているが、愛紗達の時と違い的確な反撃
が出来ず押され気味だった。

愛紗達は二人の攻防を固唾を飲んで見守っている。
「愛紗、あの男は何者だ?」
「孫策の側近らしいが詳しい事は私も知らない」
ただの軽薄な無礼者としか思っていなかったブラッドの戦いを見て、愛紗は自分の見る目
の無さを恥じていた。
「動きも剣の持ち方も出鱈目だ。何故あれで呂布と互角に遣り合えるんだ? 寧ろ呂布の
方が押されているくらいだ」
自分達三人をあしらっていた恋が押されている。愛紗達は突然現れた破天荒な武人を信じ
られないといった表情で見ている。
「多分、あのお兄ちゃんの動きがメチャクチャで先が読めないからのだ」
「鈴々の言う通りだと思う。速さに関しては鈴々も引けをとらないが、先が読めないので
呂布の対応が僅かだが遅れている。その為呂布は反撃が遅れ防戦に回っているのだろう」
「ふむ。確かにそういった側面はあるな。だがあの男の剣は軽い。動きが変則的なので
呂布もてこずっているが有効打は一つもない」
「そうだな。しかもあれだけ動いていれば体力の消耗も激しいだろう。体力が続かず動き
が落ちた時、呂布の反撃を受け止められるかが鍵になる」
「受け止められなければそれで終わりだ」
武人として誇りと拘りを持つものとしてブラッドの出鱈目な動きは受け入れたくないのか
敵であるはずの恋に少し肩入れする愛紗達だった。

しかし冷静に状況を分析しているつもりの愛紗達だが、彼女達はブラッドの事は何も分
かっていなかった。愛紗達の予想に反しブラッドの動きは衰えることなく恋を攻め続けた。
「…愛紗よ、一向に動きが落ちんではないか。しかも、一撃一撃の力も増しているように
見えるぞ?」
「私に言われても分からん。さっきからあの男の動きは常識外れ過ぎる」
「技術の無さを補って余りある体力の持ち主か。中々厄介だな」
「厄介どころの話じゃない。化け物だ。体力だけで呂布を押さえ込んでいるのだからな」
ブラッドの常識離れした動きに愛紗達は圧倒されていた。

 圧倒されていたのは愛紗達だけではなかった。雪蓮も目の前の光景に釘付けになっていた。
「クーがブラッドの体力は底無しって言ってたけど、本当に凄いわね」
蓮華の報告でブラッドが無尽蔵の体力の持ち主であることは知っていたが、その戦いぶりを
目の当たりにして雪蓮はブラッドの能力を改めて思い知らされていた。
「この体力で延々と続けられたら壊れ…だ、駄目駄目、今はそんなこと考えてる場合じゃ
ないわ」
何を想像していたのか雪蓮は赤らめた顔を振って気持ちを切り替えた。

「雪蓮様、ここにいらっしゃいましたか」
背後から抑揚の無い声が掛かり、振り向くと思春が無表情で立っていた。
「し、思春? よくここが分かったわね?」
「斥候を放っておきましたから。雪蓮様がここにいるとう報せを聞いたときは全員驚きま
した」
「ぜ、全員? もしかして…」
「当然冥琳様もご存知です」
「そう…」
今後の展開が容易に想像出来、雪蓮はため息を付いた。
「あそこで戦っているのはブラッドと呂布のようですね。冥琳様は自重せよとの命令でし
たが?」
口に出しては言わないが、何故止めなかったと冷たい視線を雪蓮に向ける。
「勿論止めたわよ。でもあっという間に突っ込んで行っちゃって間に合わなかったのよ。
それより思春も見たでしょ? ブラッドって思った以上にやるでしょう?」
「そうですね。口だけではなかったという事ですね。軍規違反の言い訳にはなりませんが」
「うぐ…」
何とか取り繕おうとした雪蓮の試みはあっさり失敗した。

ガキッ!
「く…」

雪蓮が思春に言い訳している間もブラッドは恋を攻め続け、捌き切れなかった恋が遂に後
退した。
「呂布が引いたぞ!」
「信じられん」
「お兄ちゃん凄いのだ」
「凄いわブラッド! もしかしたら…」
「恋殿、お下がりください!」
歴史的瞬間に会うかもしれないと、その場に居合わせた者全員が固唾を呑んで見守る中
何者かが恋に声を掛けた。即座に反応した恋が大きく後退すると、その瞬間ブラッドに向
かって一斉に火矢が射掛けられた。恋の副官で軍師の陳宮こと音々々、略してねねが伏せ
ていていたのである。矢はブラッドに当たることは無かったが、周囲は一面火の海となった。
「い、いきなり火矢か」
「熱いのだ」
「陳宮め、計算ずくか?」
「……」
愛紗達は慌てて距離をとるが、ブラッドは中途半端で勝負が終わったことに物足りなさを
感じているのか、火の中で微動だにせず恋を見ている。恋も真っ直ぐブラッドを見ている。
「お前、物凄く強い。真剣勝負したいけど、今は駄目」
「いいだろう。今日はお前の力を確かめるだけだったからな」
当初の目的を思い出しブラッドも不敵な笑みを浮かべた。
「恋殿、こちらです。急ぎましょう」
「ん…」
ねねに促されて恋はブラッドを一瞥し早々に退散した。

「ブ、ブラッド!」
雪蓮が慌てて駆け寄ろうとしたがブラッドは火に囲まれて容易に近づくことが出来ない。
「呂布がどの程度の強さかは分かったし、収穫はあったな。…何だ、甘寧も来てたのか?」
慌てている雪蓮とは対照的にブラッド本人はあまり気にしていないらしく受け応えも能天
気だった。
「そんなこといいから早く逃げなさい!」
「雪蓮様、危険です!」
ブラッドを助けようと火の中に飛び込もうとした雪蓮の腕を思春が掴んだ。
「だってこのままじゃブラッドが…」
「それなら私が“彼“を救出します。雪蓮様は安全な場所に避難してください」
「大丈夫だ」
ブラッドの救出を巡って揉み合う雪蓮達にブラッドの冷静な声が投げかけられた。

「え?」
ブラッドが真っ直ぐ火に向かって歩き出すと、ブラッドの進む所だけまるで道を空ける
ように火が消え、そのまま悠々と火の中を通り抜けた。
「ひ、火が避けてる?」
「何と…」
呆気にとられる雪蓮達の前にブラッドは何事も無かったように近付いて来た。
「待たせたな」
「……」
状況が把握できないのか雪蓮はぽかんと口を開けてブラッドを見ている。
「どうした?」
「ど、どうしたって、今何やったの? 火が避けるなんて、これも仙術なの?」
「仙術? あぁ、そんなところだ」
「今のは風系魔法の応用ですね。足元の気流を止めて窒息させて火を消したんですね」
「へ、へぇ…。あの状況でよくそんな事思いついたわね」
ブラッドの仙術と冷静な対応に雪蓮はしきりに感心していた。雪蓮が本当に分かっている
かどうかは不明である。

「しかし、甘寧があんな事を言うとは思わなかったぞ?」
「そうよね。いつもはブラッドの事毛嫌いしてるくせに、蓮華と同じね。今まで奴って
言ってたのに彼だって」
流石というか、うろたえていた割りにしっかり思春の言動を聞いていた雪蓮はニヤニヤし
ながらからかった。
「ち、違います。ブラッドも一応呉の一員ですし、あの呂布と互角に渡り合える者を失う
のは呉にとって大きな損失なので仕方なく…。だ、だいたいお前も直ぐに脱出出来るなら
さっさと来い! 余計な事をさせるな」
真っ赤な顔で怒ってるのか恥ずかしいのか照れてるのか良く分からない表情でブラッドに
食って掛かる思春だった。


 愛紗達はブラッド達のじゃれあいを遠巻きに眺めている。
「ほぇ…。あのお兄ちゃん本当に凄いのだ」
「呂布と互角に遣り合った武に仙術まで使えるとは…。大陸中を回ったつもりだったが甘
かったな」
「もしかしたら異国の者かもしれんな」
「異国?」
「あぁ、風貌も我々と違うし、一見素人にしか見えない動きで呂布を追い詰める武。我々
の知らない異国の技かもしれない」
「成るほど。まぁ、それが分かったところであの男が危険な男である事には変わらんがな」
「孫策にブラッドか…。もしかしたら曹操より厄介かもしれんぞ」
単純にブラッドの強さに驚いている鈴々に対し今後強敵として立ちはだかるであろう相手
に愛紗と星は最大級の警戒感を抱きながら自陣に引き上げた。


 陣に引き上げる際、ブラッドのパフォーマンスを目の当たりにした雪蓮はまだ興奮冷め
やらぬ様子だった。
「やっぱりブラッドって凄いわ♪」
「そうか?」
「あれまともに受けたでしょ? しかもその後頭から落ちたでしょ? 何とも無いの?」
雪蓮はブラッドが恋の方天画戟に薙ぎ払われた時の事を言っているが、舞い上がっている
のか言葉になっていない。
「別に何ともない。リュミスの攻めに比べたら…」
言いかけて過去の恐怖体験を思い出したのかブラッドの表情が強張った。

「でも、今日は本当に驚かされたわ」
「えぇ、私も凄く驚いているわ」
「…え?」
氷のように冷たい声が雪蓮の背中に突き刺さり表情が固まる。
「まさか一国の王が自ら軍律を無視するなんて、こんなに驚いたのはいつ以来かしら?」
「め、冥琳…来てたの?」
冥琳の背中に青白いオーラが立ち込めている気がして、雪蓮の表情が引きつった。
「全く、どうしてくれようかしら…」
冥琳は盛大に溜息を吐きながら雪蓮とブラッドに恨めしそうな視線を向けた。君主と天の
御遣い。どちらも簡単に処罰するわけにはいかず、稀代の名軍師も対応に苦慮している。
「雪蓮は当然としてブラッドも天の御遣いとして呉に重要な立場にあるのだから、もう少
し行動には責任を持って欲しいわ。ただブラッドは元々軍に所属していないし今回我が軍
の強さを天下に知らしめたことで、特例として不問とするわ。今後も自由に行動してもいい」
寛大すぎる処置だった。要するに冥琳はブラッドを管理することは早々に諦めて放任する
ことに決めたようだ。雪蓮だけでも手に余るのに、これ以上問題児の面倒を見るのは身が
もたないと判断したようだ。
「取り合えず俺は今まで通りで良いんだな?」
「基本的にはな。ただお前は今まで以上に内外から注目を集めることになるから言動には
気をつけるように」
「了解した」
即答するブラッドだが冥琳の言っている事を深く考えてはなかった。
「雪蓮~♪」
「な、何かしら?」
異様に明るい冥琳の声に雪蓮は薄ら寒いものを感じ顔が引き攣る。
「あなたは王としてブラッド以上に責任があるわ。覚悟はいいわね?」
「あ、あはは…お手柔らかにね」
観念してがっくりとうな垂れる雪蓮だった。


華琳は斥候から虎牢関の戦況報告を受け、珍しく驚きの声を上げた。
「呂布が一対一の戦いで退いた? 相手は誰なの?」
「名前は分かりません。何者かが劉備配下の関羽、張飛、趙雲に割って入って攻撃を仕掛
け、ほぼ一方的に攻撃し呂布は防戦一方でした」
「……」
斥候の話を聞いているうちに華琳は冷静さを取り戻し的確に状況を分析した。
「恐らく呂布は時間稼ぎのために攻撃しなかったのでしょうね」
「私もそう思います。ただ、たとえ時間稼ぎとしてもあの呂布なら敵を蹴散らして活路を
開く事は可能なはずです」
華琳の言葉に秋蘭が同調する。春蘭は何も分かっていないのか目をパチクリしながら華琳
と秋蘭を見ている。桂花は分かっているようだが認めたくないらしく渋い表情である。
「つまり、呂布が防戦に徹しなければならない相手だった、ということね? 流石に信じ
られないわね。その兵に何か特徴は無かった?」
そう言いながら華琳はどこか楽しそうに笑みを浮かべている。
「はい。痩身で背が高く髪は茶。鎧を着用しておらず最初はどこの勢力かは分かりません
でしたが、その者の傍に孫策がいたことから恐らく孫策軍配下の者と考えられます」
「華琳様、孫策配下でその風貌の者なら…」
「ブラッド・ライン、だったかしら?」
「そんな! ありえません、あんな無礼で非常識な男が…」
余程ブラッドのことが気に入らないのか、桂花が珍しく華琳に反論した。
「無礼で非常識でも実力は本物ってことでしょ? そう珍しいことではないわ」
ブラッドの自分に対する非礼は華琳にとって既にささやかな事なのか全く気にしてないよ
うである。
「どうやら口だけではなかったようね。そう言えば、自分の事を虎でも狐でもないって
言ってたわね。狼? まさか竜とでも言いたいのかしら?」
「竜は流石に買い被りすぎかと。それにしても華琳様は随分あの男を買っているようですね?」
「それくらいの男じゃないと私に楯突く資格はないって事よ」
ブラッドを高く評価することは、それだけ華琳が自分の力に自信を持っているということ
でもあった。

「しゅ、秋蘭、どういうことなんだ? 分かりやすく説明してくれ」
話に付いて行けない春蘭が秋蘭に説明を求めた。
「孫策配下にブラッド・ラインという男がいただろう? あの男が呂布を一対一の勝負で
退かせたらしいと言っているのだ」
「な、何!? あの男それほどまでの力を?」
「春蘭があの男を見て殺気を感じなかったのは、あの男が春蘭を敵と見做さなかったから
かもしれないわね」
「な、何ですって!? お、おのれブラッド、今度会ったときが貴様の命日だ!」
華琳の意地悪な憶測を真に受けて闘志を燃やす春蘭だった。

「とにかく、これで孫策が我々にとって非常に厄介な存在になることは間違いないでしょう」
「そうね。虎が狼を伴って野に解き放たれるのも時間の問題ね。私達も対応を急ぎましょう」
「はっ」
「ブラッド…。今度会う時が楽しみだわ」
ブラッドを擁する孫策軍との戦いを想像し笑みを浮かべる。それは初対面の時に見せた
サディスティックなものではなく強敵との対戦を望む誇り高き武人の笑みそのものだった。


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