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No.8447の一覧
[0] 国取りドラゴン(真・恋姫無双×巣作りドラゴン) 第24話追加[PUL](2011/03/13 15:31)
[1] 第1話:竜星墜落[PUL](2009/12/13 18:40)
[2] 第2話:突発的開放[PUL](2009/12/13 21:39)
[3] 第3話:同床異夢[PUL](2009/05/23 11:53)
[4] 第4話:実力の片鱗と影響[PUL](2009/06/02 15:16)
[5] 第5話:ある日常の乙女達[PUL](2009/06/10 19:36)
[6] 第6話:ブラッド歴史の表舞台に立つ[PUL](2010/07/12 12:50)
[7] 第7話:激突! 天下無双対決[PUL](2009/12/13 21:39)
[8] 第8話:黄昏の戦乙女(少しエッチ)[PUL](2010/09/05 15:10)
[9] 第9話:華、開く(少しエッチ)[PUL](2010/01/12 21:56)
[10] 第10話:虎と麒麟児と小鹿(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:33)
[11] 第11話:私の瞳の中のあなた(少しエッチ)[PUL](2009/12/22 22:53)
[12] 第12話:新しい時代の幕開け[PUL](2009/10/27 23:21)
[13] 第13話:昨日と違う同じ空[PUL](2009/10/31 22:05)
[14] 第14話:彼女達の考察[PUL](2009/11/17 20:27)
[15] 第15話:愛紗、朱里、揚州紀行(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:35)
[16] 第16話:北方情勢と穏気な軍師(少しエッチ)[PUL](2009/12/28 16:30)
[17] 第17話:伏竜、昇り竜、落ち零れ竜[PUL](2010/07/22 23:55)
[18] 第18話:最強工作員と最弱竜(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:11)
[19] 第19話:料理スキルの効果(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:12)
[20] 第20話:逃げる桃香、追う華琳、阻む雪蓮[PUL](2010/04/25 23:48)
[21] 第21話:新旧弓使い対決[PUL](2010/07/22 01:13)
[22] 第22話:魅惑の三位一体攻撃[PUL](2010/08/05 22:01)
[23] 第23話:新戦力発掘(少しエッチ)[PUL](2011/03/13 17:21)
[24] 第24話:パワーファイターVSスピードスター[PUL](2011/03/13 15:31)
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[8447] 第19話:料理スキルの効果(少しエッチ)
Name: PUL◆69779c5b ID:93f67651 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/22 01:12
第19話:料理スキルの効果


 雪蓮が揚州を奪還し独立した後、大陸の情勢は大きく動き出した。特に曹操、袁紹といった北方
の二大勢力の激突は、今後の大陸情勢に大きな影響を及ぼすものとして、大陸中が注目していた。
「曹操が袁紹を破って、河北を制したみたいね」
執務室で書類と格闘している雪蓮が、隣で別の仕事をしている冥琳に声を掛けた。
「えぇ、これで大陸北方は西涼の馬騰を除いて曹操が抑えたことになる。後は南進するだけね」
冥琳は手を止めず、視線も雪蓮に向けずに答えた。
「思ったより早かったわね。いくら将が凡庸でも、兵力も人材も上回っていた袁紹軍がこんなに
あっさりやられるとは思わなかったわ」
「有能な人材を抱えても、使いこなすことが出来なければ意味が無い。強力な兵も、ただの置物に
なってしまう。そう珍しいことではないわ」
これとよく似た状況が少し前にあった。河南の一大勢力だった袁術軍を、寡兵にもかかわらず圧倒
的な実力差で滅ぼしたのは他ならぬ雪蓮自身である。

「兎に角、これで曹操の勢力が更に拡大したわけで、次の狙いは劉備か劉表になるでしょうね」
「穏やルクル女王が予想した通りの展開ね。私達もうかうかしてられないわ」
「そうね。その為にも先に済ませなければならない事は、早く終わらせないといけないわ」
そう言うと、冥琳はにこやかな笑みを浮かべながら雪蓮の前に書類の束を置いた。

「ちょ、ちょっと待ってよ。私の話聞いてなかったの? こんな事やってる場合じゃないでしょ?」
「こんな事、だと?」
理不尽に積み上げられた書類を前に雪蓮は不満をぶつけるが、言い方が悪かった。冥琳は目を細め
冷ややかな視線を雪蓮に突き刺した。
「あ、いや、そういう意味じゃなくて…。勿論、書類業務も大切だと思うけど、私にはもっと相応
しい仕事があると思うんだけど?」
「これは街の整備や軍の編成など、呉の最高責任者であるあなたの決裁が必要なものよ。あなたに
しか出来ない仕事よ」
「そ、それは分ってるけど…」
分ってはいるが、納得はしていない。雪蓮はそんな表情だった。雪蓮に事務処理能力が無いわけで
はない。寧ろ、水準より高い能力を備えている。しかし、戦場で最も光り輝く雪蓮にとって地味な
事務処理は退屈を通り越して苦行に近いものだった。理屈では分っていても、体が拒否反応を示し
ていた。
「王の責務よ。それくらい我慢しなさい」
「はぁい…」
 渋々返事する雪蓮。雪蓮の性格を知り尽くしている冥琳も、その事は十分分かっている。しかし、
王として更なる飛躍を期待し、厳しく当たっていた。実は苦悶の表情を浮かべる雪蓮を見ながら
面白がっている節もあるが、そんなことが出来るのは冥琳だけである。

「私は少し席を外すけど、逃げたら駄目よ」
悪戦苦闘する雪蓮を見ていたい気持ちもあるが、優先事項があるらしく席を立った。勿論、雪蓮が
サボらないように釘を刺すことも忘れない。

 執務室を出ると、冥琳は心なし足早に歩を進めていた。向かう先は書庫だった。
「済まん。待たせてしまったか?」
「いや、俺も今来たところだ。気にするな」
待ち合わせの相手は、ブラッドだった。この世界の字を読めないブラッドが書庫に居ることは
かなり違和感がある。それ以上に、冥琳が軽く息を弾ませてブラッドの元に駆け寄るのも珍しい。
普段、あまり人が訪れることのない書庫は、ブラッドと冥琳の二人だけである。甘く密かな逢瀬
と見えなくもないが、双方ともそんな意識はなかった。

「竜について聞きたいんだったな? もう少し具体的に言ってくれないか?」
「この世界で想像されている竜の形状について、詳しく知りたい」
ブラッドは穏からこの世界の竜についての話を聞いた後、もう少し詳しい情報がないか冥琳に
頼んでいた。竜が人知を超えた存在として人々の畏怖の対象になっている事は、穏の説明で把握し
ている。今後正体を明かすかどうかはの判断材料として、この世界の竜の姿を確認しておく必要が
あった。

「形状といっても想像上の生物なので何とでも描けるが、とりあえず一般的な姿が描かれている
文献ならある。竜に関する文献は…。あ、あった、これだ」
目当ての文献は棚の一番上に保管されてあった。女性の中では割と長身の冥琳だが、背伸びしても
ギリギリ届かない微妙な場所である。自分より背の高いブラッドが横に居るから頼めばいいのだが、
妙なところでむきになっている。
「く…もう少し」
冥琳は自分で取ろうと爪先立ちで手をパタパタ振っている。しかし、急に背が伸びるわけでもなく
虚しく空を切るばかりだった。
「あ…」
無理な体勢を続けていた所為で、冥琳はバランスを崩してしまった。そのまま後ろに倒れそうに
なったところで、ブラッドに抱き止められていた。
「何やってんだ?」
「ブ、ブラッド?」
自分がどういう状況に置かれているのか理解して、冥琳は一瞬身を硬くした。しかし振り払う事は
しない。
「届かないなら言えばいいものを…。で、どの本なんだ?」
「う、うむ。一番上の…」
「これか?」
「その右隣、それだ」
ブラッドは、冥琳に覆い被さるような体勢で本を手渡した。冥琳も、ブラッドに凭れ掛かったまま
である。端から見れば怪しげな雰囲気だが、両者に浮ついた気持ちは無かった。一つのことに集中
すると周りに無頓着になる冥琳は、自分がどういう状況にあるか分っていない。また、常に女性に
囲まれて生活しているブラッドも、この程度のスキンシップを気にすることはなかった。

「…全然違うな」
ブラッドは冥琳の肩越しに文献を覗き込んだ。そこに描かれている竜は、蛇に足が生えたような
形状で、顔もかなり違っていた。
「お前の世界では、竜はどのような形状と考えられているのだ?」
「胴はもっと短いし、後ろ足はしっかりしていて人間と同じように二足歩行だ。顔もかなり違う。
もっと精悍だ」
言外に、俺はもっと格好良いと言っているのだが、冥琳には当然だが伝わっていない。
「なるほど。確かに我々の想像しているものとはかなり違うな。殆ど別の種族と言って良いくらい
だ。国が違えば、思想も変るということか。空を飛んだり、火を噴いたりはするのか?」
ブラッドの話に知的好奇心が刺激されたのか、冥琳は逆に質問してきた。自分がブラッドに密着し
ている意識はまだ無い。
「思想とは少し違う。俺の居た世界では竜は実在している。空は飛べるが、火を噴くかは種族に
より違う。嵐や地震を起こしたり、雷を落としたり、種族により区々だ」
「何、それは本当か!? …あ」 
更に色々聞こうと振り向いたところで、ようやく自分とブラッドの位置関係が分り冥琳は硬直した。
息が掛かるほどの位置にブラッドの顔があり、どちらかが近付くだけで唇が触れ合う体勢だった。
男女の営みに疎い冥琳でも、この状況から次の展開は容易に想像できる。

「…流石にこれは拙いな」
「俺は構わんぞ?」
「わ、私は、この後執務室で仕事が残っている。悪いが次の機会にしてくれ」
このまま流されたら、絶対に逆らえなくなる事は分かっている。仮にそうなった場合、雪蓮の待つ
執務室に戻るのはかなり勇気のいることである。小鹿状態で戻れば、雪蓮から何を言われるか分っ
たものではない。
「…まぁ、いいだろう」
ブラッドとしてはこのまま押し倒して、普段絶対見せない冥琳の可愛い一面を見るのも楽しいが
苛めすぎてへそを曲げられると宥めるのが面倒だ。行為に及ぶ場合は、両者合意の下という約束事
を忠実に守るつもりは毛頭ないが、今すぐ冥琳を抱きたいという強い気持ちも無いのであっさり
引き下がった。

「何じゃ、詰まらんのぅ」
不意に失望感の混じった声が掛かる。祭が呆れ顔でブラッド達を見ていた。
「こ、黄蓋殿! な、何故あなたがここに?」
既に手遅れだが、それでも冥琳はブラッドから即座に離れると祭にやや詰問調で尋ねた。
「ブラッドが書庫に入るのを見かけてな。珍しいので後を付けてきたら、今度は浮かれ気味の公瑾
がいそいそと書庫に入って行った。これは何かあると期待しておったのじゃが…」
「…別に私は浮かれてなどいない。勝手な憶測で話をするのは止めてもらいたい」
これ以上醜態を曝したくない思いからか、冥琳は憮然とした表情で、祭の言葉を否定した。全てお
見通しと言いたげな祭の態度も面白くない。

「わざわざ私達をつけて様子を伺うとは、黄蓋殿は随分暇なようですね?」
「今日の仕事は、もう終わったしの。暇潰しに、ひよっこ共の仕事ぶりでも見ようと思ってきたの
じゃ。お主も“色々”頑張っておるようじゃの?」
「……」
普段の冥琳なら仕事をサボっている祭をやり込めるのは簡単だが、今は立場が逆である。恥ずかし
い場面を目撃されてしまい、反撃も切れ味が鈍い。祭もそのことが分かっているので、簡単に切り
返した。
「仰るとおり、私は忙しい。ブラッド、後の事は暇な黄蓋殿に頼め」
「お、おい?」
これ以上ここにいても碌な事は何もないと判断した冥琳は、ブラッドに資料を押し付けると呼び
止めるのも聞かず、さっさと書庫から出て行ってしまった。

「くくく…。いつも澄まし顔の公瑾も、なかなか乙女よのう」
いつもは自分が羽目を外して冥琳に小言を言われているが、攻守所を代えた今、祭は余裕の笑みを
浮かべている。
「まぁ、それは兎も角、話が途中までになってしまったな」
ブラッドは祭と冥琳の因縁にあまり興味はなく、自分の欲しい情報が得られなかったことを気に
していた。
「儂の承諾も無く勝手に押し付けて行きおったが、お主達はこんなところで何をしておったの
じゃ? 竜がどうとかと言っておったようじゃが」
「この世界の竜がどういうものか、聞いていたところだ。特に外見について」
ブラッドは冥琳から押し付けられた本を祭に見せた。

「俺はこの世界の文字は分らない。何て書いてあるか、読んでくれないか?」
「うむ。竜に関することなら読まなくても分ることじゃが…」
祭は、文献に書いてあることをブラッドに読んで聞かせた。竜の能力に関する記述は、自分達と
合致する部分が多かった。曰く、絶対的な力を持つ神聖な存在らしい。大空を駆け、雷鳴を呼び
風を起こし紅蓮の炎を吐く。大地を裂き、嵐を起こし、天を焦がし全てを焼き尽くす。七つの竜の
血を引くブラッドは、空も飛べるし火を噴くことも嵐を呼ぶことも出来る。地震を起こし、雷を落
とす事も可能だ。ただし、全て中途半端である。

「神聖なものとして、時の皇帝を竜の生まれ変わり称することもある。また、強さを誇示する為に
竜や虎、狼などを二つ名に使うことも良くあることじゃ。策殿が戦いの麒麟児、策殿の母君の堅殿
が江東の虎等と称されるのがそれじゃ。じゃから、お主も天の御遣いにして江東の竜と名乗るのも
良いかも知れんぞ?」
「止めておこう。天の御遣いだけで十分大袈裟だ」
わざわざ竜の名を使ったりすれば、自分が竜じゃないと言われているようで、あまり気分の良いも
のではない。天の御遣いだけでも鬱陶しいのに、これ以上の過剰装飾は避けたかった。

「竜に関する情報は良く分かった。礼を言うぞ」
「そうか? 役に立ったのなら何よりじゃ。ところで、今日はこれからどうするつもりじゃ? 
特に予定が無いなら、儂に付き合わんか?」
「まぁ、暇だし付き合ってもいいぞ」
「決まりじゃな。付いて参れ」
ブラッドの快諾を受けて、祭は嬉しそうだった。


 祭の後を付いて辿り着いた場所は、鍛錬場だった。蓮華や思春にせがまれて鍛錬に付き合わされ
る事はよくあるが、祭に誘われたのはこれが初めてだった。
「儂の専門は弓じゃが、剣も使える。天下無双のお主の武、儂も確かめたくてな。少し、相手を
してくれぬか?」
剣を片手に不敵な笑みを浮かべる。普段は飄々としているが、祭も武人としてブラッドの武にかなり
興味を持っていたようである。
「お主の武は天下無双じゃが、権殿や思春とばかりと相手していては型に嵌り過ぎてしまう。違う
戦い方も身に着けた方がいいぞ?」
「あまり気が乗らんな…」
人間相手なら誰とやっても負けるはずが無いと思っているので、ブラッドのやる気はゼロだった。
「付き合ってくれたら、儂がお前に飯を奢ってやるが?」
「…わかった」
餌に釣られたわけではないが、とりあえず承諾するブラッドだった。
 
 距離をとって相手の様子を伺う。気合十分の祭に対し、ブラッドはまだやる気は無かった。
「はぁっ!」
祭の気合の入った一撃がブラッドに打ち込まれるが、ブラッドは難なく躱した。更に攻撃を仕掛け
るが、ブラッドはその全てを躱し切った。
「さすがじゃのう。呉随一の速さを誇る思春でも、お主に有効打を打ち込むのは至難の業らしいし
儂が馬鹿正直に攻撃しても当たらんわ」
祭は、ブラッドの身体の力の高さに改めて感心しているが、完全に脱帽しているという雰囲気も伝
わらない。何か裏技を隠しているようだ。

「では、こういうのはどうかなっ!」
「!」
祭は、仕切りなおして再度ブラッドに攻撃を仕掛けた。前回と同じように簡単にいなそうと思った
ブラッドの表情が、僅かに強張った。祭の剣が、まるで追尾するかのようにブラッド目掛けて飛ん
できたのである。何とか紙一重で躱すが、予想外の攻撃に戸惑っている。
「まだまだいくぞ」
祭は攻撃の手を緩めず、ブラッドを攻め続ける。ブラッドも、人間離れした身体能力で躱し続けて
いるが、微妙にタイミングをずらされ、余裕を持った対応が出来ない。勿論、祭の攻撃を素手で受
け止めて反撃するのは可能である。しかし、人間相手にむきになって反撃するのは竜のプライドが
許さないらしく、ブラッドは躱すことに専念しながら祭の動きを注意深く観察している。

 祭もブラッドの様子が変ったことを察知したのか、一歩後退して攻撃を止めた。
「思春より遅い儂の攻撃が何故躱しにくいか、戸惑っておるようじゃな?」
「あぁ。攻撃の間合いが一定でなく合わせ難いのは分るが、纏わり付くような攻撃が鬱陶しい。
どんな手を使ったんだ?」
祭より動きの早い思春の攻撃を余裕を持って躱しているブラッドにとって、祭の動きは不可解なも
のだった。祭は自分の攻撃がブラッドに通用したことに、満足げな表情を浮かべている。
「どうやら上手くいったようじゃな。呉随一の速さを誇る思春の攻撃を受けきるお主に、儂がまと
もに攻撃して一太刀浴びせるのは至難の業じゃ。じゃが、思春は速さは図抜けておるが動きが直線
的で、攻めが単調になる傾向がある。思春の攻めに慣れておるお主には、儂のような動きは慣れて
おらんと思ったのじゃ。儂はお主の動きを読んで、少し先を攻撃したのじゃ。お主には儂の剣が
追いかけて来たように見えたかもしれんが、実際はお主が儂の剣にぶつかっていったのじゃ。とは
言え、普通なら確実に五回は致命傷を与えられた攻撃を全て躱しきるのは流石と言う他はないがの」
「成るほど、そういう事か」
祭の丁寧な説明に、ブラッドも納得した。思春は自分のスピードを最大限に生かす為に、最短距離
で直線的に攻撃することが多い。蓮華も思春の影響を受け、似たような動きをする。そして、その
二人の鍛錬につき合わされているブラッドも、直線的に動く癖が付いてしまった。祭はブラッドの
動きを読み、更に緩急をつけてタイミングを微妙にずらしていたのである。竜の巣で侵入者を迎撃
するとき、侵入者はブラッドに対し複数が同時に攻撃される事はしばしばあった。しかし、祭の
ようにフェイントを入れて間合いをずらしたり、ブラッドの動きを先読みして攻撃する事は無かった。
祭との仕合は、ブラッドにとっても得るものがあった。

「種明かしをしてしまった以上、もうお主には通用せん。そもそもお主には硬気功という切り札が
あるからあまり役に立つとは言えんが、実戦では何が起きるか分らん。余計なお世話かもしれんが、
油断はせぬことじゃ」
人間の姿でいる限りブラッドが死ぬ事はない。しかし、力が暴走しやすい環境化において不用意に
致命傷を受ける事は避けたい。普通の竜ならプライドが邪魔して、人間の言う事を聞くことはない
が、落ち零れのブラッドは良い意味でプライドを一時棚上げすることが出来る。祭のアドバイスを
素直に受け入れた。
「いや、お前の助言は役に立った。礼を言うぞ」
「そうか。お主に礼を言われると、くすぐったい気持ちになるぞ」
ブラッドは相手が誰だろうと“人間なら”初対面のときから対等以上の態度をとっている。しかし
相手の厚意には、素直に礼を言うことが多い。祭に対しても同じ態度をとっているが、礼を言われ
て悪い気がしないのは当然で、祭も表情を綻ばせた。


「さて、体を動かして腹が減ってきたな。飯にするか。儂について来い」
気を良くした祭は鍛錬を早々に切り上げ、ブラッドを食事に誘った。
「良い店でも知ってるのか?」
「付いてくれば分る」
ブラッドの問いかけにも、祭は少し勿体ぶった表情を見せ答えなかった。

 着いた場所は厨房だった。訝るブラッドに祭は少し待っておれと言うと、さっさと中に入って
いった。暫くしてブラッドの前に見たことのない料理が並べられた。
「これは…何だ?」
初めて見る料理に素直に感想を述べるブラッドだが、祭はどう解釈したのか訝しげに眉を顰めた。
「何じゃ? 儂が料理をするのが、そんなに珍しいか?」
「そんなことはない。見たことのない料理だから、何だと聞いただけだが?」
「そ、そうか、そうじゃったな。お主はこの国に来て日が浅かったの。これは、この国ではごく
普通のありふれた料理じゃ。これが麻婆豆腐、こっちが回鍋肉でこれが青椒牛肉絲じゃ」
初めて見る料理の数々に、ブラッドは興味津々である。祭は、いつも豪快な自分が料理という女性
らしい事をすることに驚く様子を見るつもりだったが、ブラッドに驚いた様子は無かった。実は
竜の巣では一番の剣の使い手であるユメを筆頭に、家事能力の高い元生贄、捕虜の女の子達が多く
いる。従って、武人である祭が料理をしても疑問に思う事は無かった。
 
 しかし、そんな事情を知らない祭はブラッドの態度に逆に戸惑ってしまった。自分では似合わな
いと思っていた女らしい振る舞いを、ブラッドが違和感なく受け入れたのだから。
「儂が料理をするのを、お主は変とは思わんのか?」
「質問の意味が分らん。全く変じゃないだろ。お前のような美人に飯を作ってもらったら、大抵の
男は喜ぶんじゃないのか?」
「面と向かって、よくそんな事が言えるな。まさか、儂が良い嫁になるとでも言いたいのか?」
「嫁か…。案外、お前なら男を立てる良い嫁になるかもしれんな」
「…ほ、ほぉ」
平静装っているが、普段言われることのない台詞に祭は結構舞い上がっていた。自分が愛する男に
甲斐甲斐しく尽くす様が一瞬頭を過ぎり、慌てて打ち消す。つい最近まで生娘だった蓮華や思春と
同じようにはしゃぐのは、大人の女としてプライドが許さない。

「食っていいんだな?」
「見せるためだけに作ったりはせん。食ってみろ」
言われるまま、ブラッドは料理に箸をつけた。まだ慣れていない拙い箸使いで口に運ぶ。ブラッド
の反応を、祭は見逃さないようにじっと見ている。
「…うん、美味い。こっちも…おぉこれも美味い」
「そうか…。儂の腕も中々のものということじゃな」
似合わないと言いながら、それなりに腕に自信があったのだろう。美味しそうに食べるブラッドを
見て、祭はどうだと言わんばかりに余裕の笑みを浮かべた。

 余裕が出てくると、今度は色々言いたくなる。箸使いに慣れてないブラッドが、料理を上手く
掴む事が出来ずポロポロ零す様子を見て、つい言葉が出てしまった。
「こらこら、お主は子供か?」
「慣れてないんだから仕方ない」
呆れ顔の祭だが、ブラッドは出来なくて当然と言わんばかりに開き直った。
「仕方ない奴じゃ。待っておれ」
祭は一度厨房に引っ込むと、レンゲを手に戻ってきた。
「これを使え。行儀は悪いが、やむを得ん。儂が丹精込めて作った料理を粗末に扱われては適わん
からな」
言った後で祭は自分の不用意な発言に気付き、しまったという表情になった。言い方を変えれば、

「私が一生懸命作ったんだから、ちゃんと食べてよね!」
「これは、全身全霊を込めた私の分身のようなもの。残さずしっかり味わって食え」
「私なりに頑張ってみたんですけど…。食べていただけると嬉しいです」
「ブラッドさんへの愛情がいっぱい詰まってます。しっかり食べてくださいね♪」

と言っているようなものである。もっとも、当のブラッドは食べることに集中して、祭の言葉は
気に留めていなかった。

「中々美味かったぞ」
「そうか、儂も作った甲斐があるというものじゃ」
ブラッドはものの数分で全て平らげ、満足げな表情を浮かべている。釣られるように祭も笑顔だった。
ブラッドの周りの女性陣は、王族、軍師、将軍と総じて身分の高い者ばかりである。従って、料理
に関しては“料理人に任せます“スキルしか装備しておらず、自分で作れる場合は結構大きなアド
バンテージとなる。現に、ブラッドの祭に対する内部評価も上昇中である。
「じゃあ、定番だが食後のデザートを頂くとするか」
「でざーと? 何じゃそれは?」
初めて聞く言葉に、祭は訝しげに眉を顰めた。いつのまにかブラッドの目が獲物と狙うハンターの
目になっている。
「食後に摂る果物などの事だ。こんなにたわわに実ったものを食わない馬鹿は居ない」
そう言いながら、ブラッドは祭の巨大なバストに躊躇無く手を伸ばした。
「ま、待て、でざーととはこういう意味なのか?」
「本来は違うが、広い意味ではこういう場合もある」
うろたえる祭に構わず押し倒し、豊満な胸を更に強く絞るように揉みしだく。
「こ、こら、いきなり揉むな…あん♪」
「その割には嫌がってないな?」
「お、お主に触られて嫌なわけなかろう。ただ、展開が速すぎると…はぁん」
「そうか、それは済まなかった。とはいえ既に収まりがきかん。このままいくぞ」
「だ、だからこっちの都合も…くうん」
祭の都合などお構い無しに、ブラッドの手は無遠慮に祭の体をまさぐる。片方の手は胸の頂に達し
指で転がすように捏ね回し、空いている手は下腹部に滑り込み新たな刺激を与える。そのたびに祭
の体は反応し、熱い吐息を漏らしていく。
「準備はいいな? そろそろいくぞ」
「す、好きにせい」
祭は全身の力を抜いて身体を開いた。


 数刻後、厨房は料理以外の別の物の混ざった匂いと熱気が充満していた。
「全く、こんな年寄り相手にして満足できるのか?」
完全に骨抜き状態の祭は、気だるそうに体を横たえたままブラッドを見ている。呆れたような口調
だが、頬は上気し自然と笑みがこぼれる。
「お前は女として十分に魅力的だ。それは覚えておけ。というか、お前もいい加減自分の魅力に
気付け」
祭に限らず、孫呉の女性陣は武に生きる為か、小蓮を除いて自分の女としての魅力を過小評価し
過ぎる傾向がある。祭も同じだった。ブラッドは再び祭を抱き寄せると優しく、かつ熱烈に口付け
を交わした。
「んむ、はむ…むんん、くちゅ、ちゅる…。まぁ、魅力的といわれて悪い気はせんが…」
ブラッドにいいように口中を蹂躙され、無抵抗に受け入れる。自分より若い男(祭はそう思ってい
る)から一方的に攻められた挙句、完全に体を預けて甘えた声を漏らしている姿を晒す事に対する
抵抗感はもう無かった。

「お主は本当に不思議な男じゃのう」
「いきなりどうした?」
しみじみ語る祭に、ブラッドは少し訝しげな表情で尋ねた。
「戦場では天下無双の武を誇るかと思えば、儂の料理を子供のように食い散らかす。そして閨では
女の身も心も蕩けさす。どれが本当のお主じゃ?」
「全部俺だとしか言えんな」
武に関しては実際は落ち零れだし、テーブルマナーも身に付けているので本当のブラッドではない。
夜の練習はこれまで散々やってきたので、本当なのはこれだけである。しかし、この事実を知る者
は孫呉陣営にはいない。
「底の知れん男じゃ。それがまた良いのかも知れんな」
祭は自分からブラッドに抱きつくと、初めて見せる甘えた乙女の顔になってキスをした。


 数日後。調練で祭は精力的に動き兵を鼓舞していた。
「おらおら、そんなへっぴり腰で敵が倒せるか。もっと気合を入れい!」
いつも以上に気合の篭った祭の声があたりに響き、それに乗せられるように兵士の動きも精力的だった。

「ふぅ…」
調練を終えた祭は一息入れると、軽く頭を振って束ねていた髪を解いた。銀色の髪が風に揺れ、日
の光を浴びてキラキラ輝いている。普段の鬼軍曹然とした雰囲気は無く、成熟した大人の女性へ
大きく変貌している。
「ほぅ、やってるな」
「おう、ブラッド。見ておったのか?」
暇つぶしに訓練を見ていたブラッドに声を掛けられ、祭は一瞬驚いた表情を見せたが直ぐに柔和な
笑みを浮かべた。
「中々の統率力だな。俺には無い能力だ」
「天下無双の武人から評価、光栄じゃ。お主は一人で一軍分の働きをするから、今のままで構わん
だろう」
半分は外交辞令のようなものだが、お互い相手の能力を認めているのも事実だった。

 祭は公から私にモードを切り替え、女の顔でブラッドを見詰めている。
「のう、ブラッド」
「何だ?」
「料理は、この前のもの以外にも出来るのじゃ。お主がもし、食いたいというのなら作ってやらん
でもないぞ?」
誘うような、挑発するような目で顔色を窺いながら、食事の手配を申し出る。内心かなりドキドキ
しているが、表情にはおくびにも出さない。
「この前のお前の飯は美味かったし、断る理由は無いな」
「よし。なら早速、今日の晩飯を儂が作ってやろう。でざーとも用意するぞ」
ブラッドの快諾を受けほっとした表情を見せる。受け入れる事を前提とした提案で、準備は全て
整っていたようだ。
「お主には、じっくり全て食い尽くしてもらうぞ?」
ブラッドにしか見せない少し甘えた表情で擦り寄り


 二人のやり取りを、少し離れたところで見ている雪蓮と冥琳。
「はぁ…あの祭があんな事いうなんてね」
「……」
「まぁ、あれで祭がこれまで以上にやる気を出してくれたら、呉としては言う事は無いわ」
「……」
呆れつつも微笑ましく見ている雪蓮に対し、冥琳は何ともいえない複雑な表情をしている。
「どうしたの、冥琳?」
「別に…」
「別にって顔じゃないわよ。どうかしたの?」
「本当に何でもないわよ!」
しつこく尋ねるのでむきになって言い返すが、その様子を見た雪蓮が待っていたようにニヤニヤ
しながら追い討ちをかけた。
「そうかしら? 何か、母子家庭で大好きなお母さんからいきなり新しいお父さんよて言われて
どう対処していいか分からず呆然としている娘みたいよ」
「な、何よ、その妙に具体的なたとえは?」
冥琳にいつものクールな面影は無く、うろたえた表情を浮かべている。
「何かさ、偶にだけど冥琳が祭を見るときの目がそんなふうに見えるのよ」
「そ、それだと私と祭殿とは親子ほど歳が離れていることになる。それは祭殿に対しあまりに失礼
だ。しかも、ブラッドが父親と言うのもありえん」
いろんな意味で納得できない冥琳が反論するが、雪蓮は何故か小蓮に向ける時のような優しい表情
を浮かべていた。


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