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No.8447の一覧
[0] 国取りドラゴン(真・恋姫無双×巣作りドラゴン) 第24話追加[PUL](2011/03/13 15:31)
[1] 第1話:竜星墜落[PUL](2009/12/13 18:40)
[2] 第2話:突発的開放[PUL](2009/12/13 21:39)
[3] 第3話:同床異夢[PUL](2009/05/23 11:53)
[4] 第4話:実力の片鱗と影響[PUL](2009/06/02 15:16)
[5] 第5話:ある日常の乙女達[PUL](2009/06/10 19:36)
[6] 第6話:ブラッド歴史の表舞台に立つ[PUL](2010/07/12 12:50)
[7] 第7話:激突! 天下無双対決[PUL](2009/12/13 21:39)
[8] 第8話:黄昏の戦乙女(少しエッチ)[PUL](2010/09/05 15:10)
[9] 第9話:華、開く(少しエッチ)[PUL](2010/01/12 21:56)
[10] 第10話:虎と麒麟児と小鹿(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:33)
[11] 第11話:私の瞳の中のあなた(少しエッチ)[PUL](2009/12/22 22:53)
[12] 第12話:新しい時代の幕開け[PUL](2009/10/27 23:21)
[13] 第13話:昨日と違う同じ空[PUL](2009/10/31 22:05)
[14] 第14話:彼女達の考察[PUL](2009/11/17 20:27)
[15] 第15話:愛紗、朱里、揚州紀行(少しエッチ)[PUL](2009/12/18 20:35)
[16] 第16話:北方情勢と穏気な軍師(少しエッチ)[PUL](2009/12/28 16:30)
[17] 第17話:伏竜、昇り竜、落ち零れ竜[PUL](2010/07/22 23:55)
[18] 第18話:最強工作員と最弱竜(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:11)
[19] 第19話:料理スキルの効果(少しエッチ)[PUL](2010/07/22 01:12)
[20] 第20話:逃げる桃香、追う華琳、阻む雪蓮[PUL](2010/04/25 23:48)
[21] 第21話:新旧弓使い対決[PUL](2010/07/22 01:13)
[22] 第22話:魅惑の三位一体攻撃[PUL](2010/08/05 22:01)
[23] 第23話:新戦力発掘(少しエッチ)[PUL](2011/03/13 17:21)
[24] 第24話:パワーファイターVSスピードスター[PUL](2011/03/13 15:31)
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[8447] 第11話:私の瞳の中のあなた(少しエッチ)
Name: PUL◆69779c5b ID:f825cc8a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/22 22:53
第11話:私の瞳の中のあなた


 反董卓連合に参加して以来、雪蓮と孫呉の評価は日増しに高まっていった。領民も独立
の気運が高まり町は活気に満ちていた。しかし、袁術がこの状況を見過ごすはずはなく
色々嫌がらせを考えていた。
「七乃、孫策がむかつくのじゃ」
「美羽様、どうなさいました?」
美羽はぷうっと頬を膨らませて怒っていることを主張するが、七乃は生暖かい目で見守っ
ている。
「最近の孫策は、主人である童を差し置いて目立ちすぎなのじゃ。一度ギャフンと言わせ
てやらないと童の気が済まんのじゃ」
「そうですね、じゃあちょっと嫌がらせでもして見ましょうか?」
完全に子供の癇癪で理不尽なことを平気で口にするが、それを平然と受け入れる七乃も
同類だった。
「何か上手い方法があるのか?」
「えぇ、お任せください」
にっこり笑顔で答える。その笑顔でこれまで多くの領民が苦しめられたが、全く意に介し
てなかった。

 雪蓮は美羽に出廷を命じられた。いつものように禄でもない話だろうと、うんざりした
表情で出廷すると、やっぱりろくでもない話だった。
「荊州で不穏な動き、ねぇ。で、私にどうして欲しいの?」
面倒くさそうな顔で適当に答える。これまで美羽の無駄な呼び出しは何度もあったが今回
も雪蓮の神経を逆なでする話だった。
「勿論、状況の調査じゃ。抵抗するならその場でやっつけてしまえ」
「その場でって、荊州は袁術ちゃんの領土じゃないでしょ? そんな勝手なこと出来ない
わよ。劉表と戦争するつもりなの?」
あまりにも非常識な命令に、雪蓮は疲れた表情で大きくため息を吐いた。
「そのつもりはないが、もしそうなったらお主が責任もって対処するのじゃ」
「あのねぇ、責任て袁術ちゃんの命令でしょうが。それに、うちは袁術ちゃんとこ程の兵
力はないわよ。兵を呼び寄せてもいいなら、考えてもいいけど」
「ただの偵察にそんなに兵は必要ないですよね? しかも精鋭揃いの孫策さんの兵なら
尚のこと問題ないですよね? まぁ、敵わないと思ったら逃げ帰って来てもいいですけど
「……」
軽い口調に嫌味を交えて、七乃は雪蓮の申し出を断った。七乃が雪蓮の考えを見透かした
とは思えないが、雪蓮は表情を強張らせていた。

 城に戻ってきた雪蓮は疲れた顔をしていた。
「おかえり。馬鹿の相手は大変だったでしょう?」
「えぇ、その場で二人纏めて切捨ててやろうかと思ったわ。全く、思い出しただけでも腹
が立つわ」
雪蓮は苦々しい表情で吐き捨てるように言うと、冥琳達に美羽の指示を説明した。
「確かにくだらない話ね。そして厄介な指示ね。袁術が私達の計画に気付いたとは思えん
が、無茶な事を言うわね」
「でしょ? でも今こっちの動きに気付かれるわけにはいかないから、聞かないわけには
いかないし…」
二人とも言葉が続かず考え込んでしまった。
「何か問題でもあるのか?」
「あぁ。計画実行に向けて既に蓮華様が行動を起こしている。こちらの計画に変更があれ
ば、速やかに報告せねばならん。雪蓮、蓮華様に状況の報告はどうするの?」
「必要無いわ。蓮華には当初の計画通り動いてもらうわ」
雪蓮は考えうる事態をシミュレーションして、あるいは感かもしれないが計画続行を指示
した。
「となると、気をつけるのは荊州の周辺事態への対応ね」
「荊州の周辺事態? やばい状況なのか?」
状況が把握できずブラッドが口を挟んだ。穏から周辺の状況について説明は受けているが
話半分で聞いていたことが判明した。
「荊州は交通の要で、国土も肥沃なので人口も多く栄えた場所だ。ここを治める劉表は有
能とはいえないが、強固な経済地盤のおかげで領民の不満は少ない。当然他の勢力もここ
を狙っているが、ここは後継者問題も抱えている。最近、劉表は劉備と懇意にしているら
しく、劉備も何かと相談に乗っているらしい」
「へぇ、あのぽやぁっとした子に相談して大丈夫なのかしら?」
「あれだけの豪傑を纏めているのだ。結構したたかな面もある。それに彼女の配下には
諸葛亮がいる。ただ、劉表が劉備の助言を取り入れれば、当然荊州は劉備の影響力を強く
受けることになる。これを曹操が黙って見逃すはずがない。荊州で我々が動けば、彼らの
争いに巻き込まれる危険もある。今の私達に、彼女達とやりあう力はまだないわ」
「なるほど、面倒くさい話だな」
「行動には細心の注意が必要ですね」
話半分で聞いていたブラッドは適当に相槌を打ったが、クーはしっかり把握していた。
「その通りだ。どうせ袁術は単なる嫌がらせで言っただけだろうが、私達にとっては由々
しき事態だ。全く、人を苛立たせることに関しては天才的だな」
その場に居合わせなかった事で余裕があるのか、冥琳は妙な感心の仕方をしている。しか
し芳しくない状況に表情は冴えない。

「じゃあ、その荊州には俺が行こう」
「お前が行くだと?」
「ご主人様、冥琳さんの話聞いてなかったんですか?」
ブラッドの予想外の申し出に冥琳とクーは否定的なニュアンスを込めて驚いているがブラッド
は気にせず持論を展開した。
「偵察にあまり兵は割けられないし、予期せぬ事態が発生した場合速やかに対処し雪蓮に
報告しなければならない。俺なら適任だ」
「確かに仰るとおりですが、ご主人様に細心の注意が出来るとは思えません」
「うーん…。ブラッドなら雑兵の100や200物の数ではないし、クーがいれば迅速な
連絡も可能ね。計画に組み込んでいる将兵を派遣するわけには行かないし、他に適任者が
いるかと言われると難しいわね」
ブラッドの派兵に冥琳とクーは反対だが、雪蓮は対案があるかも併せて肯定的に考えていた。
「分かったわ。じゃあ、ブラッドにお願いするわ。あと、案内役として亞莎も付けるわ。
良いわね亞莎?」
「わ、私ですか!?」
いきなり指名され、無防備だった亞莎は声が上ずってしまった。
「ブラッドは荊州までの道を知らないから、誰か道案内がいるでしょう? あなたも実戦
積まなくちゃいけないんだし、これも経験と思って頑張って。幸い二人とも荊州では知ら
れてないと思うから、変に警戒されることもないから大丈夫よ」
「は、はい…」
雪蓮の説明を聞きながら亞莎はブラッドを横目で見ていた。任務内容に不満は無いが、
ブラッドと行動を共にすることにかなり緊張しているようだ。
「じゃあ、宜しく頼む亞莎」
「よ、宜しくお願いします!」
亞莎はブラッドに対しかなり強い憧憬の念を抱いているらしく、緊張しながらも力強く答
えた。

「じゃあ早速で悪いんだけど、すぐに準備を整えて出発して。蓮華が計画通りに動いてい
るから、それに間に合うように動いて」
「分かりました。では兵を人選したら直ぐ出発します」
気持ちが軍師モードに切り替わったのか亞莎は表情を引き締めて行動に移った。

亞莎達を見送りながら雪蓮はもう袁術の我侭に対する怒りは無く、今後の展開について
考えていた。
「袁術ちゃんは何も考えてないでしょうけど、本当に荊州で何か動きがあるかもしれない
わね。私達が再び歴史の表舞台にあがる下拵えのようなものが」
「袁術が荊州に偵察を命じた事、そこにブラッドが赴く事、何かが始まりそうな予感は
するわね。もっともそれにブラッドが絡んでいるのだから、クーの言葉を借りれば本来の
歴史を逸脱しているのかもしれないけど」
「別にいいんじゃない? どうせ先のことは誰にも、ブラッドにもクーも分からないんだ
し、私達は自分が出来ることに全力で取り組むだけよ。それがどんなに困難な事でも自分
の力で切り開いていかなければならないわ」
天性の感のなせる業か、雪蓮は歴史が大きく動き始めていることを実感していた。


 ブラッドと亞莎は荊州との州境に来ていた。当初予定していた兵も、ブラッドがいれば
大丈夫と二人だけの偵察となった。ブラッドと二人きりということで亞莎は少し緊張気味
である。
見通しの良いだだっ広い荒野に人影は無く、隠密行動をとるには難しい場所だった。
ブラッド達は一通り周辺の状況を調べたが、特に異常は無かった。
「全く何にも無いな」
「分かってはいましたけど、問題無さそうですね」
「袁術の嫌がらせですからね。あったらあったで面倒なので何もなくてよかったです」
雪蓮の指示による初仕事が無事に済みそうで亞莎はほっとした様子である。しかし、クー
の言葉が、それを許さない状況が起こることを示していた。
「…あれ? ご主人様、向こうに人がいます。武装してるようです」
クーが指差した先、およそ2,3キロ先で豆粒程度にしか見えない人影が動いていた。
「何? あぁ、いるな。向こうもこっちに気付いたみたいだな。こっちに来るぞ」
「え? どこにいるんですか?」
ブラッドも人影に気付いたが亞莎には全く見えず、少しうろたえていた。豆粒は段々大き
くなって亞莎でもそれが人だと視認できる距離まで近付いてきた。

 近付いてきたのは将兵クラスの者が3人と兵が数人。全員武装していて中には見覚えの
ある者も居た。
「待て、貴様らそこで何をしている!?」
会うなり居丈高に挑発するのは見覚えのある短絡人間。春蘭だった。ブラッドの事は記憶
の彼方に追いやって覚えてないらしい。
「惇ちゃん、いきなりそれは拙いって。済まんな、この子ちょっとアレやから」
「気にするな。そいつがバカで単細胞なのは知っている」
「な、何だと貴様! バカと言った奴がバカなんだぞ、このバカモノ!」
「…子供かお前は」
相手していられないとばかりに、ブラッドは少し見下した態度をとった。それが春蘭の僅
かに残った記憶を呼び覚ました。
「ちょっと待て。その人を馬鹿にした態度と軽薄な風貌には、見覚えがあるぞ。…あぁ! 
貴様はブラッド・ライン! あの時はよくもコケにしてくれたな!」
春蘭は、華琳からブラッドが春蘭を敵と見なしていないと言われた事を、ブラッドに言わ
れたと置き換えているようだ。ブラッドにとっては言い掛かりでしかないが、一々相手を
するのも面倒なので聞き流した。

「…こんなのと一緒に居て疲れないか?」
ブラッドは春蘭の罵倒を聞き流して少し同情の念を抱きながら宥め役の将兵、張遼こと霞
に声を掛けた。
「いや、慣れると可愛いもんやで。まぁ、それはいいとして、あんたブラッド・ライン言
うんか?」
「そうだが、それがどうした?」
「ほぉ、あの恋と引き分けた化け物ってあんたの事やったんか?」
虎牢関での一件は、霞も良く知っている。天下無双と謳われた恋と互角に渡り合い、一部
では江東の狼(命名華琳)と呼ばれている者を前にして、霞の武人として血が騒いだ。
しかし、ここで暴走しないのが春蘭との大きな違いだった。

「うちの名は張遼。覚えといてや。いずれ、あんたとはやってみたいけど、今はええわ。
それで、孫策配下のあんた等が何でここにおるん?」
霞は個人的な興味は棚上げして、ブラッドの隣にいる亞莎に尋ねた。
「私は孫策が配下、呂蒙という者です。私達は荊州に不穏な動きがあるとの報告を受け、
袁術様の命により調べていただけです。あなた達は魏の方達とお見受けしますが、劉表が
治めるこの地に何故いるのですか?」
亞莎が澱みなくスラスラと答える。人見知りが激しく、いつもたどたどしい話し方だが、
隣にブラッドがいることで余裕があったのか、それとも単によく見えないだけなのか霞の
鋭い眼光にも物怖じせず対等に渡り合っている。
「袁術の? ほぉ、ということは袁術がここを狙うてるって事か? それとも、孫策の次
の目標がここって事か?」
霞の視線が更に鋭くなった。荊州の重要性を理解しているからこそ、自分達も危険を犯し
て偵察をしているのである。孫策が独立後の対策を講じていると考えるのは当然だった。
「質問の意味が良く分かりません。私達は、ただ主の命に従っているだけです。それと私
の質問にまだ答えて頂いていませんが?」
亞莎は霞の質問に答えず自分の質問に対する回答を先に要求したが、亞莎の態度が気に入
らなかったのか、春蘭が首を突っ込んできた。
「答える必要は無い!」
「…必要は、無い? こちらはあなた達の質問に答えているのに、あなた達は聞くだけ聞
いてこちらの質問に答えないのでは筋が通りません。それとも、答えられないような事を
するつもりだったのですか? 曹操は、随分劉備を気にしているようですね?」
「な、何だと!?」
いきなり華琳(曹操)と桃香(劉備)の名を出され春蘭は激しく狼狽した。これでは肯定
しているのと同じだった。

「何だ、曹操も見た目通りの奴か」
「貴っ様ぁ!!!」
ブラッドの華琳を小馬鹿にする挑発に激昂した春蘭が七星餓狼を振り上げたが、ブラッド
は無防備に間合いに入った前回とは違い、今度は風の魔法を駆使して瞬時に距離を詰め
春蘭の手を取り、動きを封じた。しかし僅かに目測を誤ったのか、両者の距離は限りなく
ゼロに近く、ブラッドは思わず片方の腕で春蘭を抱き寄せてしまった。
「ひっ!!」
「え…?」
「はわっ」
「ほぉ、やるやん」
突然の出来事に春蘭は硬直し、他の女の子達も次の展開を固唾を呑んで見守っていたが
ブラッドだけは全く気にしていなかった。
「な、何を…」
「お互い他人の庭先でこそこそやってるんだ。今は穏便にいった方がいいんじゃないのか?」
「…あ…う」
「ここで騒ぎを起こせば劉表だけでなく劉備、袁術も動き出す。それでもいいのか?」
ブラッドにとってももどかしい状況だが、呉の置かれた状況と力をフルに使いこなせない
自分の状態を考えると無駄な戦いは避けたいところだった。
「わ、分かった…」
春蘭はまだ硬直が解けず、ずっと抱きしめられたまま呆然とした表情でブラッドを見つめ
続けていた。真っ直ぐブラッドに見つめられ、小さく肯くのが精一杯だった。

「と、取り合えず大事にならずに済んでよかったわ。無傷で惇ちゃん止めてくれたんは感
謝するわ。あんたの言う通り、ここで遣り合ってもお互い得になる事は何も無い。うちら
はこのまま城に戻るつもりやけど、あんた等はどうする?」
春蘭が大人しくなったのを見計らって霞が声を掛けた。霞は春蘭とは違い状況を確り把握
している。ここで遣り合ってもデメリットしかない事を理解していた。
「状況は確認したので俺たちも城に戻る」
最初から争う気のないブラッドもあっさり同調した。
「惇ちゃん行くで!」
「え? あ、あぁ分かった」
春蘭はまだ惚けていたが、霞の声ではっと我に返るとブラッドを一瞥して霞達とその場を
立ち去った。

 城に戻る途中、今まで黙って成り行きを見守っていたもう一人の将兵、楽進こと凪が霞
に声を掛けた。
「霞様」
「何や?」
「あの男が、華琳様が要注意人物と言っていたブラッド・ラインですか?」
「本人もそう言うとったし、物忘れの激しい惇ちゃんが覚えとったんやからそうやろうな。
まさか、こんな所で会うとは思わんかったで」
脳の大半が筋肉で出来ていると言われている春蘭の僅かに残った記憶素子にさえブラッド
に関する情報が残っていたのだから、ブラッドに対する印象が鮮烈だったことが分かる。
「春蘭様が抜刀すると同時に間合いに入った踏み込みの速さは、尋常ではありません。
飛将軍呂布と互角に遣り合ったのも肯けます。霞様は呂布将軍の事はよくご存知かと思い
ますが、ブラッドの実力をどう見ますか?」
「恋の強さは化け物並やけど、ブラッドは実際にやってみんと本当の実力は分からん。
まぁ、惇ちゃんが放心状態になるくらいの実力があるのは分かったわ」
そう言って霞が向けた視線の先で、春蘭はうつむいて何やら呟いていた。

「い、一度ならず二度までも奴は私の中に入ってきた。奴の動きの速さは分かっていた
はずなのに情けない。そ、その上、奴に抱きしめられ、こ、恍惚と…」
言いかけた春蘭の体が硬直する。どうやら春蘭の頭の中ではブラッドの熱い抱擁が何度も
フラッシュバックしているらしい。熱に浮かされたように頬を赤らめたと思うと急に奇声
をあげた。
「あああああーっ!!! この身も心も華琳様に捧げたというのに、あんな男に体を預け
るとは夏侯元穣、一生の不覚。かくなる上は、刺し違えてでもブラッドを倒すしかない! 
この次会った時こそ貴様の最後だ。首を洗って待っていろ!!」
一人身悶えしたかと思うと、急に闘志を滾らせここに居ないブラッドを挑発する春蘭を霞
達は生暖かい目でみていた。
「…何か楽しそうな事やっとるな?」
「そうですね。まぁ、そっとしておいてあげましょう」
結構冷たい対応の凪だが、霞も関わるのが面倒なので放置する事にした。


 一方、ブラッドは遠ざかっていく春蘭達を見ながら苦笑いを浮かべていた。
「相変わらずな奴だ」
「でも、冥琳様が懸念されていた事が現実のものとなるかもしれません。これからと言う
ときに戦乱に巻き込まれるわけにはいきません」
楽観的なブラッドと違って亞莎は事態を深刻に捉えているが、ブラッドは別のことを考え
ていた。
「そういう事は、雪蓮や冥琳が考えればいい事だ。それより、あいつ等を前にして臆せず
堂々と遣り合ったのは意外だった。少し見直したぞ」
「え? あ、ありがとうございます。ブラッド様が傍にいてくれたのが心強く、ちゃんと
対応出来たのだと思います。それに、相手の顔も良く見えなかったので、あまり怖く無かった
です」
思いがけずブラッドに褒められて、亞莎は恥ずかしそうに頬を赤らめている。相手の顔が
良く見えない分、闘気や気配には敏感な筈だが春蘭達の注意が主にブラッドに向けられて
いたことも幸いだった。

 しかし、亞莎は自らの発言で墓穴を掘ることとなった。ブラッドは怪訝そうな顔を作っ
て亞莎に尋ねた。
「顔が見えなかった? それはそれで少し拙いな。お前は、あいつ等の姿をどのくらいの
距離で確認出来たんだ? ただ姿が見えたとかじゃなくて、味方ではないと認識出来た
距離だ」
「え? えっと…その辺くらいです」
亞莎が指差した場所はぼんやり姿が見えた距離で、はっきり認識できた場所はもっと手前
だった。目の事はあまり触れて欲しくないのか、少し表情を曇らせた。
「お前の目って戦場では致命傷じゃないのか?」
「はぅ…」
「亞莎さんは極度の近視に乱視まで入ってます。戦況を見渡し瞬時に判断しなければなら
ない軍師の任務を続けるのは難しいと思います」
悪気はないが、ブラッドとクーの容赦ない指摘に亞莎は泣きそうな顔で俯いてしまった。
人間より遥かに高い視力を持つブラッドにとって、亞莎の視力は大きなハンデにしか見え
ず軍師という重要任務を担えるのか疑問に思っていた。
「で、でも、今までは問題なく出来てました。それに、私を推挙してくださった蓮華様の
期待に応えるためにも、私は結果を出さないといけないんです」
ブラッド達の辛らつな物言いに、亞莎は泣きそうな顔で反論した。流石に拙いと思ったの
か、クーのフォローが入った。
「言葉足らずでした。申し訳ありません。ですが、その目が亞莎さんの能力の足かせに
なっているのも事実です。私達は、といっても実際にやるのはご主人様ですけど、亞莎
さんの視力を回復して差し上げようと考えているのです」
「そ、そんなことが出来るのですか?」
突拍子のない話に、亞莎は目を大きく開いてブラッド達を見つめている。

「理論的には可能です。近視、遠視は通常より焦点深度が前後にずれている状態で、乱視
は角膜や眼球の歪によるものです。これを正常な状態に戻せば、亞莎さんの視力は回復す
るはずです。ただ私もご主人様も医者ではありませんので、完全に治すことは出来ません。
しかし、代謝を飛躍的に高めて回復させることは可能です。亞莎さんの目は、先天的なも
のではなく後天的な要因で悪化したものなので、上手くいくと思います」
「はぁ…そうなんですか?」
初めて聞く言葉のオンパレードに亞莎は普段の鋭い目を丸くしている。
「まぁ、悪いようにはしないから安心しろ」
部下を左遷する管理職のような物言いで言いくるめるブラッドだった。

 ブラッドは城には直行せず、わき道に逸れて森の方に進んでいった。
「ブ、ブラッド様、どこに行くんですか?」
怪しくなる雰囲気に、亞莎が恐る恐る尋ねた。天の御遣いであるブラッドの事は信用して
いるが、本能的に身の危険を感じて腰が引けている。
「荒野のど真ん中では、お前も気分が乗らないだろ?」
「き、気分? そ、それは、どういう事ですか?」
ブラッドに対する信用より未知への恐怖が勝り、段々声が上ずって表情が引きつっている。
「亞莎さん、落ち着いてください。あまり緊張して力が入りすぎると痛いので、気を楽に
してご主人様に身を任せてください。では、私は暫く消えますので、ご主人様、後は宜し
くお願いします」
「え? ちょ、ちょっと、クーさん?」
言うだけ言うと、クーは戸惑う亞莎を残して文字通り消えてしまった。

「じゃあ、始めるか」
「え? あの、ま、まだ心の…はぅ」
混乱しっぱなしの亞莎を構わず抱きしめ、軽いタッチのキスをする。それだけで亞莎の混
乱度が上昇し、意識が朦朧としてくる。
「はぅぅ…。ブラッド様、こ、これのどこが治療なんですか?」
およそ治療とは思えないブラッドの行動に亞莎は精一杯の抵抗を示すが、それはブラッド
の嗜虐心を煽るだけでしかない。ブラッドは亞莎の体を隅々まで弄りながら耳元で囁いた。
「心と体を楽にして、俺に身を委ねろ。安らかな気持ちで受け入れれば、お前は至福の時
を得ることが出来る」
「あふ…はふ…ぶ、ブラッド…様…はぅぅっ!」
ブラッドに触れられ、指先から送り込まれる刺激が亞莎の体と心に浸透する。最初は訳が
分からず戸惑っていたが、それが快感だと自覚すると体は更に敏感に反応した。
「ふ、可愛いぞ」
ブラッドは亞莎の反応に満足そうに笑みを浮かべ、更に亞莎の胸や下腹部だけでなく全身
を愛撫する。亞莎も混乱しながら素直にブラッドの言うことを聞いて、全身の力を抜いて
体を預けた。
「はぅ…あぅ…」
全身を快感が洪水のように駆け回り、自由を奪われた亞莎は身も心も蕩けていった。


 行為を終えて二時間ほど経過後、ずっと放心状態だった亞莎がようやく反応しだした。
「はふぅ…」
「どうだ、気分は?」
「はぅ…頭の中が真っ白で体もふわふわします。それに顔、特に目の周りがパリパリする
のは何故でしょうか?」
うつろな表情で答える亞莎。目の光はまだ弱々しいが、血色は良く肌は艶々している。
「早く効果を出すために普通とは少し違うことをしたが、体に害は無いので気にするな」
ブラッドは具体的な説明を省いてはぐらかすが、亞莎もまだ頭が働かないのか追求しない。
「初めての方にあれはショックが大きかったみたいですね。というか普通やりませんよね。
直接ぶっ掛けるなんて。亞莎さんは途中で意識が飛んでたみたいですから、この程度の
ショックで済んだのかもしれませんが、下手すると人格崩壊ものですよ」
クーが言うように、亞莎は怒涛のように押し寄せる初めての感覚に途中から意識が飛んで
記憶があやふやになっていて、ブラッドに蹂躙された記憶も無かった。
「今回は、効率を高める為のやむを得ん措置だ。次からは普通にしてやる」
「は、はい…ありがとうございます」
亞莎はまだ頭が殆ど回っていないらしく、意味も分からずに返事をしている。

 しかし、次第に意識がはっきりしてくると自分がブラッドに何をされたのか分かってき
た。自分が愛され、女にされた事も本能的に理解し、頬を赤らめ無意識に下腹部に手を
当てていた。
「ブラッド様…私が天の血を受ける器の一人であることは承知していますが、今回の事は
何か関係があるのでしょうか?」
器の役目に不満は無く、寧ろ光栄な事だし、ブラッドに対しては憧れに近い思いを抱いて
いる。しかし、今回のブラッドの唐突な行動は理解を超えていたらしく、亞莎はブラッド
の顔色を伺うように尋ねた。
「視力回復のためと言ったはずだ。周りを見てみろ」
「え? あ…す、凄いです。眼鏡を掛けずにこんなにはっきり見えるなんて」
言われるまま周りの目を向けると、亞莎は思わず息を呑んだ。今までぼんやりとしか見え
なかった景色がクリアな映像で視界に飛び込んできて、亞莎の意識が一気に覚醒した。久
しく見ることの無かった世界に感動していた。
「今までとは見え方が全然違うはずだから、慣れるまで我慢しろ」
「は、はい、ありが…はうっ!」
満面の笑みをブラッドに向けた瞬間、亞莎は弾かれるように大きく仰け反った。
「どうした?」
「ブ、ブラッド様のお顔が眩し過ぎて直視出来ません」
「はぁ?」
「悪い顔ではありませんし、実際に一目惚れした方もいらっしゃいますが、別に眩しくは
ないですよね?」
亞莎の過剰な反応にブラッド達は呆れ顔だが、亞莎は真剣そのものだった。
「そんなことありません。天の御遣いであり、私に新たに光を与えてくださったブラッド
様は凛々しくて神々しくて、直視したら石になっちゃいます」
「…それはちょっと違うと思うが。とにかく、そんな調子ではこれからが大変だ。とりあ
えず、徐々に慣れるしかないな。というか慣れろ」
「は、はい…」
亞莎はチラチラ横目で見ているが、その度に仰け反ったり顔を背けたりと慣れるまでには
時間が掛かりそうだった。しかし、ブラッドにくっ付くように寄り添って離れないあたり、
成長の後も窺えた。


 城に戻ったブラッド達は、状況報告のため雪蓮の元に向かった。亞莎も落ち着いたらし
く表情も普段どおりに戻っているが、まだ頬は上気していた。
「お疲れ様。何か色々あったみたいだけど、どうだった?」
頬を赤らめブラッドに寄り添っている亞莎を見て雪蓮はニヤニヤしているが、雪蓮の真意
が良く分かっていない亞莎は、普通に状況報告をした。
雪蓮も報告の内容を聞くとおちゃらけモードを一掃し、王の顔に戻った。
「相変わらず抜け目無いわね。夏侯惇と張遼をわざわざ偵察に使うって事は曹操が荊州を
重要視している証拠ね」
「そして、向こうも私達が同じ事を考えていると考えただろう。想定の範囲内とは言え
喜ばしいことではない」
「袁術ちゃんを倒しても、更に強力な敵が待ち構えてるってことね。本当に気が抜けない
わね」
「まぁ、曹操も袁紹と馬騰を倒させねば南進出来ないはずだし、劉備の動きも無視できな
いから、直ぐ荊州を取りに来る事はないわ。私達は、まず自分のやるべき事をしましょう」
「えぇ、分かったわ。それはそうと、亞莎眼鏡はどうしたの?」
一通りの報告と対応が決まり、雑談モードに切り替わった雪蓮が気になっていた質問を本
人にぶつけた。
「え? こ、これはブラッド様に治していただいて…」
治療法を思い出した亞莎の顔が真っ赤になり、雪蓮の興味が更に増した。
「ブラッドに? あなた医術の心得もあるの?」
「それほど立派なものじゃない。代謝を活発化て治癒力を高めただけだ」
「よく分からないが、それは活性術の類と考えて良いのか?」
「活性術? まぁ、似たようなものだ」
治癒能力、肉体再生能力はブラッドにとって生まれた時から当たり前に備わっている能力
であり、説明を求められても上手く答えられなかった。
「まぁ、何にせよ亞莎の視力が回復したのは良い事だわ。それって冥琳や穏にも…」
「私は今のままでも不自由はしてないから必要ない」
本能的に身の危険を感じたのか、冥琳が速攻で断りを入れた。
「冥琳と穏か…。どちらもそそられるな」
「だから私はいいと言っている。…穏は好きにしても良いが」
思案顔のブラッドから何やら不穏な空気を感じ取り、部下を生贄にしてでも予防線を張る
冥琳だった。


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