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No.8447の一覧
[0] 国取りドラゴン(真・恋姫無双×巣作りドラゴン) 第24話追加[PUL](2011/03/13 15:31)
[1] 第1話:竜星墜落[PUL](2009/12/13 18:40)
[2] 第2話:突発的開放[PUL](2009/12/13 21:39)
[3] 第3話:同床異夢[PUL](2009/05/23 11:53)
[4] 第4話:実力の片鱗と影響[PUL](2009/06/02 15:16)
[5] 第5話:ある日常の乙女達[PUL](2009/06/10 19:36)
[6] 第6話:ブラッド歴史の表舞台に立つ[PUL](2010/07/12 12:50)
[7] 第7話:激突! 天下無双対決[PUL](2009/12/13 21:39)
[8] 第8話:黄昏の戦乙女(少しエッチ)[PUL](2010/09/05 15:10)
[9] 第9話:華、開く(少しエッチ)[PUL](2010/01/12 21:56)
[10] 第10話:虎と麒麟児と小鹿(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:33)
[11] 第11話:私の瞳の中のあなた(少しエッチ)[PUL](2009/12/22 22:53)
[12] 第12話:新しい時代の幕開け[PUL](2009/10/27 23:21)
[13] 第13話:昨日と違う同じ空[PUL](2009/10/31 22:05)
[14] 第14話:彼女達の考察[PUL](2009/11/17 20:27)
[15] 第15話:愛紗、朱里、揚州紀行(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:35)
[16] 第16話:北方情勢と穏気な軍師(少しエッチ)[PUL](2009/12/28 16:30)
[17] 第17話:伏竜、昇り竜、落ち零れ竜[PUL](2010/07/22 23:55)
[18] 第18話:最強工作員と最弱竜(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:11)
[19] 第19話:料理スキルの効果(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:12)
[20] 第20話:逃げる桃香、追う華琳、阻む雪蓮[PUL](2010/04/25 23:48)
[21] 第21話:新旧弓使い対決[PUL](2010/07/22 01:13)
[22] 第22話:魅惑の三位一体攻撃[PUL](2010/08/05 22:01)
[23] 第23話:新戦力発掘(少しエッチ)[PUL](2011/03/13 17:21)
[24] 第24話:パワーファイターVSスピードスター[PUL](2011/03/13 15:31)
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[8447] 第23話:新戦力発掘(少しエッチ)
Name: PUL◆69779c5b ID:8c8ce768 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/13 17:21
第23話:新戦力発掘


 華琳達を退けたブラッド達が城に戻ると、直ぐに軍議が開かれた。
「皆、お疲れ様。取り合えず、急場は凌げたわ。特に曹操軍を足止めしてくれた祭達は、難しい
状況を良く切り抜けてくれたわ」
「己の覇道に拘る曹操なら無茶な戦は仕掛けんと思っておりましたが、上手くいきましたな。まぁ
ブラッドのあれは余計じゃったがの」
祭はニヤリと少しからかうような笑みを浮かべた。その後の展開を予想しているようだ。
「えぇ、聞いてるわ。中々面白いことするわね?」
「…時々お前は訳の分からんことをするな?」
「……」
雪蓮と冥琳は呆れ顔だが、蓮華の表情にははっきりと怒りが見て取れた。
「夏侯惇の身柄引渡しが撤退の条件だったとは言え、わざわざ抱きかかえる必要は無いわ。引き渡
した瞬間、攻撃される危険もあったのよ? いったいどういうつもり?」
厳しい表情でブラッドに詰問する。落ち着いた口調だが、表情は不信感を露にしていた初対面の時
より厳しい。その怒りの内訳は、単なる嫉妬だけではない。無謀な行動を心配してのことだった。
しかしブラッドに蓮華の思いは伝わらず、全く悪びれる様子も無く素っ気無く答えた。
「あれは不可抗力だ。夏侯惇は曹操の腹心ということだし、そう無碍に扱うわけにもいかん。まぁ、
向こうを挑発する狙いもあったが」
「挑発?」
「成るほど。案外したたかだな」
蓮華は良く分かっていないようだが、冥琳はブラッドの言わんとする事を理解し苦笑いを浮かべた。

「腹心である夏侯惇を辱めたことで、ブラッドは曹操の個人的な恨みを買うことになる。つまり
曹操の標的が孫呉からブラッドに逸れたという事だ。曹操が天下無双の武を誇るブラッドに兵を
集中させれば、兵力に見劣りする私達の自由度が増し優位に展開できる、というわけか?」
「その通りです。ご主人様に今以上の活躍をして頂くために、少し荒っぽい手ではありますが効果
はあると思います」
ブラッドの代わりにクーが答えた。ブラッドの行動はクーの助言によるものだった。ブラッドの
普段の行動と性格から判断して簡単に対応出来て最も効果的な方法を提案したが、内外に反響が
あったようだ。その証拠に、現場で一部始終を見ていた思春が不信感を露にして睨みつけている。
敢えて何も言わないのは、ブラッドの立場を考慮してのことではなく蓮華をはじめとする他の女の
子達を刺激しないためである。

「曹操が内心穏やかでないことは想像に難くないが、だからといって私怨で兵を進めるとは考え
難い。ただ、戦場でブラッドと対峙した時、多少冷静さを失う可能性はあるだろう。全く効果が
無いとは言えんな」
回りくどい言い方をしているが、今回のブラッドの行動はそれなりに評価している。軍師として
自分の予想を超える行動を素直に評価するのに抵抗があるらしい。

 桃香逃亡補助の纏めに続き、冥琳は今後の方針を説明し始めた。
「とりあえず当面の危機は脱したが、これは問題を先送りしたようなもので根本解決には至って
いない。また、徐州を支配下に置いたとはいえ、荊州、涼州と隣接している曹操が今すぐ南進する
事も考えにくい。今後の方針として、私達としては北方を警戒しながら速やかに体制を固め、勢力
を広げるべきだろう。幸い、この国は元々雪蓮の母、文台様が興した国。民心の掌握に時間は掛か
るまい。揚州以南は特に有力な勢力も無く、征圧はそれほど難しくないだろう。とは言え、私達が
河南を制圧するまで曹操が待ってくれるとは思えんし、時間との勝負になる」
強い口調で危機感を煽る。揚州内は纏まりつつあるとは言え、建業から離れるにつれて治安は低下
している。また、袁術派の残党も一掃出来たわけではない。周辺の諸侯と結託して反乱でも起こさ
れた時、鎮圧に時間を掛ければ華琳に一気に攻め込まれる可能性もある。

「河南は、制圧にはそう時間は掛からないと思います。その後の統治に人員を充てなければなりま
せんが、喫緊の課題ではありません。まずは北方に備えて多少バランスに欠ける軍の再構成が先決
かと思います」
説明を聞いていたクーが軍の抱える問題点を見抜き、冥琳に提案した。
「軍の再構成だと? それに、ばらんすとは何だ?」
冥琳のクーを見る目が若干きつくなった。どうやら、あまり触れて欲しくないところだったらしい。
「あ、申し訳ありません。バランスというのは調和とでも言いましょうか、孫策さんの軍は思春
さんや明命さんのように遊撃隊として優れた武官が多いのに対し、正面からぶつかる突破型の武官
が雪蓮さんを除くと曹操軍等と比べて見劣りします」
淡々と孫呉軍の特徴を述べる。我が軍と言わないところが、クーの立ち場を明確にしている。

「クーよ、儂では力不足と言いたいのか?」
クーの言葉に、呉の切り込み隊長を自認する祭が自分の武を否定されたと感じたのか、少し憮然と
した表情で尋ねた。
「いえ、違います。確かに蔡さんは性格的には正面突破型ですし、十分見合うだけの武をお持ちです。
孫呉にとって、無くてはならない戦力と言えます。ですが、祭さんは呉随一の弓の使い手でもあり
部隊のバランス考えれば、後方支援が最適です。蔡さんが後ろでしっかり援護してくれるからこそ
兵達も安心して攻撃できるのです」
「なるほど、儂としては前線で力と力のぶつかり合いこそ戦の醍醐味だと思うが、そういう事情
なら仕方ないのう」
クーに持ち上げられ祭の機嫌は治ったが、孫策軍の弱点を指摘された冥琳は渋い表情だった。

「流石というか、あっさり見抜かれてしまったな。確かにお前の指摘通り、我が軍は力押しが出来
る武官がいない。軍師として力押しは下策だが、平原での戦いなどでは策を講じても個々の力に
頼らざるを得ないこともある。また、敵に攻め込まれたとき前線で踏みとどまって時間を稼げる物
も少ない。雪蓮を前線に立たせるわけにはいかず、早急に解決しなければならない問題だ」
僅かな時間で呉軍の弱点を見極めたクーの観察眼に、冥琳は感心すると同時に他の勢力にも見抜か
れていることを考え、危機感を募らせている。
「どうして? 私は全然構わないわよ。寧ろ大歓迎よ」
冥琳の説明に雪蓮が反論する。雪蓮はクーの指摘した意味と冥琳の説明を良く分かっていない。
案の定、蓮華から厳しい言葉が発せられた。

「姉様、冥琳は孫呉の王たる姉様が、一番危険な前線で指揮を取るべきではないと言ってるんです。
姉様は孫呉の大黒柱なんですから、軽はずみな行動をとってもらっては困ります。今まで何回も
言ってるのに、まだ分からないんですか?」
「だって後方で戦況を見守るなんて、私の趣味じゃないわ。私が前線で戦ってるから兵もついて
来てくれたんじゃないの? だいたい、私が後ろで眺めているほど戦力的な余裕はないでしょ?」
「姉様の趣味は、どうでもいいです! 姉様は、孫呉の王としての自覚が無さ過ぎます!」
兵士の指揮のために自分の命を軽んじる雪蓮に、蓮華はますますヒートアップしヒステリック気味
に怒鳴りつけた。

「わ、分かったから、そんなに怒らないでよ。怒りんぼは嫌われるわよ?」
「うぐ…。そ、そんなこと、今は関係ないでしょ」
誰に、とは言わなくても分かる。からかうように話をはぐらかされ、蓮華の怒りが爆発するかと
思えたが、雪蓮の一言はかなり効果があったらしい。ブラッドの前で大声を出すのをはしたないと
思ったのか、蓮華は横目でブラッドの様子を伺いながら悔しそうに雪蓮を睨み付けた。

 このまま話が逸れたままでは問題解決にならないし、何より蓮華を不憫に思った冥琳が蓮華の
援護に回った。
「かつて、武で劉邦を圧倒していた項羽も、最後は敗れた。逆に負け続けた劉邦は最後に勝利し
漢帝国四百年の礎を築いた。雪蓮の言う事も一理あるが、ここは劉邦に倣って欲しいわ」
「ぶぅ…。じゃあ、誰が私の代わりをやるって言うのよ?」
相手が冥琳ということもあって、雪蓮は拗ねた表情で突っ掛かる。項羽と劉邦の戦いは当然知って
いるが、雪蓮の性格上、座して戦況を見守る事は苦痛だった。また、戦力バランスとして駒不足な
のも事実だった。

「要するに、正面突破型と前線を維持できる受けの強い武将が不足ってことか?」
「とりあえず、目処が立つまでご主人様が獅子奮迅の活躍をすれば何とかなります。まぁ、雪蓮
さんの代わりにはなりませんが」
「個と軍の違いはあるが、妥当なとこだな。それに天の御遣いが先頭になって敵を粉砕すれば、兵
達の士気も上がる。領民の支持も更に上がるだろう」
突破力においては、ブラッドは呉軍内どころか呂布さえ凌ぐ力を持っている。しかし、それは軍を
率いての力ではなくブラッド個人の能力だった。軍勢を率いていないので、敵の勢力を受け止め
更に押し返す防波堤の役割は期待できない。代わりに、一点突破で敵陣内に切り込んで引っ掻き回
すことは可能だ。特に張勲軍との戦いでは、ブラッドの能力が遺憾なく発揮された。使いどころを
間違えなければ、ブラッドは大きな戦力である。

「確かに、勝った時は冥琳の言う通りだと思うけど…」
冥琳の意見を肯定しながらも、蓮華の言葉は歯切れが悪い。納得出来ないところがあるようだ。
「これからは敵の攻撃も今まで以上に激しくなるし、もし天の御遣いが怪我でもしたら逆効果に
なるかもしれないわ。ブラッドも孫呉に無くてはならない存在だから、あまり無理をするのは良く
ないわ。そもそも天の御遣いを最前線に起用すれば、他の勢力から孫呉は人材不足と思われてしま
わないかしら?」
前線に単騎で突入するというのは、言うまでも無く無謀極まりない戦法である。戦法と言うのも
憚れる策である。これはブラッドの人間離れした身体能力、実際に人間ではないが、それがあって
初めて成立する戦法である。しかし、蓮華達はブラッドの正体を知らない。普通ではないが人間
だと思っている。蓮華は、たとえブラッド自身が希望したことでも、雪蓮の代わりにブラッドを危
険な任務に就かせることに抵抗があった。また、天の御遣いであるブラッドに頼った戦略が、孫呉
にとって必ずしも有益にならないと考えている。
「蓮華様は、ブラッドさんの事が心配で心配で仕方ないんですね♪」
「茶化すな! 私はそういう事を言っているのではない」
なら、どういう事を言ってるのかと突っ込まれると答えられる筈も無いのだが、そこで突っ込んで
蓮華を追い詰める苛めっ子は居なかった。

「蓮華様のお気持ちも分からないではありませんが、現状では他に手がありません」
「安心しろ。俺はお前達が思っている以上に頑丈にできている。何より、お前達を残して死んだり
はしない」
「こ、こんなところでいきなり何を言うのよ」
ブラッドの歯の浮く台詞を真に受けて、蓮華は真っ赤になって俯いてしまった。ブラッドはお前達
と全員に対して言っているが、自分だけに言われたものと自動変換するあたり、すっかり恋する
乙女だった。

「とは言え、今後勢力を拡大する上で、武将の駒不足は絶対に解消しなければならない問題だ。
しかし、都合よく有能な武将が在野に埋もれているとは考えにくいし、自前で簡単に養成出来る
ものでもない。頭の痛い問題だ」
ブラッドを起用し急場を凌ぐとしても、蓮華の言うようにいつまでもブラッドに頼るわけにはいか
ない。行き場の無い状況に冥琳はため息をついた。

「そう言えば、董卓配下の武将でその後の行き先が分ってるのは張遼だけだったけど、他はどこに
行ったのかしら? そもそも董卓の生死も確認できてないわよね?」
雪蓮の言葉に全員がはっとする。董卓軍との戦いは元々良く分からない理由で
結集したが、結果も有耶無耶に終わっていた。その後、雪蓮達は孫呉独立と戦後処理に終われ、
周辺地域の情報収集があまり機能していない状態が続いている。
「言われてみれば…。“かつて”天下無双と謳われた呂布も、行方不明のままです」
思春が呟く。ブラッドが恋と引き分けたため、もはや天下無双ではないと言いたいらしい。
「呂布か…。もし、手に入れることが出来れば我が軍の戦力は大幅に向上するが、行方不明では
どうしようもないな」

「董卓と賈?は劉備さんに保護されてますけど、武将は見ませんでしたね」
「…え?」
穏の呟きにブラッドを除く全員が呆気に取られた。
「穏、それどういう事? 詳しく話して」
「前に徐州にブラッドさんと行った時、何故か給仕の格好でお茶を出してくれました。二人とも
噂とは似ても似つかぬ可愛らしい女の子でした♪」
「賈?は現状にあまり納得していないようでしたが、逆に董卓は不満を抱いている様子はありま
せんでした。今の董卓に政治的野心は無く、董卓自身が危険な存在になる事は無いでしょう。
人間、一度権力を握ると固執するものですが、今の董卓の様子から判断して元々は無かったと推察
できます」
「ほぉ、聞くと見るでは大違いじゃな」
「本当に何のための戦いだったのか、分からなくなってしまいます」
穏とクーの説明に多くの者が驚きの声を上げたが、雪蓮と冥琳に驚いた様子は無かった。

「扱いの難しい情報ね。董卓は世間では暴君で通ってるけど、穏の話では違うみたいだし。でも
今更って感じよね」
「こういったご時勢なので董卓に引け目を感じることはないが、董卓の健在を知って散り散りに
なった将兵が劉備の下に集結されたら厄介だな」
そもそも反董卓連合は、権力を掌握しつつある月を追い落とすため麗羽が発起人となり結成された
ものだった。圧制に喘ぐ洛陽の民を救うという大義名分はただのこじ付けでこの機会を利用して
のし上がろうと考えている者ばかりだった。雪蓮達も孫呉の独立、更には大陸制覇のためには綺麗
事だけで事が進むとは考えていなかった。
従って董卓と賈?が存命と分かったところで、特に安堵する事は無い。ただ、消息不明の武将達
が月の下に集まる可能性はある。結果的に桃香達の戦力がアップすることになるが、それを華琳に
対する対抗手段が増えると喜ぶべきか、油断ならない敵が増えると危惧すべきか判断に迷うところ
である。

「とりあえず、劉備とは良好な関係を維持すべきね」
「その前にもっと力を付けて欲しいところだ」
「まぁ、それは私達も同じよね。当面ブラッドに頑張ってもらうとしても、使える将を何とか工面
しないといけないわね。まぁ、いざとなったら私が出張って…」
「雪蓮…」
「まだ分かってないようですね」
「あぅ…」
冥琳と蓮華から睨まれ小さくなる懲りない雪蓮だった。


 軍議が終わり、それぞれが自分の持ち場に戻ろうと部屋を出て行く中、蓮華が周りの目を気に
しながらそっとクーに話しかけてきた。
「ねぇ、クー」
「はい、何でしょうか?」
「わ、私はどうなの?」
「え? どう、とはどういう意味でしょうか?」
内容を端折りすぎて意味の分からない質問に、クーは首を傾げた。
「皆の率いる軍の役割について私だけ説明が無かったから、どうしてなのかなって」
自信無さそうな顔でクーに尋ねる。戦闘において天才的な才能を発揮する雪蓮に対し、何事もそつ
なくこなす蓮華は、欠点は少ないが特筆すべき点も無かった。バランスの取れた将といえるが、
一芸に秀でる他の武将達と比べると、どうしても目立たない存在だった。袁術軍との戦いでは大き
な成果を挙げたが、ブラッドの後詰めという立場で自分の戦果とは考えていなかった。他の武将達
と違い、より客観的に状況を把握しているクーの言葉は蓮華に重く圧し掛かった。

「お前はユーティリティプレイヤーだ」
「え? 何それ?」
「状況に応じて、複数の役をこなせる汎用型の武将のことです。一芸に秀でるのではなく、多芸に
高い能力を持ち、文武両面において水準以上の結果を残せる貴重な存在です」
「お前にはお前にしか出来ないことがある。もっと自信を持て」
「そ、そう? ありがとう」
ブラッドの一言で蓮華の表情が緩む。回りを気にしすぎて少し自信を失いかけていた時に、信頼し
好意を寄せる相手からの言葉は効果的だった。
「呼び止めてごめんね。じゃあ行くね」
すっかり機嫌の良くなった蓮華は、足取り軽くその場を立ち去った。

「お疲れ様。上手く宥めたわね」
一部始終を見ていたのか、雪蓮がニヤニヤしながら声を掛けた。
「こういうのは、お前の役目じゃないのか?」
「私も原因の一端みたいだったし、こういう時はあなたからの一声が何よりも効果的よ。事実
あの娘すっかり立ち直ってるじゃない」
蓮華のフォローは、本来なら姉の雪蓮や親衛隊長である思春の役目である。しかし、二人とも一芸
に秀でるタイプである。蓮華の性格を考えれば、二人の得意分野と自分を比較して、更に落ち込み
かねない。ここは、信頼しているブラッドの助言が最も効果的である。なお、ブラッドも武に特化
しているが、あまりに飛び抜けているので蓮華も比較対象にしていない。
「ま、ちょっと依存気味なのは気になるけどね」
気掛かりと言えば気掛かりだが、妹を信じているのか雪蓮は現時点ではあまり気にしていなかった。


 ブラッドは城を出ると、いつものように街を出歩いていた。普段、お供をしている明命は国境
警備に出ていて不在だった。領土を得たことで、これまで以上警備に人員を割かなければならなく
なった。ブラッドもただ街をぶらぶらするのではなく、警邏の意味合いも兼ねて行動するようになった。
「人手不足か…」
「どうしました、ご主人様?」
ブラッドの呟きにクーが反応した。
「とりあえず敵を全部倒せばいいと思っていたが、中々難しいな」
「竜の巣で迎撃するときは侵入経路は限られていますし、侵入者の戦術は限定的で個々のユニット
の攻撃力も私達が上回っているので、容易に撃退できます。それでも前線の迎撃部隊以外に中央
管理室での戦況分析と前線への指示、罠の設置等、役割は分担しています。ただ暴れてればいいと
いうわけではありません」
「そうなのか?」
「えぇ。結構大変なんですよ」
竜は自分でたいていの事はこなしてしまう為、組織を動かすことに慣れていない。クーやメイド達
のサポートが無ければブラッドも一人で巣を運営するのは不可能である。しかし、いい意味でプライド
の高くないブラッドは周囲の意見をよく聞き入れる為、他の竜に比べてかなり大きな巣を運営でき
る。クーも自分の貢献度をしっかりアピールしている。

 適当に街中をうろついていると、ブラッドは街の行く先々で注目を浴びていた。天の御遣いにし
て孫呉独立の立役者であるため、現在の注目度は雪蓮を上回っていた。ブラッドに気付いた領民の
特に若い女性の歓声が上がる。
「御遣い様よ!」
「ブラッド様だわ!」
孫呉独立の英雄で、長身で彫りの深い顔立ち、周りの男達とは全く違う容姿に娘達はすっかり魅了
されている。しかし、竜の巣でハーレム状態のブラッドにとって、この状況は特に驚くべきことで
はなかった。

「ブラッド様、どちらへ行かれるんですか?」
「特に決めていない。適当にぶらついているだけだ」
「そうですか。あの…ご迷惑でなければ、ご一緒させていただけませんか?」
「あ、あたしも!」
一人の女性の勇気ある行動を切欠に、遠巻きに見ていた女性達がブラッドの周りに群がって来た。
ゆっくり街の中を散策したいブラッドにとっては鬱陶しい状況だが、竜の巣ではすぐ体の関係を求
められた事を考えれば、まだ彼女達の行動は理性的だった。

 公務を口実に女の子達と別れたブラッドは、街を出ると城には戻らずに森の奥に進んで行った。
すると、ブラッドの背後に一定の距離を置いてついて来る者がいた。しかし、ブラッドは気にせず
同じペースで森を進む。暫くすると、背後の追跡者との距離はどんどん近くなり、ブラッドのすぐ
後ろまで来てしまった。それでもブラッドは構わず進んで行った。
更に進み、森のかなり奥まで行ったところでブラッドは立ち止まり、ゆっくり振り向いて追跡者
に目を向けた。ブラッドの視線の先にいる追跡者は華雄だった。

「さてと、何の用だ?」
「どこで気付いていた?」
華雄はブラッドの質問に答えず自分の疑問を口にした。町人の姿をしているが、鍛え抜かれた体躯
と鋭い眼光、そして全身から迸る闘気は、数々の修羅場を潜り抜けた武人そのものだった。
「お前の事は、街の中にいるときから気付いていたぞ」
正確には気付いたのはクーだが、こう言った方が華雄に対して効果がある。案の定、華雄は更に厳
しい表情でブラッドを睨み付けた。

「気付いていながら、態々場所を移したのか。領民が巻き添えにならないように配慮したという
ことか?」
「ここなら、誰にも邪魔されず存分に出来るからな」
「ほぉ…」
ブラッドの言葉は意外だったのか、華雄は少し驚いた表情を見せた。ブラッドは領民に配慮した
とは一言も言っていないが、華雄は好意的に解釈したようだ。

「噂では、あの後お前は呂布との一騎打ちで引き分けたそうだが、それは本当か?」
「途中で邪魔が入って有耶無耶になったがな」
「……」
ブラッドの言葉を肯定と受け取り、華雄は眉を上げニヤリと不敵な笑みを浮かべた。ブラッドを唯
の軽薄な男から倒すべき武人と認識を改めたようだ。

「汜水関ではお前の挑発に乗って敗れたが、ここには孫策も関羽もいない。お前が軽んじた私の武
がどれほどのものか、たっぷりと味あわせてやろう」
「お前には俺と戦う理由があるようだが、俺には無い。見返りがないとやる気が起きん」
「貴様、初めから勝つことを前提で話しているな。まぁいい。貴様が勝てば何でもしてやる」
華雄は生死をかけた決闘を申し込んでいるが、ブラッドにそこまでの意気込みは無い。しかも自分
が勝つことを信じて疑わない態度に、華雄のモチベーションが更に上がった。

「いくぞ!」
「…さっき言った事、忘れるなよ」
余裕の態度を続けるブラッドに対し、華雄は距離を空け、臨戦態勢に入った。
「はぁっ!!」
華雄の金剛爆斧が、唸りを上げてブラッドに襲い掛かる。振りが大きくスピードもあまりないので
ブラッドは難なく躱した。しかし、ブラッドのいた場所は地面が大きく抉られ、パワーは中々の
ものである。
「当たればそれなりのダメージはありそうだな」
「その減らず口がいつまで叩けるかな」
華雄は不敵な笑みを浮かべ攻撃態勢に入った。怒涛の連続攻撃をしかけるが、ブラッドはそれを躱
し続けた。
「逃げてばかりでなく、反撃してみろ。貴様、本当に呂布と引き分けたのか?」
一向に勝負しようとしないブラッドに、華雄の苛立ちが募る。

 攻める華雄、逃げるブラッドの攻防が暫く続く。
「あ?」
攻撃を躱そうとブラッドは後退したが、木にぶつかってしまい、一瞬だが注意が逸れてしまった。
そのチャンスを華雄は逃さない。
「もらった!」
ドカッ!
「あら?」
華雄の攻撃をまともに受け、ブラッドは派手に吹っ飛ばされた。とはいえ、本来なら体を真っ二つ
にされてもおかしくない攻撃を受けながら、ブラッドは砂を被っただけでかすり傷一つ負っていない。
「受け止められると思っていたが、予想以上にパワーがあるな」
「ちょっと待て。私の金剛爆斧をまともに受けていながら、何故かすり傷一つ無いんだ?」
ブラッドは華雄のパワーに感心しているが、そんなブラッドを華雄は人外の者を見る目で見ていた。
「お前がそれを気にする必要は無い」
「気になるわ! 貴様、何者だ!?」
「ブラッド・ラインだ」
お約束のやり取りの後、ブラッドは反撃を開始した。


 ブラッドが攻撃に転じてから、勝負が決するまで時間は掛からなかった。華雄はスピードでは
ブラッドに着いて行けず防戦一方となり、至近距離へ容易く侵入された。ブラッドの掌底が華雄の
胸にヒットし同時に電撃系の魔法が発動すると、華雄は僅かに体を痙攣させて崩れるようにその
場に倒れた。
「…軽薄な容貌とは裏腹に武は本物だったようだな」
言うことを聞かない体を何とか起こし、華雄はどこか達観した表情でブラッドを見上げていた。
心は折れていないが、全力を出し切った事に達成感を感じているのかもしれない。そんな華雄を
見下ろしながら、ブラッドは特に勝ち誇った仕草も見せず淡々とした表情である。

「街中でお前を捕らえなかった理由を教えてやる。お前を孫策に殺させないためだ」
「…どういうことだ?」
あえて見逃してやったと言わんばかりの態度に、華雄は眉を訝しげな表情で睨み付けた。
「街中でお前を取り押さえる事は簡単だが、そんなことをすればお前は孫策の配下の者に引き渡さ
れ処刑されただろう」
「貴様、私に情けを掛けたつもりか? それが武人にとって、どれ程屈辱なのか分かっているのか?」
見直したばかりのに武人の誇りを傷つけられ、華雄は屈辱で頬を紅潮させて睨み付けた。
「お前に情けを掛けたわけではない。自分の獲物を横取りされたくなかっただけだ」
「え、獲物だと?」
「お前は俺の獲物だ。まぁ、俺が勝ったら何でもするんだから覚悟で出来てるよな」
そう言うと、ブラッドはニヤリと笑い華雄の顎に手を掛け、自分のほうに向かせた。

「え? どういう…むぐぅ!」
戸惑う華雄の口を問答無用で塞ぐ。自分に何が起こっているのか分からず、華雄は体を硬直させた
ままブラッドの成すがままにされている。ほぼ無抵抗の状態でブラッドに脱がされ一糸纏わぬ無垢
な姿を晒されてしまった。
「え? な、何を…や、止めろ」
「ほぉ…。中々のものを持っているな」
屈辱にまみれ、真っ赤な顔で睨みつける華雄に対し、ブラッドは予想を超える華雄の肢体に感嘆の
声を上げた。
「どうせ他の女にも同じ事を言ってるんだろう」
「言っているが、実際に良いものにしか言っていない。今まで色んな女を見てきたが、お前も十分
に誇れるものを持っている。あいつ等ともいい勝負だ」
女性のスタイルを他の女性と比較するのはかなり失礼な事だが、華雄はブラッドの一言に普通とは
違う反応を示した。
「あいつ等だと? それは孫策達の事か?」
「他にもいるが雪蓮達もそうだ」
「…そうか」
華雄は何か考え込んでいるようだが、ブラッドは特に気にすることなく勝者の権利を行使した。

 ブラッドが少し乱暴に引き寄せると、今まで強気な態度を見せていた華雄の表情が僅かに引き
攣った。しかし、ブラッドは気にすることなく無遠慮に華雄の体を弄る。雪蓮には及ばないが水準
より大き目の胸を捏ねるように揉みしだく。そして、空いている手は華雄の下腹部に伸び執拗に弄
くる。
「はぅ…な、何だ、この感覚は?」
初めての感覚に華雄の口から熱い吐息が漏れる。北方出身の華雄の白い肌が桜色に染まり、戦場と
は別人のようなしおらしい態度を見せる。全身がしっとりと汗ばみ、熱を帯びてくる。ブラッドの
成すがままにされても抵抗する意識も薄まり、自然と体を開いてしまった。
「はぁん…。か、体が…くぅ…痺れるような疼くような。あぁん。こ、こんな感覚は初めてだ」
「良い反応だ。痛いかもしれんが我慢しろ」
有無を言わさぬブラッドの一突きが華雄を貫いた。


 そこから先の華雄の記憶は曖昧だった。全身の気だるさと下腹部に残る鈍痛が、自分が何をされ
たかを如実に物語っているが、決して不快ではない。寧ろ、初めて経験する安らいだ時間だったよ
うな気がする。
はっきりとしない視線の先では、自分に初めての感覚を植え付けた張本人であるブラッドが背を
向けて誰かと話をしていた。全くの無防備で、今なら武器さえあれば子供でも殺せそうだが、既に
華雄にその意思は無かった。

「彼女はどうするんですか?」
「使えそうだし、持って帰る」
「そうですか。彼女は、冥琳さんの話では正面突破型の武将としてはかなり優秀な部類とのこと
ですから、雪蓮さんの代役として使えると思うのですが…」
クーのその後の言葉を飲み込んだ。華雄は孫策軍に必要な人材にマッチしているが、過去に孫家と
因縁があったらしい。華雄の激しやすい性格では、素直に雪蓮の配下に就くとは考え難い。
「彼女自身がどう思うか、直接聞いてみましょう」
「何?」
不意にブラッドの会話の相手のクーの視線が向けられ、華雄の意識も次第にはっきりしてきた。
「…物の怪か?」
華雄は普通の人間とは違う容姿のクーを見ても、ブラッドとの遣り取りを見ていたためか驚かず
すんなり受け入れてしまった。

「物の怪がどういう類のものかは分かりませんが、人間でない事は確かです。初めまして、ご主人
様の執事をしておりますクーと申します。以後、宜しくお願いします」
「あ、あぁ、私は華雄だ」
丁寧かつ礼儀正しいクーの態度に釣られて華雄も素で返す。微妙な雰囲気が漂いどう対処していい
か分からず場が固まりそうになったが、ブラッドの声で現実に戻された。
「これから城に戻る。お前もついて来い」
「城に? 私に孫策に下れと言うのか?」
「それはお前が決めろ。孫呉とは利害関係が一致しているが、俺は孫策の配下ではない」
「……」
脳筋を活用して考える。これまでの態度から、ブラッドが孫策と主従関係にない事は分かる。寧ろ
対等な関係に見える。華雄を自分の獲物と言いながら、華雄が孫策配下になる事は厭わない。華雄
はブラッドの真意を測りかねていた。

「あなたの同僚だった張遼は今や曹操の配下です。このご時勢、敵が味方になるのは珍しい事では
ありません。行動に著しく義を欠くものでなければ、主を代えても何ら非難される事はありません」
「……」
クーの言葉を、華雄は頭の中で反芻している。武人にとって、活躍の場を奪われる事ほど辛い事は
ない。董卓(月)の消息も不明で、このまま在野に埋もれるのは本望ではない。孫家との確執は
あるが、雪蓮達に個人的な恨みは無いし、有望な勢力である。
「汜水関でお前に言ったことは訂正しておこう。お前は武人としても、女としてもかなり良い線
いってるぞ」
「……」
悪びれず話すブラッドに華雄は呆れ顔だが、不思議と嫌悪感はあまり無かった。武を重んじる華雄
にとって、武で完敗した時点でブラッドに対する評価は変わっていた。何より一対一の戦いの場を
設定した事を、ブラッドが自分を武人して軽んじていないと思い見直していた。女にだらしなく
見えるのも強い男の甲斐性だと、かなり好意的に解釈した。

「分かった、同行しよう。武を極めんとする者にとって、お前は格好の教材だ。このまま見逃す手
は無い。それと、今後私の事は鏡花と呼べ」
「それがお前の真名か?」
「お前は私を認めてくれたように、私もお前を認めたということだ。真名を預けるのは当然だ」
ブラッドに対する敵愾心は既に無い。数時間前、自分を殺そうとした者とは思えない切り替えの速
さである。華雄の性格かもしれないが、以前思春を強引にモノにした時も似たような反応を示した
ことから、武人の性分なのだろうとブラッドは都合よく解釈した。
「そういうものか…。まぁ、配属に関してはあいつ等に任せるが、人手不足だし悪いようにはしな
いだろう」

 人事ような物言いのブラッドである。鏡花を城に連れ帰った時、雪蓮達がどんな反応を示すのか
何も考えていない。ただ、パワー系の武将が加入したことで孫呉の戦力がアップしたことは間違い
ない。


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